中編
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CBによる全世界に対して武力介入すると宣告して早数ヶ月。
地上のとある島のコンテナに、二機のガンダムが置かれていた。
コンテナ内ではカレルというロボットがガンダムの外装を直しており、リエはそんなカレル達を見ながら手元の端末を操作していた。
「デュナメスは完了。エクシアは…」
ブツブツと呟きながら端末を操作していると、背後の扉が開き、誰かが入室して来た。
リエは振り返って入室した人物を見ると、それはエクシアのパイロットである刹那だった。
「刹那」
「エクシアは?」
「内部に問題はないわ。でも、少し外装の傷が多いわね…」
「…そうか」
少しだけ残念そうに俯いた後、エクシアを見上げた。
「大丈夫。直せない傷ではないから、カレルが全部直してくれるよ」
「…ああ」
短く答え、刹那がコンテナを出ようとした瞬間。
ぐうぅ~。
「「………」」
刹那の腹が大きく鳴った。
「…何も食べてないの?」
「…ああ」
「食堂に材料はあった筈だけど…」
「料理なんて出来ない…」
彼らしい発言にリエは内心で苦笑いした後、近くにあったテーブルに端末を置き刹那の横に立った。
.
「?」
「よかったら一緒に食べない?私もお腹が空いたし」
軽く笑って刹那を見るリエに、刹那は軽く頷いた。
食堂に向かい、そこにある色々な食材を使って、簡単な料理を刹那に出した。
出された料理をがつがつと食べる刹那を、リエは小さく笑いながら見ていた。
だが途中、視線に気付いた刹那がリエをチラッと見てフォークを置いた。
「何だ?」
「…いや、そんなにお腹が空いていたの?」
「食べる時に食べる。昔からそうしてきた」
「…少年兵、だったの?」
「ッ!?」
リエの思わぬ発言に、刹那は顔を上げた。
「何故、そうだと…」
驚いた顔をする刹那にリエは軽く顔を伏せ、小さく笑いながら呟いた。
「昔、逢った事があったんだ。少年兵に…」
刹那の視線も気にせず、リエは話し続けた。
「彼は言ったわ、自分達はいつ死ぬか解らない。だから食べれる時には食べておく、てね…」
「…それで、そいつは?」
「話してくれた次の日に…死んだわ」
その言葉に、刹那は過去に失った仲間の事を思い出した。
「彼や他にも殺された子達の亡殻を見て悲しみながら同僚に言われたわ…」
「え…?」
「『何故争いが起こるのか』って…」
深く俯いて暫く黙った後、リエはゆっくりと立ち上がった。
「そろそろ私、仕事に戻るね」
「あ、ああ。食事はいいのか?」
「なんか食欲なくして、よかったら食べていいよ」
断りを言って扉の前まで移動した所で、リエは刹那に振り返った。
「ごめんね、変な事話して」
「…いや」
「どうかしてるよ…こんな話、するなんて」
苦笑いを零して立ち去ったリエ。
悲しそうな、辛そうな表情に、刹那は何も言えなかった。
コンテナまでの道のりをゆっくりと歩いていたが、やがて足が止まり、側にある壁に寄り掛かった。
「…何話してるんだ、私」
寄り掛かったまま片手で目元を押さえ、嘲笑うかのように声を出した。
「言ったって…願ったって…あの人はもう、いないのに…っ」
ずるずると壁からずり落ち膝に顔を埋めた。
「馬鹿みたい…ッ」
無人の通路にリエは一人、小さく涙声を零した。
.
本日、離島に刹那はいない。この島には俺とリエだけ。
〔ハロモイル。ハロモイル〕
まあハロもいるが、とにかく邪魔者はいない。
今日こそ俺の気持ちが本物だってリエに解らせてやるぜ!
「リエ~♪」
早速行動開始と言わんばかりにロックオンは格納庫に向かい、お目当ての人を捜すが、そこには整備を続けるカレルだけ。
リエの姿はなかった。
「此処じゃないとすれば…部屋か?」
次は部屋に行き、中を覗くが、そこにもいない。
食堂、ブリーフィングルーム。至る所を捜したがリエの姿はなかった。
「あいつ何処行ったんだ?」
捜す所がなくなり、宛もなく外に出ると、外はいい天気だった。
「うあ~、いい天気だな~」
〔ポッカポカ、ポッカポカ〕
海岸の方を歩きながら気分転換に散歩をしていると、不意に聞き覚えのある音色が聞こえた。
♪~♪♪~
「この音色…」
ダッ!
