本編
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懐かしい夢を見た。まだアバン先生やヒュンケルと一緒に修行していたあの頃。
私はまだ未熟で、全然修行に付いていけなかった。でも、先生やヒュンケルがいたから辛くはなかった。
ヒュンケルが先生に刃を向けた、あの日が来るまで。
ねえヒュンケル。
貴方は今でも先生を恨んでいるの?
「う…っ」
ひんやりと冷たいモノが顔に触れ、エルダは目を覚ました。そしてボンヤリとする視界の先に、眩しいほどの銀髪が見えた。
「気が付いたか、エルダ」
そこには、ヒュンケルがいた。
「ヒュン、ケル…」
エルダは痛む右腕を押さえながらゆっくりと起き上がり、辺りを見回す。辺りは薄暗く、どうやら洞窟のようだ。
「此処は…?」
「不死騎団の本拠地、地底魔城だ」
「…右腕」
「止血はした」
手当てされ、包帯で分厚く巻かれた右腕。エルダは未だハッキリとしない思考回路で、これまでの経緯を思い出す。
廃墟と化したパプニカの神殿でヒュンケルと再会し、かれが魔王軍の軍団長と名乗り、“正義が敵だ”と言って襲い掛かって来た事。
その圧倒的な強さにエルダ達は手も足も出なく、そこに現れたのはダイと死闘を繰り広げた獣王・クロコダイン。
彼はダイを逃がそうと行動するが、クロコダインはヒュンケルに捩り刺され、それを止めようとした時、ヒュンケルから攻撃を喰らい意識を手放した。
そして気付いたら此処にいた。しかし、ダイ達の姿はない。
「…、ダイ君達は何処!?」
「クロコダインのガルーダで逃げたさ」
ヒュンケルは興味が無さそうに、マントを揺るがしながら言った。
「追わないの?」
「人質がいるだろう?」
肩越しに振り返ったヒュンケルは、見た事もない笑みで言う。
「私…?」
「あと、もう一人の女を牢屋に入れてある」
もう一人の女。その言葉で思い浮かぶのはマァムしかいなかった。
「マァムを牢屋に!?」
「心配するな。危害は加えていない」
そう言うヒュンケルに、取り敢えずホッと胸を撫で下ろすエルダ。
「弟は、見つかったのか?」
「…まだ」
突然の質問に少し動揺するエルダ。彼は、エルダの過去を知っている数少ない一人。
「なら、あんなガキ共に付き合ってないで捜せばいいだろう」
「それは…」
言葉が出ず、目を泳がすエルダにヒュンケルは目を伏せる。
「…傷が癒えたら此処を離れろ。人質はあの女だけで充分だ」
それだけ言うと、ヒュンケルは扉に手を掛けた。
「ねえっ、先生は!」
「俺には関係ない」
「でも!」
エルダの言葉をヒュンケルが遮るが、尚も食い下がらない彼女。
「ダイ達にも言った筈だ!俺の手で引導を渡してやれなかったのが残念なだけだ!」
「ヒュンケルッ!」
エルダの呼び止めも虚しく彼は扉を音を立てて閉めて部屋を去り、エルダはヒュンケルが出て行った扉を見つめ、静かに涙を流した。
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自分の負った傷を少しずつ回復していると、地響きの様に鳴り始めた雷鳴。そして周囲の魔力が高まっていくのを感じた。
「ダイ君達かな…」
その呟きは、雷鳴に掻き消される。この場所の何処かで、ダイ達とヒュンケルが戦っているに違いない。
「くそ…っ」
エルダは早く傷を直そうと集中する。だが彼女は回復系の呪文が得意でない為、中々上手くいかない。
すると突然、背後の壁が爆発し、何か煙から出てきた。
「な、何!?」
エルダは驚きつつも、取り敢えず構えると。
「エルダ?」
土煙の中、聞こえてきたのは聞き慣れた声。そこには埃だらけのマァムとゴメちゃんがいた。
「マァム!よかった。無事だったんだね!」
「エルダこそ!…って、どうしたのその腕!まさかヒュンケルに…!?」
彼女の右腕を見て驚くマァム。ゴメも心配そうに飛び回ってエルダの左肩に乗る。
「大丈夫だよ。それより何でここに?」
「!そうよ!これを聞いて!」
ゴメを撫でながら安心させる彼女に、マァムは持っていた手の平サイズの貝殻を渡した。
「何?この貝殻…」
「いいから!」
マァムの凄い剣幕に押されエルダは貝殻を耳に当てた。
そこから聞こえてくる言葉は、想像を絶する事だった。
「これは…!?」
貝殻から聞こえてきたのは十五年前の真実。エルダはこれでヒュンケルを止められると直感した。
「早く行きましょうエルダ!彼を止めないと!」
「ええ。絶対止めてみせる…!」
彼に真実を伝える為、二人は部屋を飛び出した。
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