短編
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「あ~。暇だ~」
何のミッションもなく、離島の基地の自室で寝る転がってだら~っとするロックオン。
アレルヤとティエリアは宇宙。刹那はミッション。
いつ何が起こるか解らない為、遠出は無理。
「何すっかな~…。ん」
ロックオンの頭上に、マイスター四人の顔が浮かび上がり、三人の顔に×が付いたが、一人だけ×が付いていない人物がいた。
その人物は、ヒカル。
「そうだ!あいつん所でも行くか!」
ヒカルが滞在する日本には海中に隠されたコンテナもある、何かあってもすぐに対象出来る。
「そうと決まれば善は急げだ!」
暇潰しが出来た事に張り切り、ロックオンはデュナメスで日本に向かう準備をした。
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「う~ん…」
その頃ヒカルも、何かに悩んでいた。
彼女の目の前には、紙袋一杯に入っている林檎。昨日刹那が大量に買ってきたのだが、今彼はミッションでいない。
この林檎をどう処理するかヒカルは悩んでいた。
「何か使い道、何か使い道~…」
いくら刹那が食べると言っても、いつまでもこのままにする訳にはいかない。
暫く考えた後、ヒカルは思い付いたように手をポンッと叩いた。
「そうだ」
いい案を思い付いたヒカルは林檎を手に取り、皮を剥き始めた。
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デュナメスに乗って日本に着いたロックオンは、コンテナにガンダムを置き、ヒカルがいる隠れ家に向かっていた。
「こっちに来るのは久しぶりだが、相変わらず平和だな」
賑わう人だかり。何の問題もない町並み。
ロックオンは一瞬だけ故郷を思い出したが、直ぐに止めてまた歩き出した。
ピンポーン
隠れ家に着いたロックオンは呼び鈴を鳴らし、ヒカルが出るのを待った。
暫くして中から少しバタバタした音が聞こえ、扉が開かれた。
「はい。どな…ロックオン?」
「よ。元気か?」
「うん。どうしたの急に」
ヒカルは?を浮かべながらロックオンを家に上げた。
「まあ特に用事はないが…それよりお前、何してたんだ?」
ヒカルは髪を結ってエプロンを着用しており、頬には少し粉が付いていた。
「今ちょっと料理してたのロックオン!よかったら食べてくれる!?」
「…何を?」
意味が解らず今度はロックオンが?を浮かべると、ヒカルは彼を台所まで引っ張った。
「今まだ焼いてるんだけど」
「ん?」
指定された先のオーブンの中には、大きなアップルパイがあった。
「でっかいアップルパイだな。どうしたんだこれ?」
「刹那が昨日林檎を大量に買ってきたんだけど、今刹那はミッションだし、そのままにしておくと悪くなるから作ったの」
「どのくらい買ってきたんだ?」
「紙袋一杯」
林檎大好きな刹那なら、それくらいは買いそうな事に苦笑いしながらロックオンは別の場所を見ると、一つのビンがあった。
「これは?」
「林檎ジャム」
「…林檎は全部使い切ったのか?」
「一応。そうだ、ロックオンお茶しようよ!」
急に話を切り替えたヒカルに、唖然としながらも了解した。
『トリィ!』
「ようトリィ。元気か?」
リビングのソファーに座ったロックオンに、飛んで来たトリィ。
お茶の用意をしていたヒカルは、ある事に気付いた。
「そういえばロックオン、ハロは?」
「あいつはデュナメスの所だ。流石にこっちでハロを持って歩くのは格好悪いからな」
「あぁ~。成る程」
ハロを持つロックオンを想像して納得し、お茶一式を持って机に置いた時。
『トリィ…トリィ!トリィ!』
「トリィ?」
トリィが急に室内を飛び回り、何事かと思ったその時。
カタカタガタガタ!
