CDドラマ・スペシャル
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西暦、2306年。
地球の化石燃料が枯渇し、人類は、新たなるエネルギー資源を、太陽光発電に委ねた。
半世紀近い計画の後、全長約5万㌔にも及ぶ、三本の軌道エレベーターを中心とした、太陽光発電システムが完成する。
半永久的なエネルギーを生み出す、その巨大構造物建造の為、世界は、大きく三つの国家軍に集約された。
米国を中心とした、世界経済連合。通称“ユニオン”
中国・ロシア・インドを中心とした“人類革新連盟”
新ヨーロッパ共同体“AEU”
軌道エレベーターは、その巨大差から防衛が困難であり、構造上の観点から見ても、酷く脆い建造物である。
そんな危うい状況の中でも各国家軍は、己の威信と繁栄の為、大いなる、ゼロサムゲームを続けていた。
そう、24世紀になっても、人類は今だ、一つになりきれずにいたのだ。
そんな世界に対して、楔を撃ち込む者達が現れる。
MS、ガンダムを有する。私設武装組織、ソレスタルビーイング。
彼等は、世界から紛争を無くす為、民族、国家、宗教を超越した作戦行動を展開していく。
ソレスタルビーイングが、世界に、変革を誘発する。
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CBの輸送艦。通称トレミーのブリーフィングルームに、一人の少年が入室して来た。
「呼んだか?スメラギ・李・ノリエガ」
「用がなければ呼んだりしないわ」
中にいたのはCBのリーダー的存在であり、戦術予報士である女性。スメラギ・李・ノリエガがいた。
「新たなミッションか?」
「そう。私が考案し、ヴェーダが推奨したこのミッションは、マイスターの中でも貴方にしか遂行出来ない」
「俺にしか出来ぬ…」
「潜入行動よ」
「単独ミッションか」
「エージェントからの報告によると、化石燃料輸出量規制監視機構の重鎮であるバリー・ハレヴィ氏が、テロ組織の標的になったらしいの。彼の動向一つで、原油産業は激変する。状況によっては、内戦や紛争を起こす国も出て来るでしょうね」
「つまり、その男の護衛をやれと?」
「いいえ、そちらの方は王留美達に任せてあるわ。貴方に担当して欲しいのは、バリー氏の愛娘で、現在国際留学生として日本に在住している、ルイス・ハレヴィさんよ。バリー氏の活動を制限させる為にも、彼女がテロの標的になる可能性が高いと私は見てる。むろんヴェーダもね」
スメラギの説明を、刹那は黙って聞いていた。
「刹那、貴方はルイス・ハレヴィさんの通うハイスクールに学生として潜入。対象者の護衛をやってもらうわ。他のマイスターは、貴方のバックアップに回します。出来るわね?刹那」
「ああ、勿論だ。それが紛争根絶に繋がるのであれば俺は、どんな事でもやり遂げてみせる。それがCB。それが、ガンダムマイスターだ。」
CDドラマスペシャル。
機動戦士ガンダムOO、アナザーストーリー。
MISSION-2306
機動戦士ガンダムOO、アナザーストーリー。
MISSION-2306
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キーンコーンカーンコーン
「この学校、設備は最新鋭なのに、何でチャイムだけはこんなに古めかしいんだろ?」
教室で自分の椅子に座りながら予鈴を聞く、沙慈・クロスロード。
その時、教室の扉が開き、一人の少女が入室して来た
「おはよう沙慈!」
「ルイス、おはよう」
入室して来たのは国際留学生であり、沙慈の彼女であるルイス・ハレヴィ。
彼女は教室に入るなり、沙慈に言い寄った。
「ねえねえ、聞いた沙慈?今日この研究室に、転入生が来るんだって」
「転入生?こんな時期に?」
「名前は、刹那・F・セイエイって言うらしいの」
「刹那?変わった名前だね」
その時、教室に見知らぬ少年が入室し、ルイスは彼を見た。
「あ、噂をすれば来たみたいよ。えへへ。ねぇ君、もしかして転入生?」
ルイスは黙って入って来た少年に、気軽に話し掛けてみた。
が。
「ちょりーっす!転入生の刹那でーす!よろしちょりーす」
「ちょりっす…?何それ?」
「三百年前に、一瞬だけ流行った挨拶だよ。ギャグとしても使われてたらしい」
「詳しいね、沙慈…」
「姉さんがそういうの好きでさ」
「あ、君等。もしかして~俺のクラスメイトになっちゃう~?なっちゃう訳?」
「え?ああ…うん…」
「よ、よろしく…」
「ありゃ、やっちった、やっちった~これ~これディスティニー。アハハ、ちょ待てよ。そんながん見すんなって!そういうの慣れてないてゆーか、俺は俺のままでいたいってゆうか~、ハハ」
「沙慈、この人何喋ってんの?」
「三百年前に、こういうウザイ人がいたって聞いた事ある…」
「ちょ何何何何何?俺の噂?俺の噂?注目されちゃってる?いやまいったな~。俺って~、ひっそりと皆の中に取り込みたかったっていうか」
「それ無理でしょ」
「アハハ、マジやべ。やっちゃった感じ?あ、なんかさ~、ま、出ちゃうんだよね。オーラ?みたいなの?あ~生まれ付いちゃってる~スキル?アッハハ、これやっべ」
