戦国BASARA
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上杉の足止めで傷を癒せた伊達軍は再び大阪向けて馬を走らせ、辺りが暗くなり野営を始めた。
皆から離れ、紫苑は一人近くの川で傷の具合を確認していた。
考えるのは豊臣秀吉。彼を思い出す度、ある人物が浮かび出す。
「紫苑」
ハッ、として後ろを向くと、兜を取った政宗が立っていた。
「政宗様…」
「余り遠くへ行くな、今のお前はまともに戦えねぇんだぞ」
「戦い…」
その言葉に俯き、様子がおかしい事に気付いた。
「おい、どうし」
「豊臣秀吉を見て」
政宗の言葉を遮り、紫苑は続けた。
「父を思い出しました」
「っ!」
その言葉に政宗は何も言えず、紫苑は傍に置いてあった刀を取り、政宗に礼をして野営地に戻って行った。
.
紫苑の父は、その絶対的な強さと、戦った後に残る爪痕から竜の牙と呼ばれていた。
しかし彼は民を持たぬ武将、故に先代の伊達軍の戦法に敗北し、政宗の父である輝宗の部下になった。
その後伊達家専属の医師の娘と恋に落ち、紫苑が産まれた。
家族を持ち、民を持ち、最早竜の牙という二つ名が霞む程だった。
だがある日、それは壊れた。
稽古をしていた父の元に紫苑が駆け寄り、面白半分で試合をしようと始まった。
すると紫苑は誰にも習っていない筈の剣技を次々と父に見せ、半場本気まで力を出した父は全力で紫苑を打ち負かした。
当然幼かった娘は泣き出すが、父は紫苑をじっと見ていた。
それから戦に出ても近くに味方がいてもその一帯にいる人物全てを薙ぎ倒し、再び戦場に爪痕を残すようになった。
誰に何を言われても聞かず、ただ強さを求めて刀を振るった。
そして事件は起こった。
父の数々の行動に妻や義父が問い質し、口論は大きくなっていった。
+++
新しい医学を学ぶ為に祖父を探していた紫苑。
中々見付からず、仕方なく部屋に向かった。
「お祖父様、いらっしゃいますか?」
声を欠けるが返事はなく、いないのかな?と思いながら襖を開け足を踏み入れた。
ピチャ
「え?」
水音に床を見ると、そこは一面血の海だった。
「お、じい様…母上…?」
部屋の中にいた祖父と母の変わり果てた姿。不意に横を向くと、そこには血まみれの刀を持った父がいた。
「父、上…」
「紫苑…」
父は刀を振り上げ、それを紫苑は見るしかなかった。
ズシャッ
頬に血が飛び散り、父は紫苑を斬る事なくゆっくりと倒れた。
倒れた父の背後には輝宗が立っており、彼が父を斬ったと確信した。
「済まぬ、紫苑…」
「輝宗、様…」
.
紫苑の父は戦で死んだと伝えられた。そして真実を知る者はほんの一握りの人物だけ。
その後、紫苑は祖父の穴を埋めるべく医師の道を進み、その秘めた才能を買われて政宗の牙ともなった。
翌朝。
支度を終えた紫苑は政宗を待ちながら物思いに耽っていた。
あの事件後、紫苑は父の事を忘れようと努力した。だが、豊臣秀吉の出現により記憶を呼び起こしてしまい、困惑した挙句怪我を負ってしまった。
「おうお前ら、ちゃんと休めたか?」
政宗の声に顔を上げると、彼は兵達に声を掛けながらこちらに歩いてきた。
「紫苑、調子はどうだ?」
「大丈夫です。完治にはまだ掛かりますが…」
頭を下げながら伝える紫苑に、政宗は怪我をしていない左肩に手を乗せた。
「お前が父親をどう思っているかは知っている」
「……」
「だが、豊臣はお前の父親とは違う」
軽く肩を叩き、馬に向かって歩き出した。
「深く考えるのは、怪我を治してからにしろ」
その言葉に、複雑な思いをしながらも、ゆっくりと頭を下げた。
.
