本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ヒュンケルが大好きだった。
初めて出来た人間の友達、そしてあの人とは別に兄と慕っていた。
彼自身も、私を妹のように慕ってくれたし、面倒も見てくれた。
だから私は彼に約束した。
『ヒュンケルが危ない時には、私が絶対に助けてあげるから』
私は今でも覚えているよ。あの時の約束を。
.
バルジ島にいるレオナ姫を救出するために島に乗り込んだダイ。ポップ。マァムそしてパプニカの老剣士、バダック。
四人はそれぞれ炎魔塔、氷魔塔に別れて塔を壊そうとするが、そこには他の魔王軍の軍団が待ち受けていた。
炎魔塔にいるダイとバダックは妖魔士団、魔影軍団の攻撃に絶体絶命の危機におちいった。
そして妖魔士団がダイ達に襲い掛かろうとした時、何処からか落ちてきた巨大な岩が魔法使い達を踏み潰した。
「だ、だれじゃっ!?とんでもない真似をする奴は!?」
妖魔司教、ザボエラが叫ぶと、岩山の朝日の中から現れたのは、獣王・クロコダインだった。
「き、貴様!どこえ雲隠れしたのかと思ったら!アバンの使徒どもに助太刀とは気でも狂うたか!!?」
「あまりに多勢に無勢なのでちと見かねてな」
「な…なんじゃと!!お前等!まずこの裏切り者から片付けてしまえっ!!」
ザボエラの命令に魔法使い達やさまよう鎧達がクロコダインに迫った。
「片付けるだと?笑止!!」
クロコダインは岩山から飛び降り、次々に敵を薙ぎ払った。
「貴様等雑兵にーーー!!この獣王が倒せるかっ!!」
クロコダインはダイ達を庇うように立ち、魔法使い達のメラを受け止めようとした。
「ヒャダルコ!!」
背後から聞こえた呪文に魔法使い達は凍らされ、ダイが後ろを見ると、そこには姉弟子であるエルダがいた。
「エルダ!無事だったんだね!」
「この通りよ」
エルダに駆け寄るダイに笑い掛け、彼女は身構える。その時、ダイはポップとマァムの事を思い出した。
「そうだ!ポップとマァムが危ないんだ!ハドラーが…!!」
「大丈夫よダイ君。氷魔塔には彼が向かっているわ」
「え?ま、まさか…!?」
.
ハドラーの強力な攻撃にポップとマァムは絶体絶命の危機に落ち入った。
ハドラーはマァムを氷魔塔目掛けて投げ付け、その光景にポップは青ざめた。
「マァムーー!!」
マァムが氷魔塔に突き刺さる寸前、塔が次々と崩れ落ちていった。
崩れ落ちた氷魔塔の残骸の中でハドラーはあるものを見て驚愕した。
それは、鎧に身を包んだ死んだ筈のヒュンケルが、マァムを受け止めていた。
気が付いたマァムはヒュンケルが生きている事に喜び彼に抱き着く。
「何故だ!?貴様は地底魔城の崩壊に巻き込まれて死んだ筈…!」
ヒュンケルの生に、ハドラーは驚きを隠せずにいた。
「そう、俺は死んだ。…筈だった。だが俺は二人の人物によって死の寸前で救われたのだ」
地底魔城のマグマの海。真空の斧で空間を作り、中に入ったクロコダインが見たものは、気流に覆われていたヒュンケルとエルダだった。
クロコダインは気流が消える前に二人を抱え、その場から脱出した。
とある山脈。そこで目を覚ましたヒュンケルは自分が生きている事に驚いた。
「こ、ここは…クロコダイン…!?生きていたのか!?」
「鋼鉄の体だけが俺の取り柄だからな。それに、お前の部下の手当ても良かった」
「ば…馬鹿な…俺はお前を殺そうとしたんだぞ…その俺を何故…!?」
痛みに堪えながらゆっくりと起き上がり、クロコダインを見る。
「お前が俺の手当てを命じたのも武士の情け。情けには情けをもって答えねばならん」
そしてクロコダインは自分の背後を見た。
「それに、お前を助けたいと思っていたのは俺だけではないようだったのでな」
「?」
クロコダインの言葉に彼が見ている方向を見ると、そこにはヒュンケルと同じように体に包帯を巻かれ横たわるエルダの姿があった。
「エルダっ!?」
ヒュンケルは直ぐさま彼女に駆け寄り、彼女が生きている事を確認すると安堵した。
「こいつに感謝するんだな、こいつがバギのような気流でマグマを防御しながらお前を護っていたんだ。こいつがいなければお前は黒焦げだったろう」
自分が負った傷や包帯を見ながらヒュンケルは奮え、エルダの手を握った。
「…武士の情けというなら、このまま放っておいてくれれば良かったのだ…」
奮えながら涙を流し、エルダの握っている手に力が入った。
「俺は自分の弱さを棚に上げて師を恨み、人間をうらみ続けてきた…いっそ死ねば罪を精算できたものを…こうして…おめおめと生き恥をさらしているとは…!」
その時、ヒュンケルの握っていたエルダの手が、力なく彼の手を握り返した。
それに気付いたヒュンケルは驚いてエルダを見ると、彼女はゆっくりと目を開けた。
「…ヒュン…ケル?」
「エルダ!大丈夫か!?」
ヒュンケルが生きている事を確認したエルダは、彼に向かって力無く笑った。
「よかっ…た…無事…で…」
「何故俺を助けた…!?俺は、お前達を…!」
「…だから…」
まだハッキリと意識が覚醒していないエルダは、途切れ途切れに話し出した。
「約束…守っ…たから…だから…助けた…の」
そう呟き、エルダは再び意識を失った。
幼い頃約束した二人だけの秘密、その約束にヒュンケルは強く拳を握った。
そんな二人を見ながらクロコダインはヒュンケルに話し掛けた。
「ヒュンケルよ、俺は男の価値というのはどれだけ過去えのこだわりを捨てられるかで決まると思っている」
クロコダインの言葉に、ヒュンケルは黙って耳を傾けていた。
「たとえ生き恥をさらし、万人にさげすまれようとも己の信ずる道を歩めるならそれでいいじゃないか」
その言葉にヒュンケル目を見開いた。
「俺は、ダイ達に加勢しに行く!それが武人の誇りを思い出させてくれたあいつらに対するせめてもの礼よ!!」
そして去ろうとするクロコダイン。しかしそれをヒュンケルが止めた。
「お前の言う通りだクロコダイン…、死んで済む程俺の罪は小さいものじゃなかった…!」
立ち上がりながら自分の包帯を破いていく。
「それに、お前とマァムは俺の為に泣き、エルダは命を掛けて俺を護ってくれた…。それに報いるためにも俺は…俺は…!!」
包帯を破り捨て、バッと立ち上がった。
「戦い続けなければならないんだ!!」
「ヒュンケル…!」
その時、ヒュンケルの闘気に引かれた鎧の魔剣が現れヒュンケルは鎧に体を包み再び戦う事を決意した。
.
魔道子達に身構えていたその時、背後の氷魔塔が崩れ落ちた。
「やったな、ヒュンケル」
「やっぱり、ヒュンケルが!!」
クロコダインから出た名前にダイは喜び、エルダはダイを見た。
「ダイ君は中央塔に急いで。炎魔塔は私とクロコダインが砕くから」
「うんっ!」
「フレイザードをぶちのめしてやれ!!」
クロコダインの掛け声に、ダイは中央塔目掛けて飛び出した。
.