第二期
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薄暗い一室のモニターからダブルオーを見つめる刹那。
彼の頬には、ロックオンに殴られた跡が痛々しく残っていた。
「他に方法はなかったの?」
「…なかった。あの時、彼女は、アニュー・リターナーではなかった」
「どうしてそう言い切れるんだ?」
「何故だろうな、だが俺には確信があった。ああしなければ、ライル・ディランディは死んでいた」
「そんな…」
「…ルイス・ハレヴィや、ヒカルもそうだ」
「あ…え?」
突然出た恋人の名やヒカルの名に、沙慈は疑問を感じた。
「ルイス・ハレヴィも何かに取り込まれている…、ヒカルも、取り込まれそうに…そう感じる」
「…最近の君はどこかおかしいよ。今までとは何か…」
『艦内のシステムチェックの為、一時的に電源をカットします』
フェルトの声を聞き終え、艦内は暗闇となった。
そして沙慈は刹那の顔を見ると、彼の瞳は、異様な光りを放っていた。
部屋で待機していたヒカル。ベッドに座り、手元にはトリィ大人しく乗っていたが、微動だもしていなかった。
そんな彼女の瞳は、刹那の時のように異様な光りを放っていた。
.
差出人不明の暗号通信が届き、刹那と沙慈はダブルオーライザーで単独現地に向かい、トレミーは迂回してポイントに向かう事になった。
知らせを聞いたヒカルはブリッジに向かったが、その途中、刹那と、彼に銃を向けるロックオンを目撃した。
「…!」
慌てて壁に隠れてロックオンを見ていたが、彼は刹那を撃つ事はなかった。
ロックオンは銃を下ろして横の壁に寄り掛かり、小さく“兄さん”と呟く。
ヒカルは出て行って声を掛けようとしたが、何を言っていいか解らず、結局違う道からブリッジに向かった。
(皆…自分の大切な人の為に…)
心中で呟きながら指に嵌めている指輪をそっと撫で、左手を握り締める。
その間にブリッジに辿り着き、ヒカルはスメラギに状況を聞いた後、その場を出て行こうとした時。
キイィンッ!
「……ッ!!」
急に頭に痛みが走り、ヒカルはその場で膝を着いた。
「ヒカル!?」
「な…ッ、ヒカル!しっかりしろ!」
スメラギがヒカルの様子に気付き、続いてティエリアやフェルト、ミレイナが駆け寄ってヒカルに声を掛けるが、彼女は頭を押さえて呻くばかりだった。
.
いつまで白を切るつもりだ!?いい加減あいつを渡せ!
あの子は私の娘だ!誰にも渡すつもりはない!!
その出来損ないの人形を作って悩み出したのはどこのどいつだ?お前達だ!!
ごめんね、二人共…。私達のせいで、こんな事に…
ママー、泣かないでー
―――…
そうだよ、ママ達は何もしてない。悪いのはあの人達だよ!
―――…、ありがとう…二人共、ありがとう…
お姉ちゃん、アタシ…お姉ちゃんから離れたくない…
―――…
一緒になろう、お姉ちゃん…
あなた!―――が、―――が!
なんて事を…全て、私達の責任だ…
助けてあげようか?
き、君は…
僕がその娘を助けてあげようか?
何だと?
僕なら彼女を救える。だがもし助かった時、彼女にはいずれ―――…
「ヒカルッ!!」
ティエリアの大声に我に返って前を見ると、ティエリアがヒカルの肩を掴んで見ていた。
「ティエリア…」
「一体どうしたんだ、突然呻いたと思えば呆然として…」
「…私、会った事がある…」
「会った?誰にだ?」
「…イノベイター…リボンズ・アルマーク…」
ヒカルの口から出た名前にティエリア達は驚愕した。
「小さい時…私はあの人と会った…」
「ヒカル、貴方まさか記憶が…」
「解らない…!両親らしき人達が私ともう一人にずっと謝って、悩んで…そしたらあのイノベイターが来て…誰かを助ける代わりに何かを要求して…ッ」
スメラギはヒカルの記憶が戻ったかと思ったが、その慌てようから見て、部分的に思い出しただけのようだった。
ティエリアはヒカルを立たせて補助席に座らせ、少し落ち着くよう言って作業に戻り、フェルトやミレイナも心配しながら席に着いた。
席に着いて落ち着こうとゆっくりと深呼吸をするが、今だ落ち着かないヒカル。
そんな彼女に、誰にも聞こえない声が響いた。
―――お願い、アタシにはもう、抑える力が残っていない
刹那・F・セイエイ。四年前にアナタと交わした約束を護って
そしてヒカル、負けないで…負けたら、アナタは戻れなくなる…
自分の心を、見失なわないで
.
