第二期
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―――、この子は―――よ
―――?
そう。貴方の妹よ。
アタシの妹?
そう。これからこの子と、私とあの人と暮らすの。―――も、―――を宜しくね
うん!―――、これから宜しくね
「―――…あれは…誰…?」
医務室から宛がわれた部屋で目覚めたヒカルは途切れ途切れの夢に呆然とし、ベッドから起き上がった時、部屋の扉が開いた。
「失礼しますです。エトワールさん、気分はどうですか?」
「貴方は…」
「あたしはミレイナ・ヴァスティです!エトワールさんの制服を持ってきたです!」
持っていた制服を渡され、それを見ながら俯いた。
思い出すのは、CBのメンバーとの対面。
「ヒカル!目が覚めたのね!よかった!」
嬉しそうに笑い、ヒカルに抱き着いたフェルト。
「全く、心配かけやがって」
頭を乱暴に掻き回すラッセ。
「四年ぶりだね、ヒカル」
制服に着替えたアレルヤがヒカルに笑い掛ける。
「起きて早々戦いに出るとは、君らしいな」
腕を組んで軽く微笑むティエリア。
「へ~、お前がヒカルか、初めまして」
ヒカルの顔をまじまじと見るロックオン。
「これでガンダム五機で出撃出来るな」
ティエリアと同じように腕を組むイアン。
初めて逢った人達が、私を知っている。自分でも知らない、自分を…。
「エトワールさん?」
「ッ、な、何…?」
「いえ、ぼーっとしていたので、まだ体調が悪いですか?」
「あ…大丈夫。制服、ありがとう」
「はい。何かあったら何でも聞いて下さいね!」
ミレイナはそう笑って部屋を出て行き、ヒカルは制服に着替えた。
収監施設に拘束されていたアレルヤとマリナを助けだし、国に戻るという彼女にトレミーは進路を一時アザディスタンに向けた。
マリナとの会話を終え、ラッセは進路を変える為にブリッジに向かい、イアンはガンダムの整備にコンテナに向かおうとした時、ミレイナが顔を出した。
「つかの事聞くです!二人は恋人なのですか?」
「「違う/違います」」
刹那とマリナは同時に答えた事に、残念そうな顔をした。
「乙女の感が外れたです」
「…ミレイナ、ヒカルの様子はどうだ?」
話を変えるように、イアンはミレイナに尋ねた。
「さっき制服を渡しに言った時には起きてたです。体調も大丈夫だと言ってたですよ」
ヒカルの名が出た事に刹那は少し顔を俯かせ、イアンはそれを見た後でそうか。とだけ言って退室した。
「刹那、話がある」
「…解った」
ティエリアに言われて刹那もマリナがいた部屋から出て、通路で話を始めた。
「何故君はヒカルの側に行かない」
「…」
「いくら記憶がなくても、彼女は彼女だ。なのに何故彼女に逢いに行かない?」
ティエリアの方を向かず、横を見続ける刹那に、ティエリアがまた発言しようとした時、刹那が口を開いた。
「…傷付けてしまう」
「何?」
「今ヒカルに逢ったら、俺はあいつを傷付けるような言葉を、何故記憶を無くしたと問い質しそうな気がする…」
「刹那…」
「だから今は、あいつには逢えない。あいつの記憶が無くなった原因が俺であろうとも…逢う勇気がない」
拳を強く握る刹那に、ティエリアは何も言えなかった。
.
制服を纏ったヒカルは、宛もなく通路を歩いていた。
その時、前方のコンテナの扉が開き、フェルトが出て来た。
「あ、貴方…」
「ッ、」
フェルトもヒカルに気付いて立ち止まると、彼女は俯いて泣いていた。
その涙にヒカルはそっとフェルトに近寄り、彼女の頭を撫でた。
「大丈夫ですか?」
「…ぁ」
(あれ?フェルトどうしたの?)
(ヒカル…)
(どっか痛いの?それとも気分悪い?大丈夫?何かして欲しい事ある?)
