戦国BASARA
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『独眼竜は我の仲間の石田三成に敗れる』
『…』
『そして再び立ち上がった独眼竜は、関ヶ原に現れる魔王により、命を落とす』
『…魔王?』
『信じる信じぬは御主の自由よ』
そう言い背を向ける大谷に投げ掛けた。
『何故、そんな事を私に?』
『ただの興味本位よ。主を失った牙がどの様に崩れ落ちるか、その様をの』
笑いながら闇の中に消える大谷。
その時は語った言葉を信じなかったが、奥州に戻ると三成に深手を負わされた政宗。
家康の手紙に記された場所、関ヶ原。
紫苑の不安は現実のモノとなった。
中央からは巨大な岩が鋭い針の様に伸び、花の様に無数の岩を出現させて広がった。
「な、何だありゃ?」
「筆頭、片倉様…」
政宗と小十郎を心配する様に伊達軍が騒つき出すが、再び黒い手が襲って来た。
「うわああっ!」
グワッ
だが水の竜が黒の手を消し、それを出した紫苑は刀を地に突き刺していた。
「ね、姐さん…」
「油断しないで」
迫る黒の手に注意しつつ、花の様な岩の先に見える赤黒い光の方を見ながら小さく呟いた。
「政宗様…小十郎様…」
.
関ヶ原の地は以前闇に覆われ、岩の花がその範囲をゆっくりと広げていく。
伊達軍や他の生き残った兵達もただその光景を眺めていた時、一人の伊達兵が声を上げた。
「か、片倉様!」
その声がした方を向くと、小十郎が此方に向かって走って来た。
「片倉様、無事だったんすね!」
「よかった!」
「…あれ、筆頭は?」
政宗の姿がない事に一同が騒めく中、小十郎は率直に話し出した。
「お前らよく聞け!魔王、織田信長が復活した」
『え…えぇっ!?』
突然の発言に皆驚き、紫苑も驚愕した。
「政宗様達は織田を討つ為残られたが、今の奴は以前の比じゃねぇ。そこでお前らに仕事だ!」
小十郎はそう言い、死した兵達に纏わりつく黒い根の様なモノを指差した。
「あれを全て断ち切れ!そうすれば、政宗様達にも活路はある!他の連中にも伝えろ!この地獄を、俺達の手で終わらせるんだ!!」
小十郎の叫びを黙って聞いていたが、一人一人声を出し始めた。
「筆頭の為に…」
「そうだ、俺達にも出来る事がある」
「やろうぜ…!」
「俺達の手で、魔王を倒すんだ!」
『YEAH!!!』
伊達軍は刀を抜き黒い根を次々と斬り、生き残りの兵達にもそれを伝えて回った。
小十郎も参戦しようとした時、今まで側にいた紫苑の姿がない事に気付いた。
ハッ
「まさか、あいつ…っ」
+++
私は『ワタシ』が羨ましかった。
私には二つの顔がある、医師の私と武士の私。
でも政宗様は武士の私を使う事を拒んでいた。それでも医師として側に置かせてくれた。
でも、戦場に出れば医師の私は足手まとい、武士の私が必要だった。
なのに政宗様は、織田戦でも、豊臣戦でも私に前に出る事を許してくれなかった。終いには深傷を負い、豊臣戦では足手まといになってしまった。
政宗様はその事を咎めず、私を後ろに下がらせた。
遠くなっていく政宗様の背中。医師の時しか、側に行く事が出来なかった。
護られるなんて嫌だった、私は牙。使う価値がないのなら、私は…
+++
完全に復活する前に魔王を倒すべく、幸村と家康、慶次と政宗は渾身の技を放った。
一度は倒れた魔王だが再び放たれた攻撃に岩に吹き飛ばされ、痛みに耐える政宗達。
もう体力が限界に近付いたその時だった。
「キキッ」
「ん?」
慶次の胸元に隠れていたら夢吉が何かに気付き声を上げ、皆が顔を上げた。
政宗達の前に、紫苑が立ち塞がった。
「紫苑、何で…」
紫苑は振り向かずに魔王を見据え、刀を構えた。
「何してやがる、紫苑!」
刀を両手で持ち、目線が政宗に巻かれた手拭いに向いた。
『お前のこの手は、誰かを傷付ける為のモノじゃねぇ。守る力だ』
「もしそうなら、私はやるべき事は一つ…」
込めた力が集まった刀が光り輝き、放った斬撃は魔王の黒い斬撃とぶつかった。
「紫苑!退け!!」
放つ斬撃で腕や足、頬に傷が付く。だが紫苑は引かず、真っ直ぐ前を向いた。
「私のやるべき事は、貴方を守る事!」
紫苑の斬撃が押し始め、やがては魔王の斬撃を打ち破った。
が、その先の光景に思考が止まった。
「愚かな」
ドゥンッ!!
