中編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ユニオン、人革連、AEUとの合同軍事演習に、テロが発生すると予測したCBは武力介入を決定し、マイスター達は離島でミッションの最終確認をしていた。
千機近いMSと戦う事にも関わらずの武力介入。
そのミッションに、リエは柄にも少し心配していた。
「リエ」
不意に声を掛けられて後ろを向くと、パイロットスーツを着たロックオンが立っていた。
「ロックオン…」
「何だ?元気ねぇな。どうしたんだ?」
「…何故」
「お?」
いつものように突っ掛かるロックオンだが、リエは今日怒る気が起きなかった。
「何故、そんな平気な顔をするんだ?千機近いMS相手に…無事では済まない事は解っている筈なのに…」
「何だ?心配してくれてんのか?」
「っ、私は真剣に!」
ポン。
相変わらずの態度に腹を立てて顔を上げた時、ロックオンはリエの頭に手を乗せた。
「それでもやるのが、CBだ」
「ロックオン…」
「この組織に入った時から覚悟は出来てる。だから、今回の介入も、逃げる訳にはいかないんだ」
真剣な眼差しにリエは何も言えず、再び俯くと、ロックオンはポンポン。と頭を叩いた後、手を下ろした。
「んじゃ、そろそろ行くな」
踵を返してデュナメスに向かうが、数歩歩いた所で足を止めた。
「リエ」
「…何?」
「もし、無事に帰って来れたら、出迎えてくんねぇかな?」
リエの方を向かず、それだけを伝えると、ロックオンはデュナメス向けて走り出した。
「―――ロックオン…」
見送る事しか出来なかったリエは、辛そうに両手を握り締めた。
王留美の別荘に行かず、浸すら離島でマイスター達が帰還するのを待つリエ。
何時間待っても手元の端末から連絡は来ず、暗い部屋でただ浸すら待ち続けた。
【―――、エイデン!気を付けて行ってこいよ!】
【帰ったらまた皆で飲もうぜ!】
【当たり前だ!必ず帰って来るから!】
【てめぇらも死ぬんじゃねぇぞ!】
【エイデン!無事か!?】
【ええ、―――は大丈夫?】
【ああ、一先ず此処から…ッ、エイデンッ!!】
【え?……ッ!】
【―――…?ッ、―――ッ!!】
.
ピピピ。
「ッ!!」
いつの間にか眠ってしまい手元の端末が鳴った音に目覚め、内容を見た。
「ガンダム四機、共に健在…」
その報せを聞いたリエは、直ぐにコンテナに走った。
「皆、大丈夫!?」
コンテナに向かう疲れ果てたマイスター達。刹那に至っては座り込んでいた。
「刹那!大丈夫!?」
「あ、ああ…」
「リエ、悪いが刹那を部屋まで連れてってくれねぇか?」
「解った。刹那、立てる?」
「大丈夫だ…」
ロックオンに頼まれ、リエはよろける刹那を支えて彼の自室を目指し、他のマイスター達も自室に戻って行った。
自室に辿り着くと、リエは刹那をベッドに寝かせた。
「リエ、エクシアが…」
「大丈夫。私が直してあげるから。だから刹那は安心して休みなさい」
「あ…あ…」
その言葉に刹那は死んだように眠りに付き、リエは布団を掛けて部屋を出た。
そしてガンダム達を整備しようとコンテナに向かう途中、通路に座り込んでいる人物を見掛けた。
「ロ、ロックオン!?」
座り込んで俯くロックオンの側にはハロもいて、彼を心配するように名前を呼び続けていた。
「ロックオン!大丈夫!?ロックオン!!」
「…あ…リエ」
「何してるの?自室に戻った筈じゃ…」
「いや、そうしてたんだが…途中でふらついてな…」
刹那同様に顔色の悪いロックオン。リエは彼を支えながら立ち上がらせた。
「とにかく、休むなら部屋に行かない…っ、と!」
刹那とは違って背丈も高いロックオンを運ぶのは困難であったが、何とか彼の自室まで運び、彼をベッドに寝かせた。
「はあ…はあ…全く…」
〔ガンバッタ。リエガンバッタ〕
「ありがとう。ハロも少し休みなさい」
〔リョウカイ。リョウカイ〕
ハロは机に乗って静かになり、リエはロックオンに布団を掛けて部屋を出ようとした。
パシッ。
「え?」
腕が掴まれ、後ろを向くと虚ろな目でリエを見るロックオンがいた。
「ロックオン、まだ何かあるの?」
「…サンキュー…な」
「え?」
「出迎えて…くれて…」
出撃前にロックオンが言った事を実現させた事に、彼は力無く笑い、それにリエは何とも言えない顔をした。
「あ、あれは、他の皆も心配だったから…別に貴方だけじゃ!」
「それても…嬉しかったぜ…」
嬉しそうに笑うロックオンそんな目で見られたくなく、リエは無理矢理布団を被せた。
「いいからさっさと休みなさい!私はこれからが忙しいんだから!」
掴まれていた手も無理矢理剥がし、リエは扉に向かった。
が、扉を開けようとした時ピタ。と止まった。
「…ロックオン」
「ん…?」
「あの…」
ロックオンは被せられた布団を退けてリエの後ろ姿を見ると、彼女がゆっくりと振り返り。
「無事で…安心した」
軽く笑い、部屋を出て行った。
ガタガタガタッ!!
