第二期
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『総員、敵MS部隊に対して、戦術プランS43で迎撃準備。敵は12機、おそらく増援が出て来るでしょうね。皆、油断しないで』
アロウズとの戦闘が開始され、スメラギの声にマイスター達が『了解』と返すと、刹那が先攻して敵機を叩き出した。
確実に一機ずつ敵機を落としていると、イノベイターの機体を発見。
ティエリアは直ぐにイノベイターの相手に向かい、刹那とヒカルが辺りの敵を蹴散らし、増援の部隊にはアレルヤとロックオンが向かった。
沙慈はオーライザーの中で、必死にルイスが乗る機体を捜すが見付からず、もう一機のイノベイターがダブルオーに接近した。
『借りは返させて貰うよ!ブリングとデヴァインの分もね!』
「っ!」
両手指から出るビームサーベルでダブルオーを攻撃しようとしたイノベイターの機体を、ヒカルは間に入ってビームソードで受け止めた。
『ヒカル!?』
「こいつは私がやる!刹那は他の機体を!」
『しかし!』
「行って!!」
ヒカルの引く気がないと言った声に、刹那は何も言わずにトレミー向けて飛び立ち、相手のサーベルを押し退けようと力を込めた。
『あらあら、折角の獲物を逃がしちゃったじゃない。どうしてくれるの?』
「私では満足しない?」
『まあ、しないと言えばしないけど、そうでもあるわね』
すると、イノベイターは自分から一度離れた。
『まさか貴方が、生き延びるとは思ってなかったからね』
「?」
『リボンズから話は聞いたけど、本当に記憶がないみたいね』
「…何を、言って」
意味の解らない言葉に疑問を持っていると、頭に痛みが走った。
「…ッ、うあ…っ」
『思い出しなさい。15年前の、あの日の事を…』
頭に響くイノベイターの声に、何かの光景が見えた。
巨大な家 優しい両親
いつも側にいた少女
泣き、苦しむ両親
辛そうな顔をする少女
何かの装置を持つ自分
そして
「ああああああッ!!」
『アッハハハハ!そうよ、思い出しなさい!そしてあの子を恨みなさい!だって貴方は、あの子のせいで一度!』
ザンッ!!
イノベイターが高笑いして油断している間に、レイアスはソードで敵機の片腕を斬り取った。
『こ、こいつ!』
イノベイターはもう片腕で反撃しようとしたが、それさえも斬り取られ、レイアスは敵機の両肩を掴んで引き寄せた。
すると腹部から砲が現れ、そこに光りが集まって来た。
『ちょっと、何する気よあんた!?』
「―――…死ね」
ドオオンッ!
間近で発射された砲はイノベイターの機体を完全に破壊したが、イノベイターは破壊する直前に脱出して逃れていた。
ヒカルはそのまま別の敵機を、無言のまま叩いていた。
―――ダメ、起きてヒカル
アナタはそんな事しちゃいけない
起きて お願い
起きて
『止めろーーッ!!』
「ッ!!」
突如聞こえた沙慈の大声に、ヒカルは我に返った。
「クロスロード、さん?」
『もう止めてくれ…!何も変わらない。仇を討っても誰も生き返ったりしない…悲しみが増えるだけだ…こんな事してたら、皆どんどんおかしくなって、何処にも…行けなくなる。前にすら進めずに…』
沙慈の声は皆の心に響き、何も言えないままトレミーに戻った。
『トリィ、トリィ』
トレミーに帰還し、マイスターは集まるよう言われていたが、ヒカルは調子が悪いと言って辞退し、自室に篭っていた。
パイロットスーツのままベッドの上で膝を抱えて疼くまるヒカルに、トリィは心配そうに鳴き続けていた。
だがそんなトリィの声にも気力は出なく、ずっと何かに悩んでいた。
『思い出しなさい!そしてあの子を恨みなさい!だって貴方は、あの子のせいで一度』
「私は、どうなったの…?」
イノベイターの言葉を思い出し、より強く膝を抱えた時、再び頭に痛みが走った。
「何…また…ッ!」
『トリィ!トリィ!』
苦しみ出したヒカルにトリィは慌てて飛び回るが、ヒカルは構わず部屋を出て、痛みが強くなる方に進んだ。
.
辿り着いた先はブリッジ。痛みを堪えながら扉を開けると、アニューがラッセに銃口を向けていた。
「ッ!?」
「リターナーさん!」
「何をするんですか!?」
アニューの行動に驚くフェルトとミレイナだったが、アニューの行動は変わらなかった。
「何をする?そんな事決まってるわ。だって私は」
「イノベイターなんだから」
銃声が、ブリッジに響き渡った。
.
