戦国BASARA
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あれは、まだ俺が元服する前の、幼い記憶。
母と祖父を殺され、元凶の父も亡くした紫苑。彼女は父上に頼み、三人を火葬で埋葬したいと言った。
燃え上がる業火の中、焼かれる祖父と両親。紫苑はその状況を黙って見続けていた。
彼女は手を強く握っていたが、一切涙は見せなかった。
だが俺には、ただ炎を見続ける紫苑の表情が、泣いている様に見えた。
戦国BASARA
THE last party
THE last party
覇王と呼ばれた豊臣秀吉を倒し、世は再び乱世へと入った。
そんな中、ある族が奥州に向かっている情報が入り、政宗は小十郎に出陣を命じている間に一人で族の元に向かった。
時同じ頃、紫苑は自国に戻っており、兵達から国の状況を聞いていた。
一通り報告を聞き、そろそろ奥州に向かおうと馬を用意させようと考えた。
だが
「そろそろ出て来てはどうですか?」
誰もいない室内で紫苑がそう呟いた瞬間、全ての戸が閉じられ、暗闇の中一本の蝋燭の灯りが付いた。
「気付いておったとはな、何故兵がおる内に話さなかったのだ?」
「殺気がなかったので無視していましたが、いつまでもお帰りにならないのでね。いい加減飽きました」
「噂通り、肝の座った娘よ」
暗闇から現れたのは、宙に浮く御輿に乗る包帯男だった。
「私に何用ですか?」
「そう焦るな、我の名は大谷吉継。主と話がしたくてな」
「話?」
.
奥州へ戻った紫苑は足早にある部屋を目指し、その部屋で傷だらけで眠る政宗の姿に目を見開いた。
「政宗様…」
枕元に膝を付き、そっと体に手を添えた。何も言えずそうしていると、部屋に入って来た小十郎が紫苑の肩に手を添えた。
「命に別状はねぇ、…だが傷は深い。暫くそっとしてさしあげよう」
「私が、私がお側にいれば、こんな事には…」
「お前のせいだけじゃねぇ」
肩に乗る小十郎の手が少し強まった。
「俺も政宗様を一人で行かせてしまった」
小十郎を見上げれば、彼の表情も険しいものだった。
紫苑の肩を数回叩いて部屋を後にし、彼女は再び政宗の顔を見た。
一瞬脳裏に浮かんだ大谷の姿に頭を振り、暫く動けなかった。
政宗の傷は少しずつ癒えていたが、少し目を離した隙に彼は剣を振っていた。
止めようと声を掛けようとしたが、小十郎と何かを話していて止めた。
話の内容は先日この地に一人侵入して来た族、石田三成。
彼は元豊臣秀吉の臣下であり、敬愛する主を討った政宗に復讐する為戦いを挑んだ。
だが政宗は戦いを途中放棄し、自分と戦いたくば旗を掲げて出直せと言った。
その後石田三成はいくつもの村を襲いながら旗を残し、覇王、豊臣の跡を継ぐ【凶王】と名乗り出したらしい。
政宗は石田がそうなったのは自分の所為と言い、小十郎に出陣を命じた。
「…紫苑」
稽古を終えた政宗の前に立つ紫苑、だが彼女は何も言わなかった。
「その面じゃ、聞いてたんだな」
「…はい」
「なら俺の言いたい事も分かる筈。俺は引かねぇ」
政宗は紫苑の横を通り過ぎ、紫苑は黙って行かせた。
「…分かっています、貴方は何を言われても止めない。だから」
握り締めていた手を上げ、手の平を見た。
「だからこそ…」
.