〔ロックオン、ドウシタ?ドウシタ?〕
ハロの声に耳を傾けず、慌てて駆け出すロックオン。海岸沿いを走り、暫くすると、丸太に腰掛けている人物を見付けた。
「リエ…」
ロックオンが今まで捜していた人物は丸太に座り、海の方を向いて何かを吹いていた。
彼女の邪魔をしないようにロックオンは近付き、リエの顔が見える位置まで移動した。
前と同じく、貝殻の笛を吹き、僅かな潮風にリエの青い髪が靡く。
もっと間近で見たく、そっと近付いた時。
ジャリ。
「ッ!?」
僅かな砂の音にリエは反応してこちらを向いてしまい、側まで来ていたロックオンを見て瞳に怒りを宿し、直ぐに立ち上がってロックオンから離れた。
「あ、あの、これは…」
「…最低」
取り敢えず詫びを入れようとしたが、リエの一言に言葉を止めた。
「一人の時間を邪魔したと思えば、人の顔をジロジロと…最低な奴だな」
「な、違う!邪魔したのは悪かった!でも、俺は話があって…」
「…話?」
腰に付けていた物入れに笛をしまい、ロックオンを睨み続けながら話を聞く事にした。
「前にも言ったが、俺はリエが好きだ。お前が嘘だと信じても、俺はお前が好きだ!」
「……」
「俺はリエとずっと一緒にいたい。戦争根絶を果たした後も、ずっと…」
「…て……まで?」
「え?」
突然の小さな声が聞き取れず、聞き返してもらおうと思った時。
「ずっとって、何時まで?」
「え?」
「貴方の言うずっとって、位置まで?」
怒りの目が無くなった事に安心し、今度は少し恥ずかしくなりながら考えた。
「そりゃあ…死ぬまでか?」
面と向かって言うと、やはり恥ずかしかった。
チラッ、とリエを見ると、彼女はロックオンを見据えた後、可笑しそうに笑った
「死ぬまでなんて台詞、よく言えるわね」
「え?」
「本当はそう思ってなんてないんでしょ?貴方の目を見れば解る」
「目…?」
リエは笑った後に、僅かに俯いた。
「昔、貴方みたいに言った人がいた。でも、その人はそれをあっさり破って死んだわ」
「…リエ」
「その時のあの人と同じ目をしてる。だから私は、貴方を信用出来ない」
言い放つリエの強い眼差しに、ロックオンは僅かに息を飲んだ。
「だからもうこれ以上、私に深く関わらないで」
ロックオンに背を向けて、コンテナに戻ろうとしたリエに、ロックオンは止めようとした。
「リエ!それでも俺は!」
「私は好きじゃない」
止めようとしたロックオンの言葉をスッパリと切り、リエは戻って行った。
「リエ…」
立ち去るリエの背中を見続けた後、俯いていると、ハロが寄って来た。
〔ロックオン、ロックオン〕
「ハロ…」
〔ドウシタ?ドウシタ?〕
「…フラれた」
〔ザンネ~ン!〕
膝を着いてどよ~ん。と落ち込むロックオンに、ハロは少しのフォローも掛けなかった。
〔フラレタ、フラレタ。ロックオンハフラレタ〕
「ハロ…慰めようって気持ちはないのかお前!?」
〔ナイ。ナイ〕
「…ち」
拳をギュッ、と握り締めて暫くした後、ロックオンは勢いよく立ち上がった。
「 チクショーッ!! 諦めてたまるかッ!!絶対リエの心を狙い撃ってやるーッ!!」
立ち上がり、大声で叫びながらコンテナに戻るロックオンに、ハロは暫く動かずに見ていた。
〔ロックオン、コリテナイ。コリテナイ〕
潜かに悪口を言った後、ハロはロックオンを追い掛けた。
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