〔ロックオン!ドウシタ!?ドウシタ!?〕
ベッドから落ちた事にハロは側に寄って心配したが、ロックオンの顔は真っ赤だった。
「俺…生きててよかった…」
彼女が向けてくれた初めての笑顔だけで、ロックオンは疲れが吹っ飛びそうなくらいになった。
.
合同軍事演習という危険なミッションから無事生還したマイスター達。
今は疲れを癒す為に休息を取り、その間に整備士であるリエは各ガンダムの整備をしていた。
カレルであらかたの所を直させ、無理な所は全てリエが修正。
全ての整備が終わったのは翌日の朝だった。
「あーっ、よく寝た。リエ~?おーい?」
翌朝、体力が戻ったロックオンはコンテナに向かい、リエにこれから宇宙に戻る事を伝えたかったが、肝心の彼女がいない。
頭を掻きながら辺りを見回していると、ハロが何かに気付いて跳ね出した。
〔リエハッケン。ミツケタミツケタ〕
「どっちだ?」
〔アッチ。アッチ〕
ハロに誘導されてリエがいる元に向かうと、彼女はいた。
デュナメスの足に寄り掛かり、工具を散乱させ、寝息を立てるリエ。
ガンダムの整備を頑張ってやり遂げてくれた事に、ロックオンはしゃがみ込み、リエの頬に付いている汚れを取り除いた。
「お疲れさん。リエ」
起こさないようにリエを抱えて彼女の部屋に連れて行き、ベッドに寝かせた。
そして少しの間リエの顔を見ていたが、頭を軽く撫でた後、部屋を出て行った。
〔ロックオン、エライ。ナニモシナカッタ〕
「何だよその言い方。まるで俺が野獣みてぇな言い方だな」
〔ロックオン、ヤジュー〕
「やかましいッ!」
からかうハロにロックオンは顔を少し赤くした後、ごまかすように髪を掻き上げた。
「いくらなんでも、寝込みは襲わねぇよ。俺の、…大事な奴だし…///」
普段言わない事を言ったせいか、更に赤面するロックオン。
それを見たハロは一拍置いた後。
〔ロックオン、カオマッカー〕
「ハロ!これ以上俺をからかうなッ!」
〔キロクカンリョウ。キロクカンリョウ〕
「記録って…まさか今の!」
〔キロクシタ。キロクシタ〕
耳をパタパタさせながら小さく跳ねるハロ。
ロックオンはザー。と冷や汗を流すと、ハロを掴んだ。
「ハロ!今すぐその記録を消せ!」
〔イーヤー!〕
「イーヤーじゃねぇよ!何人の断りも無しに録ってんだよ!?さっさと消さないとバラすぞ!」
〔バラシタラロックオンオコラレル。リエニコワシタッテイワレテキラワレル〕
「ぐっ…!」
最もな事を言われ、ロックオンは更に焦った。
「頼むハロ、リエだけには今の見せないでくれよ…」
〔リョウカイ。リョウカイ〕
「え、本当か!?」
〔ハロ、リョウカイ。リエニハミセナイ〕
「サンキューハロ!流石は俺の相棒だ!」
ハロをギュッ!と抱いて喜ぶロックオン。だが、ハロの目は点滅し続けていた。
その後、起きたリエに、ハロは先程のロックオンの映像だけを見せ、二人で笑っていた。
.