魔王の銃撃が紫苑を襲い、その威力に吹き飛ばされた。
「紫苑!!」
投げ飛ばされ、薄れゆく意識の中思うのは。
荒っぽいけど、自分を慕う伊達軍。
いつも自分を暖かく見守る小十郎。
そして
(政宗様、どうか…)
「生き、て…」
ガシャンッ
「紫苑ー!!」
無惨に折られた刀の傍らに、紫苑は倒れた。
.
紫苑が倒れた後、捨て身の三成の攻撃に魔王が弱る姿を見せた時、何処からか妹のお市が現れた。
彼女は魔王と共に地中へと消えていき、辺りの岩が崩れ出した。
足場の岩が崩壊し中に投げ出され、落ちて行く一同。
政宗は紫苑の姿を探し、気絶したままの彼女を発見して手を伸ばした。
落下の暴風に耐えながら少しずつ距離を縮めていく。
(俺は…もう、お前を一人にはしねぇ…っ)
伸ばした指が僅かに触れ、その手を強く引き、紫苑を抱き締めた。
そして巨大な鍋を持つ本田忠勝により、一同は救出された。
空は黄金色に光り、生き残りの兵達は戦う気力もなくその場に座り込み、渦中の政宗達も地に寝そべっていた。
そしてそれぞれの心中を語り合い、家康と三成は決着を付ける事になった。
だが政宗は幸村と戦う事なく、未だ気絶したままの紫苑を抱え上げた。
「真田幸村、この勝負預ける」
顔だけ振り向き、ニヤリと笑った。
「いずれ決着を付けようぜ」
そういう政宗に、幸村も頷いた。
「お待ちしておる、政宗殿」
多くを語らず、軍を率いて去る政宗を幸村はずっと見ていた。
.
関ヶ原の戦いから数日、紫苑は未だ眠り続けている。
紫苑以外の医師の話だと、魔王の攻撃と自信の力を限界まで出した事で予想以上の深手を負い、もう刀を振る事は出来ないと診断した。
眠る紫苑の傍らに膝を付き、ただ顔を見続ける政宗。そこに「失礼致します」と声を掛け小十郎が入って来た。
「紫苑は…」
「相変わらずだ」
未だ目覚めぬ紫苑に小十郎も残念そうにしていると、政宗が話し出した。
「…小十郎」
「はっ」
「俺は、いつもコイツには本音を話していた。なのに」
そっと、紫苑の頬を触った。
「いつの間にか、俺はコイツに何も伝えなくなっていった」
伝えなくても自分の言いたい事は分かっていると思っていた、だから何も伝えなかった。
だが結果として、それが紫苑を追い込んだのかもしれない。
考え込む政宗に、小十郎は助言をした。
「置いていかれる。そう思ったのでしょうな」
「Ah?」
「紫苑は牙としての自分を戦場に連れて行って欲しかった。しかし政宗様はそれを拒み、医師として側に置かせていた。だが医師では戦で足手まといになる」
政宗の脳裏に、武装した姿と医師の姿の紫苑が映し出された。
「その焦りが、今回の事で爆発してしまったのでしょうな」
相対する、二つの力を持ったが故に。
数日後、目覚めた紫苑はもう牙として力を振るえない事を悟り、自国へ帰ろうとも考えた。
だがそんな彼女の前に政宗が現れ、彼の部屋に連れて行かれた。
「先の戦での処分を伝える」
「…はい」
動じず、続けられる言葉を待った。
「お前はこれからも、俺の側にいろ」
「…え?」
もっと重い罰だと思った手前、少し呆然とした。
「それは…医師として、ですか?」
「違ぇ!」
怒鳴る政宗に、紫苑は彼の考えが分からず混乱する。
「俺は、その…」
歯切れが悪く頭を掻き回し、意を決した様に膝をパンッと叩いた。
「よく聞け紫苑!」
「はい」
「俺の嫁になれ!」
「…はい?」
以外な告白に思わず固まった。
「兵達には話した、お前の国にも了承済み。だからこれからは俺の妻として、俺の隣にいろ!」
