本編
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クロコダインとの死闘後、ロモス王はダイ達にパプニカに渡る船を用意し、現在その船で航海中だ。
「ヒャッホ~ッ。いやあ爽快爽快!船を一隻ポ~ンと貸してくれるなんざさっすがロモスの王様!太っ腹だねえ」
晴れ渡る空の下、船の甲板でポップは空を見上げて上機嫌だった。
「それにこの船の速えこと速えこと、俺達がロモスに来る時使ったボロ船とは大違いだよな!な、ダイ?」
ダイは自分の島、デルムリン島をずっと見ていた。先程ブラスを島まで送ったが、ダイは別れをしなかった。
ポップは景気付けにダイを励まし、それにダイは元気を取り戻した。
「そうだよね…!俺達が頑張ればいいんだよね!」
「そーそー、おめぇには強い味方がついてんだからよ」
マァムの肩を抱きながら胸を張っていばるポップ。それを見てマァムは呆れた。
「なんつ~か、俺この間の戦いでこう、魔法使いとしてのグレードがグ~ンとレベルアップした感じよ」
偉そうに言うポップにダイとエルダは笑い、二人が暫く笑っていると、突然海上からモンスターが現れた。
「どぅわああぁぁ!!」
迫り来るモンスターにポップは叫びながらエルダの後ろに隠れた。
だがモンスターは船に触れた瞬間、手に火傷を負い、慌てて逃げてしまった。
未だに怯えているポップを見たエルダはため息を付いて彼に言った。
「グーンとレベルアップ、ね…」
すると、この船の船長が笑いながらダイ達に近寄った。
「はっはっはっは!心配いらんよ、この船はつねに聖水を流しながら進んでいる並のモンスターじゃ近寄る事も出来ん。たまに襲ってきてもさっきの通りさ」
「へえ~、リッチだな」
「それよりも船室へ来てくれ。パプニカへの航路を説明しよう」
そう言い、ダイ達を船室まで案内した。
通された部屋のテーブルには大きな地図が広げられており、それを囲むように集まり船長は話を始める。
「今、この辺りを航海している」
船長が指差したのは海のど真ん中、その下には先程ブラスを送り届けたデルムリン島があった。
「そしてここが我々の目指しているホルキア大陸。パプニカがあるのはここだ」
船長は指を滑らせ大陸を指差し、“パプニカ”という言葉に息を飲むダイ。
「しかし、何故パプニカに向かうのかね?他にも大きな国は沢山あるのに」
船長は他の国を指差し、説明しながら尋ねた。
「へっへっへ、そりゃあ憧れのお姫様を助けに行くんだもんな、な~ダイ?」
「べ、別にそれだけじゃないさ…!」
「お姫様?何の話それ?」
ポップの発言にダイは真っ赤になって慌て、マァムはその言葉に首を傾げた。
「ダイ君はパプニカのお姫様と知り合いなんだって」
「な、ダ・イ?」
「もう!やめてよ二人共!!」
マァムに笑いながら説明するエルダ。そして尚もからかうポップにダイは怒り出す。
「そうか。だが…よりによってパプニカのお姫様とはな」
ダイ達の会話を黙って聞いていた船長が顔をしかめ、ダイ達はその様子に静まり返る。
「何か、問題でも?」
気になったエルダは船長に尋ねると、船長は少しずつ話した。
「ホルキア大陸は15年前魔王の拠点だったらしい」
「え、ハドラーの!?」
「それゆえか、パプニカに侵攻しているのは魔王軍で最も恐れられている不死身の軍隊らしい…」
一瞬にして、その場が凍り付いた。
「レオナ…」
船長の絶望的な話を聞き、ダイは拳を握り締めて彼女の名を呟いた。
そして船はパプニカに向けて進んでいく。
.
