中編
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スペインのある披露宴に参加していたリエ。
その途中上空にスローネの機体が見られ、その中の一機が会場目掛けて砲を放ち、華やかな舞台は一変し、無残な場と変わった。
リエは状況をトレミーに伝えようと端末を手にした時、会場にいた一人の少女が突然走り出し、リエは二発目の砲から彼女を庇うように抱き抱えた。
結果、少女は無事で済んだが、リエは瓦礫の下敷きとなってしまった。
トリニティが一般人を攻撃したと情報が入った後、ロックオンは情報収集の為にスペインに行ったリエの事が気になり、彼女に連絡を入れた。
しかし何度掛けても応答せず、仕方なくトレミーのスメラギに報告した。
『え、リエが?』
「ああ。いくら掛けても出ないんだ」
『確かに、連絡は随時するよう言ったんだけど…待ってて。クリスティナ、リエを探して』
『了解しました』
クリスティナはスメラギの指示に直ぐに作業に取り掛かり、ロックオンは辺りをウロウロしながら待った。
『ロックオン』
「っ、解ったのか!?」
『それが、リエの持つ端末の位置が掴めないのよ。端末が壊れたか、リエの身に何かあったのか…』
「まさかリエは…」
『トリニティの事件に関係しているかもしれないわ。ロックオンは現地に向かって、リエを探してちょうだい』
「…解った」
ロックオンは短く答えて通信を切り、刹那に後を任せてスペインに向かった。
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リエの端末が壊れる前にいたであろう場所に着くと、現場は多くの警察や報道陣で埋め尽くされていた。
その光景に驚きながらもリエの居場所を探そうと、近くにいた警官に問い質した。
すると警官はある病院をロックオンに教え、ロックオンは急いで病院に向かった。
病院に着き、リエの病室まで走って辿り着いた部屋にいたのは。
「…リエ」
ベッドに座って外を見ていた、リエの姿だった。
「リエ」
「…?」
呼び掛けられて初めて、リエはロックオンがいる事に気付いた。
「ロックオン…何で?」
「何ではないだろ?お前を探すの苦労したんだぞ」
ロックオンは病室の扉を閉めて備え付けの椅子に座った。
「あ、ごめん…端末壊れてて、連絡もしないで…」
「気にすんなよ。…トリニティだろ」
声色が代わったロックオンに、リエは黙って頷いた。
「確実にあれは、狙って撃った攻撃だった…」
「たく、何してんだよあいつらは…!」
頭を掻いて苛つくと、リエは暗い顔をした。
「それで、お前は大丈夫なのか?」
「…え?」
「元気ねぇぞ。そんなに重傷なのか?」
その言葉にリエは俯き、窓の方を向いた。
「…ロックオン」
「ん?」
「今までありがとう」
「は?何言って…」
「私…CBを抜けるわ」
一瞬時が止まった。
「な、何言ってんだよ…そんな冗談…」
「冗談じゃない。私はCBを抜ける」
「何でだ!?いきなりそんな事言われて納得出来る訳ねぇだろ!」
「仕方がないのよ!今の私があそこにいても、役立たずになるだけなのよ!」
「…どういう、意味だ」
リエは右手で上着を脱ぎ、ロックオンは彼女の左腕に残された酷い傷を見て息を飲んだ。
「もう左腕は動かない…再生治療も出来ない。これがどういう事か解る?」
「リエ…」
「私はもう整備士には戻れないって事よ…」
左腕を掴んで疼くまるリエに、ロックオンは何を掛けていいのか解らなくなった。
「な、何言ってんだよ、まだお前には、右手があるだろ!?なのに、こんな所で手を引いちまうのか!?」
「……」
「お前は、自分の手で世界を変えたいんじゃないのか!?」
「世界を変えても、私の恋人は帰って来ない」
その言葉に、ロックオンはもう何も言えなかった。
「帰って…」
ロックオンを見ずに言う消えそうな声に、強く拳を握った後、ロックオンは病室を出て行った。
「さようなら…ロックオン」
.
トリニティの被害に巻き込まれたリエは左腕を失い、ロックオンに自分の想いを伝えた後、CBを抜けた。
右腕だけで身支度を整え、病室を出ようとした時、扉が叩かれた。
「リエさん、今大丈夫ですか…?」
「ルイス…」
入って来た人物は、同じ現場にいた少女、ルイス。
彼女もあの事件で家族と親族を奪われたが、彼女に怪我はなかった。
「もう、行っちゃうんですか?」
「ええ、傷はほぼ完治したし、此処にいる理由もないから…」
上着で隠された左腕に触れるリエに、ルイスは顔を俯かせた。
「ごめんなさい、あたしを庇ったばっかりに…」
「ルイス、貴方が悪い訳ではないでしょう?」
「でも!」
「それに、貴方の方が辛い筈よ…ご家族を亡くされて…」
俯くルイスの頭に手を乗せ、慰めるように撫でた。
「パパとママがいなくなったのは寂しいけど、あたしは一人じゃないから…」
そう言って扉の方を向くと、恋人の沙慈がいた。
沙慈はリエに頭を下げ、リエは軽く笑って再びルイスを見た。
「元気でね、ルイス。またいつか逢いましょう」
「…はい!」
ルイスは涙目になりながら返事を返し、リエは彼女を一度抱き締めてから病室を後にした。
外に出て一度病院を見た後、リエは迷わず進み出した。
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ユニオン、AEU、人革連が一つに纏まり、宇宙に戻ったロックオン達。
自室で待機しながら、ロックオンは自分の端末に送られたメッセージを読んでいた。
『ロックオン
先日は酷い事を言ってごめんなさい。私はスメラギさん達にも報告して、正式にCBを抜けました。勝手にこんな事を決めてごめんなさい。でも、私はもう戦う事も、失うのも嫌だったの』
ロックオンはあの時病室で見たリエの表情を思い出し、また端末を見た。
『もう解っていると思うけど、以前話した女の子の話は私の事。私には恋人がいたけど、彼は私を護って亡くなった。そして、私も重傷を負って当時宿していた赤ん坊も死なせてしまった』
文を読み進めていく度に、ロックオンの表情が曇った。
『絶望した私の前に現れたのはCBのエージェント。誘われてCBに入り、イアンさん達と協力してガンダムを作り、貴方達に出会った』
最初にリエに逢った時、彼女はロックオンを見て驚いた顔をした後、直ぐに悲しそうな顔をしていた。
『ロックオンは、死んだ私の恋人に似ていた。だから貴方とは余り接したくなかったの。あの人を思い出してしまうから』
必死にリエにアプローチする自分を思い出し、ロックオンは軽く笑った。
『でも、貴方といて楽しかった。今まで言えなかったけど、今なら言えます。私も、貴方が好きです』
『今まで、本当にありがとう。そして
さようなら』
ロックオンは画面を消し、ベッドに倒れ込んだ。
「…ふざけんなよ、馬鹿野郎」
手で目元を隠し、小さく呟いた。
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