第一期
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何故ここにいる
かつて滅んだ、自分の母国クルジス
荒れた町に、銃を持ったまま、ただ佇んでいた
「ソラン」
不意に自分の本名を呼ばれ後ろを振り向くと、そこにはヒカルがいた。
「ヒカル?」
「こっちに来て、ソラン」
彼女の声に導かれるように側に寄ると、ヒカルはその場にしゃがんで地面を見た。
そこには、一輪の花が咲いていた。
「ここにも、花が咲くようになったんだね。きっと、もっと咲いてくれる。この世界も変わってくれる」
「ヒカル…」
花を見続けて語るヒカルを、刹那はただ黙って見ていた。
「だからソラン、貴方はもう戦わなくていいんだよ」
「…ヒカル?」
すると、彼女は首を横に振った。
「私はソフィアだよ」
「え…?」
「もう戦わなくていい。名前も偽らなくていい。だから呼んで、私の名前を」
ヒカルは刹那に寄ってそっと銃を下ろして頬に手を添え、刹那もそっと手を重ねた。
「ソフィア…」
「私達の役目は終わったの。世界は、平和になったんだよ」
ヒカルは刹那を抱き締めた。
「もういいんだよ…ソラン」
刹那は片手をヒカルの背に回し、もう片手に持っていた銃を、ゆっくりと離した。
ガシャンッ
「ッ!!」
銃が落ちたと同時に目が覚め、刹那は辺りを見回した。
「夢、か…」
今自分がいるのはエクシア専用のコンテナ。
ヒカルは未だ意識が戻らずに医務室にいる。
ここにいる訳がない
「何故、あんな夢を…ソフィア…いや、ヒカルは…俺は、止めたいのか?俺は…止めたがっているのか?」
悩んでいると、スメラギから艦内放送が流れた。
『総員、第一種戦闘準備。敵部隊は、擬似太陽炉搭載型、19機と断定。既に相手はこちらを補足しているわガンダム四機はコンテナから緊急発進。フォーメーション、S34で迎撃!』
急いでエクシアに乗り込んで発進し、他のガンダムとフォーメーションを開始した。
(護ってみせる…)
刹那は一度だけ、トレミーを振り返った。
(あそこにはあいつが、ヒカルがいるんだ!)
グリップを強く握り、前方にいる敵MSに視線を向けた。
「ヒカル、俺が護るんだっ!!」
―――ヒカル
「…何?」
―――まだ起きないの?
「起きたい、でも…目が開かない…」
―――起きたら、アナタは何をするの?
「私のする事は…戦争の根絶」
―――世界が認めていなくても?
「それでもやり遂げると決めたの…ソレスタルビーイングに入った、あの日に…」
―――傷付いても、苦しくても、辛くても
「私は戦う…」
その時、やっとヒカルの目が開かれ、目の前にいたフレイヤを見た。
「フレイヤ…」
―――ヒカル、今アナタ以外のガンダムは戦っている
「えっ!」
―――でも、ヴェーダのバックアップがなければ、アナタ達のガンダムは起動しない
「そんな…どうすればっ」
ーーー大丈夫、アナタにはアタシがいる。アタシが一度だけ、レクサスを動かしてあげる
「フレイヤが?どうして…」
―――アナタの為に、アナタを護る為にパパとママがヴェーダに秘密で付けたの
「父さんと、母さんが…?」
すると、フレイヤはヒカルを抱き締めた。
―――アナタが護りたい人達を、助けてあげて
.