「何、これ…」
目の前に見えるのは廃墟と化した港。人の気配は全くなく、ダイ達は最悪の事態を考えざるを得なかった。
「これが、風光明媚な事で名高いパプニカの港町とは…!?」
港は船が残らず壊されていて、城下町でさえ廃墟と化し、栄華を誇っていたであろう城の姿も見えなかった。
「船長!俺達が降りたらすぐに港を離れて下さい!」
それだけ言うと、ダイは船を降りて一目散に走り出した。
「ちょっと!ダイ君!?」
「ダイを追いましょう!」
三人も船を降り、慌ててダイを追った。
ダイを追う為に走り続け、ようやく三人が城が在ったらしき場所に辿り着く。だが、そこはもう瓦礫の山になっていた。
栄えていた形跡は微塵もなく、そこには呆然と立ち尽くしているダイがいた。
「ダイには悪いけど、生き残ってる奴はいねぇだろうな…」
絶望的な光景を目の当たりにして、ポップは言葉を失った。
「レオナ… レオナーー!! 」
瓦礫しか見えない場所で必死に姫の名前を叫ぶダイ。エルダもマァムも、自分達ではどうしようにも出来ない状況に非力さを感じていた。
そしてエルダは幼い頃の記憶を思い出していた。
彼女は滅びた国、数え切れない位の亡骸の中に一人でいた。
歩けれど歩けれど見えてくるのは動く筈のない者達。そこで必死に父と弟を捜していた。
今のパプニカは、その国に酷似している。
不意に蘇った忌まわしき記憶に、エルダは痛む頭を押さえた。
「エルダ、大丈夫か?顔色真っ青だぜ?」
「うん…大丈夫」
心配するポップにエルダは無理に笑ってごまかす。その時、目線の先の地面が少しずつ動き出した。
「待って!何かいる!!」
いち早くそれに気付いたエルダが叫ぶと同時に、地面の至る所から骸骨達が現れた。
「バ、ババババケモノ…!」
「こいつらね!不死身の軍隊って!」
驚くポップを尻目にマァムは船長の言っていた言葉を思い出す。そして骸骨達はダイ達に迫って来た。
「ちくしょう!やるしかねぇか!」
ポップの一声で彼は魔法の杖を、マァムは魔弾銃を、ダイとエルダは剣を構えた。
すると、骸骨達が一瞬にして吹き飛び、残ったのは一つの太刀筋。
突然の事に動揺しながらもエルダは剣閃が放たれた方向を見上げ、そして凍り付いた。
「何だ、あいつは!?」
ポップはエルダが一点を見つめている事に気付き、彼女が見ていた先を見ると、瓦礫の上に一人の剣士が立っていた。
「この太刀筋は…アバン流刀殺法、大地斬…!」
「それじゃああの人は…アバンの使徒!?」
ダイは太刀筋を見ながら技の名を口にし、マァムから発せられた言葉が、エルダには絶望的な響きに聞こえた。
瓦礫から降りてきた男。その男にエルダは見覚えがあった。
かつてのアバンの使徒であり、彼の命を狙った男…。
「ヒュンケル…?」
彼女は恐る恐る彼の名前を呼んだ。
「…エルダ」
そして、彼も彼女の名前を口にした。
それは…十一年ぶりの再会
.
突然現れた謎の剣士。それは、十一年前に別れた兄弟子だった。
「ヒュンケル…」
動揺しながら彼の名を小さく呟くエルダ。彼は無言で彼女を見ていると、ダイがヒュンケルに近寄った。
「あの、貴方も、貴方もアバン先生の弟子なんですか!?」
「…お前達は?」
ダイの言葉に目を向けるとダイはアバンのしるしをヒュンケルに見せ、そのしるしに彼の表情が変わった。
「そうか…確かに俺はアバンから剣を習った。アバンの弟子という呼び方をするなら俺は最初の一人という事になる」
「え!?じゃあ、一番弟子?」
「エルダが一番弟子じゃなかったのね」
剣を納めながら話すヒュンケルの剣を見て、ポップは少しの殺気を感じ、隣にいるエルダを見た。
久しぶりの兄弟子との再会なのに嬉しそうな顔をするどころかどこか戸惑い、全く彼を見ようとしない。彼女の様子を伺いながらも、ポップはヒュンケルの方を向いた。
「この国は、一体どうしたの?」
「魔王軍の不死騎団によって2日前に滅ぼされた…」
小さいヒュンケルの声にマァムは先程の骸骨を思い出した。
「不死騎団…あの骸骨どもね!」
「レオナは!この国の姫はどうなったか知りませんか…!?」
「…さあな、俺が知りたいぐらいだ」
