中編
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三つの国は同盟を結び、国連軍が生まれた。
そしてCBを叩く為に軍は宇宙に上がり、彼等の殲滅作戦を開始した。
海辺に佇む一つの小さな家。窓際にある椅子に座って呆然と海を眺める女性。それはリエだった。
CBを抜けた後此処に滞在し、ラジオで彼等の情報を聞いていた。
クルー達はどうなったか、マイスター達はどうなったか、ロックオンは無事か。
毎日海を眺めながら、リエは秘かに考えていた。
ふと何か思い、引き出しからある物を持ち、リエは浜辺に向かった。
♪~♪♪~
浜辺にあった丸太に座り、貝殻の笛を吹き流しながら、離島での日々を思い出していた。
「なぁリエ、一度お前の笛の音を聞かせてくれねぇか?」
「…………嫌」
「んなあからさまに嫌そうな顔すんなよ!」
「嫌そうじゃない、嫌なの」
「まあまあそう言わずに、いいじゃねぇか~減るもんじゃねぇし」
「嫌、減る」
「減る訳ねぇだろ!」
~♪~
「貴方は無事なの、ロックオン…」
リエの呟きは、夜空の星だけが聞いていた。
翌日、リエは墓地に向かい、一つの墓に花を添えた。
「…ニック」
そっと墓に触れて呟く名。それはリエの恋人の墓だった。
「ごめんね…私、貴方以外の人も好きになっちゃって…でも、彼本当に貴方に似てるの…」
墓に触れたまま、リエは続けた。
「諦めが悪くて、面倒見が良くて、優しい…」
リエの頬を、一筋の涙が流れた。
「ニック…っ」
「おいおい、想う相手を間違えてんじゃねぇのか?」
突然聞こえた声に驚いて涙を止め、後ろを振り返った。
「ロック…オン…?」
その先にいたのは、ロックオンだった。
「ようリエ、久しぶり」
「何で…CBは、壊滅したんじゃ…」
「俺等がそう簡単にやられる訳ねぇだろ?皆生きてるぜ」
「何で、ロックオンが…此処に…」
「…決まってんだろ」
ロックオンは表情を変え、リエに近寄って手を引き、彼女を抱き寄せた。
「お前に逢いに来たんだよ」
「…何で」
「俺はロックオン・ストラトスだぜ。狙った獲物は絶対に逃がさないんだよ」
「だって…私…」
「トレミーは今人手不足でな、ミス・スメラギにもいい人材を探して来いって言われたし」
「…ッ、手紙を見たでしょ!?私には恋人がいた!その人の子供もいた!」
「関係ねぇよ」
ロックオンはリエを抱き締める力を強めた。
「俺はリエが好きだ。その気持ちは今も変わらない」
「ロックオン…」
「それに、お前も俺の事好きなんだろ?」
体を離し、ニッコリと笑ってリエを見るロックオン。
そんなロックオンに。
バチンッ!!
ビンタをかました。
「いっ…つう~…!」
「やっぱり貴方ムカつく、嫌い」
リエはロックオンから離れ、そそくさと歩き出した。
「リエ!いきなり何しやがる!?」
「…何してるの」
「は?」
「人手不足なんでしょ?早く案内してよ!」
背を向けたまま言うリエに、ロックオンは一瞬唖然とした後、小さく笑った。
「そうなんだよ、リエがいないからおやっさんが一人で整備してるんだが、どうも大変そうでな~」
「当たり前よ、ガンダム整備にトレミーの補強。私でも疲れる…て、何処に腕回してんのよ!?」
「ん?だって俺達両想いだろ?だったらいいじゃねぇ…イデデデ!」
「馴れ馴れしいっ」
隣に立って腰に腕を回したロックオンに、リエは容赦なく頬をつねり上げた。
そしてリエはCBに戻り、再び整備士として活動を再開した。
.
あれから何年経っただろう
リエは最初動かない左腕に戸惑っていたが、今ではなんの不自由もなく、整備士として活躍していた。
そして彼女の隣には、彼がいた。
「ロックオン、スパナ」
「ほい」
「ドライバー」
「うい」
「明かり」
「これでいいか?」
「サンキュ」
ロックオンに工具を取ってもらいながら整備を続けるリエ。
そんな彼女を、ロックオンは暇そうに見ていた。
「なあリエ、少し休憩しないか?」
「何で?」
「何でって、もう何時間続けてると思ってんだ?」
「…何時間?」
「3時間だ!3時間!!」
ロックオンはリエから工具を取り上げ、無理矢理立たせた。
「休憩すっぞ」
「まだ途中なのに…」
「また後でも出来るだろ?それに…」
そっと肩を抱き、リエを引き寄せた。
「もうお前一人の体じゃねぇんだから」
リエのお腹を眺めるロックオンに、リエもお腹を撫でた。
「うん。そうだね…」
リエのお腹には、ロックオンの子が宿っていた。
医師からその話を聞いた時、ロックオンは騒ぎ喜び、リエは驚きと動揺の色を見せていた。
一度子を亡くしているリエは、今度の子が無事に産まれてくるかどうか不安だった。
だがロックオンが安心、説得させ、子を産む事を決意した。
「楽しみだな~、早く産まれねぇかな~」
「まだ五ヶ月だよ」
「俺も来年には父親か~」
「…親バカになりそう」
「…リエ、お前俺とじゃ不満なのか?」
「今頃気が付いた?私は頑固なの」
顔を背けると僅かに残念そうに顔を落とすロックオン。
そんな彼をちらっと見た後に、リエはロックオンの左側に移動し、腕に抱き着いた。
「リエ?」
「右腕じゃないと出来ないからね、早く休憩しに行こう」
「…そうだな」
二人は寄り添い合いながら休憩室を目指した。
翌年、リエは無事双子の男女を出産し、ロックオンは父親となった。
そして双子はトレミーのメンバーに見守られながら、成長していった。
ロックオン・ストラトス。彼は手強い獲物を狙い撃った。
それは、リエという女性の心だった。
〈完〉