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戦国BASARA

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奥州から尾張を目指し、出陣していた伊達軍。

やがて辺りは暗くなり、野営の場を準備し、食事の支度や馬の世話に兵達は勤しんだ。


「なあ、ちょっと聞きたいんだけどさ」

「なんだい慶次さん?」


食事の支度をしていた兵の一人に、慶次は質問していた。


「あそこにいる全身布で覆った奴いるだろ?あれ誰だ?」


慶次は馬に水をやりながら撫でる布人物を指差した。


「誰って、慶次さんも知ってる筈だぜ」

「え?」

「あれ紫苑姐さんですよ」


話を聞いていた他の兵の言葉を聞き、慶次は驚いた。


「え、紫苑ちゃん!?何で紫苑ちゃんが!?」

「別に今回が初めてじゃないっすよ」

「姐さん前にも俺達にくっついて戦に行きやしたし」

「姐さん以上に腕を持つ医者は、伊達にはいねぇからな」


その事情に慶次は面白そうな顔をし、紫苑の元に向かった。



紫苑ちゃん」

「ん?あら前田様」


兵達の言った通り、布人物は紫苑であり、慶次に顔を見せる為頭の布だけを取った。


「俺びっくりしたよ。見慣れない奴がいるとは気付いたけど、まさか紫苑ちゃんだとは思わなかったよ」

「少し目立ちますけど、これなら誰も私が女とは思いませんから」

「でも、いいのかい?今回の戦は、尾張の魔王と」

「知っています」


紫苑は目を逸らさず、真っ直ぐ見詰めた。


「今回の相手は強敵。だからこそ私も向かうのです」

「え?」

「政宗様の為に…



竜の――として…」


竜の後に何と言ったか聞こえなかったが、紫苑はただニッコリと笑った。


「…紫苑ちゃん」

「おーい慶次さん、ちょっと味見てくれねぇかー?」


食事を作っていた兵に呼ばれ、一度そちらを向いて再び紫苑を見た。

「では、私は政宗様に用がありますので」

「あ…」


呼び止めようとするが言葉が出ず、紫苑は政宗の元に向かった。


「慶次さーん?」

「おう、今行く!」


呼ばれた方に掛ける慶次。その後ろ姿を、紫苑は見ていた。


だがその瞳は、冷たかった。



翌朝、再び伊達軍は出陣を再開した。


「独眼竜!」


後ろを走っていた慶次が前に出て政宗の後ろに付き、小十朗はそれに少し下がって走った。


「どうした?色男」

「今頃、上杉の軍勢が信濃を抜けて甲斐へ向かっている筈だ」

「川中島の再戦でもやろうってのか?」

「いや、武田と合流して尾張へ攻め込む。俺達を先方にしてな」


すると政宗が少し黙り、慶次は謝り出した。


「悪く思わないでくれ。けどあんた、俺がけしかけなくても」

「そんな事は小十朗がとっくにお見通しだ」

「あ…」

「例え百万の軍勢が追ってこようが、魔王の首を取るのはこの俺だ。You see?」


そう返す政宗に、慶次は笑った。


「そのまま一気に天下を取る。先ずは背中の武田と上杉から潰す事になるぜ」


武田の言葉に政宗は考え込み、小十朗の側を走っていた紫苑は幸村の事を考えていると思った。


「あいつとのお楽しみは、最後まで取って置きたい所だったが…」


予想通りだった。



夜以外走り続ける伊達軍は、現在崖の間の道を走っていた。


「なあ、独眼竜」


政宗の後ろを走っていた慶次が、彼と同じく腕を組みながら呼んだ。


「この前言ってたあいつって誰の事だい?っと」


一瞬バランスを崩し、肩に乗っていた夢吉が落ちたが、慶次は直ぐに抱えて肩に乗せ、手綱を握った。


「魔王さんを倒した後、やり合いたい奴がいるのかい?」

「…ああ、まあな」

「いい顔してたぜ」

「あん?」

「そいつを思う時のあんたさ」

「はあ?」


意味が解らず、政宗は慶次に振り返った。


「それが、戦と喧嘩の違いってやつだよ」

「…ふん」


また前を向いて走る政宗に、小十朗が前に出ながら一瞬慶次を睨んだ。

それに夢吉は威嚇し、慶次は苦笑いした。


馬は止まらず、尾張を目指した。


.