伊達軍は進軍を進め、途中武田が納める甲斐でも一騒動あったが長居はせず、大阪を目指していた。
だがある晩、野営をしていた伊達軍を山賊集団が取り囲んだ。
「悪いな兄さん達。ちょいとその馬、俺達に貸して貰おうか」
現れた頭らしき人物は、船の錨の様な武器を持つ、政宗と同じ隻眼の男だった。
「山賊風情が笑わせてくれるぜ、俺を誰だと思ってやがる?」
「おっと待ちな。こちとら山賊じゃねぇ、海賊よ。摂津の海を流れ流れて此処まで辿り着いたんでい。悪いが、ちょいと訳ありでね」
「上等だ、どっちにしろ人にモノを頼もうって態度じゃねぇ。思いっきり山の中に現れておきながら海賊を名乗りやがる辺り、jokeのセンスも先ず先ずだ。そのcrazyな獲物共々」
小十郎の刀を抜き、光らせた。
「気に入ったぜ」
両者の大将が睨み合う中、部下達も互いに言い合いをしていた。
そんな罵声を聞きながら紫苑は敵の大将を見ていた。
(海賊。隻眼にあの錨、まさか…)
「中々いいノリした連中を連れてるじゃねぇか」
「へ、そっちも生きのいいのが多いみてぇだな」
「精々楽しませてくれよ、gambleをけしかけやがったからにはな」
「安心しな、こちとらイカサマはやらねぇ主義よ」
双方が構え、派手な鳥が一声鳴いたのを合図に戦いは始まった。
「筆頭そこです!」
「相手は大振りっす」
「刀一本でいけますぜ!」
「ウチの筆頭が、ぽっと出に負けっかよ!」
伊達軍がそれぞれ政宗を応援する中、相手方は。
『ア・二・キ!ア・二・キ!』
声を合わせて応援し、その団結に焦る伊達軍。すると良直が何かに閃き両足を開き息を吸った。
「筆頭!」パパパン!
「筆頭!」パパパン!
それに釣られ他の皆も真似して応援し出した。
『ア・二・キ!』
『筆頭!』パパパン!
双方の応援合戦に、黙って見ていた紫苑は。
「…ハア」
一人、頭を抱えて呆れていた。
そんな中二人の戦いは続き、思っていたより長期戦に部下達は敵の大将に不審を抱いていた。
「思いがけないPartyだ、豊臣をぶっ倒す前の肩慣らしにはなりそうだ」
「お前さんも単なる珍走団の頭じゃねぇ様だな」
「That's right」
政宗は手に持つ刀三本を一度鞘に戻し、六爪を構えた。
「癖になっても、俺に六爪を抜かせたアンタに二度目はねぇ。You see?」
「そいつはお互い様よ、お見知り置きとは言わねぇぜ」
「OK!Let's dance!」
「食らってやるぜ!」
再び激しくぶつかる雷と炎の攻防、その戦いに部下達は敵の大将が誰か解った。
(豊臣に敗れたと聞いていたけど、生きていたのね…)
紫苑は相手方が誰か解り、その目的も解ると静かに馬の方に歩いて行った。
ガキンッ
「You lucky。マジで海賊だったって訳かよ」
「通りでな、噂の青鬼とこんな所で出くわすかね」
『奥州の独眼竜!』
『西海の鬼!』
正体が解り、二人ば武器を戻した。
「鬼ヶ島の鬼が、なんだってこんな所でhitchhikeしてやがる?」
「ハッ、言うなよ。まあ張り手ぇに言えば【背水の陣】大枚叩いた要塞をぶっ壊された落とし前と、捕まった子分共を取り戻しに行く。目指すはアンタと同じ大阪よ!」
「成る程な、そこに馬を持った俺達が現れたと」
「おうよ。どうだい?俺等に譲っちゃくれねぇか?」
「冗談じゃねぇ。そしたら俺達が動けなく「政宗様」
背後から歩いて来た紫苑が政宗の横に立ち、西海の鬼、長曾我部元親は紫苑をじっと見た。
「長曾我部軍と相乗りでしたら、馬を足る事無く迎えますが」
「二人乗りか、OK。それならこっちは了承だ。西海の鬼、てめぇはどうだ?」
そう投げ掛けるが、元親は紫苑を見ながら固まっていた。
「あの…」
