第一期
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アザディスタンの紛争後、刹那とヒカルは久しぶりに日本の滞在場所に戻った。
すると隣人の沙慈と、彼女であるルイスがマンション下で誰かと別れを告げていた。
荷物をタクシーに詰め終えると、沙慈は歩いてきた刹那とヒカルに気付いた。
「こんにちは」
「あ、こんにちは、沙慈…君?」
「うん、最近見掛けなかったけど、何処かに行ってたの?」
「そんなところだ」
余り彼と会わないヒカルは戸惑いながら佐慈の名前を口にするが、どうやら間違っていなかったようだ。
そして彼の簡単な問いに、相変わらず刹那は素っ気なく答えた。
「じゃーねー!」
「ママ…!」
タクシーに乗っていた女性がルイス向かって手を振りルイスは寂しそうに女性を見ていた。
刹那は黙ってその場を去ろうとしたが、それは沙慈に止められた。
「あ。ねえ突然なんだけど、今日時間あるかな?」
「何故だ?」
そう言って沙慈はルイスを見ると、彼女はいつまでもタクシーが去った方向を見ていた。
「ちょっとお願いしたい事があって…」
タクシーが去った方向を眺め続けるルイス、そんな彼女をヒカルは控えめに声を掛けた。
「あ、あの。ルイス…さん?」
まだ彼女と話した事のないヒカルは恐る恐る話し掛けると、ルイスはギッ、とヒカルに振り返った。
「あ、あの…」
「…貴方は?」
「わ、私はヒカル・エトワールです…」
睨まれて少しおどおどしながらも答えると、ルイスは再び前を見た。
「あの、何か?」
「さっきの人、あたしのママなの…」
「あ、はあ…」
「久しぶりに会えたのに、もう帰っちゃって…っ」
震え出したルイスにヒカルは少し後退りし、彼女から放れようとした途端。
「うああああ~ん!!」
泣き出された。
慌てて刹那や沙慈の方を向くが、刹那は相変わらず無表情で、沙慈は苦笑い。
そんな二人にため息を付きヒカルはそっとルイスの頭に手を置いて、撫で始めた。
「ごめんなさい、こんな事しか出来ないから…」
「う…っ、う…っ、うああああ~ん!!」
ルイスはヒカルに抱き着いて泣き叫び、ヒカルは少し驚きながらも、彼女の頭を撫で続けた。
一先ず沙慈の部屋に戻ってルイスを慰め続けるが、状況は変わらなかった。
「ああああ~ん!ママー!!」
ひたすらヒカルの胸で泣くルイス。沙慈は解っていたようにため息を付き、付いて来た刹那にも礼を言った。
「来てくれてありがとう、人数が多い方がルイスの気も紛れると思って。ヒカルさんもごめんね」
「私は別に、大丈夫だけど…」
ヒカルにはもう、ただ苦笑いしながら慰めるしか手段はなかった。
「そうでもないようだ」
「刹那!余計な事言わないでよ!!」
「あああああーん!!」
「あっ、もう…」
刹那の余計な言葉に更に抱き着く力は強まり、ヒカルはもう怒る気力も無くした。
「母親が帰ったぐらいで、何故泣く?」
「寂しいからよ!」
「会おうと思えばいつでも会える、死んだ訳じゃない」
「ああー!沙慈こいつ嫌い!叩くか殴るかしてー!!」
ヒカルから体を放して刹那に怒鳴るが、彼の態度にルイスは苛立ちが増した。
「ヒカルも何でこんな奴が恋人なのよ!?意味分かんない!!」
「いや、恋人ではないよ…」
いつの間にか呼び捨てな事は気にせず、苦笑いを続けていると、刹那の端末が鳴り出した。
その音にヒカルも顔付きを替えて刹那を見ると、彼は沙慈に用事が出来たと告げた。
一瞬こちらを見た刹那に小さく頷き、ヒカルはルイスを見た。
「ルイスさん、ごめんなさい。私も行かないと…」
「え、何で!?やだやだ!行っちゃやだ!!」
