戦国BASARA
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広々とした畑を耕す人々。その中には〔竜の右目〕の二つ名を持つ片倉小十郎もおり、共に鍬を持って畑を耕していた。
小十郎は一度鍬を下ろしてある場所を見ると、そこには伊達の軍医である紫苑と、4、5人程の子供達と楽しそうに話をしていた。
「でね、今川は私を人質にしたんだけど、私が作った薬を飲んで、口から火を吹いたのよ」
木の枝で地面にその時の様子を書くと、子供達はキャハキャハと笑った。
「白塗りさんが火を吹いたー!」
「どのくらい大きかったの!?」
「そうね~、人一人分はあったかな?」
「大っきいー!」
「紫苑姉ちゃんに悪い事したら、口から火が出るぞー!」
一人の男の子がガオー!と言って立ち上がると、他の子達は笑いながら紫苑に抱き着いた。
「もしそんな事がまたあったら、お姉ちゃんはあたし達が護るから!」
「え?」
「そうだよ!姉ちゃんに危ない真似なんかさせないからね!」
「よーし、皆で紫苑姉ちゃんを護るぞー!」
「「「「おー!!」」」」
自分達で決めた事に皆が一致団結し、紫苑が軽く笑っていた時、一つの声が掛かった。
「何を意気がっているんだ?」
「小十郎様」
「あ、片倉様だ!」
小十郎の登場に、小十郎は駆け寄った子供達に合わせるようにしゃがんだ。
「今ね、皆で決めたの」
「紫苑姉ちゃんは、俺達で護るって!」
「お姉ちゃんを虐める人は、あたし達が許さないんだから!」
「そうか。それはいい事だ。だが、誰かを護りたいなら、力を付けないとな」
「どうすればいいの?」
子供達の問いに、小十郎は畑の方を向いた。
「畑を耕すのは結構体力がいる。そして毎日同じ事をすれば、自ずと力が付く」
「片倉様もやったの?」
「ああ。俺も畑をやっていて力が付いた。だから、お前等も親の手伝いをすれば、力も付くし親も喜ぶだろうな」
最もな答えに、子供達は直ぐに畑にいる親の元に向かい、畑の手伝いを始めた。
「口がお上手ですね」
「事実を伝えただけだ」
小十郎は紫苑の隣に腰掛け、慣れない手つきで畑を肥やす子供達を見た。
「さっきのは、お前の父親の言葉だ」
「―――え?」
小十郎の言葉に、紫苑は驚いたような顔をした。
「まだ軍に入り経ての頃、畑で作業しているお前の父親を見てな、その頃から俺は畑に夢中になっていたな」
懐かしそうに話す小十郎だが、紫苑の顔色は浮かなかった。
「あの人は立派な人だった。政宗様のお父上にお仕えし、伊達家の安息を―――」
「違うっ!」
大声を上げた紫苑に驚いて彼女を見ると、紫苑の膝に乗っていた拳は、強く握られていた。
「あの人は、あの人はそんな人じゃない…小十郎様だって解っているでしょう!?」
「俺は納得していない。それに輝宗様も」
「あれ以外にどんな理由があるのですか?」
紫苑は立ち上がり、小十郎に背を向けた。
「私の意志は変わりません。私はあの時、輝宗様に誓いました」
振り返り、鋭い目で小十郎を見た。
「生涯、伊達家にお仕えすると」
.
