第二期
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アレルヤが連れて来たマリー事、ソーマ・ピーリスにクルーはそれぞれの意見を言い、沙慈はルイスを思い出し、ミレイナは二人をからかう。
スメラギはマリーが此処にいる事を了承しているが、フェルトは浮かない顔をしていた。
『トリィ!トリィ!』
「ごめんね。ずっと一人にして」
自室に置きっぱなしにしていたトリィは寂しかったのかヒカルの肩や手に乗って鳴き、ヒカルは笑いながら遊ばせていた。
だが急に扉の元に跳んで突き、散歩をしたいのかと思ったトリィを連れて、通路に出た。
宛もなくただ通路を歩きながら肩に乗ったトリィを見ていると、前方の曲がり角の方から声が聞こえた。
「―――年前、国連軍のパイロットとして、私達と戦った。その戦いで、私達は失ったの。クリスティナを、リヒティを、モレノさんを、そして…ロックオン・ストラトスと、ヒカルの記憶を!」
「……っ」
聞こえたフェルトの声に、ヒカルは固まり、目を見開いた。
「待ってくれ!フェルト、マリーは」
「解ってます!彼女のせいじゃないって!でも…言わずには…いられなくて…っ」
フェルトは泣きながら走り出し、ヒカルの前を気付かずに通り過ぎ、エレベーターに乗り込んだ。
「ごめんよ、マリー…でもフェルトにとって、この船のクルーは家族同然で、彼女にとって、此処は、全てなんだ…」
そしてアレルヤとマリーの遠ざかった足音が聞こえたが、ヒカルは未だ固まっていた。
コツ
ゆっくりと踵を返し、呆然としながら歩き出した。
クリスティナ リヒティ
モレノ ロックオン
記憶
失った
家族
「―――ッ、」
急に頭に痛みが走り、それによってしゃがみ込んだヒカルにトリィは慌てた。
誰かが自分に笑い掛けている。
栗色の髪をした女性と、彼女に浸すらアプローチする男性。
金髪に白衣を纏い、黒いサングラスを掛けた男性が、怪我をした自分に包帯を巻いている。
オレンジのハロを片手に、自分の頭を優しく撫でてくる男性。その顔は。
「ロックオン、さん…?」
今とは違う、私服を纏った彼。だが、今のロックオンとは何処か違う。
―――今のロックオンは、四年前のロックオンの弟なの
「ロックオンさんの、お兄さん…?」
少しずつ痛みが引き、顔を上げようとした時、誰かが声を掛けて来た。
「ヒカル?」
その声に顔を上げると、ティエリアが立っていた。
「ティエリア…さん」
「どうした?大丈夫か!?」
「あ、はい…」
駆け寄って来たティエリアの手を借りて立ち上がり、彼の顔を見て苦笑いした。
「ちょっと、ふらついただけです。ありがとうございます」
「…」
「…ティエリア、さん?」
ヒカルの顔を見ながら僅かに睨むティエリア、に首を少し傾げた時。
バチンッ!
額にデコピンされた。
「………え?」
『トリィ!トリィ!』
その行為にヒカルは額を押さえて唖然とし、トリィはティエリアの頭に乗って突き出した。
「ティエリア、さん?」
「…それを止めろ」
「え?」
「…ッ、敬語だ!僕の事を敬語で呼び掛けるな!」
「え…え??」
その内容にヒカルは慌てていると、以前アレルヤに言われた言葉を思い出した。
―――ずっとそう呼んでたら、ティエリアは答えてくれなくなるかもよ?
ほ、本当ですか…?
敬語もダメ
えぇ!?
