短編
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人と関わるのは好きじゃない。だから俺はいつも一人でいた。
ずっと一緒にいたいと思った奴は今まで一人もいなかった。
実の両親でさえ、殺す事を戸惑わなかった。
同じ少年兵仲間とも、別々に行動していた。
でも、あいつは違った。
理由は今でも解らない。
なのに俺はあいつを拒絶しなかった。
内紛が続くクルジル共和国。一人の少年が腕に大きな銃を持ち、浸すら走り続けていた。
止まれば死ぬ
迷えば死ぬ
少年は生き残る事だけを考え、ただ走り続けていた。
ドガーーンッ!!
「ッ!?」
砲撃とは違う爆発音に驚き物影に隠れて辺りを見回していると、街の外れから煙が上がっていた。
少年は何故か気になり、敵に見付からないよう静かに移動した。
物影から煙の元を覗くと、一台の車が横転し、燃えていた。
少年はそっと近寄り、車の中を覗くが、中に乗っていた者は既に死んでいた。
何か武器はないかと探していたが特になく、その場から離れようとした時。
…く…ひっ、く…う…
何処からか泣き声が聞こえた。
少年は銃を構えながら泣き声がする方に近寄り、物影から様子を伺ってから声がする方に銃を向けた。
一瞬、目を見開いた。
物影には自分と同じ黒髪に、少し服が汚れている少女が疼くまって泣いていた。
少女の存在に少年はそっと銃を下ろしたが、下ろした時に音がなり、少女がビクッ、と顔を上げた。
金色の瞳。その瞳から溢れる涙が零れ、白い肌を汚していた。
少女は少年の存在に少し呆然としていたが、手に持っていた銃に目線が行き、瞳には恐怖の色が浮かんだ。
「お前、何処から…」
「……す、の?」
明らかにこの国の者ではない少女。何処から来たのか聞こうとしたが、少女の小さな声に遮られた。
「わ、たし…殺すの…?」
震えながら話す少女に少年は少し目を見開いた。
そうだ
自分以外の者は殺す
ずっとそうやって生きてきた
なのに、何故か撃つ気が起きなかった
少し考えた末に少女の細い腕を掴み、壊れた建物の中に連れて行かせた。
「此処にいろ」
「…っ…ぇ…」
隅に座るなり少女はまた疼くまって泣き出したが、少年は直ぐに銃を構えて建物から出て行ってしまった。
.
数時間後、夜になり、既に辺りは真っ暗。
静かな夜に、少女は膝を抱えて泣き続けていた。
「お父、さん…お母、さん…っ」
助けて。と言うように両親の名前を呼び続けていたが返事はない。
それを浸すら続けていた時、突然聞こえた物音にビクッと顔を上げた。
「…ぁ」
音のした方には先程逢った少年が立っており、少年は何かの袋と銃を担いでいた
少女は殺されると思い、ギュッ。と目を閉じた。
だが
フワッ
柔らかい物が頭に乗り、恐る恐る目を開けると、頭には毛布が被せられていた。
「…ぇ…?」
少女は呆然として少年を見ると、少年は持ってきた袋からパンと水を出し、少女に差し出した。
「え…あ…の…」
「食え」
少女は差し出されたパンと水を受け取り、また少年を見ると、少年はパンに噛り付いていた。
「あ、あの…これ、どうして…」
「いらないなら俺が貰う」
ぶっきらぼうに言って食べ続ける少年にポカン。とし少女はゆっくりとパンを食べた。
「…おいしい…」
ゆっくりと味わい、それからもそもそと食べ始めた。
.
食事が終わると少年は銃を持ちながら目を閉じ、少女は渡された布団に包まりながら少年を眺めていた。
しかし視線に気付いた少年は目を開け、少女を見た。
「何だ?」
「えっ!あ…その…」
急に声を掛けられて少女は驚き、目を泳がせたが、ゆっくりと深呼吸をして少年に向き直った。
「どうして、助けてくれたの…?」
ずっと気になっていた事。
少女は直ぐ殺されてしまうと考えていたが、少年はそうするどころか、逆に助けてくれた。
その理由を聞きたくて少年を見たが、少年は暫く少女を見てから顔を反らした。
「…解らない」
「え?」
「自分でも解らない…何故俺は、お前を助けたのか…」
自分、そして仲間以外の連中は皆容赦なく殺してきた
なのにこの少女は殺さなかった。
いや、殺す事さえ考え付かなかった。
自分でも不思議だ。こんな事を思えるのは初めてだったから。
少年の以外な返答に少女も唖然としたが、その言葉に安堵し、此処に来て初めて笑って見せた。
「…ありがとう」
「え?」
「助けてくれて、ありがとう」
初めて見た少女の笑顔に、柄にも少年は見惚れたが、それを隠すようにまた顔を反らした。
「お前、名前は?」
「わたしはソフィア。貴方は?」
「俺は、ソランだ」
これが、二人の出会いだった。
.
「………夢か」
目を開けると、刹那は殺風景な部屋に置いた。
此処は日本の隠れ家で、今自分がいる場所は隠れ家での自室。
刹那はベットから起き上がって先程まで見ていた夢を考えながら、リビングに向かった。
「あ、おはよう刹那!」
リビングにはエプロンを着用し、テーブルに朝食を並べるヒカルの姿があった。
あの日から6年。俺達は共にあの戦場を生き抜き、共にガンダムマイスターになった。
そして今、戦争根絶の為に戦っている。
「刹那、どうしたの?」
ぼーっとする刹那の顔を覗き込むヒカルの瞳には、もう昔のような怯えた色は見えない。
その瞳を暫く見た後、刹那は何でもない。と言い、テーブルに付いた。
テーブルの上にはサラダやスープ。そして中央にはパンが数個置かれていた。
「何か急にパンが食べたくなってね。急いで買って来たの」
ヒカルは椅子に座りながらパンを一つ皿に移し、ジャムを塗り出した。
「ん?刹那?」
パンを見て呆然とする刹那に、ヒカルは口に含んだパンを噛み飲み込み、刹那を見て首を傾げた。
「パンじゃ嫌だった?」
「…いや」
先程見た夢。二人が初めて共にした食事。
それを思い出しながら、刹那はパンを一つかじった。
「………旨い」
「そりゃ、よかったね」
何処か様子のおかしい刹那に不思議に思いながらも、ヒカルは食事を続けた。
俺の傍にずっといてくれる少女。
彼女は俺の友であり、戦友であり。
そして
俺の大切な人なんだ
.