自らイノベイターだと告げたアニューは、ラッセ向けて銃弾を放ち、咄嗟に動こうとしたヒカル達の方にも銃口を向けた。
「動かないで」
「アニューさん…!」
「ミレイナさん、貴方は私と一緒に来てもらうわ」
「え!?」
驚くミレイナにアニューは彼女に銃口を向けようとした時、ヒカルがアニューを止めようと飛び掛かった。
「っ!!」
バァン!
二発目に放たれた銃弾はヒカルの腕を掠り、体勢を崩したヒカルにアニューは銃口を額に突き付けた。
「貴方にも来てもらうわ。これ以上勝手な事をされないようにね」
「…っ」
フェルトとラッセはブリッジに残され、アニューはミレイナとヒカルに銃を突き付けながら出て行った。
.
一方、戦闘中に捕えたイノベイター、リヴァイヴから話を聞いていたスメラギとマイスター達だったが、フェルトからの通信で事情を知り、リヴァイヴを逃がしてしまった。
リヴァイヴが部屋を出たと同時に艦内システムがダウンし、ミレイナはアニューによってダブルオーの発進の準備をさせられていた。
「リ、リターナーさん…やめないですか?今なら皆も…」
「黙って」
「は、はいです!」
アニューはミレイナの説得にも聞かず、テープで口と両手を塞がれたヒカルは、彼女を睨んでいた。
やがて発進準備が整い、ヒカルの背に銃口を付け、ミレイナを捕まえながら通路を歩いていた。
その途中アニューは足を止め、ヒカルの頭に銃口を突き付けた。
「此処から先へは行かせん」
「ピーリスさん!」
その先には、ソーマが立っていた。
「何故此処が?」
「脳量子波が使えるのが、自分だけだと思うな」
.
「艦内システムがウィルスに汚染されている!?」
部屋で艦の状態を確認した後、無理矢理扉を開き、スメラギはブリッジに、残りは二手に別れてミレイナとヒカルを捜す事になった。
だが何処にいるか検討が全く掴めなかった時、何処からかトリィが飛んで来た。
『トリィ!トリィ!』
「何だ?」
「…ッ、トリィ、ヒカルの位置が解るか!?」
『トリィ!』
トリィはまるで着いて来いと言う風に強く鳴いて飛び立ち、刹那とロックオンは後を追った。
.
ソーマはアニュー向けて銃を構えていたが、アニューは引かなかった。
「ピーリスさんが来てくれたです。助かったです!」
「ふっ…、貴方の存在を失念していたわ。Cレベルの脳量子波使い、出来損ないの超兵」
「全ての元凶はお前達だ。大佐の仇を…」
「やめろ!!」
今にも撃とうとするソーマを、駆け付けた刹那が止め、ロックオンはソーマの前に立った。
「止めとけよ、アニュー」
「ライル…」
「俺を置いて行っちまう気か?
「…私と一緒に来る?世界の変革が見られるわよ」
以前変わらぬ状態の中言うアニューの言葉に、ロックオンは軽く笑った。
「オーライ。乗ったぜ、その話」
「えぇっ!?」
「オマケにケルディムも付けてやるよ。そういう訳だ刹那、今まで世話になったな」
そう言って振り返ったロックオンを見た刹那は彼の目を見た後、一度だけヒカルを見た。
(…!)
「そうか…解った!!」
刹那はソーマから銃を奪ってロックオンに発砲。
それに動揺した隙を狙い、ヒカルはアニューに体当たりし、彼女をミレイナから離させた。
アニューは人質が離れ、刹那から銃口を向けられた事に慌てて退散。
ヒカルの両手を解いた後、刹那はロックオンに問い掛けた。
「大丈夫か?」
「当てる事ねーだろ?たく…」
一先ず無事なロックオンを見て、刹那はヒカルと、彼女に抱き着くミレイナを見た。
「ヒカル、ミレイナも大丈夫か?」
「大丈夫、二人はアニューさんを…」
「…解った」
刹那はロックオンを連れてガンダムの元に向かい、ヒカルは泣きじゃくるミレイナを見た。
「うっ…え…エトワールさん…怖かったです…っ」
「よく頑張ったね、もう大丈夫。ソーマさんもありがとうございました…」
「べ、別に、私は…」
『トリィ!』
ソーマが返答に困っていると、トリィが飛んで来て、ミレイナを慰めるように肩に乗って鳴いた。
『トリィ?』
「さ、フェルトも心配してるわ。ブリッジに行こう」
「…っ、はいです」
もう一度ソーマに礼を言い、ヒカルはミレイナとブリッジに向かった。
.
