戦国BASARA
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紫苑は旅立つ慶次を見送り、軍議を始めると伝えに来た小十郎と共に広間に行くと、既に兵達と政宗が居座っていた。
「遅ぇぞ、小十郎。紫苑」
「はっ、申し訳ありません」
「前田様とお話をしていて少し遅くなってしまいました」
「Hum~、まあいい、座れ」
「はっ」
小十郎は政宗から向かって左側に、紫苑は右側に座った。
だが兵達は、いつもはいない紫苑の存在に、少なからず疑問を抱いていた。
「これから軍議を始める」
政宗の声に、皆は彼に意識を向けた。
「今回、伊達は今川を攻める。と言っても戦法はいつもと同じだ。俺達は真っ正面から今川を叩く」
「っしゃあ!了解です筆頭!」
「この前の分も合わせて存分に暴れましょうぜ!」
「伊達の力を今川の野郎達に見せ付けてやりましょうぜ!」
「Shut it up!まだ途中だ!静かにしろっ!」
勝手に騒ぎ出す兵達に、政宗の怒鳴りが飛んだ。
怒鳴り際に政宗は紫苑をチラ見したが、紫苑は目を伏せて黙っていた。
それを見た後、再び兵達に視線を向けた。
「今回の戦には、紫苑を同行させる」
「「「「なっ!!?」」」」
政宗の以外な言葉に兵達は驚愕し、小十郎も何も言わずに紫苑を見た。
「筆頭!いきなり何言うんスか!?」
「何で姐さんを戦に連れて行くんスか!?」
「そうっスよ!姐さんが怪我したらどうすんスか!?」
「片倉様も何か言って下さいよ!」
「 うるせぇッ!!最後まで聞け!誰がこいつを戦わせると言った?紫苑は軍医として連れて行くんだよ」
「で、でもそれだったら何も姐さんじゃなく他の奴に…」
「Ah?じゃあテメェ等、紫苑以上の腕を持った医者を知ってんのか?」
逆に返され、兵達は口を紡ぎ、代わりに小十郎が口を開いた。
「今我が軍では、紫苑を越える腕を持った医師はおりません」
「Ha!決まりだな」
「で、でも筆頭、それでもし姐さんにもしもの事があったら…」
「あら」
今まで黙っていた紫苑が、口を開いた。
「私はそう簡単には朽ちませんよ。一応己を護る技も身に付けていますし」
「で、でも姐さん…」
「それに、本当に危ない時は、皆様が護って下さるのでしょう?」
ニッコリと笑った紫苑に兵達は顔を赤面させ、叫んだ。
「ウォォォ!姐さんッ!!」
「承知しやした姐さん!」
「姐さんは俺達がお護り致しやす!」
「姐さんは俺達の命だああッ!!」
「Guys!Partyの準備だ!気合い入れろ!!」
「「「「Yeahhhhhhッ!!!」」」」
宣言して叫びながらドタバタと出て行く兵達に紫苑はクスクスと笑い、小十郎は軽く息を吐いた。
「紫苑、笑ってねぇでお前も仕度して来い。準備が出来次第出発だぞ」
「はい。では失礼致しますね」
小十郎に笑って返し、頭を下げて部屋を出ようと立ち上がった。
「紫苑」
「?はい」
政宗に名を呼ばれて振り向くと、彼は真面目な顔をしていた。
「今回、お前には護衛に忍を一人付ける。それでも危なくなったら俺達を呼べ」
一拍置き、政宗は鋭い目付きをした。
「余計な事は、一切考えるな」
その目付きと言葉に、紫苑は暫く政宗を見た後、何も言わずに頭を下げて退出した。
「…政宗様」
「Ah?」
「本当によろしいのですか?紫苑を同行させるなど」
「Ha!お前もか小十郎。あいつ等にも言っただろう?もしもの時は俺達が「恐れながら」
言葉を遮った事に、政宗は少し頭を下げた小十郎を見た。
「小十郎めが心配しているのは紫苑の安否ではなく、紫苑の存在です」
「…」
「いかに軍医と言えど、紫苑は女子。その存在は直ぐに他国に広がります。そして、万が一、紫苑が敵に」
「小十郎ッ!!」
今度は政宗が小十郎の言葉を遮り、小十郎はハッ、として立ち上がった政宗の背中を見た。
「それ以上は言うんじゃねぇ」
「政宗様…」
「お前がなんと言おうと、俺はあいつを、元の位に戻すつもりはねぇ」
政宗の脳天に、綺麗な着物を着た、幼い紫苑が映った。
「二度と、その話はするな」
「…承知、致しました」
政宗は窓際まで歩き、兵達と会話する紫苑を見下ろした。
(俺は、今のお前を護りたいんだ…紫苑)
.