ようやく目を覚ますと、目の前には白い天井と、側にはトリィの姿もあった。
『トリィ!トリィトリィ!!』
ヒカルが目覚めたのが嬉しかったのか、トリィは室内を飛び回り、ヒカルは呼吸器を外してゆっくりと起き上がった。
まだ少し頭がぐらつき、体も動きが悪い。
だが、何とかベットから起き上がり、状況を判断する為に管制に向かった。
管制に入ると、画面上では四機のガンダムが見た事のないMSと戦っており、スメラギは入って来たヒカルに驚愕した。
「ヒカル!貴方いつの間に!」
「スメラギさん、どうなっているんですか?あのMSは一体…」
何の情報もないヒカルは少し混乱し、スメラギは小さく息を吐いた後、画面に映るMSを見た。
「あれは国連軍側に搭載された、擬似太陽炉を積んだMSよ」
「擬似太陽炉って、トリニティの…」
「誰かが国連軍にあのMSを渡したのよ…そして、そのMSを使って私達を潰すつもりよ」
スメラギの言葉にヒカルは画面を凝視していると、突然クリスティナが声を上げた。
「スメラギさん!ガンダム四機、システムダウン!ヴェーダからの介入です!」
「ヴェーダが!そんな…」
「予定通り、こちらのシステムに変更して!ヒカル、貴方は部屋に…」
スメラギはまだ傷の癒えていないヒカルをここから出させようと肩に手を置いたが、ヒカルは俯きながらその手を下ろした。
「ヒカル?」
「こんなの、認めない…認めない!!」
そう叫び、ヒカルは管制を飛び出した。
「ヒカル!」
システムが停止し、ただ宇宙をさ迷うエクシア。
そんな中、不意に聞こえたのは夢で言っていたヒカルの言葉。
もう、いいんだよ
「っ…!」
―――もう、戦わなくていいんだよ。ソラン
「ヒカル…
違う!違うっ!!俺はまだ生きている!生きているんだ!!動けエクシア!動いてくれ!ガンダーーム!!」
その時、システムが起動を再開し、再び敵MSに刃を振るった。
迫ってくるMSを一機撃墜し、もう一体のMSの攻撃を避けようとした時、別の砲が敵MSを撃墜した。
砲が放たれた先を見ると、そこにはレクサスの姿があった。
「ヒカル…!」
『よくも…よくも皆を!』
レクサスはレール砲、ライフルを構え、敵部隊に向けて放ち始めた。
その余りの物量に敵部隊は引き始めるが、レクサスは逃がさんとばかりにレール砲を放ちながら長剣を構えた。
一機を破壊し、迫って来たもう一機の頭部に拳を当てて怯ませた時、敵部隊の撤退信号が上げられた。
『ハア…ハア…ッ…』
「ヒカル!」
荒い息をするヒカルにエクシアを寄せた時、ハロが叫び出した。
『デュナメス、損傷!ロックオン、負傷!』
「っ、ロックオンが!?」
『早くトレミーに!!』
直ぐにデュナメス、ヴァーチェを回収してトレミーに向かう。
ヒカルがレクサスから下りた時には既にロックオンは医務室に運ばれ、彼の容態を確認する為に刹那に駆け寄った。
「刹那!」
「っ、ヒカル…」
「ロックオンは!?大丈…」
ぶと言い終わる前に、ヒカルは刹那に強く抱き締められた。
「せ、刹那?」
「馬鹿野郎…っ、何故、何故出て来た!?」
刹那はバッ、と体を放し、改めてヒカルの体を見た。
頭に巻いてある包帯からは血が滲み、手足は僅かに震えていた。
「こんな体で戦闘に出るなんて…下手をすればお前は!」
「なら黙って見てろって言うの!?皆が危険なのに、ただ見ている事なんて出来る訳ないでしょ!」
「ヒカル…」
「私は生きている、ガンダムという力もある。力があるのに、もう誰も救えないのは絶対に嫌だ!」
自分の想いを刹那にぶちまけ、体を震わすと、ヒカルは刹那に抱き着いた。
「一人になるのは、もう嫌なの…っ」
抱き着きながら啜り泣く声に、刹那はそっと彼女を抱き返した。
「ごめん…」
「許さない…約束を破ろうとする人なんか、絶対許さない…!」
抱き着く力を強めたヒカルに、刹那も答えるように力を強めて抱き返した。
そうだ、自分は彼女に誓った筈だ。
ヒカルを一人にはしないと、誓った筈だ。
そして、彼女の姉であるフレイヤにも言われた。
『アタシの妹を、そしてアナタがヒカルと誓った約束を、護ってあげて…』
俺は生きている。生きている限り俺は戦う。
今腕の中にいる、ヒカルを護る為に。
.
ティエリアを庇ったロックオンは利き目に傷をやられた。
傷を治す為に彼をカプセルにいれて集中治療を行おうとするが、ロックオンはそれを拒否。
別の部屋で以前怪我を負った傷を治療し終えたヒカルは、早急に皆の元に向かった。
「ヒカル、怪我は大丈夫かい?」
「うん…ロックオンは?」
別の医療室に向かい、ヒカルに気付いたアレルヤが彼女に寄って体を支えた。
「集中治療を断ったよ。維持でも戦うみたいだ…」
「…」
「ヒカル?」
俯いたヒカルに首を傾げると、手を合わせてぎゅっと握った。
「私が、もっと早く出ていれば…」
「ヒカル…」
「ロックオンは、あんな怪我を…っ」
ポンッ
自分を責め続けていると、誰かの手が頭に乗り、ヒカルは顔を上げると、ロックオンが笑って立っていた。
「ロックオン…」
「自分を責めるな。お前だって酷い怪我をしてたんだお互い様さ」
「でも…っ」
何がなんでも自分のせいにしようとするヒカルに、ロックオンは彼女の怪我をしている部分の腕を軽く掴んだ。
「ッ!!」
「無理すんな。無重力だからいいが、本当はかなり痛いんだろ?」
「だって…っ、ロックオンだって、同じくらいの痛みを…」
顔を上げたヒカルは目に涙を溜めながら、そっとロックオンの右目の眼帯を触った。
だが、ロックオンはヒカルの頭を優しく撫でながら呟いた。
「俺は大丈夫だ」
「ロックオン…」
「お前はもう休め。早く傷を治すんだな」
ヒカルをアレルヤに任せてロックオンは室内を退出した。
「ヒカル、取り敢えず休もう。暫くは敵も来ないと思うから」
「うん…」
アレルヤはヒカルを部屋まで送った後、コンテナに向かい、ヒカルは不安を抱えながらも休む事にした。
イオリア・シュヘンベルグ
貴方はどんな世界を見たかったの?
