本編
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ラーハルトの死
エルダは彼の亡骸を抱きながら号泣した。
「ごめん…なさい…っ、ラーハルト…私…、私達のせいで…っ」
泣き喚くエルダにヒュンケルもポップも何も言わずに、ただ彼女を見ていた。
「ごめ…っ、本当にっ…」
ゆっくりとラーハルトを地面に寝かせ、彼の両手に自分の手を添えた。
「止めるから…絶対に父さんを止めるから…っ」
彼の手を握って涙を拭い、その場に立ち上がった。
「おい…エルダ」
「大丈夫」
ポップの心配そうな声を遮り、前を見据えたままエルダは答えた。
「思い出したから…全部。だから今は、何も」
ポンッ
拳を握り締め、震えながら話すエルダの頭に、ヒュンケルの手が乗せられた。
「ヒュン…」
「行くぞ」
決してエルダの顔を見ようとせずにヒュンケルは短く呟き、ポップを支えながらダイ達の元に向かった。
エルダはもう一度ラーハルトを見つめ、ギュッ、と拳を握り、ヒュンケルの後を追った。
.
テランに向かったエルダ達。
調度その場に到着した時、バランはレオナ向けてライデインを放ち、ヒュンケルはラーハルトの槍を投げて攻撃を防いだ。
ザッ
「どういうつもりなのだ!!ラーハ…」
バランは後ろを見て驚愕した。
そこに立っていたのはラーハルトの鎧を纏ったヒュンケル。ボロボロのポップを支えていたエルダだった。
「ポップ君、エルダも!」
「生きていてくれたか…ポップ」
「なんとかな…だけどよ、竜騎衆は全員キレイに片付けてきたぜ…」
「馬鹿なッ!!でたらめを言うな!!」
「でたらめではない、そうでなくては俺達がこの場に現れる訳があるまい」
ヒュンケルの言葉にバランは黙り、ヒュンケルが纏った鎧とエルダを見た。
バランの視線にエルダは辛そうにそらし、その表情で彼等が言った事が本当と確信し、再びヒュンケルを見た。
「そうか、お前はラーハルトを倒し、鎧を奪ったという訳か…」
「違う…、これはラーハルト自らの意志で俺に委ねられた物だ。奴はお前やエルダの事を俺に託し、死んでいった。これはいわば奴の忘れ形見だ!」
ヒュンケルの言葉にエルダは顔を俯かせ、そんな彼女をポップは慰めた。
「嘘を付け!あのラーハルトが、人間などに心を開くものかッ!!」
「バラン…お前の悲劇はラーハルトから聞いた。エルダやダイの母、ソアラがアルキードの王女であった事も…人間の手によってその命を奪われてしまった事も…」
ポップとエルダの方に駆け寄ったレオナはエルダを見ると、彼女はヒュンケルが言った言葉に驚いていた。
「お前が二人の父親を名乗るなら、かつて幼いエルダに接したようにダイにも接するべきだ!それをきっとソアラも願っている筈だ…」
「父さん…」
そっとバランに近寄り彼の手を握るエルダ。
その時、バランから異様な威圧感を感じた。
「父…さん?」
ガシッ
バランはエルダの手を掴み、彼女を城壁向かって投げ飛ばした。
「ぐっ!」
「エルダ!?」
「ならば捨てよう…、この人の心と体を!」
バランは左目に付けていた竜の飾りを取り、それを握り締めた。
「お前等がいかにキレイ事を並べてもソアラは生き返りはしない!今やエルダとディーノと共に人間を滅ぼす事のみが私のたった一つの望み!生きる支えなのだ!それが叶わぬならいっそ死んだ方がマシよ!!」
飾りを握った手から血は青い魔族の血に変わり、バランは己に向かって落雷を落とした。
するとバランの姿が変化し、魔獣のような姿に変わってしまった。
「これが竜と魔族と人の力を合わせ持った竜の騎士の最強戦闘形態、竜魔人と呼ばれる姿だ!!」
竜魔人の姿に皆は驚愕し、エルダ痛みを堪えながらバランの名を呼んだ。
「と…っ、父さん…」
エルダの声にポップは彼女に駆け寄り、彼女と城の中に逃げようとした瞬間、ポップは背後から肩に攻撃を受けた。
「ポップ君!」
倒れるポップをエルダは支え、バランを見ると、バランはヒュンケルとクロコダインをボコボコにしてレオナをバギで吹き飛ばした。
「クロコダイン!ヒュンケル!!」
「このままじゃ…全滅しちまうっ…!」
その時、二人の背後に誰かが現れた。
バランは上空に上がり、強力呪文を放とうとしたが、それは放たれなかった。
見つけてしまったからだ。
ポップとエルダの前に現れた人物は呆然とバランを見上げていた。
それはバランのもう一人の子、ディーノだった。
.