離すまいと抱き着く力を強め、それにまたため息を付くが、ルイスを一瞬抱き締めた後、彼女の顔を見た。
「お願い、大事な用なの…」
真剣なヒカルの顔。それにルイスは渋々と体を放した。
「ありがとう」
そう言って先に外に出た刹那を追おうとした時、不意にルイスに手を掴まれ、何かのメモを渡された。
「用事が終わったら、連絡してよ…」
「え?」
「待ってるからね!」
恥ずかしそうに言うルイスにヒカルは目を丸くし、直ぐに笑顔を向けた。
「うん、絶対に連絡するからね、ルイス!」
その笑顔にルイスも笑い、出て行くヒカルを見送った。
そして部屋の外にいる刹那から内容を聞いた。
「ユニオンと人革とAEUの合同軍事演習…」
呟いた声に刹那も小さく頷いた。
クリスティナからの連絡に先に合流ポイントに向かうヒカル。
刹那は寄る所があると言って彼女とは別行動をとった。
他のメンバーより先に目的地に着いたヒカルはGN粒子を展開して外装を岩と同体に変化させ、レクサスの全ての電源を切った。
「はあ…」
息を吐いてシートに寄り掛かり、ふと手の平に触れた物に目線をそちらに向けた。
そこには、ルイスから渡された連絡先が書かれた紙。
「友達…か」
書かれた連絡先に簡単にメッセージを入れて送り、紙を握り締めて目を閉じた。
―――どうしたの?
「…友達なんて、いたかな?」
―――いたけど、沢山とは言えない
「…そうなの?」
―――ええ、アナタはアタシといつも一緒だった
「…アタシ?」
―――そう、アナタとアタシはいつも一緒だった。そして
『ヒカル?』
不意に呼ばれた声に目を開け、電源を入れると、画面に刹那の顔が映し出された。
「刹那、早かったね、もう用事はいいの?」
『ああ…、それよりも、何をしていたんだ?』
「え?何もしてないけど」
『…いや』
短く答えて通信を切った刹那は、彼女の顔を見て少し驚いた。
ヒカルは、涙を流していた。
.
作戦が開始され、刹那、ティエリア、ヒカルの三人は指示された場所で待機し、ミッションの指示を待っていた。
ピピッ
『ミッションプランをB2に移行する』
「了解。レクサス、外壁部迷彩解凍、ミッションを開始します」
ティエリアからの通信に外壁の色を元に戻し、ロックオンとアレルヤの離脱路を作った。
そして直ぐさま二人と合流しようとしたが、背後から無数のミサイルが放たれた
「刹那っ!!ティエリア!!」
間一髪でミサイルから逃れたヒカルは直撃を受けた二人に声を掛けるが、続けざまにミサイルが放たれた。
「対応が早い…っ!」
次に放たれたミサイルを避け、動けない二人を心配しつつ、移動を続けながらミサイルを撃破していった。
だが一行に攻撃は止まず、それどころか強くなっていった。
「…っ、調子に乗って!」
レクサスをミサイルが放たれた方向に飛ばし、その先にいた数体のMSに攻撃を開始。
だが、別の場所からレクサス向けてミサイルが放たれ、慌ててそれを避けるがまた別の場所からも放たれた。
「うぐっ!」
GN粒子で何とか機体を防御し、少しずつ敵MSを潰していくが、千機近い数がある為増援はいくらでもやってくる。
「くそ、こんなの反則じゃないの…っ」
容赦なく放たれる攻撃に舌打ちをしながらも、ヒカルは迎撃を止めなかった。
レクサスを渡す訳にはいかない。
両親が作った形見ともいえる機体を。
自分達の欲望の為に使う者達には渡せない!
GN粒子を展開させながらヒカルは遠方にある基地らしき方向にレール砲を構えた。
「少しでいいのよ…この攻撃が止めば、それが出来れば離脱出来るっ!!」
限界までエネルギーを高め基地向けて砲を放った。
ドオオンッ!!
