第二期
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ラグランジュⅠの資源衛星群。
そこにあるCBの基地に戻り、ティエリアはライル。もといロックオンにMSの指導を行っていた。
「MSの戦闘経験は?」
「あるわけないだろ?作業用のワークローダに乗ったぐらいだ」
「全くの素人を連れて来たのか、刹那め」
「だからさ、やる事一杯あるだろ?よろしく頼むよ。可愛い教官殿」
「茶化さないでほしい!」
ケルディムに乗りながら不機嫌になるティエリアに声を掛けるロックオン。
その様子を別室で見ていたフェルトは浮かない顔をしていた。
「ライル・ディランディ…」
また違う部屋ではイアンとミレイナが何やら作業中、そこにラッセが入室して来た。
「ミレイナ、ケルディムとアリオスの収容は?」
「終わってるです」
「スメラギさんは?何してる」
「部屋に閉じこもったままだ。CBに戻った訳じゃないと言い張ってなあ…」
宛がわれた部屋のベッドに寝転がり、四年前に全員で取ったフォトを見るスメラギ。
その表情は相変わらず浮かない顔だった。
.
軟禁されている沙慈に呼び出され、刹那は彼の元に向かい、問い出された質問に答えた。
「確かに記録にある通り、スローネと俺達は、別の立場で武力介入を行っていた」
「仲間じゃないと?」
「ああ」
その返答に沙慈は俯くと、首から下げていたチェーンに付いている指輪に目が行った。
「それでも、君達は同じようにガンダムで人を殺し、僕と同じ境遇の人を作ったんだ。…君達は憎まれて当たり前の事をしたんだ」
「解っている」
「世界は平和だったのに…当たり前の日々が続く筈だったのに…っ。そんな僕の平和を壊したのは君達だ!」
「自分だけ平和なら、それでいいのか」
「っ、そうじゃない…でも、誰だって不幸になりたくないさ」
刹那に背を向けたままの沙慈の言葉を聞いた後、刹那は黙って部屋を出て行った。
王留美の情報により、アレルヤが反政府勢力収監施設に拘束されていると聞き、全員がブリーフィングに集まった時、遅れてスメラギもやって来た。
「アレルヤが見付かったって本当なの?」
「ああ、王留美からの確定情報だ」
「これから救出作戦を始める」
「救出ってどうやって?」
すると刹那が数歩前に出て、スメラギを見た。
「あんたに考えて欲しい」
「え?」
「スメラギ・李・ノリエガ俺達に戦術予報をくれ」
刹那の意外な言葉に、スメラギは耳を疑った。
「そんな…」
「彼が戻れば、ガンダム五機での作戦行動が可能になります」
「それでも心許ないが」
余計な事を言うロックオンを、すかさずティエリアは睨んだ。
そしてティエリアが言った一言に、スメラギは目を見開いた。
「五機のガンダムって…、まさかヒカルも、ヒカルも戦わせるつもりなの!?」
「勿論だ」
「あの子はまだ目覚めてさえいないのよ!それなのにまた戦わせるなんて…」
「ヒカルは戦う」
スメラギの声を遮るように刹那は言った。
「以前のヒカルなら、ヒカルは必ず戦う道を選ぶ。それはあんたも解っている筈だ」
「刹那…」
「手を貸してくれ、アレルヤを助ける為に」
刹那の言葉に続いてラッセの言葉。
皆の言葉に悩んでいると、フェルトがスメラギにCBの制服を差し出してきた。
「…っ、止めてよ。そうやって期待、押し付けないで…。あたしの予報なんて、何も変える事は出来ない。皆を危険に曝すだけよ」
予報を断り、スメラギは出て行こうとした時。
「後悔はしない!」
刹那の声に足を止めた。
「例えミッションに失敗しようとも、あんたのせいなんかにしない。俺達は、どんな事をしてでも、アレルヤを、仲間を、助けたいんだ。頼む、俺達に戦術をくれ」
背を向けたまま暫く黙るスメラギ。だが僅かに、フェルトの方に顔を動かした。
「フェルト、後で現状の戦力と、状況のデータ、教えてくれる?」
「スメラギさん!」
そう言い残し、スメラギは退出。トレミーは基地から地球に先行を開始した。
もはや習慣のようにヒカルが寝かされている部屋に訪れ、刹那はカプセルにそっと触れた。
「今回の作戦でアレルヤを助け出せば、再びマイスターが揃う。お前が目覚めれば…」
カプセルに置いていた拳を握り、唇を噛み締める。
「スメラギ・李・ノリエガにはああ言ったが…目覚めたお前はまた、俺達と一緒に戦ってくれるのか…?」
そっと手を下ろし、刹那はダブルオーの元に向かった。
だが刹那が退出し、扉が閉じた時。
ヒカルの目が、僅かに開いた。
出撃準備の為、各ガンダムに乗り込むマイスター達。
ケルディムに乗り、自分にも役割がある事に少し驚くロックオン。
その内容を見ながら、先程のブリーフィングに出て来た名前を思い出した。
「なあハロ、“ヒカル”って誰だ?」
『ヒカルハマイスター。イシキフメイ、ネムッテル。ネムッテル』
「意識不明って、そんな奴がガンダムに乗れんのか?」
『ヒカルハツヨイ。ミンナソウイッテタ』
「皆って、兄さんもか?」
『モチロン。モチロン』
疑問ばかりの、名前からして女性のマイスター。皆が認める強さ、それを聞いたロックオンは小さく笑った。
「俺も逢ってみたいねぇ。そのヒカルって奴に」