自分が落ち込んでいた時、たまたま居合わせたヒカルは直ぐさま駆け寄り、頭を撫でながら慰めてくれた。
記憶を無くしても変わらない優しさ。
フェルトはそれに涙を流し、ヒカルに抱き着いた。
「…、…ッ…」
抱き着いて泣くフェルトをヒカルは何も言わず抱き返し、慰めた。
フェルトの部屋に移動し、ベッドに座りながらヒカルはフェルトの話を聞いた。
「今のロックオンは、四年前のロックオンの…弟なの」
「弟…じゃあ、四年前のロックオンさんは?」
何も言わないフェルト。それにヒカルは気付き、小さく俯いた。
「解ってるの。彼は前のロックオンじゃないって…でも、どうしても…気になるの…」
膝に置いていた手を強く握ると、ヒカルの手がそっと添えられた。
「フェルトは、ロックオンさんが好きだったんだね」
「えっ、あ、それは…!」
「だから、悲しいんでしょう?大切な人が、いなくなって…」
柔らかく微笑むヒカルに、フェルトは赤面しながらも小さく頷いた。
「大切な人…私にもいたのかな?」
「え?」
「今の私は…、何も思い出せないから」
「あ…」
「自分がどんな人だったのかも、CBの皆も、ガンダムの事も、何もかも…」
そう呟くヒカルは微笑んでいるが、フェルトはその表情が何処か悲しそうに感じた。
「どうして無くしちゃったのかな…今までの私を…」
四年間で伸びた長い髪が顔を隠し、それにフェルトは立ち上がり、机を漁った。
「フェルト?」
「じっとしてて」
フェルトは櫛でヒカルの髪を整えた後、白いリボンを持ち、頭の上部で結んだ。
「よし、出来た」
櫛を机に置いて鏡を渡し、結われた髪型にヒカルはフェルトの方を向いた。
「ありがとう。でもいいの?このリボン…」
「うん。ヒカルにあげる。少しでもオシャレしないとね」
オシャレに気を使えと言って戦死したクリスティナ。その言葉に自分も四年で少しは変わった。
それを思い出しながら笑い掛けるフェルトに、ヒカルも釣られて笑った。
「私の制服だけ違うって事だけで、もう十分オシャレだと思うけどね」
「あ…、そうかもね」
ヒカルの制服は皆と違い、上下が繋がったロングスカートタイプ。その事実に、共に笑い出すフェルトとヒカル。
記憶を無くしても変わらない彼女の笑顔に、フェルトは少なからず安堵した。
.
一人海底が見える部屋にいたマリナを見付けた刹那は彼女にどうした、と聞いた後、共にアザディスタンに来ないかと誘われた。
「国を立て直したいの!争いのない、皆が普通に暮らせる国に、貴方にも手伝って欲しい」
「それは出来ない」
「何故?」
「俺に出来るのは、戦う事だけだ」
「悲しい事を言わないで。刹那、争いからは何も生み出せない。無くしていくばかりよ」
無くしたもの。
それはロックオン。リヒティにクリスティナ。
そして、ヒカルの記憶。
「…CBに入るまでは、俺もそう思っていた。だが、破壊の中から生み出せるものはある。世界の歪みをガンダムで断ち切る。未来の為に、それが、俺とガンダムの戦う訳だ」
拡大する戦火の中、互いの過去や想いを聞き、再び立ちあがったCB。
咎を受けるその日まで、共に生きようと誓ったヒカル。
刹那のはっきりとした答えに、マリナは俯いた。
人手が足りなく、動力室でイアンの手伝いをする沙慈。
整備を手伝いながら、イアンに何故此処にいるのかを問い質した。
「嫌という程戦場を見てきて、戦争を無くしたいと思ったからだ。此処にいる連中も同じだ。戦場の最前線に送られた者、軍に体を改造された者、家族をテロで失った者や、離された者、ゲリラに仕立てあげられた者。皆戦争で大切な物を失ってる。世界にはそういう現実があるんだ」
「でも…」
沙慈の言葉を遮るように、イアンは体を起こした。
「そうさ、儂等は犯罪者だ、罰は受ける。戦争を無くしてからな」
イアンの告げた言葉に何も言えずにいると、誰かが動力室に入って来た。
「あの、イアンさん…」
「ん?」
イアンは扉の方を向き、沙慈も振り向き、目を見開いた。
そこにいたのは、ヒカルだった。
「っ、ヒカル…さん?どうして」
「?あの…、赤い子が飲み物を持って行って欲しいって騒いでて…」
『キュウケイシロ、キュウケイシロ』
ヒカルの足元にいた赤ハロはそう言いながら耳を動かし、イアンはヒカルの側に寄って飲料水を受け取った。
「ほら、お前さんの分だ」
「あ、ありがとうございます…」
投げ渡された飲料水を受け取り、動力室を見回すヒカルをじっと見ていた。
「お前さんのガンダムはもう見たのか?」
「あ…はい。でも、あれを私は乗りこなせるんでしょうか…」
「心配すんな。お前は前に無意識状態であれを乗りこなせたんだ。直ぐに慣れるさ」
「…」
少し不安気味のヒカルの頭をイアンは軽く撫でてからまた作業に戻り入れ代わるように沙慈がヒカルの側に寄った。
「ヒカルさん。君も、君もガンダムで…」
「…貴方は?」
「え?」
その言葉に疑問を持った時艦内が激しく揺れた。
ドオンッ!
