本編
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何とかハドラー親衛騎団との戦いは終わり、負傷した人達の手当てをしていた。
そして姿が見えないチウ達を捜しにポップ達が向かうが、ダイは自分も行くと言い出した。
だがヒュンケルに止められ渋々ダイは残り、ポップ、クロコダイン、ヒュンケルが死の大地に飛んだ。
ポップ達を見送り、エルダも他の怪我人の回復をしようとした時、倒れていた筈のノヴァがエルダに声を掛けて来た。
「あれ、貴方怪我は?」
「も…もう大丈夫だ!それより、怪我人は僕が運ぶ!」
少しムキになって話す彼に首を傾げると、マァムがウィンクをしてこちらを見ていた。
「…マァムに何か言われたの?」
ギクッ
図星を付かれ、一瞬体を震わせるが、ノヴァは聞こえない振りをして怪我人を抱えようとした。
「あ、待った!」
「何だ、まだ終わってなかったのか?」
「ち・が・う!」
エルダはノヴァに近寄り、彼に回復呪文を掛けた。
「はい、これで少しはマシになったでしょ?」
「あ、ああ…」
「じゃあ怪我人の運びお願いね」
そそくさと他の人の元に行こうとしたが、ノヴァはエルダを止めた。
「ま、待ってくれ!」
「ん?何?」
引き止められて振り返るエルダに、ノヴァは少し動揺しながら質問した。
「えっと…何故回復を?」
「え?だってマァム回復してくれなかったんでしょ?だから今やったの」
ニコッと笑って他の方に行くエルダ。彼女の微笑みにノヴァは顔を赤くした。しかし直ぐに頭を振って怪我人を運ぶ事に専念した。
数時間後、ポップが傷だらけのチウや他のモンスターを連れて戻って来たが、ヒュンケルとクロコダインは一緒ではなかった。
「ポップ君、二人は?」
「いや、なんかすんげえ真剣な顔で頼むからよ…」
死の大地に残った二人を心配していると、不意に頭に軽い痛みが走った。
「っ、何…?」
頭を抑えながら呟くが、直ぐに痛みは消えた。
「エルダ、ちょっとこっちを手伝ってー」
「あ、はーい!」
レオナに呼ばれ、エルダは考える事を止めた。
.
怪我人を一通り治療した後チウから聞いた情報を元に新たな作戦を考え始めた。
死の大地の海底にある門は強硬で竜の騎士一人の力でも破壊は不可能。そのためもう一人同行する事になった。
その話を引き受けたのはエルダだった。
「いくら魔宮の門でも、竜の騎士が二人いれば壊せる筈だ」
「それでも、やっぱりもう一人くらい…」
レオナの言葉にポップやマァムが行くと言い出すが、新たな声に背後を振り向くと、意外な人物がそこにいた。
「行くのは…私だ!」
ボロボロのヒュンケルに、彼を抱えたクロコダイン。そしてこちらを見下ろすバランの姿があった。
「と…父さん…」
バランの姿にエルダは驚愕しながら見つめ、ダイも何も言わずにバランを見ていた。
「…それとも、私とその二人では実力的に不服かね?」
その言葉に一同は納得せざるお得なく、一緒に戦う事を同意した。
「…っ、…っ!」
震え出したエルダは突然その場を離れ、奥の部屋に駆け込んでしまった。
「エルダ!?」
「追うな!」
エルダを追おうとしたダイをバランが一括して止め、彼はゆっくりとした動作でエルダを追った。
その光景を、ダイ達はただ見る事しか出来なかった。
いや、せざるを得なかった。
.
奥の部屋に逃げ込んだエルダは部屋の隅に座り、静かに涙を流していた。
「…エルダ」
呼ばれた声にハッ、と顔を上げるが決して振り向かずただ涙を流した。
「ごめ…なさ…っ、…も…でも今は…っ」
泣き崩れるエルダにバランはそっと彼女に近寄り、背後に立った。
「悔やんでいるのか…ラーハルトとの約束を果たせなかった事を」
「…っ!」
「それとも、私を殺せなかった事に悔や…」
「違う!!」
バランの言葉を遮るように振り返り、立ち上がって叫んだ。
「悔しいのは…、自分自身よ…」
「…何?」
「父さんとダイを戦わせたくなかった…だから私はメガンテを使ったのに…結局…結局何も出来なかった…っ!」
ボロボロと涙を零すエルダに、バランは黙って話を聞いていた。
「何も出来なくて…ラーハルトも死なせてしまって…最後の手段に自分の命を賭けて戦いを止めようとしたのに…、結局止めたのは…ディーノだった…っ」
再び膝を付き、尚も泣き続けた。
「私は父さんを裏切ったのに…結局はまた父さんに頼ってしまう。だから…だから…っ」
ギュッ
包まれた温かい体温。目を見開くと、バランはエルダを抱き締めていた。
「と…とう…さ…」
「…もう良い、お前の気持ちは分かった」
「で…、でも…」
尚も言い続けようとしたエルダを、バランはより強く抱き締める。
「お前は昔からそうだ。私に謝る事があれば一人で泣き、ただひたすら謝る…いつまでも泣いている…」
「っ、え…?」
「私も済まなかった。ディーノを取り戻す為とはいえお前の記憶を消し、揚句の果てには命まで奪ってしまった…」
「だってそれは、私が決めた事だから、…父さんはただディーノを!」
体を少し離して顔を見ると、バランはそっとエルダの涙を拭った。
「お前の元気な姿をまた見られて、よかった…」
「と…さ…、父さんッ!!」
バランに抱き着いて泣き叫ぶエルダ。
泣くエルダを慰め続けるバラン。
その光景を、他のメンバーはただ静かに眺めていた。
.