ロックオンがハロと話している同時刻、刹那はティエリアから聞かされた事実に驚いていた。
「マリナ・イスマイールがアレルヤと同じ施設にいる…」
四年前に出会った、アザディスタンの第一皇女。
神を信じる者として、ヒカルとは違う返答をくれる、話し相手のような女性。
何故彼女が拘束されているのかと考えている内に、トレミーは大気圏に突入した
スメラギの戦術プラン通りに、施設に攻撃を開始し、刹那がアレルヤの救出。ティエリアとロックオンが敵機を引き付けていた。
しかしいくら粒子放出量の多いセラヴィーでも、同じ太陽炉を積んだMSには苦戦も強いられる。
ロックオンも能力の数値は高いが素人。
集中攻撃を受けるセラヴィーを、イアンはモニターから見ていた。
「くそ!まだか刹那…っ」
コンテナから皆を応援するイアン。すると何の前触れもなく背後の扉が開き、不思議に思って振り返った。
「お、お前…」
.
作戦時間は僅か5分。アレルヤは3分で助け出され、刹那は別の人物を残った時間で助けに行った。
敵MSが一斉射撃を行い、その隙に一機がセラヴィーに急速接近した。
「しまった!」
敵MSのランスがセラヴィーに向けられた瞬間。
ドオオンッ!!
「何ッ!?」
ケルディムとは違うビーム砲が放たれ、敵MSのランスは破壊。
発射された上空を見上げると、再び何撃もの砲が放たれ、敵MSの武装を破壊。
ティエリアは倒されていく敵MSを見ながら空を見上げると、微かに翼のあるガンダムを見た。
しかしそのガンダムはセラヴィーに近付く事なく別の場所に飛び、他の敵機を叩き出した。
「あのガンダムは…まさか…」
アレルヤは指定されたポイントに辿り着き、新たなガンダム、アリオスに乗り込み、刹那やティエリアと連携を計ってその場を離脱。
ロックオンも別の場所でハロからミッションが終了した事を知らされ、救出されたカタロンのメンバーが乗る船を見て安堵した。
「ハア、どうにかだな」
一息付いてトレミーに帰還する途中、ハロが何やら騒ぎ出した。
『タイヘン!タイヘン!レイアスタイヘン!』
「あ?どうしたハロ?」
『レイアスタイヘン!オチル!オチル!』
「レイアス?落ちる?何のこっちゃ?」
『シタニイル。シタニイル』
ハロに言われて下を見ると下には赤い、10枚の翼のガンダムが飛んでいた。
だがそのガンダムは急に降下し、ロックオンは慌てて翼のガンダムを支えた。
「危ねぇな。どんな操縦してんだこのマイスターさんは?」
『ヒカル、イシキフメイ。ヒカル、イシキフメイ』
「ヒカルって、さっき言ってた…」
ロックオンは赤いガンダムと通信を繋げ、話しをしようとしたが、繋がった画面を見て言葉を失った。
画面にはパイロットスーツを着ていない女性が、気を失っていた。
「こんな奴がパイロット?つか、何で気絶して…」
ロックオンはトレミーに通信を繋ぎ、ヒカルの事を報告した。
『おい!赤いガンダムのパイロットが気絶してるぞ!どうなってんだよ?』
その通信をダブルオーから聞いた刹那は目を見開き、急いで機体から下りた。
「せ、刹那!?」
「すぐ戻る!」
連れて来たマリナを機体の側に置き去りにするのを構わずに、ケルディム、そしてヒカルの新しいガンダム、レイアスに走る刹那。
収容されたレイアスの元にはイアンが待っており、刹那を見て直ぐに駆け寄った。
「刹那!」
「ヒカルは!?」
「まだ中に…」
すると刹那は外からコックピットを開け、中を見るとパイロットスーツを着ていないヒカルが気を失っていた。
「ヒカル!しっかりしろ!ヒカルッ!!」
何度呼び掛けても反応しないヒカル。
刹那はヒカルを抱え、医務室に走った。
ヒカルの容体を聞いた後、ティエリアは別室でアレルヤを椅子に座らせ、暖かい飲み物を渡した。
「ありがとう、ティエリア」
「アレルヤ、どうして連邦政府に捕まっていた?超人機関の情報を」
「いやはや凄いなこの船は。水中航行すら可能とは」
会話の途中に現れたロックオンに、アレルヤは立ち上がって驚愕した。
「ロ、ロックオン!?どうして!?」
「そのリアクション飽きたよ」
それから何度かロックオンとティエリアの顔を見た後アレルヤは恥ずかしそうに頬を赤くした。
「す、済まない…」
「変わらないな、君は」
「そうかい?」
「無理に変わる必要はないさ。お帰り、アレルヤ」
「ああ。ただいま」
再会を果たした、ティエリアとアレルヤ。
ヒカルを医務室に送った後、再びマリナがいる所に戻った刹那は、彼女に謝罪した。
「俺が関わったせいで、余計な面倒に巻き込んでしまった。済まない」
「…刹那、何故なの?何故貴方はまた戦おうとしているの?」
「それしか出来ないからだ」
「嘘よ!戦いのない生き方なんて、いくらでもあるじゃない!」
刹那に背を向けていたマリナだったが、納得の行かない返答に彼女は振り返った
「それが思い付かない。だから俺の願いは、戦いでしか叶えられない。戦う事でしか、護りたい奴を護る事が出来ないから…」
「…そんなの、そんなの…悲しすぎるわ」
ゆっくりと、涙を流し出すマリナに、刹那は少し驚いた。
「何故泣く?」
「貴方が、泣かないからよ…っ」
何も言えない彼女に、刹那はただ黙っていた。
.