進軍を続ける伊達軍。

小十郎は同行している慶次が魔王の間者かと疑うが、政宗は気にする事なく進む。


だが途中、長篠で待ち伏せしていた浅井軍に道を塞がれ、後方に現れた織田の軍勢に慶次は陣を放れた。


「あの野郎…前田慶次はお膳立てを終えて、本隊に戻った模様です。織田は我々と武田、上杉をこの長篠で一度にねじ伏せるつもりかと」

「上等だ、partyが派手になるってもんだぜ。…紫苑!」

「はい」


政宗に呼ばれ、小十郎の横にいた紫苑は少し前に出た。


「お前は下がってろ。此処でお前を使う必要はねぇ」

「…解りました、ご武運を」


小さく頭を下げ、馬を走らせた。

紫苑が下がった事を確認し、伊達軍は浅井軍とぶつかった。



ブルルッ

「よしよし」


政宗の命に後方に下がった紫苑は馬から下りて、戦う伊達軍を見た。


初めて見た織田軍の威圧、それを考えていると、鳴り響いた銃声にハッ、とした。

.

倒れた浅井長政。武田上杉と戦っていた場からの爆発。

その後聞こえた法螺貝の音に、伊達軍が撤退している姿が見えた。


「撤退…?何があったの!?」

「あ、紫苑姐さん…」


状況を把握すべく、目に付いた兵、左馬助に問い質した。


「実は、浅井の後方に織田の鉄砲隊が出てきて、全滅を防ぐ為に撤退を…」


兵達もやるせないのか、悔しく顔を歪める者もいる。だがその事実に紫苑は表情を変えた。


「ならば今は早く引きましょう。手当ては安全な場所で、馬を早く!」


紫苑の一声に伊達軍は慌てて動き出し、政宗と小十郎が来ると直ぐに馬に乗り、奥州に向かった。



一言も話さず馬を走らせる政宗。その様子に小十郎が小さく問い掛けた時。


「待たれよ独眼竜!伊達政宗殿!」


その声に振り替えると、真田幸村が追って来た。


「奥州は遠ござる!我等と共に、甲斐へ参られよ!」


幸村の提案に、小十郎は政宗の横に付いた。


「政宗様、ここは武田の申し受けを受けましょう。傷付いた者も多くございます!」


政宗の了承を聞こうとするが、彼は返事を返さない。


「政宗様?」



グラッ



「ッ!?」


政宗の体が後ろに傾き、そのまま地面に倒れた。


「政宗様!!」

「「「「筆頭!!」」」」

「政宗様!」


小十郎は慌てて政宗に駆け寄り、紫苑も駆け寄った。


「伊達殿!如何なされた!?」


幸村も馬上から慌て、小十郎は政宗を起き上がらせようとした時、気付いた。



小十郎の手に付いた血。

それは紛れもなく政宗の血だった。


「政宗様…っ」

「っ!」


その血に紫苑は纏っていた布をちぎり、傷口を塞いだ。



「早く包帯を!真田様、案内を頼みます!」

「あ…う、うむ!こちらでござる!」


紫苑がいる事に一瞬戸惑った幸村だが、直ぐに甲斐へと案内をした。

.