争いのない世界?
誰も悲しまない世界?
皆が、笑顔でいる世界?
私が見たい世界は、戦いのない世界。誰も争わない世界が見たい。
ただそれだけなのに
私は
私達は、世界を変える事は出来ないの?
コンテナからレクサスを眺めながら、ヒカルはロケットの中の写真を見た。
両親、そして幼い自分が笑い合っている写真。
平和だった時間。幸せだった時間。
「父さん…母さん…」
私は本当に、戦争根絶を達成出来るの…?
「ヒカル」
呼ばれた声にハッ、と我に帰り、扉の方を向くと、刹那がこちらに寄って来た。
「刹那…」
「今から作戦会議をする。ブリーフィングルームに…」
話の途中、刹那は何かに気付いたのか、ヒカルの頬に手を添えた。
「え…刹那?」
「大丈夫か?」
「え?」
「顔色が悪い」
刹那の言葉に、少しずつ不安が混み上がってくるが、ヒカルはその事を無理矢理心に押し込め、心配させないように笑った。
「大丈夫。まだちょっとロックオンの事が心配だっただけだから」
「そうか…」
「ブリーフィングルームだっけ?早く行こう」
ヒカルは刹那の手を引いて部屋を出ようとしたが、逆に彼に支えられ、ブリーフィングルームに向かった。
.
国連軍はソレスタルビーイングを潰す為に動き出し、トリニティに攻撃を開始した。
今の世界は、ガンダムを倒す事で纏まりつつある。
それはつまり
「私達は、いない方がいいのかな…」
「ヒカル?」
普段口を挟まないヒカルにスメラギは疑問を感じた。
「トリニティや私達がいたから国連は一つになった。でも、私達がいれば、新たな火種に…」
「だとしたら!」
ヒカルの言葉を遮り、刹那はモニターを見ながら告げた。
「何の為にガンダムはある?戦争を根絶する機体がガンダムの筈だ。なのに、トリニティは戦火を拡大させ国連軍まで…これがガンダムのする事なのか。これがっ」
「刹那…」
「刹那、国連軍のトリニティへの攻撃は紛争だ。武力介入を行う必要がある」
批判を出す刹那に、ロックオンは提案を出すが、今起動エレベータは抑えられており、地上に下りれば二度と宇宙に戻れなくなるかもしれない。
しかし刹那は一人でも行くと言い出し、一緒に付いていこうとするロックオンの代わりにラッセが共に地上に下りる事になった。
「刹那!!」
パイロットスーツに着替えエクシアに向かう途中、ヒカルは刹那に声を掛けた。
「ヒカル…」
「やっぱり、やっぱり私も行く!いくらなんでも、二人だけじゃ危険だ…」
どうしても不安になり、刹那と共に地上に向かおうとしたが、刹那はヒカルの言葉を遮るように、彼女を抱き締めた。
「ここにいろ」
「刹、那…」
「俺は必ず帰ってくる。この場所に、ヒカルの元に」
刹那は少し体を放し、ポケットから何かを出すと、それをヒカルの左手の指に滑らせた。
目を見開いてそれを見ると左手の薬指に、シンプルな指輪が付けられていた。
「これ…」
「これに誓う。俺は必ず、ここに帰ってくると…」
そう言い、ヒカルに深く口付けをした後、エクシアのコンテナに向かった。
展望室からエクシアを乗せた強収容コンテナを見送りながら、ヒカルは左手を強く握った。
隣にはティエリアも同じようにコンテナを見ていた。が、背後からロックオンに「行きたいなら行ってもいい」と言われた。
しかしティエリアは「貴方は愚かだ」とだけ言い、展望室を出て行った。
「どういう意味だ?」
「さあ?」
意味が分からずアレルヤに解説を頼むが彼も分からずロックオンはヒカルに声を掛けた。
「ヒカル、お前は分か…ヒカル?」
言葉は途中で止まった。
ヒカルは自分の体を抱きながら、泣いていた。
「刹那…っ」
浸すら刹那を心配するヒカルに、アレルヤは肩に、ロックオンは頭に手を置いて慰め、情報を逃さないように再びブリーフィングルームに向かった。
暫くして、モニターには何故かイオリア・シュヘンベルグの映像が映し出され、GNドライブを、全能力を託すと告げてきた。
ソレスタルビーイングの為ではなく、自分達の意志でガンダムと戦い抜く事を。
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