その時の会話を思い出した後、罰が悪そうな顔をした。
「あの、ごめんなさい…」
「え?」
「前、アレルヤに敬語で話さないほうがいいって言われたのに…使っちゃって…」
「ヒカル…」
「呼び捨てはいいんですけど、敬語は何故か無理で…」
アハハ、と頭を掻きながら苦笑いするヒカルに、ティエリアは頭に乗っていたトリィを手に乗せ、ヒカルの方に差し出した。
「なら、敬語もなくせるように努力するんだな」
「出来るだけ頑張りま…じゃなかった。頑張る」
トリィを肩に乗せてグッ、と意気込むヒカルに、ティエリアは軽く笑い、話し合いの為にブリーフィングに連れて行った。
国連による中東の解体、住民を宇宙に住まわせるという発表。
その内容にロックオンは無茶苦茶だと言うが、スメラギは世論は受け入れると、皆は受け入れると言った。
その途中、コンテナにいたイアンから通信が入り、支援機が完成したので、先に宇宙に上がって調整作業をすると言い、その間はミレイナが整備を担当する事になった。
次に、エージェントである王留美から通信が入り、アロウズの上層部が経済界のパーティーに出席するという情報が入った。
ティエリアは通信を遮って偵察に参加すると言い、そのバックアップに刹那が付くと意見した。
「仕方ないわね…その代わり、あたしの指示に従って「アタシも行かせて」
スメラギの言葉を遮った声に、皆は発した主を見た。
告げたのは、刹那とロックオンの間に立っていたヒカル。
彼女の言葉に、刹那は不思議に思って問い掛けた。
「ヒカル、何を…」
「アタシもその偵察に加わらせて」
「ヒカル?貴方、何を急に…」
「確かめたいの。真実を…この子の為にも、本当の事を」
左手を胸元まで寄せて強く握り、スメラギを見る強い眼差し。
「この子?本当の事?一体何を…」
「お願い、スメラギ・李・ノリエガ」
「ッ!!」
スメラギの名をフルネームで呼んだ事、それに刹那はヒカルの両肩を強く掴み、自分の方に向けた。
すると。
「…せつ、な?」
ヒカルは驚いたように刹那を見上げた。
「あの、どうしたの?急に…」
「お前…」
急な変化に刹那だけではなく、ロックオンやミレイナ以外も驚いていると、スメラギがヒカルの側に寄った。
「ヒカル、今あたしに言った事は?」
「え?今?…私、何か言ったんですか?」
明らかに知らないような反応をするヒカルに、スメラギは僅かに考えた後、皆を見渡した。
「今回の偵察はティエリアと刹那、ヒカルの三人で行わせます。王留美の調査結果が届き次第、作戦内容を説明します。以上」
スメラギはヒカルの腕を掴んでブリーフィングを退出し、ロックオンは頭を掻きながら扉の方を見た。
「何だあいつ、自分で言ってた事をもう忘れたのか?」
事情を知らないロックオンは一人ぼやき、ティエリアは刹那の方に寄り、小さく尋ねた。
「刹那、まさか今のは…」
「恐らくそうだ…あれは、ヒカルではない…」
ブリーフィングにいる最中、ヒカルはスメラギに偵察に参加すると志願し、だが彼女何処か違う雰囲気に、スメラギは彼女を連れて自室に向かった。
スメラギに腕を引かれたヒカル、そのまま彼女の部屋まで連れて来られ、ベッドに座らされた。
「スメラギさん?」
「ヒカル、正直に答えて。さっきのは貴方の意見?それとも…」
一拍置き、また続けた。
「貴方の考え?―――フレイヤ」
スメラギがその名を出した途端、ヒカルは目を見開いた後に俯き、暫くして顔を上げた。
瞳に異様な光りを放ちながら。
「そう。これはアタシの考えよ」
「フレイヤ…」
「久しぶりね。スメラギ・李・ノリエガ。四年振りなのに、未だにアタシの事を覚えてたなんて」
フレイヤはベッドから立ち上がり、スメラギに背を見せながらクスクスと笑った。
「もうアタシの事なんて、皆忘れたと思ってたのに、意外だわ」
「質問に答えて。何故偵察に参加するなんて事、貴方も解るでしょ?今のヒカルは、記憶を」
「ヒカルを危険な目には合わせない。それは保証するわ」
一切こちらを見ずに告げるフレイヤに、スメラギは顔を歪めた。
「偵察に参加して、どうするつもりなの?」
「言ったでしょ?確かめたい事があるの」
「目的は何?」
「…」
「フレイヤッ!」
話さなくなったフレイヤにスメラギは肩を掴み、こちらに振り向かせた。
「スメラギさん?」
だが、彼女はもうヒカルに戻っていた。
「あの、どうしたんですか?」
「あ…ううん。何でもないわ…」
慌てて手を離し、弁解するとヒカルは訳が解らないように首を傾げた。
そんな彼女を見ながら、スメラギは問い掛けた。
「ヒカル、さっき話した偵察の件だけど…貴方は大丈夫?」
「あ、はい。でも…私なんかが行っても足手まといになるような気が…」
「そんなに難しい事じゃないわ。ただの偵察。ティエリアにバックアップは刹那なんだから、大丈夫よ」
不安な色を見せるヒカルに笑い掛けると、彼女は了承したように頷き、軽く挨拶をして部屋を退出した。
そして残されたスメラギは腕を組み、考え事をしていた。
(確かめたい事…それは何なの?フレイヤ…)
スメラギはただ悩み、その答えを教える者はいなかった。