今川の首を取るべく、駿河へと向かった伊達軍。
そして、軍医として同行した紫苑は彼等とは共に。
「小十郎様の言った通り、良い薬草があるわ」
いなく、森近くの原で薬草を摘んでいた。
昨日、夜営した場所で小十郎に呼ばれた紫苑は、戦の間はこの場で待機していろと言われた。
「しかし、それでは私が着いて来た意味がないのでは…」
「お前の仕事は戦が終わってからだろう。それまでは留守番だ」
「…………それもそうですね」
呆気なく賛成した紫苑は、小十郎に言われた通り指定された場所で待機する事になった。
「政宗様…」
草を取る手を止め、ゆっくりと流れる雲を見上げながら、紫苑は政宗の心配をした。
「以前のように鬱憤を残さなければいいな…」
心配は心配でも、紫苑は政宗の機嫌の方の心配をした。
.
「相変わらず派手だね~、独眼竜の旦那は」
ぶつかり合う伊達軍と今川軍の様子を、木の上から見物している忍がいた。
彼は武田軍の忍隊、猿飛佐助。
〔甲斐の虎〕事、武田信玄に命じられ、戦を仕掛けた伊達軍の偵察に来ていた。
だが、今川は伊達の威圧に押され、敗北も間に見えていた。
「俺様が来る程でもなかったな~、さっさと戻りますか」
佐助は木を蹴り、その場から立ち去った。
木の枝を伝って軽やかに進みながら甲斐を目指していた。だが途中、何かに気付いて足を止めた。
(この気配…近くに忍がいるな。だが、何故こんな場所に…)
己の気配を消しながら辺りを探るように進んでいると、森と原の境目に人影を見付けた。
「…?」
その人物をじっと見ると、それは原で待機していた紫苑だった。
「おいおい、何でこんな所に女がいるんだ…?」
佐助の心配を余所に、紫苑は集めた薬草と持参した他の薬を合わせて調合していた。
(あの子の他に忍が一人…あの子の護衛か?しっかしこんな時期に来るとは、度胸あるな~)
しみじみしながら眺めていると、急に紫苑がキョロキョロしだし、佐助が疑問がった瞬間。
ドドドドドドドド
何やら地響きが聞こえ、佐助は高い木の上から探ると、籠を引いた馬と、政宗の乗る馬がこちらに迫って来ていた。
「あれは、独眼竜の旦那に…あっちは今川か」
ちらっと地上の紫苑を見ると、護衛である忍が紫苑に何か言伝をし、隠れる姿が目に入った。
「なんか面白そうな展開になってきたな、ちょっとお手並み拝見させてもらおうかな~?」
佐助はそのまま木の上から、どうなるか見物に入った。
「待ちやがれ今川義元ーッ!!」
「おじゃーっ!!は、早う!もっと早う走るのじゃっ!!」
籠の中から顔を出して馬を走らせる兵に指示する今川を、六爪を構えながら馬を走らせる政宗が追っていた。
「逃げ回っていねーで、 俺と勝負しろぉッ!! 」
苛立った政宗は走りながら電撃を放って今川が乗る籠を吹っ飛ばし、今川は脅えながら近くの森に入って行った。
「チッ、腰抜けな野郎だぜ」
馬を下りた政宗は六爪を戻し、ゆっくりと森に入った。
今川は森の中を駆けながら、必死に己に言い聞かせていた。
「マロはまだ死ねぬ!マロがあんな、不等な輩に負ける訳にはいかぬ!」
そう言いながら森を駆けている途中、何かとぶつかって尻餅を付いた。
「何じゃ!マロを誰と心得て…」
怒鳴って前を見ると、そこには同じように転んだ痛みを堪えている紫苑の姿。
紫苑の姿を見た今川は、何か思い付いたようにニヤリと笑った。
「Slit、今川の野郎、何処に行きやがった?」
今川を追い掛けて森に入った政宗だったが、未だに見付けられず、苛立ちを見せていた。
その時、ある一点から原に続く道を見付け、その先に進むと、背中を向けている今川を発見した。
「漸く見付けたぜ、今川のオッサン。さあ、Partyと行こうじゃねぇか」
「…おじゃおじゃ、そなた。このような場を見ても、そのような事が言えるかの?」
「何?」
今川がゆっくりと振り返ると、彼は紫苑を盾にし、首に小刀を突き付けていた。
「紫苑!!」
