第二期
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アロウズの者に素性を知られ、ガンダムで帰還する刹那とティエリア。
だがその途中、刹那がアザディスタンで目撃したガンダムと遭遇。
そのパイロットはかつて刹那が所属していた組織のリーダーであり、四年前ロックオンの命を奪ったアリー・アル・サーシェス。
二人はサーシェスに向かって迎撃するが、二人掛かりでも押され気味だった。
スメラギから報告を受け、待機していたロックオンとアレルヤ。
そして一足遅く帰還していたヒカルも報告を受け、目的地に向かった。
三機が加わった事にサーシェスは撤退し、アレルヤは二人に帰還するよう言ったが、ティエリアはサーシェスを追おうとした。
『ティエリア!』
『何故止める!?奴はロックオンの仇だ!!』
「え?」
そのティエリアの言葉に、ヒカルはセラヴィーの方を向いた。
「ロックオンの…仇…?」
小さく呟いた後、敵機が去った方向を見た。
「スローネの、発展型…」
画面に映し出された敵機の情報に、ヒカルの脳天に誰かの声が響いた。
「お前は先に帰れ…。俺は後から帰る…」
「ニー…ル…?」
「まだ…やり残した事があるんだ…」
「じゃあ…待ってるね…」
「ッ!」
「トレミーで…皆と…待ってるから…」
「…ああ、解った」
ボロボロになった緑のパイロットスーツを纏ったロックオン。
彼のその表情は優しかったが、何か違和感を感じた。
その後何があったか必死に思い出そうとするが、結局思い出せず、皆とトレミーに帰還した。
制服に着替えぬまま艦内を歩いていた時、ブリーフィングからロックオンとティエリアの言い争うような声が聞こえた。
「―――あのガンダムは何なんだ?それに、兄さんの仇って」
「言葉通りの意味だ。あのガンダムに乗っていたアリー・アル・サーシェスが、ロックオンの命を奪った」
「アリー・アル・サーシェス…詳しく聞かせてくれ」
ヒカルが中に入った時には他のマイスター達も揃っており、ヒカルも隅の方でティエリアの話を聞いた。
ティエリアから聞かされた四年前のロックオン事、ニールが亡くなった真相に、ロックオンは事情を聞いた後に静かに語った。
「成る程ね、兄さんは家族の仇を討つ為に、そのサーシェスって奴を…。ははっ…」
「何を笑う」
「世界の変革よりも私怨か…兄さんらしいと思ってな」
「不服なのか?」
「いや、尊敬してんだよ。家族が死んだのは十年以上も前の事だ。俺にはそこまで思い詰める事は出来ねぇ」
「…仇が、此処にいるとしてもか?」
刹那の声にロックオンは彼の方を向き、ヒカル達も刹那の方を向いた。
「どういう事だ?」
「…俺はKPSAに、お前から家族を奪った組織に、所属していた」
「!、…」
その発言にティエリアとアレルヤが止めに入るが、刹那は構わず続けた。
「あの時、俺が仲間を止めていれば…ロックオン、いや、ニール・ディランディは、マイスターになる事もなく…」
「刹那…」
「その時、お前が止めてたとしても、テロは起こったさ。そういう流れは変えられねぇんだ」
「だが」
「全て過ぎた事だ。昔を悔やんでも仕方ねぇ。そうさ、俺達は過去じゃなく、未来の為に戦うんだ」
そのロックオンの言葉にティエリアは目を見開き、何も言わずにブリーフィングを出て行った。
誰も彼を止めようとはせず、暫くして他の皆もそれぞれの自室に戻った。
制服に着替え、海底が見える展望室に佇んでいたヒカル。
思い出すのは先程のティエリアの話と、脳天に残っていた記憶。
宇宙を漂うガンダムの前で抱き合い、互いの本名を名乗り語るロックオン。
ニールという名を教えながら自分の頭をヘルメット越しに撫でる優しさ。
帰ってくると約束し、別れてしまった自分。
「…っ」
蘇る記憶に、ガラスに手を付いていた手を握り、僅かな涙を流した。
恐らくあの後、ニールは家族の仇を討つ為に亡くなった。