「アハハ、沙慈。こいつ殴りたい」
「初日だから穏便に行こうよルイス!」
「アハ、言われちゃってるよ俺、マジやべぇ」
(ヴェーダの、用心警護マニュアルにあった、擬似人格。タイプR-35。果たしてこの性格設定は、内定調査に向いているのか?いや、今はそんな事よりも、ミッションに集中すべきだ。見た所…このクラスには不審そうな人物はいなさそうだが…)
刹那が頭の中であれこれと考えていると、教室の扉が開き、一人の男性が入室して来た。
「諸君。朝の挨拶。すなわち、おはようという言葉を慎んで送らせてもらおう」
入って来た金髪の男性は、そう言いながら皆に挨拶した。
「おはようございます。ハム先生」
「既に私は挨拶をした」
「解ってまーす」
「ん…?そこにいる君。ほ~う、君か。噂の着任者と言うのは。よくぞ来た!この私、グラハム・エーカーが、君の着任を歓迎しよう!」
「ちょりーっす」
グラハムの長ったらしい挨拶に、刹那はそれだけを言った。
「くっ!今なんと…」
「ちょりーっす!」
ちょりーっす ちょりーっす ちょりーっす ちょりーっす…
↑(やまびこのようにハム先生の頭内で響いた)
(な…なんという麗しさ…)
「少年、君の名は?」
「刹那・F・セイエイ君です」
「ちょりーっす」
「いい目をしている…」
「ちょりーっす」
「な、なんという魅力的な挨拶だ」
「うっざいだけです」
「ちょりーっす」
「…そうか、自己紹介がまだだったな。私の名はグラハム・エーカー。ご覧の通り軍人だ」
「教師です」
「ちょりっす!」
(あああ…う、奪われた…ああそうだ。奪われてしまった…)
「刹那・F・セイエイ。私は、君という存在に心奪われた男だ!」
グラハムが叫んだ時、もう一人、男性が入室して来た。
「アッハハ、なんてベタな台詞を入れてくるんだか」
「カタギリ先生」
「どうやらハム先生のいけない性癖が、臆面もなくまた表に出てしまったようだね。これじゃあ授業は出来そうにないな。よし、今日は自習にしよう」
「カタギリ先生話せる~う」
「皆~、ハム先生と転入生君に注目だよ~」
カタギリ先生の声に、皆は二人の方を向いた。
「少年、君の趣味は何だ?私はガンダムだ」
「ちょりっす」
「そうか、好きな食べ物はチョリソか。ますます気に入ったよ、少年」
「ちょりーっす」
「だが戦場ではこうはいかんぞ。覚悟しておけ!」
「ちょりーっす!」
「クランプ、後を付けろ」
「ちょりーっす!」
一人話し続けるグラハムにちょりっすだけ言う刹那。しかしその会話は。
「か、会話が、全く噛み合ってない…」
「それが、ハム先生の真骨頂さ」
一人きりになれる場所を探し、刹那は端末を開いた。
「ヴェーダを返しての暗号回線。待機中の、ロックオン・ストラトスへ接続」
暫くすると、端末にロックオンの姿が映し出された。
『よう、刹那。どうだった?ハイスクールの転入初日の感想は?』
「最悪に近いな」
『擬似人格、タイプR-35で行ったんだろ?想像は付くさ。それより状況は?』
「まだ何とも言えない」
『始めたばかりだからな。クリスに、ハイスクールのデータベースにアクセスしてもらったが、経歴に問題がありそうな人物はいないようだ。となれば、警護対象者は、学校以外の場所で襲われる可能性が高くなる』
「狙撃される可能性は?」
『それはないな。彼女を殺しては、バリー・ハレヴィへの脅しにはならない。彼女を誘拐し、石油輸出規制の緩和を促す。テロの目的はそんな所さ』
「私生活での監視となると俺一人では限界がある」
『彼女の恋人になっちまえよ。そうすりゃ、完全監視が可能だ』
「気が進まないな」
『CBに、沈黙は許されないぜ』
「…ああ、解っている」
『心配すんな。あいつには黙っといてやっからよ』
「…頼む」
キーンコーンカーンコーン
休み時間を見計らい、刹那はルイスに接近した。
「ちょりーっす!ルイース一人?あ、ルイースって呼んでいい?あ、ルイスさソールメイトとかいる?まあ端的に言うとボーイフレンド?まあぶっちゃけて言うと俺なんかどう?て、なんて言っちゃってるし俺」
「そんな気ありません」
「あー、解った。そうやって気を引くテク?あ、ヤッベ。恋の百戦連万?俺戦っちゃうよ」
「うっざい。どっか行けバーカ!」
「うわ、言っちゃった。ちょーヤベ」
再び一人になり、ロックオンに回線を繋いだ。
『どうだった刹那、彼女は口説けたか?』
「いや、無理だった。今の俺は、うざいキャラで定着している。ルイス・ハレヴィも、俺の事を毛嫌いしているようだ」
『擬似人格、タイプR-35だからな』
「この人格設定を指示したスメラギ・李・ノリエガのミッションプランに、疑問を感じる」
『ミス・スメラギは戦術予報士だ。俺等の考えが及ばない状況を読んで、プランを立てる』
「とはいえ、俺一人で、彼女を終始監視するのは不可能に近い」
『解った。バックアップをそっちに送る』
「了解。刹那・F・セイエイ、ミッションを続行する」
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