第二期
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先の戦いでCBはカタロンに助太刀され、マイスターズとスメラギ、マリナのメンバーで中東のカタロンの施設に向かった。
ケルディムとアリオス。輸送機で進み、やがて見えたカタロンの基地。
その中に機体を置き、刹那とスメラギ、マリナと沙慈はリーダーの元に向かい、他のマイスター達はその場に待機した。
秘匿義務を無視してヘルメットを取るロックオン。アレルヤもそれにバイザーの遮光を解いた。
「反政府組織、カタロン…」
歓迎するように喜ぶカタロンのメンバーに、ヒカルもバイザー越しに眺めていると、不意に手を引っ張られた。
何だ、と思って下を見ると女の子がヒカルの手を握っていた。
「子供…?」
「ねぇねぇ!お姉ちゃんもガンダムに乗ってるの!?」
無邪気に笑って手を引く子供に内心焦っていると、ティエリアがヒカルのヘルメットを取った。
「ティエリア、さん?」
「まだ少しは時間がある。その子供とでも遊んでいろ」
「え…でも…」
「本当!?じゃあこっちこっち!」
「あ、ち、ちょっと!」
ヒカルは女の子にグイグイと手を引かれて行き、それを見届けたアレルヤは小さく笑った。
「相変わらず、ヒカルには優しいね」
「実感させた方が良いだろうからな。自分の周りは、戦いだけではないと」
ティエリアはヘルメットを被ったままで表情は見えなかったが、なんとなく笑っているような気がした。
.
女の子に連れられて辿り着いた部屋には子供しかいなく、そこにはマリナの姿もあった。
「あら、貴方は」
「マリナさん…」
子供達と遊んでいたマリナの姿。ヒカルの手を引いていた女の子はマリナに喜んで駆け寄って輪に入り、ヒカルは離れた所からその光景を見ていた。
その時、一人積み木で遊んでいた男の子に目が行き、マリナも彼に気付いて側に寄った。
「一緒に遊びましょ」
そう言って手を差し出すマリナの手に、男の子は手をそっと乗せ、マリナに抱き着いた。
「ッ!」
―――、ずっと一緒よ!
うん。アタシ達はいつも一緒よ。
アタシ達は二人で一人。
二人で―――。
絶対に離れないから
「…ッ、」
頭に誰かの声が響き、また頭痛がし出し、ヒカルは子供達やマリナに気付かれないように廊下に出た。
親子のような光景に見えたマリナと男の子を見た途端それが別の何かに見えた。
自分と同じ黒髪、黒い服、金色の瞳。
そして…。
「―――ヒカル!」
廊下に膝を付くヒカルに気付き、誰かの手が肩に乗った。
それにゆっくりと振り返ると、青いパイロットスーツを着た青年がいた。
「せ…つな…さん?」
「大丈夫か?まだどこか具合が…」
「いえ…大丈夫です…」
壁に手を付いて立ち上がるヒカルを支えながら、背後の部屋にいる子供達を見た後、ガンダムの元に戻ろうと前を見たが。
その先には沙慈が立っていた。
「沙慈・クロスロード」
「あの子供達も君達の犠牲者だ。君達が変えた世界の」
「…ああ。そうだな」
「何も感じないのか!?」
「感じてはいるさ。俺は二度と、あの中に入る事は出来ない」
「それが解っていて、何故戦うんだ!?」
沙慈の横を通って背を向けた後、ヒカルを見た。
「ヒカル、一人で戻れるか?」
「え、はい…」
刹那はヒカルを一人ガンダムの元に行かせ、姿が見えなくなったのを確認し、口を開いた。
「理由があるからだ。解ってもらおうとは思わない。恨んでくれて構わない。…だが、ヒカルだけは恨まないでやってほしい」
「な、何を言って!?ヒカルさんだって、ガンダムに乗って君達と同じように!」
「あいつを巻き込んだのは俺だ。あいつを恨むくらいなら、俺を恨め…」
そう言い残し、僅かに拳を握って去る刹那の背中を沙慈はただ見送るしかなかった。
.