「…何故、そんな話に?」
「俺は、最初からお前が牙になるのは反対だった」
だが紫苑を牙に任命したのは政宗の父親。当時の政宗に止める力はなく、元服した後の奥州には紫苑の力が必要だった。
だが、今は違う。
「俺はお前を一人の女に戻したかった。俺の嫁にする為に」
「政宗様は、牙である私が嫌いだったのですか…?」
「それはお前だろう」
「え?」
「父親達が焼かれた日の事、覚えてるか?」
その言葉に、両親と祖父が死した時の事を思い出し、ゆっくりと頷いた。
「あの日俺もいた。そして焼かれる両親達を見てる紫苑を見て思った」
真っ直ぐに、紫苑の目を見ながら言った。
「お前、いつから泣いていない?」
その言葉に、膝上に置いた手を握り締めた。
「泣くなんて、私には…」
泣く、そんな事牙である自分には不要。
だから
ポタッ
目から溢れる一筋の涙、それが次々と溢れ出した。
「わ、たし…私は…っ」
「もういい、紫苑」
側に座って紫苑を引き寄せ、彼女の顔を政宗の肩に乗せた。
「お前はもう牙じゃねぇ。だから、思いっきり泣け」
「…っ、う…っ」
溢れる涙を止めれず泣き続ける紫苑、政宗は彼女の頭をずっと撫でていた。
暫くして落ち着きを見せた紫苑、政宗からそっと離れ、持っていた手拭いで顔を拭いた。
「すみません、もう大丈夫です…」
「…なら、俺への返事を聞かせろ」
「…え?」
「俺の嫁になれ。俺はそう言ったんだ」
「あの、それは…」
返答を渋る紫苑に、更に詰め寄ろうとしかけたが。
バタバタッ ガラッ
「筆頭!大変です!」
一人の兵が部屋に入り、政宗はズルッと体勢を崩した。
「…っ、何だ!?」
「さ、真田幸村が、殴り込みに来やした!」
「…ハア?」
予想外の人物に話を一時中断させ、政宗と紫苑は門前に向かった。
.
門前に着くと何故か槍を構える幸村とその前に立つ小十郎が揉めており、兵達はその様子を離れた場所で見ていた。
「真田幸村!何しに来やがった!?」
「政宗様、それが」
「政宗殿!あの噂は誠でごさるか!?」
「噂?」
「佐助から聞いたのだ。竜の牙が死んだとは、本当の事なのか!?」
「…私が?」
政宗の後ろからひょっこりと顔を出した紫苑を見た途端、幸村は涙ぐんだ。
「紫苑殿~!」
紫苑に詰め寄り、両手を握った。
「よかった、よかったでごさる!あの戦後何の報せもなく、あの様な噂で某は本当に…っ」
「いつまで握ってんだ!」
痺れを切らした政宗はベリッと二人を引き剥がし、紫苑を自分の後ろに隠した。
「政宗殿!某の質問に答えて下され!あの噂は何なのだ!?」
「そのままの意味だ、少しは頭使え」
「あの…噂って何ですか?」
一人話が見えない紫苑が?を浮かべていると、小十郎が説明し出した。
「政宗様の命でな『竜の牙は死んだ』という噂を各地に流したんだ」
「何故ですか?」
「それは」
ゴゴゴゴッ
突然の地響きに顔を上げると、関ヶ原の地で見た巨大な要塞が近付いていた。
それは門前で止まり、ガタイのいい男達と共に巨大な錨の武器を持つ西海の鬼、長曾我部元親が現れた。
「よう独眼竜、久しぶりだな!」
「西海の鬼、何しに来やがった!?」
「ちょいと変な噂を聞いてな、それを確かめに来たんだが…やっぱり嘘じゃねぇか」
元親は要塞から飛び降り、紫苑の前に立った。
「やっぱり独眼竜の側には置けねぇ、紫苑!俺の嫁になれ!」
ガシッと手を握って告白した元親に政宗は怒り、幸村は赤面した。
「鬼!テメェ!」