「な、何だ!?」
「敵襲!?」
「キャアッ!!」
急な揺れにヒカルは倒れ掛けたが、沙慈が咄嗟に支えるように抱えた。
「あ、ありがとう…」
「あ、いえ…」
「この針路で攻撃だと…っ」
次々と出る攻撃に艦内は激しく揺れ、移動しようにも動けなかった。
「っ、ヒカル!お前シミュレータはやったか!?」
「…ッ!」
「ガンダムしか対応は出来ん!今直ぐコンテナに行け!」
「でも…」
「待って下さい!!」
沙慈の声にイアンは少し驚き、ヒカルをよく見ると、顔は青ざめ、少し震えていた。
「私…私は…っ」
「ヒカルさん…」
震えるヒカルを支えていると揺れが収まり、強い衝撃が一度来たが、その後は何の攻撃も起きなかった。
「収まった…?」
「ようだな、儂はブリッジを見てくる。ヒカルを頼む!」
「あ、イアンさん!?」
イアンは沙慈にヒカルを任せて動力室を出て行き、沙慈はヒカルを見た。
「ガンダム…マイスター…私が、…戦わな…っ」
「……」
震えながら呟くヒカルの肩を、沙慈は支えるしか出来なかった。
.
数分後、ヒカルは沙慈に部屋まで送ってもらい、ベッドに座り込んでいた。
だが不意に顔を上げ、室内を見回した時、ある物に気付いた。
「これ…」
隅に置かれていたケース。
それを開けると、中には緑色の、首に赤いチョーカを付けたロボット鳥が入っていた。
それを手に持ち、椅子に座って眺めていると、頭の中に何かが浮かんだ。
(この子はロボット鳥のトリィだよ)
(トリィは私の大切な友達なんだから)
(こらトリィ!止めなさい!)
(お前も…無事で…よかっ…た…)
「ト…リィ…?」
ハッ。
何かに気付いたように端末を開き、機械鳥と接続し、まるで知っているように操作した。
そして最後のボタンを押し終わった時、機械鳥の目が光り、無理矢理接続を外し飛んで部屋の外に出た。
「あ、待って!」
機械鳥を追うように、ヒカルも部屋を飛び出した。
ブリッジではサイズが少し小さい制服を纏ったスメラギが恥ずかしそうに皆の前に現れ、フェルトが変わりの制服を取りに扉を開けた時、それは現れた。
『トリィ!』
その声、その姿に皆は驚き現れた機械鳥は刹那の肩に乗った。
「…トリィ?」
『トリィ!』
四年間一度も見なかった、ヒカルの相棒。
その出現に驚いていると、今度はヒカルが現れた。
「トリィ!駄目じゃない、勝手に出て行っちゃ!」
『トリィ!』
トリィの名を呼んだ事、慣れたように手に乗せるヒカルに皆は驚愕し、スメラギはヒカルに尋ねた。
「ヒカル、どうしてトリィの事を…」
「え?部屋の隅のケースに入ってて、何故かこの子はトリィって名前だと解ったんです。起動の仕方も何故だか解って…」
『トリィ、オキタ!ネボスケ!ネボスケ!』
『トリィ!トリィ!!』
久しぶりに逢ったトリィをからかうハロに、トリィは襲い掛かる。
そんな二匹を見て皆が呆然とする中、ヒカルだけが小さく笑っていた。
その笑いに皆も釣られるように笑い、久々に見たトリィとハロの戯れを見物した。
四年振りに見たヒカルの笑顔。
その笑顔に刹那は安堵し、小さく笑った。
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