三陣営の合同軍事演習から一夜明けた翌日、トレミーに帰還する為、マイスターとリエは宇宙に戻る事になった。
だが
イライライライラ。
軌道エレベーターの中、リエは椅子に座って腕を組みながら、苛付いていた。
「宇宙に戻るのも、トレミーに戻るのも良しとして…」
勢いよく立ち上がり、ビシッと指差した先には。
「何故私がロックオンと一緒なんだっ!?」
リエの前の席には、嬉しそうに笑うロックオンが座っていた。
「だって仕方ねぇだろ?ガンダムをいっぺんに載せたら流石に怪しまれるし、此処は四つしか席はねぇしな」
「だからって何でロックオンなの!?他の三人は!?」
「あいつらはさっさと戻りたいって言うから、先に行かせた。お前はまだ休んでたし」
「~っ」
椅子に座り直したリエは拳を強く握って休んでいた時の自分を呪い、ロックオンはリエに見えないよう舌を出した。
(本当は俺がリエと上がりたいってあいつらに頼んだんだけどな)
ロックオンの頼みに他の三人は深く追求する事なく先に宇宙に上がり、今はロックオンとリエの二人きり。
内心にやけながらも、頭を抱えて溜め息を付くリエをからかった。
「どした?溜め息付く程嬉しいか?」
「張り倒すわよ」
再び溜め息を付き、持っていた端末を開いた。
映し出された映像は、各ガンダムのデータから閲覧した新型のガンダム。
そしてガンダムの介入によって破壊された各国家軍の機体。
それを見ていると、隣の席にロックオンが移動してきた。
「なあリエ。お前はこのガンダムを見た事あるのか?あのティエリアだって驚いてたんだか…」
ロックオンの言葉を頭の片隅で聞きながら、リエはある過去を思い出した。
破壊された戦闘機
倒れていく仲間達。
そして
「…ん?」
ふと我に返って前を見るとロックオンの顔が間近にあった。
「うわっ!!」
「ち、」
直ぐに離れたリエに、ロックオンは小さく舌打ちをした。
「な、何をしようとしてたのよ!?」
「何ってキス」
「だから何で!?」
「だってリエは急にぼーっとするし、何言っても反応なかったから絶好のチャンスだと思ってな」
「最悪な奴だな、お前は」
騒いでいる内に軌道エレベーターは宇宙に着き、ロックオンとリエは隠してあるデュナメスの元へと向かった。
パイロットスーツとノーマルスーツに着替えてデュナメスに乗り込むと、中にいたハロが話し掛けて来た。
〔リエ。ロックオン。ヤットキタ、ヤットキタ〕
「ようハロ。一人でご苦労さん。さ、トレミーに戻るぞ」
〔リョウカイ、リョウカイ〕
ロックオンはシートに座りリエはシートの後ろのスペースに乗り込み、予定通りデュナメスが乗っていた機材は宇宙に離され、ある程度ステーションから離れた所で外に出た。
「さ、トレミーに戻るか」
「やっと戻って来た…」
「そういや、リエは宇宙は久々か?」
「まあね、殆ど地上で待機だったから」
「久々だからって、浮かれて転ぶなよ?」
「私はガキじゃない」
暫くして見えて来たトレミー。デュナメスは無事着艦し、ロックオンはブリッジに、リエは整備に取り掛かった。
「じゃあなリエ。整備はよろしくな」
「了解」
片手を上げて先に去ろうとするリエ。
するとロックオンは急にリエの手を引き。
チュ。
額に軽くキスした。
「じゃあな」
文句を言われる前に去ったロックオン。
リエは数秒止まったが、我に返った途端額を何度も拭いた。
「ロックオン、次に会ったら覚えてろ…っ」
拳を握り締めて怒るリエの後ろでは、ハロが〔コワイコワイ〕と騒いでいた。
.