それは突然の一言だった。
「あ、政宗様。私明日から北条に行って参ります」
「Ah?北条?そうか、北条…
北条だとっ!?」
「はい」
驚く政宗を余所に、紫苑はニッコリと笑って告げた。
馬に乗ってゆっくりと城を出る紫苑を、政宗は上から見下ろしていた。
思い出すのは昨日の事。
「北条に何しに行く気だ?」
「実は北条に御祖父様の知り合いの方がいらっしゃって、その方にお薬を届けるという文が先日見付かったんです」
「で、その知り合いのNameは何だ?」
「字が所々汚れて読めませんでしたが、確か[うまさ]と言う方でした」
「うまさ?変なNameだな」
「本当の名前ではないですけど…。所で、北条に出向いても宜しいですか?」
「ああ。暫くは目立った戦もねぇからな。休み旅のついでに行ってこい」
ヒラヒラと手を振って払う政宗に、紫苑は笑顔で頭を下げ、礼を言った。
紫苑を遠くから見送る政宗に、小十朗が近寄った。
「宜しいのですか?紫苑を一人で行かせて」
「戦に行く訳じゃねぇんだ。心配ねぇだろ」
「しかし、祖父の友人の名もはっきりとしていないと聞きましたが…」
「ああ。俺も[うまさ]なんて野郎は聞いた事がねぇ」
「政宗様、それが名前なのですか?」
「いや、あいつの話だと、所々字が汚れて読めなかったらしいぜ」
「うまさ、う…まさ…」
小十朗は謎の名前を物々と言いながら、何かを思い出そうとしていた。
「どうした?小十朗」
「政宗様、もしや、その者は…北条氏政では…」
氏政 うじまさ う■まさ
うまさ
うまさ
「馬の準備をしろ!紫苑を追うぞッ!!」
「承知!」
紫苑の祖父の友人。その人物は、北条家当主、北条氏政だった。
そんな事を知らない紫苑は河原で休憩し、握り飯を食していた。
「いい天気ー。風も穏やかだし、のどかだし」
雲一つない空を見上げながらのんびりしていると、川で水を飲んでいた馬が突然顔を上げた。
そんな馬に気付いた紫苑も何かな?と思いながら馬が見ている方を向くと。
ドドドドドドドド
何かが走ってくる音と、砂埃が見えた。
「?」
砂埃は紫苑に近付き、何事かと思って立ち上がった時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「うおやかたさまぁーーッ!!」
赤い武将服を纏い、馬を走らせる人物は、以前出会った真田幸村だった。
「真田様…?」
幸村はそのまま紫苑の前を通り過ぎるかと思いきや、幸村は彼女を見付けて慌てた。
「そ、そなたは、紫苑殿!?」
紫苑を見付けた幸村は馬を止めようとしたが、勢い余って。
「どわあああぁっ!!」
吹っ飛ばされた。
「あらあら…」
「本当に、大丈夫ですか?」
「うむ。かたじけないでござる…」
何とか無事で済んだ幸村は紫苑から水を貰い、一息入れていた。
「しかし、また紫苑殿とお会いするとは、なんたる奇遇」
「本当ですね。所で、真田様はどちらに行かれるんでしたの?」
「某は親方様をお迎えに、今から北条に向かう所でござる。紫苑殿はいずこに?」
「あら、私も今から北条に行く途中なんですよ」
「ほ、本当でござるか!?」
「はい。宜しかったら、一緒に行きませんか?」
「勿論でござる!この真田幸村、命を賭けて紫苑殿と北条までお供致しますぞ!」
「命は賭けなくてもいいですよ…」
こうして、紫苑は熱く燃える幸村と共に、北条を目指した。
その頃、北条では。
「邪魔だ退けーーッ!!」
紫苑が会いに行く人物が北条氏政と解った政宗が小田原へと向かい、迫ってくる兵達を薙ぎ倒していた。
「政宗様!我々は戦をしに来たのではありませんぞ!むやみに暴れては…」
「解ってる!いいから黙って着いて来い、小十朗!」
小十朗は暴れる政宗を納めようとするが、政宗は聞かぬまま城内へと入って行った。
小十朗が慌てて後を追うと、政宗はある地点で立ち止まり、その先には一人の武将が立っていた。
「お主が奥州の独眼竜か?」
「そうだ。あんたは?」
「儂は北条氏政。この城に何用じゃ?」
「用があるのは俺じゃねぇ。俺はそいつが無茶しないか心配だから先に来ただけだ」
「それにしては、随分と派手に暴れ回ったようじゃの」
氏政は辺りに倒れる兵や壊れた城の一部を見て言うと、政宗はニヤリと笑った。
「Ha!この城は頑丈に出来てるんで、遂手加減を忘れちまったよ」
「やれやれ、暴れる若造には困り果てるわい」
「…おい、北条のじいさんよ」
軽く声を掛け、政宗は六爪の一つに手を掛けた。
「俺はこの城が気に入った。ついでだ、俺に倒されてこの城寄越す気にはならねぇか?」
「政宗様!?」
意外な事を言い出した政宗に、小十朗は慌てた。
「いきなり何を言い出すと思いやそのような事…儂がこの城を手放すと思うたか?」
「アンタを倒せば、この城は俺んだ」