「ど、どうも。政宗様…」
「何と、そち達は知り合いか。なら話は早い。この女子を助けたくば、マロの配下となれ」
「俺に下に付けだと、ふざけた事抜かしやがるじゃねぇか」
「ほう、この女子を助けたくはないのか?マロがその気になれば、直ぐにでも処する事もできるのじゃぞ?」
おじゃおじゃと言いながら笑う今川に、政宗は鋭い目線を向けた。
「…おいオッサン」
「おじゃ?」
「今すぐそいつを放せ…さもねぇとテメェ」
「死ぬぞ」
「そんな脅しは通じないおじゃ!さあ!早うマロの配下に 「おじゃおじゃ煩いですよ」
ポイ。
大口を開けて話していた今川に、紫苑は何かを放り込み、今川は咄嗟に飲んでしまった。
「そなた、マロに何を飲ませた!?」
「大丈夫です。毒ではないですから」
紫苑がニッコリと笑って答えた瞬間、今川に異変が起きた。
「おじゃーーーッ!!」
今川は口から火を吹き出し、その隙に紫苑は抜け出して政宗の隣に立った。
「か、かかかかかか辛い辛い辛いでおじゃーーッ!!」
「…お前、何突っ込んだんだ?」
「辛子入りの気付け薬です。これを飲めば意識を失った方でも一発で目が覚めますよ」
「確かに目が覚めるな」
未だ火を吹きながら暴れる今川に、政宗は刀を抜いて近寄った。
「今川義元、テメェの首。この独眼竜が 頂いたぁッ!! 」
「お、お、お、 おじゃーーッ!! 」
政宗の容赦ない攻撃に今川は倒され、紫苑は拍手をしながらその流れを目撃した。
「お見事です、政宗様」
「まぁ、鬱憤は晴らせたかもな。それと…」
紫苑の横に立ち、政宗は木の上目掛けて叫んだ。
「そこの忍!いつまでコソコソしてやがる!?」
そう叫ぶと、一つの影が降り立った。
「流石独眼竜の旦那。俺様気配消してた筈なんだけどな~」
「Ha!今川の火吹き芸を笑ってた奴の台詞じゃねぇな。テメェ、何処の忍だ」
「俺様は武田の忍、猿飛佐助。旦那の事は真田の旦那から聞かされてるよ」
佐助はニッコリと笑いながら話すが、政宗は警戒を解かなかった。
「武田の忍が何の用だ?」
「いやー、さっきのには驚いたよ。だって首に刀突き付けられて平然としてるなんて…君、何者?」
佐助は表情を変えて紫苑を見たが、紫苑は動じる事なく、キョトンとしながら答えた。
「何者と言われましても、私はただの軍医ですよ?」
「ただの軍医があんなに平然としてるのは可笑しいでしょ?」
「そうでしょうか?」
「俺に聞くな」
紫苑の質問を軽く流し、政宗は佐助に刀を向けた。
「で?お前はこのままトンズラすんのか?武田の忍」
「まあ、俺様は偵察に来ただけだし~、いいものも見付けたし、そろそろ退散するわ」
そう言って佐助は木の上に飛び乗った。
「じゃあな、独眼竜の旦那。お隣りのお嬢さんもな」
佐助は風のように消え、気配が消えた事に政宗は刀を戻した。
「…お前、何で一人だった?護衛はどうした?」
「ああ、何か地響きが聞こえたので、政宗様達の様子を見て来てとお願いしたんです」
「何の為の護衛だ?離したら意味ねぇだろうが」
「でも、怪我はありませんよ」
「当たり前だ」
政宗は紫苑の頭を軽く撫でた後、手を引いて馬の所まで連れて行った。
「行くぞ、大将は討ち取った。小十郎達の方も終わってるだろ」
「ですね」
政宗は馬に乗り、後ろに紫苑を乗せ、小十郎達の所まで馬を飛ばした。
その後、甲斐では。
「猿飛佐助、戻りました」
「御苦労、結果はどうであった?」
「力の差が有りすぎですよ。相変わらず独眼竜の旦那は派手だし、今川は逃げ回った揚句、結局討たれましたし」
「奥州の独眼竜…流石幸村の好敵手よ」
「…それと、面白い人物を見付けましたよ」
「む?」
「今川に刀を向けられても平然とする女子です」
「ほう、肝の座った娘よのう。で、名は?」
「伊達の軍医、紫苑です」
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