短編
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刹那・F・セイエイ。
中東生まれの少年で、幼い頃から戦いの渦の中で育って来た。
むろん、普通という暮らしをした事がない。
そんな彼に、ある悲劇が襲い掛かった。
ミッションがない朝、いつも通りに起きてリビングに向かうが。
カーテンは閉じたまま。
テーブルには何もない。
そして毎朝挨拶をしてくれる、ヒカルの姿がなかった。
「…ヒカル?」
台所に行くがやはり姿はない。
まだ寝ているのかと思い、彼女の部屋に行くと、部屋は真っ暗で、ベットには一人分程の膨らみがあった。
「ヒカル、もう朝だぞ。起きろ」
ベットに近付き、用件を伝えると、ヒカルが布団からもぞもぞと出て来た。
「…ぁ…刹那…おはよ…」
「ああ。もう朝だぞ。」
「ふぁ~…い…」
ヒカルはゆっくりとベットから起き上がり、身支度をする為に洗面所に向かった
刹那はリビングに戻ってカーテンを開け、ニュースを見ながらヒカルを待っていたが。
何故か遅い。
また様子を見に立ち上がり洗面所を覗くと、ヒカルがタオルを片手に倒れていた。
「ヒカル!」
刹那は慌ててヒカルを抱き上げるが、何処にも外傷はない。
その時、彼女の体の異変に気が付いた。
「熱い…」
「ぁ…刹那…あれ?私…」
「ヒカル、今の気分は?」
「ん~…何か頭がぼーっとする…どしてかな~…」
明らかに風邪を引いている表情だったが、ヒカルはそんな事を露知らず、刹那から離れて立ち上がろうとした。
「おいヒカル!」
「これから洗濯しなきゃ……あ、後朝ごはんもまだだよね…部屋の掃除も…」
あれこれ言いながら立とうとするが、足元が覚束ず、ヒカルは直ぐに刹那に寄り掛かった。
「とにかく部屋に戻ろう。そんなフラフラでどうする」
「でも…洗濯…」
「後だ」
刹那にピシリ。と言われ、ヒカルは部屋に連れて行かれた。
ピピッ
「39度5分…」
「ハゥ~…」
部屋に戻ってベットに入れられ、体温計で自分の熱を知らされ、ヒカルは深く布団を被った。
「今日は一日大人しく寝ていろ」
「でも…家の事色々やらないと…」
「俺がやっておく。いいから寝ていろ」
刹那はヒカルの頭を軽く撫でて部屋を出、ヒカルには眠気が襲い、そのまま寝入ってしまった。
「…ああは言ったが…」
リビングに戻った刹那は考えていた。
普段家事をしない彼だからヒカルが普段何をしているかも解らない。
「…とにかく薬を」
ヒカルに飲ませる風邪薬を探しに台所を色々探すが、見付からない。
「ヒカルは寝ているし起こす訳にはいかないし…」
探し続けながら悩んでいると、いつの間にかリビングにいたトリィが騒ぎ出した。
『トリィ、トリィ!』
「ん?トリィ?」
トリィはある引き出しを突いて鳴き、刹那は何事だと思って引き出しを開けると、そこには色々な薬が入っていた。
「トリィ、凄いな」
『トリィ♪』
早速風邪薬を捜し当て、水を持ってヒカルの元に向かった。
部屋に入ってヒカルを見るが、やはり彼女は寝ていた。
刹那は一度薬を部屋に置き、引き出しから熱冷ましを持って戻り、ヒカルの額に貼った。
「…ッ、」
その冷たさにヒカルは目覚め、虚ろな目で刹那を見た。
「あ…せつ…な…」
「気分は?」
「ん~…変わんない…」
「そうか…薬だ。飲め」
ヒカルを起き上がらせて薬と水を渡し、熱を測るよう言った。
「何か欲しい物とかはないか?」
「へ…欲しい…もの…?」
計り終えた体温計を見ながらヒカルに質問すると、半分虚ろなまま答えた。
「…りんご…」
「え?」
「…りんご…食べたい…」
「…解った」
ヒカルの頭を軽く撫でてトリィをその場に残し、刹那は林檎を買いに街に出た。
.
―――、ソフィア、大丈夫…?
…あ…―――…
大丈夫?苦しいの?
只の風邪だよ…寝てれば直るってママも言ってたよ…
そうだけど…
…ねぇ…―――…
何?
…じゃあさ…一緒に…寝てもらっていい?
え?
嫌なら…いいけど…
いいわよ
…え…本当!?
うん。アタシは風邪を引かないから、ソフィアと一緒にいても大丈夫よ
…うん!
ごそごそ。
…あったかいね…
…そうね…
ねぇ―――
ん?
アタシ達、ずっと一緒だよね?
勿論。アタシとアナタはいつも一緒よ
ずっとだよ。約束だよ
ええ、ずっと。
ずっとだよ
ずっと…
.
「―――、ヒカル…」
「ずっと…一緒…」
「ヒカル?」
名を呼ばれて目を開けると目の前には刹那がいた。
「…刹那…?」
「気分はどうだ?」
「うん…さっきよりは…良い…」
「そうか…」
刹那はヒカルを自分に寄り掛かせるように起き上がらせ、一つの食器を持った。
「…?」
「ヒカルが欲しがってた林檎だ。口を開けろ」
そう言われて僅かに口を開くと、刹那はスプーンですり下ろした林檎を口に入れた。
「どうだ?」
「…冷たい…おいしい…」
「そうか」
刹那はそれを何度も繰り返してヒカルに食べさせ、林檎を味わいながら、ヒカルは昔の事を思い出していた。
自分が熱を出した時、いつもは仕事でいない母が看病してくれて。
父は私の為に果物を沢山買ってきてくれて。
私の隣にはいつも誰かが側にいてくれた。
あれは
私の隣にいたのは
誰だったっけ
.
翌日
無事風邪を完治させたヒカルが朝台所で見た物は。
紙袋にこれでもか。という位に入れられた林檎だった
「一体何個買ったの?」
「知らん」
【完】