本編
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パプニカで遭遇したかつてアバンの一番弟子であり、今は魔王軍の不死騎団長であるヒュンケル。
アバン流刀殺法を知り尽くしている彼にはダイのアバンストラッシュも通用しなかった。
倒れるダイにマァムとポップは我慢出来ずに助太刀し、エルダはダイを庇うように抱きしめた。
「そうか、4対1だな。ならばこちらも切り札を使わせてもらう」
「切り札!?」
ヒュンケルは鞘に剣を入れマントを脱ぐと剣を持ち上げた。
「俺は戦士ゆえ呪文は使えない。だから大魔王バーン様は俺に究極の鎧を下さった。あらゆる攻撃呪文を弾き返す最強の鎧をな!!」
「最強の鎧だと!?そんなもん何処にもねぇじゃねえか!」
「あるさ、お前達の目の前に…!!」
持ち上げた剣を顔前で止めダイ達に見せるような形を取った。
「鎧化(アムド)!!」
ヒュンケルが叫んだ途端鞘が変化し、次々に彼の体を包み、やがてそれは鎧へと変化した。
「剣が…鎧になった」
「そうだ。この魔剣そのものが究極の鎧なのだ。大魔王様から頂いた最強の武器であり、同時に最強の防具でもある」
一同が呆然とする中、エルダは小さく呟き、ポップとマァムはハッタリと決め付けて同時に魔法を放った。
「「メラミッ!!」」
二人の呪文は命中し、倒したと安堵した時、煙の中からヒュンケルがゆっくりと現れた。それも無傷で。
「き、効いてねえ…」
「それが限界か?」
「くそ!それならこいつだ!!」
ポップは意識を集中させてギラを放つ。だがヒュンケルはそれを受け止め、ポップに跳ね返してしまった。
「ポップ君!大丈夫!?」
「あ、ああ…、畜生!覚えたての呪文だったのに!」
壁に叩き付けられたポップにエルダが駆け寄り、彼はヒュンケルを睨んだ。
「分かったか、この鎧はいかなる攻撃呪文も受け入れない。まして、剣で俺に勝る者などこの世に存在しない。つまり、完全無欠という事だ!」
そんな中、マァムはヒュンケルに向かって武器を構えていた。
それを見たヒュンケルは慌ててマァムを止めた。
「よせ!女を殺すなど性に合わん!」
「馬鹿にしないでよ、女だって命を懸けるわ。正義の為の戦いなら」
「フン…、それがアバンの教えという訳か」
「そうよ!貴方も教わったでしょう!?先生は間違った人間には、絶対にそのアバンのしるしを渡したりはしない筈だわ!きっと貴方だって!」
マァムはヒュンケルの持っているアバンのしるしを指差し、彼はしるしを出した。
「これか?」
次の行動にダイ達は驚いたヒュンケルはアバンのしるしを戸惑いもなく捨ててしまったのだ。
「もう必要ない。それは元々アバンやその弟子を探り当てる為の手掛かりとして持ち歩いていた物。探り宛てて…俺の手で地獄へ送ってやる為にな!!」
一度言葉を区切り、ヒュンケルはエルダを見た。
「だが、未だにお前がいるとは思わなかったぞエルダ。もし知っていたら、即刻このしるしは捨てていただろうからな」
「ヒュンケル…」
辛そうな顔でヒュンケルを見るエルダに、彼は少し眼差しを変える。だが、話はすぐに戻された。
「何故、何故そんなにまで先生を憎むの!?」
「それは、それはアバンが…」
顔を俯かせる彼に四人は不思議な顔をし、意を決した様子でヒュンケルは告げた。
「アバンが…俺の父の仇だからだ!!」
それは、衝撃的な事実だった。
.