傷が癒えた政宗は軍を率いて石田の元を目指した。
だがその途中真田幸村率いる武田軍と遭遇、彼は最近不穏な動きし、武将達を集める徳川の様子を探るらしく関ヶ原に向かう途中だった。
衝突する事はなかったが政宗は此処で初めて幸村と戦い、再び会ってしまった事に感情が高ぶり、幸村に戦いを挑んだ。
「どちらがが勝ち、どちらがが死ぬ。憎悪に塗れたdeath matchだ。have no choice、だから今、あんたとやり合っておきてえんだ!真田幸村!!」
走り出す政宗に答えるよう幸村も槍を抜き、二人は戦い始めた。
「…きっと、真田様だけ」
「紫苑?」
ポツリと呟く紫苑を小十郎は見るが、彼女は二人の戦いを見続けた。
「政宗様の感情をここまで高ぶらせる事が出来るのは、真田様だけ…。私にはもう…」
明らかに様子の可笑しい彼女にもう一度名を呼ぼうとした時、政宗と幸村の戦いに一人の男が介入した。
それは前田の風来坊事、前田慶次だった。
「何者にござる!?」
「何のつもりだ風来坊!?」
「あんたら、こんな所で何やってんの、天下の一大事だってのに!」
「テメェには関係ねぇ!どきな!」
「野暮は承知だ。けど、ここは引かないよ」
何を言おうと引かない慶次に政宗と幸村は剣先を彼に向けるが、慶次はそれを否して力押しで止めた。
彼の放つ言葉に勝負は一時お預けとなり、政宗は小十郎から渡された徳川からの手紙を見る事なく、関ヶ原に行先を変更した。
ギュッ…
すると一部の兵が政宗にある物を差し出した。石田と戦う時に使って欲しいと、伊達軍で話し合い作った物。
「政宗様。政宗様のお命は、奥州全員の命です!」
小十郎や他の兵達を見た後、政宗はゆっくりと歩み、贈り物の首輪を掲げた。
「…悪くねぇ。coolなaccessoryだ、使わせて貰うぜ」
その言葉に伊達軍は大喜び、幸村達もそれを見ていたが、不思議な事が起こり出した。
兵達が次々と倒れていき、やがて立っているのは政宗達だけとなった。
「一体、何が?」
「…寝てる?」
佐助が兵達の様子を見ると、全員が寝ていてどんなに呼び起こしても起きなかった。
「無駄ですよ」
その声に一同はある人物を見た。
「明日の朝までは、何があっても目覚めませんから」
「…紫苑」
立ち尽くす紫苑、彼女の上げている右手に持つ小袋からは何かの粉末がサラサラと風に流れ出ていた。
「紫苑!てめぇ何をして!…っ」
小十郎も膝を付き、幸村や佐助、慶次も必死に眠気に耐えていた。
「…何の真似だ、紫苑っ」
「政宗様、貴方は石田を倒せるんですか?」
「何?」
遂に膝を付いた政宗を見て、紫苑は、今まで見せた事のない皮肉な笑い方をした。
「以前完膚なきまで負かされた貴方が、そんな首輪一つ着けただけで勝てると思っているのですか?」
「紫苑、殿…?」
「私は貴方が強いから、だから貴方の側にいました。織田や豊臣にも一度は負けても貴方は立ち上がり、そして勝利した」
「だから何だ…俺は今度も勝つ、その為に石田にrevengeを」
「同じ奇跡が、そう何度も起こるでしょうか」
手に持つ小袋を投げ捨て、政宗の前に膝を付いた。
「お忘れですか政宗様、私は牙。強い者の側にいればそれだけ私は鋭くなる。なのに」
立ち上がった紫苑は政宗を見下ろし。
バシッ
「政宗様!」
政宗の頬を叩き倒した。
「紫苑!政宗様に何て無礼を!」
「貴方は私を使わない、前に出させてくれない。私を使わないのなら、もう貴方の側にいる必要もない」
痛みと眠気に耐える政宗を見下ろした。
「今、この時を持って竜の牙である紫苑は、伊達軍を抜けます」
その言葉に一同は驚いた。
「さようなら、政宗様」
最後に紫苑はいつも見せる優しい笑顔を一瞬見せ、馬の方に歩み出した。
「紫苑…っ」
手を伸ばすが届かず、馬に乗った紫苑は一度政宗を見るが、早々にこの場を後にした。
「紫苑…」
限界を迎えた政宗は眠り、他の者達も眠ってしまった。
.