政宗が刀を抜こうとした時。
「待て!独眼竜よ!」
大声が聞こえて政宗は視線を移すと、氏政の背後からは甲斐の虎、武田信玄が現れた。
「甲斐の虎、何で此処にいやがる?」
「我ら武田と北条は同盟国。儂が此処におっても可笑しくはなかろう」
信玄の出現に、政宗は刀から手を放して構えを解いた。
「武田のオッサンまでいるなら…今日は手は出さないといてやるよ」
「政宗様!そもそも我々は戦を仕掛けにこちらに参った訳ではありませんぞ!」
「OKOK、解ってる。だが、紫苑の奴、何処で油売ってやがるんだ?」
「えぇ。本当なら我々よりも先に着いているか、途中で遭遇する筈なのですが…」
「…独眼竜よ、話から見て、その紫苑という者が儂に用かの?」
「Yes。あんたの医者の友人の孫だ」
「医者の友人の、孫…?」
その言葉に氏政が首を捻って考えていると、急に地響きが聞こえた。
「親方様ーーッ!!」
聞き覚えのある声と地響きに背後を向くと、思い描いた人物、真田幸村が走って来た。
「親方様ー!真田幸村、親方様をお迎えに、今此処に馳せ登場致しまし 「馬鹿者ーーッ!!」
寸前まで迫った幸村を、信玄は容赦なく殴り飛ばした。
「場を弁えろ!我が同盟国北条家当主の御前なのだぞ!」
「うおおおぉー!申し訳ありませぬ親方様!そして某、北条氏政公の客人を お連れ致しましたー!! 」
再び走って来た幸村は、そのまま信玄に殴り掛かり、信玄は僅かに下がった。
「やりおるのう。だがまだまだ…幸村ぁ!!」
「親方様ッ!!」
「幸村ッ!!」
「親方様ッ!!」
熱く殴り合う二人に、その場の一同が呆れる中、一際高い声が聞こえた。
「あらあら、真田様と武田様は、仲が宜しいんですね」
「「紫苑!?」」
笑いながら現れたのは、政宗と小十朗が追い掛けて来た人物、紫苑だった。
「あら、政宗様に小十朗様。どうして此処に?」
「政宗様は、お前を心配して追って来て下さったんだ」
「私を?」
「お前が探してる[うまさ]って奴は、そこにいる北条氏政の事だ」
政宗が背後にいる氏政を指差すと、紫苑は二人に礼を言って、氏政の前に立った。
「お初にお目に掛かります。北条氏政様」
「お主か?儂に用があるのとは」
「はい」
紫苑は懐から袋を出し、それを氏政の前に差し出した。
「我が祖父、信也様のお手紙より、貴方様にです」
その名に、氏政は目を見開いて袋を受け取った。
「そうか、お主は、信也の孫か」
「はい」
「あ奴は、元気にしておるか?」
「…祖父は、何年も前に亡くなりました。」
少し顔を伏せて呟く紫苑に、氏政も残念そうな顔をした。
「あの馬鹿狸め、儂より長生きすると意気がっておったのに…」
亡き友人の顔を思い浮かべて悲しそうな顔をする氏政に、紫苑は笑って返した。
「今度は、私が御祖父様の代わりにお薬をお造り致します。無くなりましたら、また私に文をお送り下さい」
「…ああ、ありがとう」
紫苑はお辞儀をして政宗達の元に戻り、帰ろうとした時。
「紫苑殿!」
信玄との殴り愛いを終えた幸村が、駆け寄って来た。
「真田様、頬が赤いですが…大丈夫ですか?」
「これくらい大丈夫でござる!それより、もう行ってしまわれるのか?」
「はい。もう用事は済みましたから」
「紫苑殿は、奥州の者だったのでござるな…」
紫苑の後ろにいる政宗と小十朗を見てから、再び紫苑を見た。
「いつぞやの礼をお返ししようと思ったが、武田と伊達は敵同士。果たしてまたお会い出来るか…」
残念そうにする幸村に、紫苑は袖の中から出した小さな瓶を出し、幸村の手に乗せた。
「このお薬、腫れによく効くので、よかったら使って下さい」
「な、そんな!これを頂く訳には!」
返そうと手を出すが、紫苑は両手で止めて、薬の瓶を握らせた。
「今度お会いした時に、返して下さいね」
笑って言い、後ろの信玄にも解釈し、紫苑は馬に乗って政宗と小十朗と共に北条家を後にした。
薬を握ったまま立ち往生する幸村に、信玄は近寄った。
「どうした?幸村よ」
「親方様…何故でしょう」
薬を持っていない方の手で上着を握り、少しばかり俯いた。
「紫苑殿の笑った顔が…頭から放れないのです。そして、胸が高鳴って止まらず…」
「ほう…」
「親方様、某は、一体どうしたのでしょう!?胸の奥が熱く、いつまでも止まりませぬ!」
「…それは、お前が自分で気付かねばならない事」
「親方様!」
「焦るでない。その想い、ゆっくりと考えるがよい」
信玄は笑って用意されていた馬に乗り、幸村も一足経ってから馬に乗り、信玄の後を追った。
(幸村をここまで動かすとは…あの女子、佐助の言った通りただ者ではないな…)
心中で笑い、二人は甲斐に戻って行った。
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