ヒュンケルは全てを語った。自分が魔物に拾われ育てられた事。
だが当時の魔王、ハドラーを倒す為に攻めてきた勇者であるアバンに倒された。
その時ヒュンケルを見つけた男が、アバンだった。
「その時俺は誓った!必ず力をつけこの男を討とうと!それゆえアバンに弟子入りし、剣を習ったのだ!その剣で…奴を殺すために!!」
ヒュンケルの話をこれ以上聞きたくないマァムは声を上げた。
「もうやめて!貴方の気持ちはわかるわ。でも…でも先生は…!」
「正義の為に戦ったとでも言いたいのか!?例え正義の為だろうと、その力が俺の父の命を奪ったことに変わりはない!それを正義と呼ぶなら…」
「正義そのものが俺の敵だっ!!」
何も言えなくなったマァムにエルダは口を噛み締めてヒュンケルを睨んだ。そして彼はダイを睨み付けた。
「止めを刺してやる!アバンに喰らわしてやるつもりだった、俺の必殺技でな!!」
ヒュンケルは兜の飾りを取る。するとそれは剣に変わった。そしてダイ目掛けて剣を構えた。
「喰らえッ!!」
ヒュンケルの放った技がダイに向かっていく。
「危ないっ!」
「ダイ!エルダ!!」
エルダは技が当たる前にダイを抱えて避ける。だが凄まじい威力に二人は倒れてしまった。
「ダイッ!エルダ!しっかりしろ!」
威力に巻き込まれたポップがよろめきながら二人に近付くと、まだ二人は生きていた。
それでも受けたダメージは大きく、二人はすぐには立ち上がれなかった。
「一気に心臓を貫かれれば楽に死ねたものを…避けたりするから苦痛を味わうんだ」
ヒュンケルは再びダイに剣を向けた。
「情けだ。介錯してやろう」
止めを刺そうとした時、マァムが魔弾銃を構えている事に気付いた。
そんな銃では勝てないと言うヒュンケルの言葉を無視し、マァムは魔弾銃を撃った。
向かってくる光線を二つに切るとそれは破裂し、ヒュンケルの前に大勢のマァムが現れた。
「こ、これは…!マヌーサか!?」
迫るマァムを一人一人切るが全て幻。ヒュンケルは目を閉じて神経を集中する。
すると後ろから攻撃するマァムの気配を感じ、ヒュンケルは彼女の腹をドスッと殴った。
「マァムっ!!」
倒れて気絶したマァムの名を呼ぶエルダ。倒れた事を確認するとヒュンケルは告げた。
「心眼を頼みに気配を探ればマヌーサに惑わされずに済む。当てが外れたな」
倒れたマァムを心配しつつこの状況をどうするかと考えていると、隣にいるダイがヒュンケルに向けてメラを放った。
「ダ…、ダイ君何を!?」
ダイの放ったメラはヒュンケルの顔面に当たった。だが、正式に当たった場所は彼の頬だった。
「か、かわされた…!?」
「こっ、小僧…許さん!!」
怒ったヒュンケルは剣を振り上げてダイに向かって行った。
「ダイ君逃げて!!」
ダイは何とかヒュンケルの攻撃を避けていく。だが本気を出したヒュンケルの剣裁きに、ダイの体はボロボロになった。
「このままじゃ…何か、何か手は…」
エルダが悩んでいると、ポップが何かを思い出した。
「そうだ…。ダイ!あの力だ!あの紋章の力を出すんだよ!!」
ポップの言葉にダイは怒り出そうと先程のアバンを侮辱きた言葉を思い出していく。だが、紋章が出る事はなかった。
「どうしたんだダイ!怒れ!怒って戦うんだー!!」
「怒れない…怒る事が出来ない…」
「何を企んでいるか知らんが、たった今つまらん小細工も出来んようにしてやる!!」
ヒュンケルはスッと手を上げると、それをダイに向けて何かを放った。
その力にダイは動けなくなり、そのまま宙に浮かせた。
「闘魔傀儡掌(とうまくぐつしょう)!!」
「うああああ!!!」
「この技は暗黒闘気によって相手の全身の自由を奪うこれでお前は俺の操り人形も同然!」
ダイは何とか逃れようとするが出来ず、ヒュンケルがクン、と指を動かすと、ダイの手から剣が落ちてしまった。
「ダ、ダイーー!!」
絶体絶命のダイに何とか助けようとするポップだが、思うように体が動かなかった。
「ダイ君…!」
同じように助けようと、エルダは力を振り絞って立ち上がった。
「今度こそ最後だ!死ね!ダイ!!」
「ぐうううっ!!」
「ブラッディースクライド!!」
剣技がダイに迫り、その光景にポップは目を閉じた。
「だめだッ…!!」
バキンッ!