懐かしい夢を見た。
元服する前の幼い自分が庭で木刀を振り、その側の縁側には幼い紫苑がいた。
懸命に稽古をする政宗を見て、不意に紫苑が語り出した。
『政宗様は、元服なさったら戦に出るのですか?』
『当たり前だ。俺は戦に出て名を上げ、そして天下を取るんだ』
『…そうなったら』
政宗の横に立ち、顔を見上げた。
『その時は、紫苑も連れて行って下さい』
『紫苑…』
『約束ですよ』
そう言った直後に消えた紫苑、辺りも真っ暗になり、見渡した先には女中姿の紫苑が立っていた。
「政宗様」
いつもの笑顔を見せる彼女に無意識に手を伸ばすが。
ザンッ
紫苑の刀の剣先が、政宗に向けられた。
「貴方は約束を果たしてくれなかった」
武装した姿へと変わっていた紫苑、その瞳には涙が溢れていた。
.
「っ!」
政宗が目を覚ました時、明るかった空は夜へと変わっており、辺りにはまだ眠っている小十郎や幸村、伊達と武田軍の姿もあった。
僅かに朦朧しつつ立ち上がり、紫苑が投げ捨てた小袋に目が行った。
それを拾い上げ、中にある物が入っていた事に気付いた。
やがて小十郎達も目を覚まし、全員が起き次第出発すると彼に伝えた。
「政宗様、紫苑から受けた傷の手当てを」
「必要ねぇ」
「は…?」
顔を向けた政宗の顔に紫苑が受けた傷などは見当たらず、小十郎は不思議に思った。
「あいつ…」
右手を見下ろして強く握り、小十郎も何かを察した。
「…小十郎」
「はっ」
「紫苑の事は、あいつらには言うな。先に向かったとでも伝えとけ」
「…承知しました」
.
当初の予定より遅い進行、道中政宗は一言も話さず、小十郎も一度だけ声を掛けたが政宗は何も答えなかった。
他の者達も何も言わず、一同は無言で関ヶ原を目指した。
ワアアアアア
関ヶ原に近付くに連れて聞こえる戦の声、辿り着いた地では各武将達が激しく斬り合い、巨大な鍋が置かれた高台では徳川家康が何かを叫んでいるが聞こえない光景だ。
すると家康がこちらに気付き、高台から降りてきた。
「慶次!真田!」
「家康、何だよこの戦は!?」
「儂の偽の書状を書いたのは、金吾だったらしい」
鍋の高台には小早川秀秋が縮こまっていた。
「儂はこの場を借りて儂の想いを皆に語ったのだが、後から現れた三成や毛利の乱入でこんな事に…」
徳川が目を向けた先には石田三成、そして巨大な乗り物には毛利元就がいた。
「筆頭!あそこに姐さんが!」
一人の伊達兵が言った先には紫苑が立っていた。彼女もこちらに気付いたが政宗の顔を見た途端顔を逸らし、乱闘の中に姿を消した。
「政宗殿!紫苑殿は某が!」
「ちょっ、ちょっと旦那!?」
幸村は武田軍に指示を出して紫苑を追い、政宗も続こうとしたが石田の姿を見付けて足を止めた。
「…小十郎!」
「承知!お前ら!」
小十郎の掛け声に伊達軍は政宗と石田の周りの兵を押し退け、二人の戦いの場を作った。
迷わずこちらに来る石田の目には、政宗しか映ってなかった。
.