ヒュンケルのその言葉。それにエルダは少しの不安を感じた。
マァムはヒュンケルに「一緒に戦おう」と手を差し延べ、彼がマァムの手を見たその時。
「ちょっと待った!」
ポップの声に、皆は彼の方を見た。
「やっぱりどうにも胡散臭いぜ、その男」
「何言ってるのよポップ」
「そうだよ。先生の弟子でなきゃ、大地斬が使えるわけないじゃないか」
ポップの否定の言葉にマァムとダイが彼に言い寄る。
「先生の弟子なら、俺達と同じアバンのしるしを持ってる筈だ!見せてみろ!!」
その言葉にヒュンケルを見ると、彼は首からアバンのしるしを出した。
「ほ、本物だ…」
「ほら見なさい!やっぱり私達の仲間じゃない!」
たじろくポップをマァムは一喝し、ヒュンケルはそっとアバンのしるしを下ろした。
「納得したらしいな」
「今は、一人でも仲間が欲しい時なんです。お願いします!ここにはレオナ姫はいなかったけど、魔王軍を倒して一緒にレオナ姫を捜して下さい!」
ダイは再び手を出し、ヒュンケルを見る。しかし彼はそれを見た後、突然笑い出した。
「な…何がおかしいの?」
笑い出したヒュンケルに疑問を出すマァムに、彼は笑いながらスッ、と手を上げた。
「お前達の頭の中があまりにもおめでたいんで笑ったのさ…!」
「な、何だと!?」
ポップが文句を言おうとした時、ヒュンケルは指をクイッ、と上げた。すると、先程の骸骨達が現れた。
「な、何だ!どういう事なんだこれは!?」
あっという間に囲まれ、ダイが否定の声を上げる。
「だから言っただろ!悪者なんだよやっぱり!」
「でもっ、アバンのしるしが…!」
「大方、偽物かなんかだよ!」
「偽物ではない!!」
ポップの声にヒュンケルは声を張って答えた。
「アバンの弟子全てが師を尊敬し、正義を愛する者ではないという事、中には暴力を愛し、その身を魔道に染めた者もいる。正義の非力さに失望してな!」
ダイ達は愕然とし、エルダは拳を握り、顔を歪めた。
「俺の名を教えてやろう。俺の名はヒュンケル!魔王軍、六団長の一人、不死騎団長。ヒュンケルだ!!」
ヒュンケルの言葉に一同は声が出ず、戸惑いながらダイが口を開いた。
「そんな…、先生の弟子が軍団長だなんて!!」
「やっぱり、さっきの大地斬は手加減してやがったんだな…!」
叫びながら襲ってくる骸骨達を倒すが、奴らはすぐに立ち直った。
「ゲエッ!?」
「別に手加減などしていない。こいつらは死を超越し甦った骸の兵士。粉々に砕かんかぎりは前進をやめないのだ」
追い詰められるダイ達を見ながら説明するヒュンケルに、エルダはまたしても顔を歪めた。
そんな彼女を見て、マァムが声を上げた。
「待ってヒュンケル!貴方知ってるの!?先生は、アバン先生は…殺されたのよ魔王軍に!貴方はそれでも魔王軍に味方するの!?」
叫ぶマァムに、ヒュンケルは興味なさそうに答えた。
「ああ、知っているとも。ハドラーに殺された。そうだな?」
「だったら!」
「ガックリきたよ」
ヒュンケルの言葉に、マァムは言葉を失った。
「まさか一度倒した相手に殺られちまうとはな…弟子作りなんぞにうつつを抜かして自らの修業を怠った証拠だ」
彼の一つ一つの言い草に、ポップとダイの表情が変わった。
「俺の手で引導を渡してやろうと思っていたのに、全く口惜しいわ」
次々と言い放つヒュンケルに、ダイの怒りが増していった。
「腹いせに弟子どもの始末を申し出てみればこのような小僧どもとは…拍子抜けもいいところだ。死霊達の遊び相手にはなるだろう。やれ!!」
合図で襲って来た骸骨達。だがそれはダイの放った大地斬で全て倒された。
「先生を、先生を殺すつもりだっただと!?たとえ誰でもそんな事を言う奴は許さないぞっ!取り消せ!!」
「ほう、面白い。取り消さないとどうするつもりだ?」
その言葉にダイはヒュンケルに大地斬。海波斬と喰らわせていく。だが、実力的にヒュンケルはダイの力を上回り、どんどん追い詰められてしまった。
ダイは最後の手段としてアバン・ストラッシュを放つだが、それも難無く防がれてしまった。
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