第二期
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アロウズの攻撃から逃れたトレミーは宇宙に上がり、ラグランジュ3にある秘密ドックに向かっていた。
ダブルオーの元で機体の状況を確認しながら、刹那は国を失ったマリナや、生きていたサーシェスの事を思い出した。
(マリナ…アリー・アル・サーシェス…何も変わっていない。そして俺は何も…)
次に思い出したのは、ティエリアとヒカルの会話。
『ヒカル。何故君は刹那と一緒にいなかった?あの会場で、僕は君に先に戻れと言った筈だが』
パーティーの最中、ティエリアはある男性に着いて行き、ヒカルを先に刹那の元に戻るよう告げた。
だが、彼女は刹那の元にはおらず、二人より遅れて戦闘区域に到着した。
『あ、はい。…でも、気付いた時にはもうガンダムに乗ってて、それまで何をしていたのか、全く思い出せないんです…』
『何?』
『可笑しいですよね、どうしたんだろ…私…』
その時の二人の会話を、陰から聞いていた刹那。
そしてその原因は、彼女の別人格とも言える、フレイヤの存在だと考えた。
(あいつは、フレイヤは何の目的であの会場に…ヒカルを護ると言っていたあいつが、ヒカルを敵の中に連れ出す理由とは…)
ヒカルとは違い、何も知らないフレイヤの事を考えていると、艦内に警報が響いた。
ビー!ビー!
『Eセンサーに反応!接近する機影があります!』
「敵?アロウズか!?」
その報せに刹那は直ぐにダブルオーに乗り込み、ヒカルとロックオンもガンダムに向かう。
アリオスとセラヴィーは修理中な為、ティエリアはブリッジに、アレルヤはマリーと共にいた。
先攻したダブルオーは敵機と交戦を開始するが、敵機がGNフィールドを使った事や、機体の機動性に押されていた。
GNソードが一つ壊され、敵機が間近に迫った時、レイアスとケルディムが砲を放ってダブルオーから遠ざけた。
レイアスが特攻しながらビームソードを手にし、斬り掛かるが、敵機はそれを弾き、後方からのトレミーとケルディムの砲から逃れるように、撤退した。
『逃げた?』
『どういう事だ?』
「……」
暫く敵機が去った方向を見ていたが、フェルトから帰還するよう言われて戻り、トレミーは最大加速でラグランジュ3に向かった。
数時間後、トレミーはラグランジュ3に到着し、秘密ドックに入港した。
そして下りて来たスメラギ達の先には、イアンと一人の女性が立っていた。
「ママ!」
ミレイナは女性を見るや否や彼女に駆け寄り、嬉しそうに抱き着いた。
「ただいまですぅ!」
「ミレイナ!元気にしてた?」
「勿論です!」
ミレイナと女性は笑い合い、事情を知らない面子はその光景に疑問を持った。
「今、ママって言わなかった?」
「ああ、言った」
「という事は…」
「そうか、会うのが初めての奴もいたか。儂の嫁だ」
「リンダ・ヴァスティです」
「わ、若い…」
「犯罪ですよ」
「どういう意味だ?」
沙慈やアレルヤはイアンの妻にしては若すぎると感じたリンダの事を呟き、直ぐさまイアンが二人に突っ掛かるが、それをスメラギが止めた。
「冗談はそれくらいにして」
「何だよ冗談って!」
「トレミーとガンダムの補給と開始を急いでもらえる?」
真剣な表情のスメラギに、イアンも気持ちを切り替えた。
「何があった?」
「この宙域に、アロウズが展開しています」
「ここのカモフラージュは完璧だと思うが…解った」
「ですが、補給と整備には最短で5日を要します」
イアンの言葉に助言を入れるような言葉に、スメラギ達は側にいたもう一人の女性を見た。
「貴方は?」
「見掛けない顔だな」
「初めまして、活動再開と同時に、CBにスカウトされた、アニュー・リターナーです」
「スカウト?」
「一体誰が」
「王留美に紹介された。アニューは凄いぞ、宇宙物理学、MS工学、再生治療の権威で、操船技術や料理に長け、おまけに美人だ!どうだ中々の逸材だろ?」
「よろしくお願いします…」
少し大袈裟なイアンの紹介にアニューは僅かに赤面するが、早速支援機を見せる為移動を開始した。
移動途中に、マリーと沙慈を待機室に送らせ、他のメンバーは支援機の元に向かっていた。
「ミレイナ、地上はどうだった?」
「ずっと海の中だったからつまんなかったです。ハッキリと見たのは砂漠くらいだったんですよ!」
「あら、それは残念ね」
補助用レバーに捕まって移動しながら、和気藹々とするミレイナとリンダ。
その光景を後方の方で見ていたヒカルは、何やら呆然としていた。
―――ママ!ママ早く来て!!
どうしたの?――――。
いいから早く!ほら、――――が!
…んま、まんま…
え?…まあ、凄いわ――――。貴方は天才ね
だって――――は、ママとパパの子供だもん!
「ヒカル!」
「…ぇ?」
急に名前を呼ばれて我に返った瞬間。
ゴンッ
目の前の壁に額をぶつけた。
「、…~ッ」
痛みを堪えるように額を押さえながら疼くまっていると、刹那が寄って来た。
「大丈夫か?」
「ッ、な…なんとか…」
「見せてみろ」
刹那はヒカルの顔を上げて額を見ると、僅かに赤くなっているだけだった。
「ただ赤くなっているだけだ。何ともない」
「はい、ありがとう…」
お礼の意も込めて笑顔になるヒカルに、刹那は頬に手を延ばして暫く止まっていた。
自分を見る真剣な眼差しの刹那に何も言えず、ヒカルも固まっていると、ティエリアの声が聞こえた。
「おい、行くぞ」
ティエリアの呼び掛けに、刹那は頬に触れていた手を下ろし、ヒカルの手を握った。
「行くぞ」
「あ、はい…」
ヒカルの手を引いて、皆の後に続く刹那。
繋がれた手。大きな背中を見ながら、ヒカルは何故か切なさを感じた。
ダブルオーの支援機、オーライザーと、アリオスの支援機、ガンアーチャー。
早速テストを開始する為、ダブルオーの元に向かう刹那。
去っていく彼の背中を見送るヒカル。
その表情は、何処か寂しそうだった。
ダブルオーが見える待機室に向かい、ガラス越しに見る二つの機体。
先程顔を見合わせた後程から、ヒカルは何故か刹那が気になっていた。
思えば、彼は自分が目覚めた時も側にいて、自分の手を握っていた。
だが、ヒカルは刹那の事を知らない。
彼だけではなく、自分の事さえも解らなかった。
仲間と言えるCBのメンバーから自分の事を、失った仲間達の事を教えられ、自分を見る度辛そうな表情をしていた刹那も、今では普通に接してくれる。
そして見付けた。
自分を心配する気持ちや、たまに見せる笑顔。
ギュ。
ガラスに付いていた手を握り、小さく呟いた。
「貴方は、私の何だったの…?」
ヒカルの呟きに答える者はいなく、代わりにオーライザーとのテストをしていたダブルオーから、高出量の粒子が流出した。
「凄い…なんて流出量…ッ!」
放出量に驚いていた途中、急に頭に違和感が走り、僅かによろめく体を押さえ、その場に膝を付いた。
「何…この違和感は…」
その時、放たれたのはダブルオーの粒子量だけではなかった。
アロウズは低軌道リング上に存在する【メメントモリ】を使い、中東最大の国、スイール王国を攻撃した。
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