「てやああ!」
襲って来る兵を薙ぎ払い、紫苑は空を見上げた。
(結局政宗様は此処に来てしまった。やはり、あの人を止める事は出来なかった)
「私は、何の為に…」
「紫苑殿っ!」
その声に顔を下ろすと、幸村が紫苑の前に立っていた。
「ーーー…、何かご用ですか?真田様」
いつもと変わらぬ雰囲気に思わずたじろぐが、頭を振って槍を構えた。
「某は、貴殿を止める!」
「…止める?」
その言葉に紫苑の様子が変わった。
「何故?」
「え?」
「何故私を止めるんですか?」
「そ、それは…」
「私が伊達を抜けた事も、この場にいる事も、真田様には関係のない事でしょう?私を止めた所で、真田様に利益などないのに」
「違う!」
声を上げた幸村、槍を構えたまま僅かに俯く彼を紫苑は黙って見ていた。
「確かに某は武田、紫苑殿は伊達。相入れぬ事は承知、しかしっ」
幸村は紫苑が政宗の前から消える時に向けた笑顔を思い出した。
「あの時の笑顔が、心の底から笑えたとは思えんのだ!」
幸村の叫びを近くで聞いていた佐助は「旦那…」と小さく呟き、今度は紫苑が俯いた。
「某は紫苑殿の心からの笑顔が見たいのだ。初めて出会った時の、あの笑顔が!」
自分の心中を告げ、紫苑の返答を待った。
初めて幸村と会った数日後、政宗は医師として紫苑も連れて行き、その先で牙になる事を許された。
「私の言葉は届かないのに、真田様の言葉は届いた…」
ポツリと呟いた言葉は幸村には聞こえなかった。
「羨ましいな、貴方が…」
「紫苑殿?何を言って…」
何も答えず刀を強く振り、周りの兵達を薙ぎ払い広い場を作った。
「…なら、ここで証明させる。政宗様に向けた笑顔が偽りかどうかを」
刀を構えた紫苑に、幸村は戸惑い僅かに槍を下ろした。
「構えなければ、こちらから行く!」
先に動いた紫苑の刀を受け止め、その力に驚いていた。
(何だ、この力は…っ)
「もう手加減はしない。例え貴方が政宗様の好敵手でも、邪魔をするなら容赦はしない!」
槍を押し退け、腹に蹴りを入れて幸村を吹き飛ばした。
「くそっ」
幸村を援護する為佐助が苦無を投げるが軽く交わされ、水竜をぶつけて体制を崩した。
「くっ、何なんだよ、この力は!」
「これが紫苑殿の…本当の実力」
息を乱さず立ち尽くす紫苑の上に、影が通った。
「ハアアアッ!」
上空から慶次が渾身の一撃を叩き付けるが、片手で防がれ薙ぎ払われた。
「何でだよ、紫苑ちゃん!」
体制を立て直しながら慶次が叫んだ。
「アンタはあんなに優しかった。伊達軍が自分の家族だって、俺に話してくれたじゃないか!」
「…人は変わる」
「っ、」
「この意味、貴方なら解るでしょう?かつて覇王と呼ばれた豊臣秀吉…」
その名に、かつての友の姿を思い浮かべた。
「…っ、あいつと紫苑ちゃんは違う!紫苑ちゃんは独眼竜や皆の事を大切に想っている!今だって!」
「違わない!」
叫ぶ慶次の声を振り払う様に刀を振るい、砂埃が舞う中紫苑一人が立っていた。
「今なら解る。力がなければ何も変えられない、現に貴方達は私を止められない。…最初から、こうしていれば良かったんだ…っ」
強く握った拳から血が流れ地面に滴り落ち、紫苑は再び空を見上げた。
(私は何も出来ない…父上の時も、今回も…)
その時、石田三成との戦いに勝利した政宗が、紫苑の方に歩み寄っていた。
「政宗様!今の紫苑は」
「stop。小十郎、何も言うな」
小十郎が政宗を止めようとするが構わず進み、間合いの位置で足を止めた。
何も言わず両者見合い、政宗は血濡れた紫苑の手を見下ろした。
フッ
ガシャンッ
『っ!?』
