戦国BASARA
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小十朗の畑で手入れを手伝っていた紫苑。だが急に何かの気配を感じて、城の方を見た。
「おや、どうなさいました?紫苑様」
「あ、いえ…」
共に畑を手入れしていた老人に聞かれ、短く返した。
紫苑は立ち上がって服の埃を払い、老人に告げた。
「すみませんが、私は一度戻りますので、後をお願いします」
「はい、解りました」
深く問わない老人に一礼し、紫苑は城に戻った。
城では政宗と小十朗が向かい合い、話し合いをしていた。
「織田が動き出しただと?」
「は、その進行は早く、既に尾張の近隣諸国や村は焼かれたとの報告です」
「HA!流石魔王のオッサン。やる事がえげつねぇぜ」
「政宗様!そんな事を申してる場合ではありません!我等も早急に戦の…」
小十朗は言葉を止めて刀を構え、政宗も刀を取った。
「政宗様」
「ああ、解ってる」
二人は静かに会話し、辺りに気を配った。
バンッ
屋根から現れた何かが政宗に刀を向けたが、それよりも早く政宗は刀を抜き、それを斬った。
「がっ…」
政宗が斬ったもの、それは黒装束を着た忍だった。
「間者か」
「こやつは…織田の手の者のようです」
小十朗は顔を覆っていた布を取ると、織田の家紋を見付けた。
「随分温い事してんじゃねぇか」
「政宗様…」
「望む所だ。魔王のオッサンがその気なら、この独眼竜、伊達政宗が受けて立つぜ。小十朗!」
「はっ」
「戦の仕度をしろ」
「承知!」
小十朗は立ち上がり、部屋を出ようと襖を開けた。
「っ!」
小十朗は驚いた声を上げ、その声に政宗も顔を上げた。
「紫苑…」
小十朗が開けた襖の向こうには、紫苑が立っていた。
「どうした?お前今日は畑に行くって言ってなかったか?」
「そうですが、何か変な気配を感じて戻って来たのですが…」
紫苑は倒れている忍に目を向けた。
「気のせいではなかったようですね」
「ああ。だからお前は戻れ」
「…恐れながら、先程のお話も聞かせて頂きました」
目を伏せながら話す紫苑を小十朗は黙って見つめ、政宗は肘掛けに寄り掛かりながら話を続けた。
「だったら何だ?悪いが今回の相手は織田だ。お前を連れて行く気はねぇ」
「…政宗様」
紫苑は真っ直ぐに政宗を見た。
「何故“牙”をお使いにならないのですか?」
その言葉に政宗と小十朗は目を見開いた。
「織田は最も天下に近く、恐れられている武将。その者を相手に、何故牙を使おうとはおっしゃらないのですか?」
「おい、紫苑」
「牙は政宗様の為にある存在。何故使う事をなさらないのですか?」
「うるせぇ!!」
政宗の大声に、紫苑は口を止めた。
「それ以上言うな、下がれ」
「政宗様…」
言い切れない紫苑の肩に小十朗は手を置き、政宗に一礼してから共に部屋を出た。
ガンッ
二人が出て行ってから、政宗は床を殴った。
「ふざけんじゃねえ…」
政宗の声には、怒りが混じっていた。
「俺には爪がある。右目がいる。だがな…」
「俺は、牙だけは出したくねぇんだ…」
せっせと田植えに精を出す大人達、その傍らでぎこちない動きをしながら手伝う子供達。
そしていつもの様に手伝いに来た紫苑。だが彼女の表情は浮かなかった。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
見兼ねた子供が紫苑の名を呼ぶが、彼女は黙ったままだった。
「紫苑お姉ちゃん?」
「え?あ、ごめんね。なにかあったの?」
「お姉ちゃんこそどうしたの?ぼーっとして」
その言葉に紫苑は考える素振りを見せるが、直ぐに笑顔を返した。
「なんでもないよ。さ、頑張って今日のお仕事を終わらせちゃお」
「うん!」
元気よく返事を返した子供の頭を人撫でして、再び田植えの仕事に戻った。
「お姉ちゃんバイバーイ!」
「また今度ねー!」
日が傾き出した頃、紫苑は先に城に戻り、子供達は帰る彼女に手を振っていた。
紫苑も軽く笑って振り返し、考え事をしながら城に戻った。
『紫苑、お前は今回は留守番だ』
『政宗様?』
『今回やり合うのは織田だ。戦力は欲しいが城をがら空きにする訳にはいかねえ』
背を向け続けながら話す政宗を、紫苑は黙って見ていた。
『お前は此処を護れ』
『…承知致しました』
織田との戦の為に、政宗が紫苑に残した言葉。あれから数日、忍の者からの連絡も無く、不安だけが積もる一方だった。
「政宗様…確かに民なくしては国は成り立ちません。ですが…」
「貴方を失う訳にもいかないのです…」
足りなくなった薬や新しい調合をしながら夜を過ごしていた紫苑。だが騒がしい音が聞こえた時、部屋に一人の女中が駆け込んで来た。
「紫苑様!」
「どうしましたか?」
「皆様が、政宗様達がお帰りになられました!」
それを聞いた途端紫苑は飛び出し、政宗達の元に向かった。
「政宗様!」
息を切らしながら駆け寄ると、紫苑の目に小十郎に支えられている政宗の姿が入った。
「政宗様!!」
「紫苑、早く手当てを!」
「はい、負傷者を運んで!手の空いている者は床の用意を!」
紫苑は他の兵や女中達に指示を出した後、小十郎と共に政宗を運んだ。
政宗の傷はそう深くなく、手当てが済み、傍らにいた小十郎を見た。
「小十郎様、織田は…」
短く問うが、小十郎は首を横に振り、紫苑も表情を落として眠っている政宗を見た。
「魔王の威圧と鉄砲隊…、深追いすれば俺達も全滅していた」
「そんな…」
「悲しいが、事実だ」
俯いて拳を握る小十郎に、政宗を見た紫苑は膝に置いていた手を握った。
「小十郎様…」
「何だ?」
「政宗様のお気持ちは解っています。でも、私は医者として此処にいる訳ではありません」
「紫苑…」
政宗から、小十郎の方に向き直った。
「私の覚悟はあの日から出来ています!ですから小十郎様からも、政宗様に伝えて「五月蠅えな…」
遮られた声に、二人は驚いていると、政宗がゆっくりと起き上がった。
「政宗様!」
「いけません!まだ寝ていなくては!」
起き上がる政宗を止めようと言い寄った瞬間、紫苑の手を掴まれた。
「おい紫苑」
「は、はい」
「何が医者としてだ、お前が医者でなくなったら、誰が俺の傷を見るんだよ?」
「政宗様…」
「小十郎、あいつらには暫く怪我を治す事を優先させろと伝えとけ」
「…承知」
「紫苑」
「…はい」
最初こそ紫苑を見ていた政宗だが、手を放し、顔を横に向けて言った。
「お前は薬でも作ってろ。これから先、在り過ぎて損する事はねえからな」
その言葉に紫苑は黙って頭を下げ立ち上がって部屋を出ようとした時。
「次の戦にはお前も連れて行く、仕度しとけ」
その言葉に振り向き、暫く政宗を見た後、深く頭を下げて退出した。
「宜しいのですか?次はいよいよ織田との…」
「あんまり乗り気じゃねえがな。だがこれからの戦、遅かれ早かれあいつの力が必要になる」
紫苑が去った後の部屋で、政宗は横になって小十郎に返した。
「俺は寝る。後の事は頼んだせ」
「承知致しました」
小十郎は頭を下げて退出し、政宗は手で目元を覆った。
「…畜生」
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