第一期
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
初めて皆に逢って
初めて話をして
初めて失敗を侵した時
庇ってくれたのが貴方だった
本当の兄のように慕った事もあった
本当の家族のように大切だった
頭を撫でてくれる大きな手と、お調子者みたいな笑顔が
なによりも、大好きだった
.
各機のガンダムに整備を急いでいる中、マイスターとスメラギはブリーフィングルームにて新たな能力、トランザムシステムを閲覧していた。
「機体に蓄積した、効能度圧縮粒子を全面解放し、一定時間、スペックの三倍に相当する出力を得る」
「オリジナルの太陽炉のみに与えられた機能…」
「トランザムシステム…」
「ハッ、イオリアのじいさんも、大層な置き土産を残してくれたもんだ」
「でも、トランザムを使用した後は、機体性能が極端に落ちる」
「両刃の剣となる」
その時、地上にいる刹那からの暗号通信が届いた。
刹那の情報によれば、国連軍のMSは全機宇宙に上がり、またスローネの一機が鹵獲。
鹵獲した人物は、アリー・アル・サーシェスと告げた。
アリー・アル・サーシェス。刹那を利用し、ロックオンの家族を奪った者。
ヒカルは我知らず、左手を握り締めた。
数時間後、トレミーが敵輸送艦を確認し、マイスターはガンダムに搭乗との指示が出た。
「ヒカル」
コンテナに向かう途中、ティエリアに呼ばれて手を引かれ、デュナメスのコンテナにロックを掛けるよう言われた。
「ティエリア?」
「彼をこのまま戦闘に出す訳にはいかない。その為の配慮だ。頼む」
「…分かった」
ヒカルは少し不安になりながらも端末を弄ってロックを掛け、ティエリア、アレルヤと共に移動した。
「少し強引じゃないか?」
「口で言って聞くタイプじゃない。私は前回の戦闘で彼に救われた。だから、今度は私が彼を護る」
「ティエリア…」
彼の想いは解る。だが、今はそれが逆にヒカルを不安にさせた。
二人と別れ、ヒカルはレクサスに乗り込み、もはや習慣のように左手を強く握った。
グローブの下、左手の薬指にはめた指輪の感触を感じながら、気を落ち着かせた。
「大丈夫…私は、大丈夫…」
ピピッ
『レクサス、発進して下さい』
「了解。レクサス、ヒカル・エトワール。出ます!」
クリスティナの指示に宇宙に飛び出し、前方に見える大量のMS。それに、先ずはキュリオスが先制攻撃を開始。
その後に続く敵機の砲の雨を避けつつ、確実に敵機を撃墜していった。
だが、纏まっていた敵機は散り、資源衛星を盾にしながら敵機を撃墜していくが予想より多い数に早くも苦戦をしいられていた。
砲撃を避けては攻撃の繰り返し、その時、キュリオスとヴァーチェが苦戦していると通信が入った。
「っ!アレルヤとティエリアが…ッ!」
よそ見をした瞬間、背後に攻撃を受けた。が、直ぐに体制を整えて迎撃を再会した。
「トランザムは活動限界時間がある。迂闊に使うわけには…っ」
画面の横に、キュリオスとヴァーチェを映し出した。
「アレルヤ!ティエリア!…ッ!!」
集中攻撃を受ける二機に、ヒカルは目を見開いた。
死んじゃう
護れない
今の世界を変えたいから、私はマイスターになった
なのに なのに 護れない
かつてアザディスタンでも体験した
ガンダムに乗ってるのに、何も出来ない
「嫌だ…いやだ…っ、
イヤダーーッ!! 」
急にレクサスの動きが代わり、背後の羽が外れ、それは単独で敵機を攻撃した。
そのままレクサスはヴァーチェの元に向かい、トランザムシステムが切れた彼の前に立ちはだかった。
『ヒカル!?何を!』
再び羽をパージし、向かってくる敵機を撃墜し、背中の長剣を手に突っ込んだ。
『ヒカル!』
ティエリアの声に耳を傾けず、放たれる砲を交わし、敵機のコックピットを貫いた。
背後に回った敵機にビームブーメランを投げ、羽とレール砲を同時展開させて撃墜させた。
何も考えれない
ただ目の前の敵を撃つだけ
そうだ。皆壊せばいい
皆、消せばいい
邪魔な物はみんな
「消えちゃえ」
敵機の肩を掴んで引き寄せ手足を切り裂き、コックピットに刃先を向けた。
声が聞こえる。恐らく敵機のパイロット。
必死に助けてと叫ぶ声、命ごいをする声
でも
「死ねばいいのよ」
ズシャッ!!