城の中にいたはずのダイは回りの声も聞こえないように、ただバランだけを見ていた。
「ディーノ…」
ダイの姿を見たバランはゆっくりと地上に下り、ダイを直視した。
「ま…待って父さん!」
ギンッ
ダイの前に立って止めようとしたが、初めて睨まれた父の視線にエルダは何も言えなくなってしまった。
「…おじさんなの?僕を呼んだのは」
「そうだ」
「おじさんは誰?」
「私は…お前の父親だ!」
その言葉にダイは少し怯え、側にいたエルダにしがみつき、そんなダイにエルダは寄り添った。
怯えるダイにバランは紋章を輝かせると、ダイとエルダの紋章も共鳴の様に輝き出した。
「解る…解るよ!おじさんは嘘を付いていない!」
「その額の紋章が私達を繋ぐ無言の絆。姿形は違えども我等は親子だ。私はお前の父さんなのだよ」
「父さん…」
ダイがフラッ、とバランに寄ろうとした時、それを止めたのはポップだった。
ポップはダイを渡さんと彼を抱きしめるが、バランは聞く耳持たぬようにポップに迫った。
ドンッ
ダイからポップを突き離したのは、エルダだった。
「エルダ…てめえ!」
ポップは彼女に文句を言おうとしたが、彼女は何故か震えていた。
「ようやく解ったようだな…さあエルダ、ディーノと共にこちらへ」
エルダに手を差し延べ、ダイは嬉しそうに彼女の手を握るが、エルダの表情は何かを決意した目だった。
「お姉ちゃん…?」
フワッ
エルダはダイを抱き締め、自分のアバンのしるしをダイに渡した。
「私のアバンのしるし、持っててね」
「え…何で僕が?」
「いいから…無くさないでよ!」
エルダはダイをポップの方に突き飛ばし、バランに向かった。
「馬鹿め…!今更何をするつもりだ!」
「エルダ!やめろ!!」
ダイを受け止めたポップが叫ぶがエルダは止まらずにバランに向かう。
エルダはコートを外してバランから注意を逸らし、彼の両耳を背後から掴んだ。
「ま、まさかあれは…!メガンテ!?」
レオナは構えに気付き驚愕の声を上げた。
バランはエルダの手を振り払おうとしたが、指先に込められた全生命エネルギーの為、抜ける事はなかった。
「バ、馬鹿な…!何を考えている!そんな事をすればお前も!」
「構わない!私は父さんをあの世に連れて行く!!」
「おのれ…っ!実の親を殺すというのか!?」
「私に父さんは殺せない。だから…だから私も一緒に死ぬの!」
「やめろ!離せ!」
バランはエルダを振り払おうとするが、エルダは指先の力を強めて防いだ。
バリバリッ
「ぐああッ!」
「最初からこうするべきだったのよ。そうすれば彼も…ラーハルトも死なずに済んだ!」
「エルダ!止めろっ!」
「お願いエルダ!そんな事しないでッ!」
必死に彼女を止めようとヒュンケルやレオナが声を上げるが、エルダの気持ちは変わらなかった。
エルダは倒れているレオナ、ヒュンケル、クロコダインを見て、最後にポップに支えられているダイを見た。
「ディーノ…いえ、ダイ…」
「あ…ああ…」
「短い間でも…貴方の成長を見れてよかった。立派になってよかった…っ」
涙を流しながらダイを見るエルダ。ダイはじっと彼女を見ていた。
「母さんや、私の分まで…幸せになってね…」
エルダはそう言い、指先のエネルギーを強めた。
「やめろっ!エルダ!!」
「うああああーー!!」
メガンテ!!
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