「ヴェーダがある場所が解っただと!?」
暗号通信を送った者と接触を測った刹那はトレミーに戻り、皆に内容を話した。
「ああ、王留美からの情報だ」
「ヴェーダが見付かった…」
今までずっと探していたヴェーダの所在が解った事にティエリアは心なしか喜んでいた。
その時、フェルトが王留美かの暗号を解析し、スメラギはミレイナに超望遠カメラでポイントを標示するよう指示した。
「ラグランジュ2…」
「コロニー開発すら行われていない場所だ。隠れるにはうってつけだな」
「ポイント、標示するです」
床の画面にポイントの場所が標示されたが、そこには何も写っていなかった。
「何もないぜ?」
「…この位置からの天体図を画像に重ねて」
「はいです」
画像が重なり、何かの違和感を感じた。
「何だ?」
「星の位置…ズレてませんか?」
「光学迷彩ね、フェルト、ズレのある距離を算出して」
「了解。距離は…ッ、ちょ、直径15キロです!」
「15キロだって?」
「そこまで隠す程の物体が…」
「月の裏側にある」
その途中、別の暗号通信が入り、フェルトは内容を見て喜んだ。
「スメラギさん!ラボの輸送艦より、暗号通信です!」
「ママ!!」
「新装備が来たか!」
味方の到着にイアンとミレイナは補給作業をする為にブリッジを出て行った。
「刹那、貴方も一度着替えて来て。作戦会議はそれからよ」
「了解」
刹那は短く答えてブリッジを退出。そして扉が閉じる直前。
『トリィ!』
「あ、トリィ!」
ヒカルの肩に乗っていたトリィは刹那の後を追うように、飛び立った。
「行っちゃった…」
.
『トリィ!トリィ!』
「トリィ…?」
追い掛けて来たトリィは刹那の回りを飛び回った後、肩に乗ってある映像を出した。
「…!」
映し出したのは、黒いキャミワンピースを着た、ヒカルそっくりな女性。
「―――フレイヤ…」
久しぶりね、刹那・F・セイエイ
「何かあったのか?それとも、ヒカルの事か…?」
ヒカルの姉、フレイヤは刹那の質問に表情を少し暗くした後、再び口を開いた。
…刹那、アナタは、あの約束を覚えている…?
「…何?」
.
輸送艦と合流し、イアンとミレイナは機材の搬入作業に、他のメンバーはブリッジに集まった。
「王留美が指定したポイントに艦隊が集結している」
「間違いないな、あの場所にヴェーダがある」
「イノベイターの本拠地もな」
「アロウズ艦隊を突破し、ヴェーダを奪還する」
「今までにない激戦になるな」
画面に映るアロウズ艦隊、それを見て、皆の言葉を聞き、刹那は沙慈の方を向いた。
「行くよ、僕の戦いをする為に」
「クロスロード君」
「決めたんです。もう迷いません」
「私も参加させてもらう」
沙慈に続き、壁に寄り掛かって腕を組んでいたソーマが言った。
「ソーマ・ピーリス」
「私にも、そうするだけの理由がある」
そして、一拍置いてからロックオンも口を開いた。
「そうだな…、目的は違っても、俺達はあそこに向かう理由がある」
「そして、その想いは未来に繋がっている」
刹那の声に、全員が彼を見た。
「俺達は、未来の為に戦うんだ」
その言葉に、一人一人が自分の想いを語り出した。
「イノベイターの支配から、人類を解放する為に」
「僕や、ソーマ・ピーリスのような存在が、二度と現れない世界にする為に」
「連邦政府打倒が俺の任務だ。イノベイターを狙い撃つ。そして…」
「今度こそ、誰もが平和だと思えるような世界にする為に…」
「俺は変わる。変わらなければ、未来とは向き合えない」
隣にいるヒカルに視線を向けると、彼女は何も言わず微笑んだ。
「補給が済み次第、トレミーを発進させるわ。いいわね?」
スメラギはロックオンを見ながら言うと、ロックオンは短く答えた。
「でも、今のトレミーには操舵士が…」
その時、アレルヤの問いに答えるように扉が開き、一人の人物が立っていた。
「此処にいるだろ」
「ラッセ!」
「いいのか!?」
傷を負っているラッセを心配するアレルヤとティエリアだが、ラッセは安心させるようにブリッジに入った。
「勿論。行けるぜ」
刹那は全員の顔を見て、前を向いた。
「行こう、月の向こうへ」
.
