中編
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今、リエはいかにも帰りたいという空気を漂わせながらも、ロックオンと共に軌道ステーションを歩いていた。
その理由は昨日の事。
「下見?」
目の前にいるスメラギから事情を聞くと、彼女はお酒が入ったグラスを片手に語り出した。
「そ。近々ガンダムを地上に下ろすから、リエはガンダムを置く離島の様子を見て来て欲しいの」
「それならエージェントの方々でも…」
「やっぱり整備する本人の方がいいと思ってね♪はいこれチケット」
スメラギから軌道エレベーターのチケットを渡され、中身を見ると、チケットは二枚入っていた。
「スメラギさん、何故二枚?」
「あ、マイスターも一人連れてって。いた方が何かと意見も聞けるしね」
「…はあ」
「誰を誘うかはリエに任せるから~。お願いね~」
半場酔っ払い気味のスメラギを見ながら、リエは部屋を出た。
チケットを片手に通路を通りながら、リエは迷っていた。
マイスターの誰かを誘え。
ある意味、ガンダムの整備より難しい事かもしれない。
まずティエリアは地上が嫌いだから断ると推測し除外。
刹那は確実に付き合ってくれなさそう。
とすると。
「アレルヤか、ロックオンか…」
残りはこの二人。
だが知っての通り、リエはロックオンが苦手。だからアレルヤに頼もうと決心し、顔を上げた瞬間。
「よ、リエ♪」
今会いたくない人No.1のロックオンが目の前にいた。
「………ひっ!!」
「何だよそのリアクション…」
ロックオンの出現にリエはすかさず後方に下がり、彼から距離を取った。
「い、何時からそこに…」
「お前がブツブツ言いながら悩んでた時だな。何かあったか?」
「い、いや。何も…(不覚…)」
周りの気配に気付けなかった自分に数量の怒りを感じていると、ロックオンが何やら話し掛けてきた。
「なあリエ、誰と地上行くんだ?」
「決めていない、だから今アレルヤに頼んで…」
「んじゃ俺と行くか?」
「何故だ?大体何の話…………だ」
ロックオンの方向を見て固まった。
彼が手にしていたのは、スメラギから渡された地上行きのチケットだった。
「きっ…貴様いつの間に!?」
「リエが後退りした時だ。えっと…。発車時刻は11時か…じゃ、9時に格納庫で待ち合わせな~」
「なっ!ちょっ…ロックオン!!」
ロックオンはリエの言葉を無視し、チケットを一枚持ち去って行ってしまった。
「…最悪…」
その一言しか、今は思い浮かばなかった。
翌日、仕方なくロックオンと共に地上に行く羽目になり、現在に至る。
ロックオンに地上に赴く用件を伝えていると、彼は頭の後ろで手を組みながら少し残念がっていた。
「な~んだ、地上デートじゃねぇのか」
「チケット返して」
「冗談だって~」
相変わらずのロックオンの雰囲気にリエは少し怒りながらも、早足きで搭乗口まで急いだ。
その時
ぐい
「?」
何かがリエのズボンを引っ張り、何かと思って下を見ると、4歳程の男の子がズボンを掴んでいた。
「……」
「…ママ?」
「リエ…!お前いつの間に子供産んだんだっ!?」
「今すぐ帰れ」
慌てるロックオンにすかさずツッコミし、リエは男の子と同じ目線までしゃがんだ。
「どうしたの?迷子?」
「パパ…ママ…」
両親を小さな声で呼び、リエが男の子の頭を撫でていると、二人の男女が叫びながらこちらに走って来た。
「パパ!ママ!」
男の子は二人目掛けて走って女性に抱き着き、女性は涙顔になりながら男の子を抱き、男性はリエに向けて軽いお辞儀をした。
そのまま三人は仲良く手を繋ぎ、人込みの中に消えた
「何だ迷子か、よかったなお前の子供じゃなくて」
文句を言われる覚悟でロックオンがリエ向けて言うがリエは先程の家族の方をじっと見ていた。
「…リエ?」
「………いや…何でもない、行こう」
リエはロックオンの声に文句を返さず立ち上がり、搭乗口の方に進んだ。
その後ろ姿に、ロックオンは何も言えず、ただ黙ってリエを追い掛けた。