容赦なく貫いた敵機を放し別の敵機に迫ろうとした時後方から強力な砲が数機を破壊した。
ピピッ
『ヒカル!大丈夫か!?』
通信を繋げたのはロックオン。しかし、ヒカルは彼の声も耳に入らなかった。
『おいヒカル?返事しろよ』
「…きゃ…」
『は?』
「消さなきゃ…邪魔な物は、皆…全部」
『ヒカル?何を…ッ!?』
ロックオンの言葉を無視しレクサスは敵の艦隊の方に機体を飛ばした。
「ヒカル!あ~たく、あのおてんば娘は!」
愚痴を零しながらロックオンはデュナメスにドッキングしたGNアームズをレクサスが向かった方向に飛ばした。
敵の艦隊を見付けるや否や直ぐに砲を使って二艦を撃墜。
残る一艦を撃墜しようとビームソードを構え、特攻した瞬間、横から攻撃を受けた。
「っ!…誰?」
攻撃した方向を見ると、そこにはスローネヅヴァイの姿。
ヒカルは通信で伝えた刹那の言葉を思い出し、スローネに攻撃を仕掛けた。
「傷付けた…お前が、二人をッ!」
『何ゴチャゴチャ言ってやがる!?』
「邪魔な物は…皆、消す!」
『やれるもんならやってみろってんだ!!』
スローネとレクサスの刃が交じり合う度に、火花が散り、砲を掠めるがヒカルは一歩も引かなかった。
こいつがいるから刹那は戦い続けた
こいつがいるからロックオンは家族を失った
こいつがいるから
「二人は辛い目にあったんだ!!」
『煩えつってんだろッ!!』
スローネはレクサスの両手を切り落とし、コックピットに蹴りを入れた。
「アアアアッ!!」
『逝っちまいな』
コックピットに砲が放たれる瞬間、場に到着したデュナメスの砲が二機を離した。
「ヒカル!大丈夫か!?」
『ロッ…ク…っ』
「暫く離れてろ!こいつは…俺が撃つ!」
弱々しいヒカルの声を聞きながら、ロックオンはスローネを睨み付けた。
遂に見付けた家族の仇。
ロックオンはレクサスを下がらせ、スローネと対峙した。
.
「…っ…う…」
いつの間にか気絶していたヒカルはゆっくりと目を開き、辺りを見回すと、そこはまだレクサスの中。
「私、何…を…」
上手く回らない頭を抑えながら端末を操作し、横の画像を見ると、ボロボロのデュナメスからロックオンが出て来た。
「ロック、オン…?」
彼の行動にヒカルはコックピットを開け、外に出ようとすると、ロックオンがこちらに移動して来た。
「ヒカル、無事だったか…?」
「ロックオン…私、何をしていたの?」
戦闘時の事を思い出そうにも、頭がぼーっとして何も浮かばない。
そんなヒカルに、ロックオンは微笑んで頭に手を置いた。
「何もないさ、ただちょっと敵さんの攻撃を食らって気絶してただけさ」
「そ…か…デュナメスは、動けるの?」
「ああ、ハロがトレミーまで運んでくれる」
「なら…帰ろう?皆、心配してるから…」
小さく笑って機体を動かそうとしたが、急にロックオンに手を引かれて抱き締められた。
「…ロック、オン?」
「…ニールだ」
「え…?」
「呼んでくれないか…俺の本名」
彼の口から聞いた、ロックオンの本名。
いつもと違う彼の雰囲気にヒカルは少し疑いを持ったが、ゆっくりと背中に手を添えて抱き返した。
「…ニール」
「…サンキュ」
「…私は…ソフィアだよ」
「え?」
「私の本名、ソフィア・レアルド」
「ソフィア、いい名前だ」
本名を名乗ったお返しと言うのか、ヒカルも自分の本名を明かし、より強く抱き締められた。
小さく呟くと、ロックオンは体を離し、再びヒカルの頭を撫でた。
「お前は先に帰れ。俺は後から帰る…」
「ニー…ル?」
「まだ、やり残した事があるんだ…」
ロックオンはそう言うと、デュナメスの射撃用スコープを握った。
ヒカルはスコープに目を向けず、ただぼんやりとロックオンの顔を見続けた。
「じゃあ…待ってるね」
「ッ!」
「トレミーで…皆と、待ってるから」
「…ああ、解った」
ヒカルはもう一度ロックオンを抱き締めてからレクサスに入り、ゆっくりとトレミーに向けて機体を進めた。
「あばよ、ヒカル」
お前と過ごした時間、楽しかったぜ
.
無事トレミーの帰還ルートに入り、ロックオンの帰りを待っていると、不意にハロの声が聞こえて来た。
『ロックオン、ロックオン、ロックオン、ロックオン』
何度も繰り返されるハロの言葉
それが何を意味するのか、聞かなくても解ってしまった。
同時に、彼が言っていたやり残した事の意味を悟った。
「…どおして」
俺は後から帰る
「約束したじゃない…っ」
ああ、解った
「待ってるって…、帰って…くるって…っ」
抱きしめてくれた大きな体
頭を撫でてくれる優しい手
いつもの優しい笑顔
「…っ、 ロックオーーンッ!! 」
兄さんのような大切な人は
遠くに行ってしまった
.