「…っ!?」
ヒュンケルは一瞬我が目を疑った。そして目を閉じていたポップも、そっと目を開けた。
「な…、エルダ!」
ダイの前には中剣を構えて彼を庇うエルダの姿。その姿にヒュンケルは舌打ちした。
「エルダ…何のつもりだ?」
「ハア…ハア…うっ…!」
後ろで倒れたダイが生きているか確認し、安堵した瞬間膝を付いた。
持っていた中剣は砕け、右腕は受けたダメージで血だらけだった。
「エルダ!」
「馬鹿な事を、ブラッディースクライドを受けてただで済むと思ったのか?」
腕を押さえながら青ざめるエルダを見、ヒュンケルは剣を向けた。
「そこを退けエルダ。俺の目的はダイだ。お前ではない」
「…嫌だ」
痛みを堪えながらエルダはヒュンケルを睨み付ける。
「退けと言うのが解らないか?」
ヒュンケルは再度彼女に問うが、返答は変わらなかった。
「嫌だ…、私は二度と、兄弟弟子を失いたくない…」
ヨロヨロと立ち上がりながら拒否するエルダに、ヒュンケルは一瞬目を見開いた
「…ならば仕方あるまい。お前ごと、ダイを始末する!」
必殺剣の構えをしたヒュンケル。それにポップは慌ててエルダに叫んだ。
「エルダ逃げろ!殺されるぞ!!」
「ごめん、もう…体が言う事聞かないの…」
薄く笑いかけるエルダそんな彼女に向かってヒュンケルは必殺剣を放った。
「エルダーー!!」
思わず目を背けたくなる様な状況に目を潰るポップ。その時、大きな影が飛び込んできた。
「ば、馬鹿な…獣王、クロコダイン…!?」
「よう、ヒュンケル」
獣王の突然の登場に、エルダは力が抜けたようにその場に座り込んだ。
「クロコダイン…生きていたのか!」
エルダを庇った事と、生きていた事に驚くポップ。
「何の真似だクロコダイン!」
「フフフッ、見ての通りだダイ達は殺させん」
「馬鹿な!気でも振れたか!?」
驚くヒュンケルを尻目に、クロコダインは刺さったままの剣を握り、抜けないよう固定すると、持っていた魔法の筒からガルーダを出した。
「おい小僧!」
「うわわ、は、はい!」
「こいつでダイを連れて逃げろッ!」
「エエッ!?で、でも…」
クロコダインの発言に戸惑うポップはチラリとガルーダを見た。
「モンスターの中には俺の直接の命令しか聞かぬ奴らもいる。このガルーダもその一匹だ。今のお前達のレベルではヒュンケルには勝てん、逃げるのだ!!」
「で、でも…マァムが…」
気絶しているマァムを一度見、クロコダインはヒュンケルを見た。
「心配いらん。このヒュンケルという男、間違っても女に手を掛けるような奴ではない」
その言葉に顔を歪めるヒュンケル。
「あの娘は俺が何とかする!今はとにかくダイを逃がすのが先決だ!ハドラーの狙いはダイなのだ!」
それに口を塞ぐポップ。だがヒュンケルが黙っている筈がなかった。
「そんな事をみすみす見逃すと思うか!」
「俺とて魔王軍六団長の一人、いざとなればお前と刺し違えても…!」
「…無理だな。今のお前には刺し違える事すら出来ん」
ヒュンケルは刺してある剣に力を入れると、クロコダインの体から血が吹き出し、その光景にエルダは口を塞いだ。
「やはりな、いくら真新しい鎧を纏っていても俺には解る。お前は先の戦いでダイから受けた傷が完治していないのだ。そんな状態では鋼鉄の肉体も、ヒビの入った盾と変わらんわ!」
エルダはこれ以上この状態を見ていられず、力を振り絞って立ち上がり、彼の手を掴んだ。
「ヒュンケルやめて!これ以上…!」
「煩いっ!!」
ヒュンケルの叫びと同時に腹部に鈍い痛みが走り、エルダはその場に倒れた。
「エルダ!」
「お前にはするべき事がある筈だ。こんな所にいるな」
間近で聞こえたヒュンケルの声は、あの時のように優しかった。
バタッ
そしてエルダは意識を手放した。
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