ビュッ
二人を離そうと近寄るが、一瞬にして紫苑の姿が消えた。
「…あれ、かすが?」
その声の方を向くと、越後の軍神、上杉謙信の忍、かすがが紫苑を抱えて政宗を睨んでいた。
「独眼竜、貴様!」
紫苑を下ろし、政宗向けてクナイを構えた。
か「何故紫苑が死んだなどと嘘を流した!?」
政「誰だテメェは!いきなり出て来て話に割り込むな!」
幸「某も同意見でごさる!紫苑殿は生きているではないか!」
政「武士としての紫苑は死んだ!何も間違っちゃいねぇ!」
元「なら何も問題ねぇ!紫苑は俺の嫁にするぜ!」
か「紫苑越後に来い!これ以上お前を此処には置いてはおけない!」
幸「な、ならば紫苑殿!某と共に、か、甲斐に…」
政「てめぇ等…っ」
一歩も引かず自分の思った事を言う幸村と元親、かすがの三人に、政宗の怒りが頂点に達した。
「出ていけー!!」
大声で叫び三人を追い返す政宗、その姿を小十郎と紫苑は黙って見ていた。
政宗達の方をただ見ていたが、紫苑が小十郎を見上げた。
「何だ?」
視線に気付き短く返す小十郎に、紫苑は頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
突然の謝罪に先の戦の事と思い、言い合いを続ける政宗達を見た。
「政宗様からの処罰はあったのか?」
「…俺の隣にいろ。と」
「政宗様がそう言ったのなら俺が罰する必要はねぇな」
紫苑の頭を乱暴に撫で「顔を上げろ」と言った。
「小十郎様、私は」
ビシッ
「いたっ」
引かない紫苑の額を指で弾いた。
「これが俺からの罰だ。これでも不満なら畑の手入れでも手伝え」
そう言って歩き出す小十郎に紫苑は嬉しそうに着いて行き、いつの間にかいなくなった紫苑に政宗達の怒りが小十郎に向けられた。
.
ピピピピッ
目覚ましの音に目が覚め、起き上がった時目に付いた鏡で自分を見た。
高校の制服に着替えて下に降りると、母親が朝食の用意をしていた。
「おはよう、紫苑」
「おはよ…」
椅子に座り母を見ていると、その視線に母が気付いた。
「どうしたの?」
「いや、何か変な夢見て…」
「変って、どんな?」
コーヒーが入ったカップを持ち、そこに写る自分の顔を見た。
「私が、戦国時代の武将になってた」
登校時間になりいつもの道を歩いていると、日の光に目が眩みながら空を見上げた。
すると
「紫苑!」
後ろから名を呼ばれて振り向き、甲冑姿の二人に目を見開いた。
「おう、おはよう!」
目の前には学ラン着の政宗とその後ろには小十郎もいた。
「おい、どうした?」
「…え?」
「ボーっとして、眠いのか?」
「政宗様が挨拶しているんだぞ、お前も返したらどうなんだ?」
「あ、お、おはようございます…」
返事をすると政宗達は紫苑の前を歩き、紫苑は振り返り、先程の甲冑姿の二人の事を考えた。
(夢、だよね…)
「おい、紫苑!」
前を向くと政宗と小十郎が自分の方に体を向け、政宗が手を差し出していた。
「ほら、行くぞ」
その姿に恐る恐る手を上げるが思い留まった。
ポンッ
背中を軽く押されて横を向くと、甲冑姿の自分がいて、笑い掛けてくれた。
その姿は直ぐに消え、紫苑は笑顔を見せた。
「今行きます!」
何の縛りもない。私は、ただの紫苑だ。
駆け出して政宗の手を取った紫苑は、とても嬉しそうだった。
こうして牙は消え、ただの女性に戻った。
【完】
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