皆から少し離れた崖の上、そこに互いに背中を向けるダイとバラン。
だが二人は、一言も話さずにいた。
他のメンバーはそんな状態の二人をただ見守り、まだ少し目の赤いエルダも何も言わずに見ていた。
「エルダ…、大丈夫?」
エルダが心配になったのか、マァムが声を掛けると、エルダはハッ、と我に返ってマァムを見た。
「な、何?」
「何じゃないわよ、らしくないわね」
マァムがそっとエルダの目を触ると、少しの涙が零れた。
「また泣いてる」
「あ…ほ、本当だ。やだな随分ネジ緩んじゃったみたい…っ」
慌てて涙を拭い、心配そうな表情のマァムに笑い掛けた。
「あの二人が、ああやって話し合う事が嬉しくて…」
「エルダ…」
「少しでも、母さんの願いが叶ってよかった」
寂しそうに笑うエルダ。そんな彼女を励まそうとレオナは違う話を持ち出した。
「ねえ、エルダやダイ君のお母さんって、どんな人だったの?」
レオナの言葉に一瞬エルダはたじろくき、俯いた後、空に浮かぶ太陽を見た。
その時、ダイは同じ質問をバランにしていた。
「俺の…俺やエルダの母さんってどんな人だったの…?」
「…エルダから聞かなかったのか?」
「うん…」
ダイの小さな声に、バランも太陽を見上げた。
「…母、ソアラか」
「太陽みたいな人だった、いつも優しくて、笑顔で、心が強くて、温かい人だった…。私の…理想だった」
「ただそこにいるだけで皆が温かい気持ちになれる、そんな不思議な輝きに溢れていた…」
母、そして妻であるソアラを語るエルダとバラン。
そして、二人が動く気配に気付いたエルダは周りにいた者達を見た。
「皆、気を付けて」
「エルダもね」
マァムの言葉にエルダは頷き、飛び立つダイとバランの後を追った。
.
死の大地の海底に潜り、大魔宮の入口の“魔宮の門”を探し始めた。
暫く探し続けていると、魔宮の門を発見したが、その門の前にいたのは僧正のフェンブレンがいた。
門に立ち尽くす僧正にエルダは剣を構えるが、それは前に出たバランに止められた。
《この場は任せろ、奴の狙いはこの私だ》
《え?》
《それに、手負いの敵ごときに手間取ってはおれんからな》
バランは二人にそう言い、剣を抜き始めた。
しかし、妙に落ち着いているフェンブレンにダイは疑問を持っていると、奴は魔法力を放出し出した。
《危ない!何か企んでるっ!!》
ダイがバランに告げた途端フェンブレンはバギクロスを放ち、その呪文でバランは剣を吹き飛ばされてしまった。
フェンブレンの隙を付いてバランは離れた剣を取ろうとしたが、そこには先回りしたフェンブレンがバランを待ち構えていた。
《父さんっ!》
《やめろおおおっ!!》
直撃を受ける前にダイが飛び出し、フェンブレンにアバンストラッシュを放つ。
その攻撃にフェンブレンは真っ二つになって爆発し、バランは無事に済んだ。
《それがお前の剣か…見事だ》
剣を手に持ったバランはダイの剣を見つめ、二人に駆け寄ったエルダを見た。
《我等の秘剣を持ってすれば、いかな魔宮の門といえども必ず破れる筈、行くぞエルダ、ダイ!この一撃に力の全てを込めろっ!!》
《はいっ!!》
《よおしっ!!》
三人は竜の紋章を発動させ魔宮の門目掛けて最大の一撃を放った。
その一撃に門は砕かれ、内部に突入すると、そこにはハドラーの姿があった。
「ハ、ハドラー…!?」
「正気か?一人で来るとは…」
現れたハドラーの姿にエルダは驚愕し、バランは睨みながらも告げた。
「…さあ、早く始めよう、俺には時間が無い」
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