刹那に言われて一人輸送機に戻り、椅子に腰掛けて息を整えていると、刹那がマリナと共に戻って来た。
マリナはアザディスタンに戻ると頼み込み、刹那は輸送機で彼女を送ると言った。
「なんなら、そのまま帰って来なくてもいい」
「馬鹿を言うな」
冗談を言うティエリアに続いてアレルヤとスメラギもガンダムに移動し、ヒカルも移動しようと立ち上がった時。
パシッ。
「―――え?」
手を掴まれ、後ろを振り向くと、刹那がヒカルの手を掴んでいた。
「刹那…さん?」
「…」
「あの…」
「…刹那でいい」
「え?」
「それだけだ…」
そう呟いて操縦席に向かう刹那。
「ヒカル?行くわよ?」
「あ、はい!」
暫く刹那を見ていたが、スメラギに呼ばれ、ヒカルは刹那を振り返らずにガンダムに向かった。
立ち去るヒカルを見送り、マリナも刹那の隣の操縦席に座り、彼を見た。
ヒカルの手を掴んだ自分の手を眺める刹那。そんな彼に、マリナは軽く笑った。
「ヒカルさんが、大切なのね」
「…ああ」
マリナの呟きに短く答え、手を握る刹那。
その表情は、何処か寂しそうだった。
.
カタロンの基地からトレミーに戻るケルディムとアリオス。
刹那とマリナが乗った輸送機はアザディスタンの方角に飛び、ヒカルはその光景をアリオスの中から眺めていた。
「どうかしたの?ヒカル」
「え?」
共に乗せて貰っているスメラギがヒカルの方を向き、操縦をしていたアレルヤもヒカルを見た。
「ずっと輸送機を見ていたからだよ」
「刹那と何かあった?」
「…」
二人に言われて再び輸送機が去った方向を見ながら、ヒカルは呟いた。
「刹那さ…いえ、刹那に、呼び捨てでいいって言われて…」
「え?」
「基地内で頭痛がして、手を貸してくれたけど直ぐに先に行かされたり。変わった方ですよね、刹那って…」
軽く笑うヒカルに何も言えずにいるアレルヤとスメラギ。
そしてアレルヤは別の話題に変えようと話を反らした
「ならヒカル、僕の事も呼び捨てで呼んでね」
「え?でも…」
「ヒカルはあたしとイアンさん以外は全員呼び捨てだったのよ。そう呼んであげなさい」
「全員って…ロックオンさんやティエリアさんも?」
「当たり前よ」
「ずっとそう呼んでたら、ティエリアは答えてくれなくなるかもよ?」
「ほ、本当ですか…?」
「敬語もダメ」
「えぇ!?」
二人にあれやこれや言われて慌てるヒカル。
彼女をからかって遊んでいる事に、アレルヤとスメラギは笑った。
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数時間後、王留美からの情報でカタロンの基地がアロウズに知れたと連絡が入った。
マイスターは直ぐにガンダムに向かったが、ヒカルだけは迷ったようにブリッジに残っていた。
「ヒカル」
「ッ、」
「…貴方はそこの席に座りなさい」
「あ、はい…」
スメラギに言い渡された席ラッセの横の席に座るヒカル。
そこから発進させるガンダムを見送り、アロウズのMSを相手に戦うマイスターズ。
やがてトレミーはカタロンの基地上空に浮上し、壊滅された基地を見てクルーは言葉を無くした。
「酷い…」
「これが、アロウズ…」
壊された基地。
虐殺されたカタロンのメンバー。
その光景にヒカルは目を見開いた。
「あ…あ…っ」
破壊された街。
意気込む人の波。
体を押さえ付け、何かを付けようとする者。
「…ッ!」
再び頭痛がヒカルを襲い、体を押さえて震え出した瞬間。
―――大丈夫よ
「…ぇ?」
急に聞こえた声に、震えが止まった。
もうあんな事は起こらない。いいえ、起こさせない
「…だれ?」
今は何も知らなくていい、何も考えなくていい。アナタの苦しみは、アタシが受け止めるから
「…苦しみ…を」
でも、これは忘れちゃいけない。アナタは、アナタは戦わなきゃいけない。あの人達の願いの為に
「願い…」
そして思い出して…アナタの大切な人を
「大切な、人…」
カタロンの基地を見続けながら呟くヒカル。
彼女の目からは、涙が零れていた。
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