戦国BASARA
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政宗達が織田との戦から戻って早三日。伊達軍の間には戦の話はなく、平和な日々を送っていた。
政宗は刀を振るい、時に物思いに老け込む事を繰り返し、小十朗は自慢の畑に励み、紫苑は薬になる葉を調達に出掛けていた。
ガサガサ、プチ、プチ
「あれから三日、政宗様は相変わらずだし」
奥州近隣の原で薬草を取りながら、紫苑は主の事を考えながら深い溜め息を付いていた。
「織田信長か…どんな戦だったんだろう」
別の溜め息を付き、空を見上げた時、何かの影が横切った。
「あ…」
その影も紫苑に気付き、そのまま。
ズル、ドシャッ!
木から落ちた。
「だ、大丈夫!?」
「あ、ああ…て、紫苑?」
木から落ちた人物は、以前出会った忍、かすがだった。
「やっぱりかすがだ、久しぶり。…落ちた所大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ…しかしお前、此処で何をしている?」
「薬草を取っていたんだよ、政宗様が近い内に大きな戦があるから、それに備えてね。かすがこそ此処で何してるの?」
「私は越後に戻る途中だ」
立ち上がったかすがに怪我がない事を確認した時、ある事に気付いた。
「越後…奥州に何か用事でもあったの?」
ギクッ
気になる事を聞かれ、かすがは僅かに俯いた。
「東国には伊達以外に目立った武将はいないし、政宗様か小十朗様を見に行ったの?」
「…違う」
「じゃあ奥州の茶菓子?そういえばこの前あげたお菓子美味しかった?」
「ああ、謙信様と頂いた…て、それも違う!」
頭に?を浮かべる紫苑にかすがが仕方なく喋ろうとした時。
「紫苑ちゃんに会いに行ったんじゃないの?」
ガキキキンッ!!
「猿飛佐助…っ、貴様何故此処にいる!?」
「あ、この前の忍さん」
「よ、かすが。紫苑ちゃんも久しぶり~」
突然現れた猿飛佐助にかすがはクナイを放つが、佐助は難無く受け止めて紫苑に手を振った。
「私の質問に答えろ!何故貴様が此処にいる!?」
「そう怒るなって、俺様は前田の風来坊を探してただけなんだから」
「前田…前田様がこちらに来ているのですか?」
「あれ?紫苑ちゃん風来坊の旦那知ってるの?」
「はい、以前」
ガキンッ!
「「……」」
紫苑の言葉を遮るように、かすがはまた佐助にクナイを放った。(勿論佐助は指で止めた)
「ちょっとかすが~、俺今紫苑ちゃんと話してるんだけど~」
「煩い!よくも私の前でそうへらへらと…、紫苑!こんな奴などに口を開かずとも良い!」
「そうは言っても…」
「残念だが私はもう行かねばならない、紫苑。こいつに何かされる前に早く立ち去れよ」
かすがは紫苑の手を握って念押しし、佐助を一括して消えた。
「俺様は猛獣かっての?言われなくても何もしないよ。ねぇ、紫苑ちゃん」
「以前会った時には私にキツイ眼差しを向けましたけどね」
「何気に言うね紫苑ちゃん」
かすがを見送り、ニッコリと笑った佐助に、紫苑は更にニッコリと笑って毒牙を放ち、佐助は苦笑いした。
「で、話戻すけど、奥州に風来坊の旦那来てなかった?」
「私が出る時にはいませんでしたが…何かあったのですか?」
「まぁ~ちょっとね」
話をはぶらかし、佐助は立ち上がった。
「さてと。あいつにも念押されたし、俺様も帰るわ」
「道中、お気を付けて下さいね」
「……」
「何です?」
黙り込んだ佐助に、紫苑は首を傾げた。
「紫苑ちゃん、あんた変わってるって言われない?敵の忍を心配する奴なんてそういないよ?」
「忍とて人間です。心配するのは当然でしょう?」
ニッコリと笑って返す紫苑に、佐助は額を手で押さえた。
「…かすがが気に入る訳だ」
「何か言いました?」
「いーや、紫苑ちゃんも早く帰りなよ、もうすぐ一雨来るから」
佐助は紫苑に背中を向けてひらひらと手を振って去り、紫苑も空を見上げ、早々に戻った。
城に戻った紫苑は馬を戻し、薬草を自室に置いて姿が見えない政宗と小十朗を捜しに出た。
佐助の言う通り雨が降り出し、傘を差しながら歩いていると、剣の交じり合う音が聞こえた。
その場所に向かうと、政宗と前田慶次が刃を交えていた。
