本編
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バラン激闘後、ダイ達は休息を取る中、未だにエルダだけは目を覚まさなかった。
「エルダ、大丈夫かな…?」
もう一つのベットで横になりながらエルダを見るダイ、そんな彼にヒュンケルは声を掛けた。
「心配いらんだろ、エルダはお前と同じ竜の騎士なんだからな」
「…うん」
そう言われるがやはり心配するダイ、そんな彼を見てヒュンケルは小さく笑った。
「どうしたヒュンケル?」
「いや…今のダイの顔を見たら、出会ったばかりの頃のエルダを思い出してな…」
不意に笑ったヒュンケルにクロコダインが質問をすると、ヒュンケルは小さく呟き、ダイはその話に嬉しそうに食い付いた。
「ねえねえ!エルダの小さい頃ってどんな感じだったの!?」
食い付くダイ。そんな彼に笑いながら、ヒュンケルは幼い頃を思い出していた。
.
エルダと初めて会ったのはヒュンケルがアバンに弟子入りしてから数年が経った時の事だった。
アバンに連れられた少女は室内に入るとすぐに隅に座り込み、ただ何もせずに俯いていた。
アバンはあの手この手でエルダを元気付けようとしたが、全て失敗に終わった。
とある森。そこで剣の訓練をするアバンとヒュンケル
エルダは二人から離れた場所で座りながら、その光景を呆然と見ていた。
ガサッ
物音に気付いて後ろを振り向くと、そこには一匹のスライム。
スライムはエルダを、エルダはスライムをじーっと見つめていた。
「…あ」
ふとある事に気付いた。スライムは怪我を負っていた。
エルダはゆっくりとスライムに近寄り、ホイミを駆けると怪我は治り、スライムは嬉しそうに跳び跳ねて去ってしまった。
それを小さく笑いながら見ていると、ヒュンケルがアバンに投げ飛ばされていた。
「ぐあっ!」
「まだまだ爪が甘いですね」
投げ飛ばされたヒュンケルは切り傷を抑えながらアバンを睨み付けた。
「くそ…っ」
「まあ、今日はこれくらいにしましょうか」
アバンがヒュンケルに回復呪文をしようとした時、彼の傍にエルダが寄り、ヒュンケルが傷付いた場所に手を置いた。
「お前…何を」
ポウ
エルダはヒュンケルにホイミをし、彼が傷を付けた場所は綺麗に治っていた。
「おや、エルダは回復系の呪文が使えるんですね」
「うん…」
「では、これからはエルダに回復役をお願いしますかな」
「なっ、何だと!?」
アバンはエルダの回復呪文を見て決めてしまうと、すかさずヒュンケルが反論した。
「おや?嫌なんですか?」
「それは…」
「…ごめんなさい」
二人の言い争いに、突然エルダは小さく呟き、再び離れた場所に座って俯いた。
そんなエルダを見て、アバンはため息を付いた。
「駄目じゃないですかヒュンケル。エルダは貴方の妹弟子なんですから、優しくしてあげなくては」
「お、俺のせいなのか!?」
「貴方が反論するからでしょう?さ、エルダを慰めてあげなさい」
アバンはそう言ってさっさと歩き出し、ヒュンケルは彼に苛立ちを感じながらもエルダを見た。
相変わらず俯いたままで、彼女の顔は見えず仕舞い。
ヒュンケルは暫く考えた後立ち上がり、エルダの横にドカッ、と座った。
その音にエルダは驚いて顔を上げてヒュンケルを見ると、彼は腕をエルダの前に出した。
「治せ」
「…え?」
「さっきのじゃ、足りなかったから…もう一回治せ」
決してエルダの顔は見ようとせずに、腕を出していると、エルダはそっとヒュンケルの腕に触れ、怪我を負った部分にホイミを掛けた。
そして治った事を確認すると、ヒュンケルに小さく声を掛けた。
「あの…」
「また、頼むな」
「え?」
ぽつりと呟いたヒュンケルの言葉に目を丸くすると、ヒュンケルはエルダの頭にポン、と手を置いた。
「俺がまた怪我した時は、治してくれよ」
その言葉にエルダは呆然としていたが、ゆっくりと頷き、ヒュンケルは彼女の頭を撫でた。
「ありがとな」
初めて見せてくれたヒュンケルの笑顔に、エルダもゆっくりと笑顔を作った。
互いに笑い合う二人を、アバンは離れた所からこっそりと眺めていた。
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「出会ったばかりのあいつはあまり感情を出さなかった。恐らく人間を怖がっていたのだな」
「へえ~、そんな事が」
「想像が付かんな」
昔の事を話し終えたヒュンケルの言葉に、ダイは笑いながら呟き、クロコダインは腕組みをした。
そんな二人の言葉を聞き流しながら、ヒュンケルは目を暝った。
あの出来事から、エルダは少しずつ感情を表にし、よく笑うようになった。
そんな笑顔をいつまでも見ていたくて、俺はいつも彼女の側にいた。
でも、アバンを殺そうとして失敗した時、真っ先に心配したのはエルダの事だった。
あの時側にいた彼女は俺の行動に顔を青ざめ、今にも泣きそうな表情だった。
魔王軍に入り、軍団長となり、アバンの使徒を討つ時も、俺はお前を忘れた事は片時もなかった。
そして再び再会した時、俺は直ぐにお前に気付き、お前も俺に気付いてくれた。
お互い成長し、あの頃のような姿でもない。それでもお前が俺を忘れていなくて良かった。
俺の想いは今も変わらない。
お前は、俺が初めて護りたいと思った人だから。
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