ブリッジに戻った二人はフェルトとスメラギを安心させ、アレルヤはラッセを医務室に運び、ヒカルは部屋に戻った。
逃げるアニューを撃つ事が出来なかったライルは自分を悔やみ、刹那は彼の覚悟を代わりに受け止めると告げた。
その後、ヒカルの様子を確認しようと彼女の部屋に行くと、何やら左腕に包帯を巻いている所だった。
「あ、刹那…」
「ヒカル…、怪我を」
「これ?掠っただけだから大丈夫だよ。一応念のためにだし」
笑って再び巻き直そうとした手を、刹那が止めた。
「貸せ、俺がやる」
「あ、ありがと…」
優しく包帯を巻きながら、刹那はぽつりぽつりと呟き出した。
「お前はいつも怪我をする…」
「え?」
「仲間を庇って、事件に巻き込まれて、俺を庇って…」
包帯を巻き終え、そっと触れる刹那に、ヒカルは少し戸惑った。
「刹那、どうし…」
どうしたの?と言いかけた時、艦内に、フェルトの声が流れた。
『Eセンサーに反応。速度から、敵部隊と予測されます!』
「行くぞ、ヒカル!」
「う、うん!」
半脱ぎだったパイロットスーツを着てヘルメットを持ち、コンテナに急いだ。
しかし、リヴァイヴによってオーライザーが損傷され、ダブルオーを残し、残り四機が発進した。
.
『敵は小数だが、MAがいる。前のとは違うタイプか』
『来る!』
ティエリアの後に続いたアレルヤの声にハッ、とすると、MAが粒子ビームを放った。
だがビームはまるでガンダムを追い掛けるように曲がり、加えて威力に押されていった。
「この…っ」
MAのビームを引き付けようとヒカルは前に出て、ファングでシールドを貼りながら反撃していた。
途中、敵の一機がケルディムと対峙し、二機はそのまま中域から放れて行った。
「アニューさんがロックオンと!?」
『よそ見なんかするんじゃないわよ!!』
敵の一機、ガラッゾがレイアス向けて特攻し、ヒカルはGNソードを抜いてビームサーベルを受け止めた。
「また貴方か!」
『随分と嫌われたみたいね!そんな事言われちゃ傷付くじゃない!』
「イノベイターは…私達の敵よ!!」
『なによ!そういう貴方だって、本当は―――』
「―――…え?」
突然イノベイター、そして辺りの音が聞こえなくなり、目の前に別の光景が見えた。
一人の青年と、慌てた様子で話す夫婦。
そして側のベッドには、一人の少女が寝かされていた。
そっと少女に近寄り、顔を覗き込む。だが少女の顔は青年の手に遮られて見えず、代わりに青年の顔を見ようと顔を上げた。
.
『 ―――、ヒカル、 ヒカル!』
大声で自分の名を呼ばれ、我に返って前を見ると、ダブルオーに乗った刹那の画面が出ていた。
「刹那…」
『大丈夫か?』
「あの…イノベイター、は…?」
『…撤退した。そしてアニュー・リターナーは…俺が撃った』
「………え?」
その後刹那は何も言わず通信を切ってトレミーに戻り、ヒカルも少し混乱しながらも帰還した。
.
「うわあああっ!!」
ロックオンは声を上げながら刹那に掴み掛かり、壁に押しぶつけた。
「貴様が!貴様が!貴様がアニューをっ!!」
刹那を攻めながら殴り続けるロックオン。彼が殴る度にヒカルは怯え、ティエリアは止める様に声を掛けた。
「止めろ!」
「黙れ!!あいつは戻ろうとしていた…イノベイターではなく、人間として…俺達の元に… 貴様のせいで!! 」
強く刹那の頬を殴ったロックオンにティエリアは今度こそ止めようとしたが、騒動は少しずつ収まった。
「貴様の、せい…アニュー…、うっ…っ…」
ロックオンはずるずると床に座り込み、泣き叫んだ。
「うわああああーーッ!!」
叫びながらロックオン、ライルはアニューと過ごした時間を、最後に見た彼女の笑顔を思い出していた。
ねぇ、私達、解り会えてたよね?
ああ、勿論だとも
よかった
.