数日後、王留美の情報通り、アロウズの上層部が出席するパーティーが開かれ、ティエリアとヒカルが偵察に、刹那がバックアップに着いた。
「……」
スメラギの指示に従い、女装をしたティエリア。かなりの美人に変身した彼に、ヒカルは見とれていた。
「ティエリア…美人」
「そんな事を言われても嬉しくない」
車に乗り、パーティー会場までの道のりの中、ヒカルはティエリアをじーっと見つめ、ティエリアは足と腕を組み、不機嫌そうにしていた。
一方のヒカルは髪を上げ、青いドレスを纏った姿。
その姿を、刹那は車を運転しながらバックミラーで時折見ていた。
そして会場に到着し、ティエリアはそそくさと中に入るが、ヒカルは不慣れなハイヒールに戸惑っていた。
グラッ。
「あっ!」
ふらつき、転び掛けたヒカル。だが近くにいた刹那が彼女を受け止め、それは回避された。
「あ、ありがとう…刹那」
「大丈夫か?」
「うん。慣れない物なんて履くもんじゃないね…」
苦笑いして左手で僅かに落ちた髪を上げた時、刹那はハッ、とした。
ヒカルの薬指に、銀色の指輪が嵌められていた事に。
「その指輪…」
「え?ああ…ずっと付けてたから、何だか外すのも嫌だなって思って、ずっと付けてたの。…似合わない?」
「…いや」
ヒカルの左手を取り、刹那は笑った。
「似合っている」
指輪だけではなく、ドレス姿の事も含めて言った言葉にヒカルは頬を赤くし、小さく御礼を言ってティエリアを追い掛けた。
ふらつきながらも走るヒカルの背中を見送り、刹那は首元を開き、ロケットを取り出した。
それを強く握り、二人が戻るまでその場で待機した。
会場内では資産家や財政の者、アロウズ上層部の関係者が話に花を咲かせ、ティエリアもその中に紛れて会話をしていた。
しかしヒカルは話に参加する事もなく、壁の方に寄り掛かり、会場内の面々を観察していた。
(此処にいる殆どの人が、私達の敵…)
心中で呟きながら、ヒカルはカタロンの基地が襲撃された時の光景を思い出した。
(アロウズ…!)
我知らず拳を握り締めていると、ティエリアが一人の男性にダンスに誘われ、一曲踊った後に男性に着いて行くティエリアに不思議に思い、彼に駆け寄った。
「君は先に刹那の元に戻れ」
それだけ言って去るティエリアに、不思議に思いながらも、ヒカルは刹那の元に戻ろうとした時。
.
ごめんね、ヒカル
「ッ、」
頭に声が響き、一瞬俯いた後ヒカルは再び顔を上げ、出口とは違う方向に足を向けた。
「大丈夫よ。アナタは、アタシが護るから…」
一人事のように呟かれた言葉は、会場内のざわめきに消えた。
ティエリアをダンスに誘った男性、リボンズ。
彼こそヴェーダを掌握した人物であり、国連に擬似GNドライブを渡した者。イオリアの計画ではCBは四年前に滅びる予定だった事を話した。
だがティエリアは自分の信じた道を進むと、リボンズ達は間違っていると告げた。
リボンズはその考えに笑い、ティエリアが心を許したロックオンを侮辱。
それにティエリアは怒り、隠し持っていた銃をリボンズに向けるが、それは別のイノベイターに阻止され、ティエリアは窓から逃走した。
そして待機していた刹那は偶然出会ったルイスと話をしていたが、急に彼女が苦しみ出し、それを見掛けたビリーが近寄り、刹那をCBのメンバーと報告した。
騒ぐ外を見ながら小さく笑うリボンズに、小さな足音が近付いた。
「どうやら彼等は逃げたようだけど、君は行かなくていいのかい?」
窓の外を見た後、背後を振り返り、その人物に笑い掛けた。
「ヒカル・エトワール。…いや、今はフレイヤだったかな?」
リボンズの背後に立っていたのはヒカルの体を借りたフレイヤ。
戸惑う気配も見せず、真っ直ぐにリボンズを見るフレイヤの瞳に、迷いはなかった。
「彼等には先に戻ると連絡を入れておいた。どうせ気付かないでしょう」
「全く、彼といい君といい、困ったものだね。それより、何の用だい?」
「…さっきの話は本当なの?」
「何の事かな?」
焦らすようなリボンズの口ぶりに、フレイヤは拳を強く握った。
「CBが滅ぶ事が、計画に入っていたという話よ」
「…ああ。それがイオリア・シュヘンベルグの計画さ」
「っ、なら何故!あの時あんな約束をしたの!?」
ソファーに座って足を組むリボンズを、フレイヤは睨み続けた。
「あの時アナタの言葉を信じたからこそ、あの人達はアナタの手を借りた!でもそんな決まっていた計画を、何故あの時話さなかったの!?」
「もし話したとしても、彼等は僕の手を取ったさ。それは、君が一番解っているんじゃないのかい?」
「…ッ、」
「あの時僕の手を取らなければ、今の君は、ヒカル・エトワールは存在しない。全ての元凶は僕じゃない。彼等なんだよ」
確信のような言葉にフレイヤは瞳に怒りの色を見せた後、踵を返した。
「おや、僕を撃たないのかい?」
「アタシの役目はこの子を護る事。今此処でアナタを撃てば、この子が傷付く。不本意だけど…アナタの真相も聞けたしね」
フレイヤはそう言って室内を退出。
リボンズはグラスにワインを注ぎ、それを眺めた。
「君も、愚かだね」
リボンズの呟きは、フレイヤには届かなかった。
.