軌道エレベーターで地球に降り、待機していたエージェントに案内され、ロックオンとリエは離島へと向かった。
島に着くとリエはエージェントの王留美から色々と説明を聞き、そんな彼女をロックオンは遠くから見ていた。
宇宙でのステーションでリエに子供がぶつかり、その子供と両親を見てから様子がおかしい。
軽く声を掛けたり肩を叩いたりとするが、リエは視線を合わせるだけで会話をしようとはしなかった。
しかし今見る限り、目立って変わった事はない。
「何で俺、こんなに嫌われてんだ…?」
ロックオンは頭を掻きながら呟き、やる事がない為、散歩に出た。
「それでは、私達はこれで失礼致しますわ。貴方方はこちらに宿泊という事で宜しいんですの?」
「はい。再確認もかねて、もっとこの島を知ろうと思いまして…」
「解りましたわ。では明日の朝、迎えの船を向かわせますので」
「ありがとうございます」
島の事や配備されたコンテナの説明を簡単に聞いた後王留美は用意していた船に乗り込んだ。
リエは王留美に礼を言い、留美も小さく礼をした後、パートナーの紅龍と共に島を去った。
それを見届けたリエは溜め息を一つ吐き、ロックオンに今日この後の事を話そうとしたが、肝心の彼の姿が見えない。
「…………………いっか」
リエは説明を後回しにし、コンテナに向かって状況の再確認に入った。
.
「……は…は……ハックシュンッ!!」
肌寒さに目を開けると、辺りは真っ暗。夜空には星が浮かんでいた。
「俺、もしかして…寝てた?」
隙なので島の中を散策していたが、気持ち良さそうな木々の中にあるスペースを見付け、そのまま寝転がってしまった。
そしていつの間にか、寝てしまったようだ。
「まさか眠りこけるとは…
あっ!リエは!?」
ロックオンは島に置き去りにされた。という嫌な予感を感じながらコンテナに走った。
その時
♪~♪♪~♪~
不意に聞こえた笛の音。
ロックオンはその音色に足を止め、音色のする方に足を向けた。
音がした方向は海岸。そしてそこにいた人物に目を見開いた。
「リエ…」
海の方を向き、潮風によっていつも結い上げている青い髪が靡く後ろ姿は、とても美しかった。
その後ろ姿と笛の音に、ロックオンは動かずに見惚れていたが、急にリエがロックオンの方を向いた。
振り向いたリエの手には貝殻型の笛があり、照らされた月によって輝く海をバックにしたリエの表情に、ロックオンは瞬時に赤面した
「……」
「あ…わ、悪い、邪魔するつもりは…」
何とか言い訳を作ろうとあれこれ考えていたが、リエはロックオンを見て暫く停止した。
「…リエ?」
「………………いるの忘れてた」
「オイッ!」
たっぷり間を空いてから告げた言葉にロックオンは思わず突っ込み、一人ボケるロックオンを見ながらリエは笛をしまった。
「迎えは明日の朝来る。今日はこの島に泊まりだから」
「あ、ああ…解った」
リエはそれだけ言ってコンテナに戻ろうとしたが、ロックオンが咄嗟に彼女を呼び止めた。
「何があったか知らねぇけど、元気出せよ?」
「…何の事?」
「何って、お前宇宙で子供にぶつかってから元気なかったから…」
ロックオンの発言にリエは少しだけ目を見開くが、直ぐに背を向けた。
ロックオンはまたもや嫌われたか。と思いながら頭を掻いていると、リエがロックオンの名前を呼んだ。
「何だ?」
「あの…ありがとう。心配してくれて…」
御礼を言った後、振り向いたリエはロックオンに軽く笑いかけ、一足先にコンテナに戻って行った。
そして残されたロックオンは。
「…………い、 ヨッシャーーッ!! 」
初めて自分に御礼を言い、笑い掛けてくれたリエ。
その嬉しさに、ロックオンは海に向かってガッツポーズをしながら叫んだ。
翌日、昨日の調子に乗ったままのロックオンはまたリエにちょっかいを出し、昨日の好感度ポイントは消去された。(笑)
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