甲斐の武田領に着くと、紫苑は直ぐ様床に付いた政宗の治療をした。


「種子島に、御身を貫かれておろうとは…察せられるまま、明智との戦いも止められず。この小十郎、一生の不覚…っ」

「小十郎様…」


己を責める小十郎に言葉を掛けようとした時、廊下から気配を感じた。


ガラッ


襖を開けると、良直、左馬助、孫兵衛、文七朗が立っていた。


「政宗様なら大丈夫だ」


それを聞き、皆はホッと一安心した。


「てめぇら、そんな所で雁首揃えてねぇで、動ける奴は武田の皆さんの役に立って来い!里の者総出で、他所の怪我人まで面倒見て下さってるんだ!」

「「「「は、はい!」」」」


小十郎の渇に皆はバタバタと去り、治療道具を片付けた紫苑も他の怪我人の元に向かおうと立とうとした時、武田信玄と幸村が入って来た。


「手厚き処遇、感謝申し上げる」


頭を下げる小十郎に、紫苑も頭を深く下げた。


「命は取り止めたようじゃな、じゃがかなりの血を失うておる。口から流し込める物を仕度させておるゆえ、取らせてやるがよい」

「恩に気まする」

「竜の右目よ、伊達を織田攻めの先方に見立てた我等を恨むか?」

「我々は独自に動いたまで。此度の武田・上杉の挙兵とは元より関わりなき事」


信玄と小十郎の話を幸村は戸口で見届け、紫苑も眠る政宗を見ながら話を聞いていた。


「目先の国取りに固執する武将達は我等が織田を倒し、また同時に倒れる事を望んでおる。かと思えば…」


話の途中で、信玄が立ち上がった。


「武将に非ざる者が一人、毛利と長曽我部への使者として、瀬戸内へ向かった」

「…前田慶次」


小十郎の言葉に、信玄は頷いた。


「同盟した我等を背のに魔王と単身合間見え、片を付ける腹積りであったらしい。真面白き風来坊としておくには勿体ない男よ」

「真逆の企みでありましたか」

「魔王を倒しても消耗しきっていて後の祭り。事態は急を要するが次こそ万全な包囲陣を持って当たりたい」

「毛利、長曽我部を見方に付ける事は至難の技。また、他国と共闘しての囲み討ちは、伊達の流儀にも反しまする」


その言葉に幸村は少し驚いた。


「…が」


小さく呟き、小十郎は政宗を見た。



「背に腹は変えられますまい」


それを聞き、信玄は部屋を出て行き、幸村も頭を下げ、一度政宗を見てから退出した。


「皆の様子を見て参ります。小十郎様も少しお休み下さい」

「ああ…」


返事を返すも、動かぬ小十郎を心配しつつ、紫苑は頭を下げて一度退出した。



紫苑殿!」


伊達軍の様子を見た後、まだ手当てをしてない者達の治療をし、政宗の元に戻る途中、駆け寄って来た幸村に呼び止められた。


「真田様。先程は挨拶もせず、申し訳ありませんでした」

「い、いや!伊達殿があのような状態では、仕方ありますまい!」

「本当に…いつも何かあるとすぐに気付くのに、今回に限って解らなかったなんて…」


落ち込む紫苑に幸村は励まそうとするが、上手く言葉が出ずあたふたしていた時、手に何かが当たった。


紫苑殿」


幸村は小さく名を呼び、手に持っていた瓶を差し出した。


「これ…」

「以前お会いした時、頂いた薬にござる。この様な時に、申し訳ないが…」

「いいえ、薬はよく効きましたか?」

「それはもう!今までの薬の中で、最も早く効きもうした!」


嬉しそうに話す幸村に、紫苑は唖然とした後、笑いを溢した。


「なっ!?///そ、某、何か失礼な事を申したか!?」

「いえ、違います」


紫苑は暫くクスクスと笑い、笑いを止めて幸村を見た。


「真田様の笑顔に、元気を頂きました」


その笑顔に、幸村は顔を赤らめた。


「いつまでも悔いていてはいけませんね、真田様、ありがとうございます」

「い、いや!とんでもないでござる!」


更に慌てる幸村に頭を下げ、紫苑は政宗の元に向かった。



「……っ///」


幸村は暫くその場を動けず、ただ顔を赤くして立ち止まっていた。

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