小さく笑うと同時に六爪を鞘に戻した事に一同は驚き、再び側に寄ると紫苑の血濡れた拳を手に取った。
「なっ、」
そして懐から手拭いと共に小さな壺を出し、壺の中の塗り薬を傷口に付けた。
「医者のお前が、自分で傷作ってどうすんだよ」
「…それは」
キュッ
最後に手拭いを包帯替わりに巻き、軽く握った。
「それに、お前のこの手は誰かを傷付ける為のモノじゃねぇ。守る力だ」
手当てされた拳。それを呆然と見ていたが、我に返り手を弾いた。
「私は…伊達を抜けたんですよ!」
「あああれか。いいjoke。上手い嘘だったな」
「嘘って…」
「俺を欺けると思っているのか?」
再び近寄り、刀を握る紫苑の手を掴み、政宗は刀を自分の首輪が当たらない首元に当てた。
「それが本当だってんなら、今ここで俺を斬ってみろ。この近さなら簡単だろ?」
「…何で」
「Ah?」
「どうして、嘘と言い切れるの?私は、貴方に無礼な事もしたのに…」
「確かに、あん時は頭に血が上ってお前を討つ事も考えた。だが直ぐにやめた」
「え?」
「お前の目が、迷っていたからだ」
「…っ」
離反する時の一瞬の迷いを、政宗は見逃していなかった。
「それは今も同じだ、だから俺は刀を納めた。お前は嘘を付いている、何かは知らねえが、その為に伊達を抜けた事は解った。違うか?」
「…私は」
「大体怪我させた張本人が普通薬なんて置いていかねぇよ」
空いている手で壺を見せ、再び懐にしまった。
あの眠り薬と共に入っていた壺を、政宗は見逃さなかった。
「俺を騙そうなんて百年早えよ。YouSee?」
皆が見入る中紫苑は震え、刀に力を込め出した。
「紫苑殿、待たれよ!」
「待て真田!」
止めに入る幸村を小十郎が静止させ、政宗と紫苑を中心に水柱が上がった。
「…っ、私は!!」
ドンッ
捲き上る力と水竜が天高く登り弾け、その場に一瞬の雨を降らせた。
煙の中から見えた二人の姿は変わらず、政宗が手を離すと紫苑の手から刀が滑り落ちた。
ガシャンッ
(…出来ない)
後退りながら政宗を見つめ、涙を流し出した。
(貴方を斬る事なんて、出来ない…っ)
「…っ、」
崩れ落ちる紫苑。そんな彼女の肩に手を置き、政宗が静かに言った。
「何があった、紫苑」
「…例え私が何を言っても、貴方は此処へ来る。分かっています…それが、私の知る政宗様だから…」
「何を…」
すると太陽は月に覆われ、辺りを暗闇へと変えた。
「うわああっ!」
叫び声に顔を上げると、無数の黒い手が武将達を襲い、それに触れた武将達は倒れていった。
「皆ー!あの黒い手に気を付けて!アレに触れちゃ駄目だよ!」
高台にいた小早川の叫びに異様なモノと感じ構える者や逃げる者。
政宗も伊達軍に退がる様叫んだ。
「紫苑!おい!」
動揺して動かない紫苑に舌打ちし、彼女を横抱きした。
「ま、政宗様!?」
「小十郎!」
「はっ」
紫苑を抱えたまま後退する政宗、小十郎はその背を守りながら落ちていた紫苑の刀を拾った。
「ま、政宗様、下ろして…!」
「暫く抱えない内に痩せたんじゃねぇか?この辺が少し物足りないぜ」
「どっ、何処触っているんですか!?」
抱えた脇下から伸びた指先が胸元に触れ、ニヤつく政宗に紫苑は赤面した。
「その調子なら、大丈夫だな」
「…え」
黒い手から幾分離れた所で紫苑を下ろし、彼女を見下ろした。
「言いたい事は後で聞く。あいつらを頼んだぞ」
「ま、政宗様!…わっ」
自身の刀が降ってきて、慌てて受け取った。
「小十郎様…」
「そこでしっかり反省しておけ」
政宗と小十郎は中心地へと戻って行った。
遠くなる二人の背中、それを見ながら紫苑は空を見上げた。
思い出すのは、あの日自国で聞いた大谷吉継の言葉。
.