カプセルのあった部屋から医務室に移されたヒカル。
検査をしたが特に異常はなく、ベッドに寝かされ、そんなヒカルの手を刹那はずっと握っていた。
イアンの話によると、ヒカルは無意識状態でコンテナに向かい、ガンダムを動かした。
ティエリアを助け、敵機を撃墜後、意識が途切れた彼女をロックオンが救出した。
「…っ」
ヒカルが目覚めてくれた事は嬉しかった。だが直ぐにガンダムに乗ったと聞いた時、死ぬ程心配した。
俯いて手を握り続けていると、医師が戻り、刹那に声を掛けた。
「セイエイ。此処は私が見ているから、ガンダムの所にでも行ってこい」
「だが…」
「目覚めたら直ぐに知らせてやるから」
医師に肩を叩かれ、ヒカルの手をそっと離し、部屋から出ようとした。
「―――…っ」
「ッ!」
その時、刹那や医師とは違う、小さな声が聞こえ、刹那は直ぐに振り返ると。
ベッドの上、眠っていたヒカルを見ると、彼女の目がゆっくりと開いた。
「目覚めた…?」
「ヒカル…!」
目覚めた彼女に、医師は直ぐにヒカルの容体を軽く確認し、それを済ませた後、自分が立っていた場所を刹那に譲った。
「ヒカル!ヒカル!!」
「…?」
「俺だ、刹那だ!解るか?」
ヒカルの左手を握り、笑顔で語る刹那。
ヒカルは目覚めたばかりで頭が朦朧としているのか、呆然としていた。
そして少しの間開けた後、放った声に、刹那は耳を疑った。
「―――…だれ…?」
息が止まり掛けた。
「…ヒカル?…何を」
「ヒカル…それが私の名前…?」
繋いでいたヒカルの手を離し、後ずさる刹那。
ヒカルはゆっくりと起き上がり、周りを見回した後に医師を見た。
「…此処は?」
「…此処はプトレマイオスの医務室で、君はCBのガンダムマイスターだ」
「ガンダム…マイスター…?」
医師は呆然とするヒカルに簡単に説明し、ヒカルは呟きながら聞いていた。
「CBの所持するMS、ガンダムのパイロットの事だ」
「…CBの…ガンダム…」
医師から言われた事をゆっくりと繰り返した後、立ち尽くす刹那を見た。
「貴方も…」
「っ、」
「貴方も、マイスターなの…?」
全く知らない人を見るようなヒカルの瞳。
その目に拳を握り、口を噛み締め、刹那は医務室を飛び出した。
「セイエイ!」
医師の言葉も聞かずに走り去る刹那を、ヒカルは呆然と見ていた。
医務室から自室に駆け寄り扉を閉めた。
真っ暗な部屋、前方の壁まで進み、殴り付けた。
ガンッ!
「…神は、…何処まで俺を追い詰め、苦しませる気だ…っ」
(え、神様?)
(俺は神を信じていない。いくら神の為に戦っても、神なんていないんだ…)
まだ刹那とヒカルが出会って間もない頃、静まり返る夜、互いに大きな銃を持ちながら話していた。
(わたしは、いると思うな)
(何故だ?)
(ずっといるって思ってたけど、お父さん達から放れた時、祈っても神様は助けてくれなかった)
当時の事を思い出し、暗い顔をするヒカル。刹那は彼女の話を黙って聞いていた。
(その時神様はいないって思ったけど、後になって神様はわたしを助けてくれたそのお陰で、ソランにも出会えた)
(ソフィア…)
(だから神様はいる。わたしはそう思うよ)
「…っ」
四年間、そして昨日マリナに語られても、一度も流れる事のなかった涙が零れ、刹那は膝を付き、疼くまった。
「ヒカル…っ」
護りたかった彼女の心さえ
俺は護れなかった
あいつの心を殺したのは
この俺だ
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