「あら、前田様がいらっしゃる」
佐助の話通りだと思いながら、戦いを見守っている小十朗の側に行き、傘を向けた。
「紫苑、戻ってたのか」
「はい。…何故政宗様と前田様が戦っているのですか?」
「前田の野郎が政宗様に同盟を吹っ掛けてきやがったんだ。魔王を倒す為にな」
「それで力ずくになったんですね」
何となく今の状況を理解し、小十朗と共に二人の戦いを見守った。
「人が幸せになってこその天下だろ!戦場で血を流して死ぬより、好きな人に看取られたいと思わないか!」
政宗の刀と鞘に入れたままの長刀が押し合い、それを薙ぎ払った。
「俺は、利とまつ姉ちゃんが悲しんでる姿だけは…」
慶次は鞘を抜き、政宗の目つきも変わった。
「絶対に見たくねぇんだ!」
ガキンッ
政宗の刀と慶次の刀が、再びぶつかった。
「あんたにとっちゃ小さい事かも知れないが!」
慶次の言葉に、小十朗は伏せていた目を開き、紫苑はただ二人を見ていた。
「天下取りってのは、皆が恋して喧嘩して、笑って泣いて、楽しく暮らせる。そんな世の為に…」
政宗は刀を薙ぎ払って慶次を押していき、避けたと同時に高く飛び、残りの六爪を手に持ち、慶次に雷を放った。
「うおおおぉ!!」
慶次はその攻撃に吹っ飛ばされ、政宗の雷の竜は天に登り、雨雲が払われた。
「いててて…へっ」
「他を当たりな、優男」
短く言って政宗は背中を向け、止めようとした慶次だが、小十朗も何も言わずに政宗の後を追う姿に、何も言えなくなってしまった。
「ホント、食えないねぇ」
口を零す慶次に、紫苑も傘を閉じ、飛ばされた慶次の刀を拾った。
「大丈夫ですか?」
「お、紫苑ちゃん久しぶり~元気だったか?」
「ええ、お怪我はないですか?」
「どうって事ねぇよ、ありがとな」
慶次は立ち上がり、紫苑から刀を受け取った。
「あ~あ、もうちょい独眼竜と話したかったのにな~」
「今日はもう聞いてくれないと思いますよ」
呑気な慶次の手を取り、少し腫れている部分に薬を塗った。
「いて!」
「治療ついでにお茶でも如何ですか?餅はありませんが茶菓子はありますので」
「ホントかい!?やったな夢吉!」
「キキ!」
似た者同士の慶次と夢吉に笑い、紫苑は二人を案内した。
「紫苑」
お茶の入った湯飲みを二つ持って政宗の元に向かう途中、小十朗に声を掛けられた。
「小十朗様、今お茶をお持ちしようとしていたのですが…」
「俺は今から仕度がある。政宗様と頂け」
「仕度、とは?」
「明日、尾張向けて発つ事が決まった」
その言葉に、紫苑は目を見開き、小十朗は暫く黙った後。
ぽん。
「…小十朗様?」
ただ笑って、紫苑の頭に手を置いた。
「詳しい事は政宗様にお伺いしろ」
紫苑の頭を数回撫で、小十朗は去り、?を浮かべながらも紫苑は政宗の元に向かった。
「政宗様、紫苑です」
「Oh、入れ」
政宗の返答を聞き、中に入った紫苑は政宗に湯飲みを渡し、本題に入った。
「先程小十朗様に、明日発つと言われたのですが…」
「ああ、魔王の首を取りに尾張に発つ」
「私は…」
湯飲みを持ち、茶を飲みながら政宗は続けた。
「お前も連れてく、仕度しとけ」
「承知しました」
紫苑は笑って頭を下げ、部屋を出ようとした。
「おい紫苑」
「?はい」
政宗は紫苑を呼び止め、振り返った彼女に刀の一本を投げた。
「政宗様?どうし」
ガキンッ!
返答も聞かず、政宗は紫苑に斬り掛かった。
翌朝
「Are you ready guys!?」
『Yeah!!』
門前には武装した政宗、隣には小十朗。沢山の兵達が威勢を上げていた。
「目指すは尾張、魔王の首を取りに行くぜ!!」
『Yeah!』
『筆頭!』
「OK!Let't get serious!」
政宗の南蛮の言葉を合図に馬に乗り、伊達軍は出陣した。
先頭を政宗、その後ろを小十朗。そのまた後ろを沢山の兵と一人混じった慶次。
「丁か半か。奥州の神輿で天下の運試しだ」
慶次は馬に乗りながら前にいる政宗を見ながら呟き、ふと彼の後ろを見た。
そこには全身を布の様な物で覆った人物が、政宗の後を走っていた。
そして城の台所には、真っ二つにされたお盆が残されていた。
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