自分との約束を果たさずに。
「あんな約束、どうして私は…っ」
流れ出した涙は止まらず、ただニールやその時の無力差に泣いていると、誰かがヒカルの肩に手を置いた。
驚いて振り向き、そこに立っていた人物を見て目を見開いた。
「ロックオン…さん…」
「どうしたんだ?こんな所で…しかも」
手を出し、ヒカルの頬を流れている涙を拭った。
「何かあったのか?」
ロックオンの問い掛けに、止まっていた涙が再び溢れ出し、ロックオンは慌てた。
「お、おい!どうした!?」
「ごめ…、ごめんなさい…っ」
「え?」
突然の謝罪に、ロックオンは目を丸くした。
「四年前のあの時、私がニールさんを止めていれば…ニールさんが亡くなる事も、ロックオンさんがマイスターになる事も…なかったのに…っ」
「お前…」
「あの時私は、ニールさんの帰るという言葉を信じて、先に戻ってしまった…私があそこに留まっていれば…彼は…っ」
両手で顔を覆い号泣するヒカル。
ロックオンはその事を聞いた後少し考え、そしてそっと頭に手を乗せた。
「泣くなよ。全部お前だけのせいじゃないだろ?」
「でも…」
「さっきも言っただろ?俺達は未来の為に戦うんだって。それに、兄さんはちゃんと約束を守ったぜ」
「…え?」
「確かに兄さんは帰って来なかった。でも、“ロックオン・ストラトス”は、今此処にいるだろ?」
親指で自分を指差すロックオンを見て、ヒカルの目から零れていた涙は止まり、暫くした後、軽く笑い掛けた。
「…ありがとう…」
初めて自分に向けてくれた笑顔に、ロックオンは軽く見とれた後、ヒカルの頬に触れた。
「…ロックオンさん?」
「ロックオンでいい。それより、お前…」
「?」
ゆっくりと顔を近付けるロックオンに、ヒカルはきょとんとした。
「結構可愛いな…」
ヒカルの唇まで、後数㎝という距離まで縮まった瞬間。
『トリィ!!』
グサッ!
「いでっ!!」
「ッ!?」
二人とは別の声が聞こえると同時にロックオンは急に痛み出し、ヒカルの肩に頭を乗せた。
「ロックオン?どうした…」
の?と言いかけた時、ロックオンの背後にいたトリィに気が付いた。
「トリィ?いつの間に…」
「…ッ、何しやがるこの鳥野郎!!」
『トリィ!トリィ!!』
「うるせぇ!いきなり人の頭に突き刺さりやがって、文句があるなら人語を話せ!」
「あ、あの、ロックオン…」
トリィと喧嘩を始めたロックオンを止めようとヒカルがあたふたした時、艦内に警報が流れた。
『敵、水中MA六機を確認。各員、所定の位置に付いて下さい!』
「行くぞ、ヒカル!」
「っ、はい!」
フェルトの声が艦内に響き、ロックオンとヒカルはトリィをその場に残し、ガンダムの元に向かった。
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トレミーは宇宙に戻る為に海面に浮上し、ダブルオー以外のガンダムはトランザムを開始。
敵の魚雷を避けて上昇し、そのまま大気圏まで到達。
だが待ち伏せていた敵機が進行ルートを変更し、敵部隊がいる地点に到達してしまった。
しかし、浮上途中にダブルオーが発進しており、敵艦を撃墜させ、トレミーを攻撃していた敵MSは撤退した。
敵部隊から逃げる事に成功したのもつかの間。
ブリッジにいたスメラギに敵の指揮官からのメッセージが届いた。
“CBの、リーサ・クジョウの戦術に敬意を評する。独立治安維持部隊大佐、カティ・マネキン”と。
『逃げられないのね、あたしは…あの忌まわしい過去から…拭えない過去から…』
それをレイアスの中から密かに見ていたヒカルは、瞳に異様な光りを放ちながら呟いた。
「…そう。決して過去から逃げる事は出来ない」
「どんな犠牲を払っても…」
彼女の言葉を聞く者は、誰もいなかった。
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