「…れた」
「え?」
ぼそっと呟いたと同時に紫苑に近寄り、怪我をしていない左手を握った。
「惚れた!」
「………は?」
『えぇーーーっ!!?』
爆弾発言に両軍は驚き、政宗の表情が険しくなった。
「…あの」
「俺は長曾我部元親!お前に惚れた!今すぐ伊達を抜けて俺の所に来い!それで俺の嫁になれ!」
「……」
「野郎共にも引かないアンタみたいな女を探していたんだ!なあ名前、名前何て言うブハッ!!」
突然元親を激水が襲い、紫苑は漸く離れた手をパッパと払った。
「夜も明けましたし、出発しますか?」
「そうだな、お前等!出陣だ!」
『…は、はい』
何事もなかった様に振る舞う政宗と紫苑に呆然しながらも伊達軍は準備を始め、復活した元親は紫苑に詰め寄った。
「いきなり何しやがる!?」
「あら、私の仕業と解るんですね」
「独眼竜は雷だった、なら考えられるのはアンタしかいねぇ!そもそも何で俺を拒むんだよ!」
「そーだそーだ!」
「アニキはいい男だぞ!」
長曾我部軍があーだこーだ言うが、紫苑は溜め息を付いた。
「会ったばかりの人に求婚を求められても迷惑です。第一」
元親をジッと見ながら続けた。
「私半裸な男は嫌いです」
言いたい事を伝えて紫苑も準備に入り、政宗がニヤニヤしながら肩に手を置いた。
「残念だったな、西海の鬼」
「思ってねぇ事を…っ」
.
夜が明けたと同時に進軍する伊達軍、彼等の背後には長曾我部軍も乗り、共に大阪を目指した。
だが
「…政宗様」
「Ah?」
「何で私、政宗様の後ろに乗っているんですか?」
大将である政宗と元親は一人で馬に乗っていたが、何故か政宗の後ろには紫苑が乗っていた。
「仕方ねぇだろ、馬が足りねぇんだから」
「だったら他の方に…」
「西海の鬼でもいいのか?」
「…政宗様がいいです」
観念した言葉に政宗はニヤリと笑い、それを聞いていた元親はチッと舌打ちした。
「……」
政宗は捕まる腕が片腕しかない感触にチラッと背後を向いた。
「?どうかしましたか?」
「…まだ、右腕は痛むのか?」
その問い掛けに、紫苑も包帯が巻かれた右腕を見下ろした。
「まだ僅かに。今夜にでも一度確認してみます、ご迷惑を…」
「そんなんじゃねぇ」
顔を上げると、政宗は前を向いていた。
「その怪我は俺の不始末でもあるんだ、この際だからキッチリ治るまで刀は振るな」
その言葉に、小さく呟いた。
「私は、何の為に…」
「Ah?何か言ったか?」
「…いいえ、何でもありません」
やがて日も落ち、野営をしながら今後の動きを話し合う中、紫苑は一人離れた場所にいた。
シュルッ
右腕に巻いていた包帯を外し、ゆっくりと動かしながら様子を見ていた。
ズキッ
「ッ、」
軽い痛みが走ったが其れ程痛まず、木に立て掛けていた刀を握った。
思い出すのは昼間の政宗の言葉。
「…これなら、刀は振るえる」
自分に言い聞かせて刀を強く握り、政宗達の元に戻ろうとした時。
スッ
突如目の前を黒い羽が舞い、一人の忍が現れた。
「っ!」
ガキンッ
その頃、大阪をどう攻めようと作戦を練る両軍だが、政宗と元親が何かに気付いた直後に木に一本の苦無が刺さった。
それには文が付いており、それを読んだ政宗は驚いた。差出人は
「…松永久秀?」
オマケ
「姐さん!姐さんも一緒に筆頭を応援しましょうぜ!」
「…やらない」
「折角良直がいいの思い付いたんでさぁ、さあ姐さん!」
「やらない」
『姐さん!一緒に!』
「…っ、 やらないって言ってるでしょ!しつこいわね! 」
珍しく怒った紫苑に、政宗も思わず動きを止めた。
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