放たれた砲は基地手前にいたMSをも巻き込み、基地の一部分を破壊。
それによって少し乱れた隙を、ヒカルは見逃さなかった。
「うわあああっ!!」
レール砲を放ちながら接近し、近い敵を長剣や拳の砲で撃墜し、遠い方の敵はブーメランやレール砲で蹴散らし、直ぐさま近い位置にいるアレルヤとロックオンの元に向かった。
敵の攻撃を避ける為空高く上り、乱れた息を整えながらアレルヤとロックオンの位置を確認した。
「アレルヤ達がいる場所は…ここ。ミサイルが放たれている場所は…ここかっ…!」
敵の位置を確認し、レクサスはその場所向けて急降下した。
止む事のない砲撃の嵐の中で、アレルヤやロックオンの疲労ももはや限界に近かった。
「いつまで続くんだ、この攻撃は…ぐっ!」
GN粒子を放出しながら必死に攻撃が止むのを待つアレルヤ。
「飯ぐらい食わせろって…どわっ!!」
シールドで機体を防御しながら皮肉げに呟くロックオン。
ピピッ
『アレルヤ!ロックオン!』
不意に繋がった通信に右側の画面を見ると、そこにはヒカルの顔が映し出されていた。
「ヒカル…、無事だったか」
『時間がない、砲撃が止んだらすぐに二人共離脱して!』
「そんな事言われても、この分だと砲撃は当分止まないと…」
『私が今から敵の注意を逸らす、その間に離脱してよね!』
「ま…待てヒカル!お前まさか敵の中に…!」
ロックオンとの会話の途中ヒカルは通信を切った。
「…無事に離脱、してね」
通信を切った後、小さく呟き、ヒカルは上空から見える敵MSを視界に入れた。
「はああああーーッ!!」
ヒカルからの通信から数分後、砲撃は一時停止し、ロックオンはアレルヤに通信を飛ばした。
「アレルヤ!」
『ロックオン。砲撃が止んだけど、まさかヒカルが…』
「考えるのは後だ!今は早く離脱するぞ!!」
ヒカルの事を心配しつつも二人は離脱を開始したが、アレルヤの元には人革連のティエレンが、ロックオンの元にはユニオンのフラッグが接近していた。
作戦開始から15時間が経過し、ヒカルはもう気絶する寸前だった。
しかし、どうにも頑張って踏ん張ろうとするが、体はもう限界。
気を失う寸前まで陥ったヒカルは小さなナイフを取り出し、それで自分の足を刺した。
「ッ!」
その痛みに体を現実に戻し砲撃を続ける敵MSを睨んだ。
その時、上空から落ちて来たミサイルがレクサスの周りに落ち、そこから電撃が流れ出した。
「キャアアアッ!!」
流れ出した電撃はレクサスを通してヒカルに激痛を走らせ、身動きを封じられてしまった。
同時刻、離脱出来た刹那を待ち受けていたのはMAに乗った自分の最大の敵でもあるサーシェス。
奴はMAの性能を活かしてエクシアを落とし、MAから出した足でエクシアを囲ってプラズマ砲を放った。
「うわあああっ!!」
激痛に襲われる中、刹那は考え出していた。
…死ぬ、死ぬのか
この歪んだ世界の中で…
何にもなれぬまま…
…失い…続けたまま…
…朽ち果てるのか…
6年前に見たガンダム、そして、共に生き、共に歩んで、共に笑った
ヒカル
「 …ガン…ダム。 ガン…ダム…ッ!!」
呟きながら、手を上げるエクシア。
その時、赤い砲がMAを攻撃し、エクシアを解放した。
その方向を見ると、そこには赤い粒子を放つガンダムの姿があった。
「…ガン…ダム…っ、ガン… ダーームッ!! 」
再び助けてくれた神は、ガンダムだった。
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