「…地震?」
「っ、ヒカル!」
床や家具が揺れた事にヒカルはトリィを手に乗せたがロックオンは慌ててヒカルを引き寄せ、共にソファーに倒れた。
地震は直ぐに収まり、ロックオンはヒカルを抱きながら座り直した。
「収まった…?」
「日本は地震が多いみたいだよ。いつもすぐ止まるけど」
「何だよ、脅かせやがって…」
ハア、と息を吐いて一安心するロックオン。そんな彼を、ヒカルはじーっと見つめた。
「ん?ああ悪い。苦しかったか?」
解放され、彼女の手の中にいたトリィは一鳴きしてヒカルの頭に移ったが、ヒカルはまだロックオンを見ていた。
「何だ?」
「ロックオン、地震怖いの?」
「なっ!?」
その言葉に反論しようとしたが、ヒカルの大きな瞳にごまかしは効かないと悟った。
「…ああ。昔テロに合った時の衝撃が体に残ってな。地震が駄目になっちまった」
「ふ~ん…」
「ま、他の国では余り地震はないから、気にすんな」
ヒカルの頭をポンポンと叩いて立ち上がろうとしたが不意に服を引っ張られた。
「どうした?」
「座って」
立ち上がりかけた体を引かれて、ロックオンは再び着席。するとヒカルはロックオンの前に立った。
「ヒカル?」
むぎゅっ。
「なッ!?ななななヒカル!?」
ヒカルは突然ロックオンの頭を抱き締め、その行動にロックオンは大慌てした。
「昔お母さんが教えてくれたの」
「え?」
「人の心臓の音を聞くと、心が落ち着くんだって」
言われて、聞こえるヒカルの心拍数に耳を傾けると、確かに心が落ち着いてきた。
「ロックオンが不安な時や辛い時は、私がこうして護ってあげるから」
優しい温もり、安心する心拍数。
「だから怖くないよ」
ロックオンはヒカルの背に手を回し、温もりに縋った。
「ありがとな。ヒカル…」
懐かしい、母の温もりのような感覚に、ロックオンはゆっくりと目を閉じた。
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数時間後、何やら話し声が聞こえ、重い瞼を動かした時。
『トリィーーッ!!』
「どわあっ!!」
耳元で叫ばれた声に跳び起きて横を見ると、そこにはトリィを手に持つ刹那がいた。
「せ、刹那!?」
「起きたか。夕食だぞ」
「は?」
短く言って立ち上がる刹那の先を見ると、ヒカルが夕食の準備をしていた。
「あ、ロックオンおはよう丁度夕食出来たから、よかったら食べてく?」
「あ、ああ…」
ロックオンは自分に掛かっていたブランケットを畳んでソファーに置き、刹那はテーブルに移動した。
「俺、いつの間に寝てたんだ?」
「あの後直ぐに寝ちゃってで、帰って来た刹那に起こして貰うよう頼んだの」
「だからって、刹那!お前違う起こし方知らねぇのか!?」
「あれはトリィ目覚ましだ」
『トリィ!』
また手に乗せたトリィを差し出す刹那。以外にいいコンビの二人だ。
「さ、冷めない内に食べよ~」
席に着いたヒカルはいただきます。と言って食べ始め、刹那も無言で食べ出し、ロックオンも軽く笑い、食事を開始した。
やはり今日、此処に来てよかった。
久しぶりに、家族と過ごした温かみを感じる事が出来たから。
↓オマケ
「ロックオン帰るの?」
「ああ。俺も明日はミッションがあるからな」
「じゃあこれお土産~」
ヒカルから渡された袋の中には、アップルパイと林檎ジャムの瓶が入っていた。
「貰っていいのか?」
「うん。寧ろ食べて。まだ残ってるし」
「は!?まだあんのか!?」
「うん。さっきお隣りさんにも一回り小さいのあげたんだけど、それでもまだ残るの…」
ハア、と溜め息を付くヒカルは、本当に困った顔をしていた。
「刹那には暫く大量に林檎は買わないでって言っといたからいいけど、残りをどうしよう…私達だけじゃ食べ切れないし、スメラギさん達は宇宙だから届けられないし…」
重い空気のヒカル。ロックオンは軽く挨拶をしてその場を後にし、心中でヒカルを応援した。
その夜、ヒカルが悩んでいた事をロックオンがスメラギに報告すると、スメラギはヒカルをトレミーに強制送還するよう指示を出した。
お陰で残りのアップルパイはトレミーメンバーの腹の中に消え、ヒカルの悩みは解消された。
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