トレミーは進路を月の裏側向けて進み出した。
ヒカルはパイロットスーツに着替えて通路を移動中、前方にフェルトを見て止まった。
「ヒカル」
「フェルト、どうしたの?」
「これ…」
フェルトはそう言って、持っていた物をヒカルに見せた。
「黄色い…花?」
「リンダさんがラボで育てたんだって。貴方から刹那に渡してくれる?」
「?何で私?」
「ヒカルからの方が喜ぶから」
フェルトは花を押し付け、ヒカルは渋々受け取った。
「綺麗だね…」
「…帰って来たら、一緒に育てようね」
「え?」
フェルトを見ると、彼女は両手を握り締めていた。
「だから今度はちゃんと…元気で、帰って来てね…」
握り締めた手は奮え、涙を流さないよう堪えていた。
「…それじゃ」
『トリィ!』
ヒカルは肩に乗っていたトリィを、フェルトの手に乗せた。
「私が帰るまで、トリィ預かっててね」
「ヒカル…」
「帰って来たら、一緒に色んな花を育てようね」
笑って指切りをしようと小指を出すヒカルに、フェルトは抱き着き、ヒカルも優しく抱き返した。
「約束ね…」
「うん、約束」
二人は指切りを交わし、ヒカルはフェルトとトリィに手を振りながらコンテナに向かった。
.
コンテナでロケットの中にある写真を見ながらヒカルを待っていた刹那。
「あ、刹那」
その時、待ち侘びていた人物の声が聞こえてそちらを見ると、ヒカルがこちらに近寄って来ていた。
「ヒカル」
「よかった、まだいて」
そう言って刹那の側に立つと、ヒカルはフェルトから渡された黄色い花を差し出した。
「花…?」
「リンダさんがラボで育てた物。フェルトが刹那にって」
「それを、何故お前が?」
「フェルトが私からの方が喜ぶって…」
苦笑いするヒカル。そんな彼女に、刹那は自分のヘルメットと渡された花を側に浮かせ。
「…」
「刹那…?わっ!」
ヒカルを引き寄せ、強く抱き締めた。
「せ、刹那…?」
突撃抱き締められて驚きつつも声を掛けるが、刹那は何も言わなかった。
.
―――刹那、アナタは、あの約束を覚えている?
「約束…?」
ヒカルと、アナタがヒカルと誓った約束を護る事…
「……」
アナタは今でも…あの子を大切に想っている?
フレイヤの問いに刹那は目を閉じて暫く黙った後、小さく呟いた。
「ずっと側にいる…」
…っ
「俺の気持ちは変わらない…例えヒカルの記憶がなくても、あいつが俺をどう思っていても」
.
「俺は、お前が好きだ」
刹那の突然の告白に、ヒカルは目を見開いた。
「せつ、な…?」
「済まない。だが、どうしても言いたかったんだ…」
ゆっくりと体を放し、顔を見合わせた。
「俺は未来の為に、ヒカルとの約束の為に戦う」
「私との…約束?」
「だから…生き残ろう、必ず…」
そしてヒカルの頬に軽く口付けして、ガンダムに乗り込んだ。
ヒカルは動く事なく、ただ刹那の後ろ姿を見つめた。
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間もなくして、戦闘配備が言い渡され、マイスターは各ガンダムに乗り込んだ。
『トレミー、全ハッチオープン』
全てのハッチが開き、ティエリアとセラヴィーが出撃し、アーチャーアリオス、アレルヤとソーマが出撃。
ロックオンとケルディムが出撃し、ヒカル、レイアスの番になった。
『レイアス、出撃準備完了。ヒカル…必ず帰って来てね』
『トリィ!』
「えぇ、勿論…レイアス!ヒカル・エトワール、出ます!」
フェルトとトリィに笑い掛け、翼を広げた機体は宇宙に飛び出し、続いて刹那と沙慈、ダブルオーライザーが発進し、五機は敵艦隊向けて飛び立った。
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先攻した敵MSをアーチャーアリオスが牽制し、セラヴィーが一気に破壊し、散り散りのMSをケルディムとレイアスが撃ち落としていった。
その中で敵艦がトレミーに特攻し、ダブルオーのライザーソードで薙ぎ倒した。
だが破壊された艦からはアンチフィールドが放出され、粒子ビームの効力が下がっていった。
敵は数でマイスターを押してトレミーまでも攻撃。
ブリッジ向けて敵機の銃口が向けられた時、カタロンの援軍、そしてクーデター派の助けによりトレミーはフィールドを突破。
ダブルオーはトランザムをして旗艦を破壊し、残りの敵艦とMSをカタロンとクーデター派と叩いた。
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