戦国BASARA
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奥州に戻った伊達軍。だが彼等の表情はとても重く、政宗は小さく舌打ちした。
そんな中文七郎と孫が政宗の六爪、刀のない鞘に目を向けた。
「すいやせん、筆頭」
「摺上原で、どうしても六爪の残り一振りを見付けられなくて…」
「No problem。これだけありゃ上等だ」
鞘のみの刀に腕を乗せ、屋敷に入る政宗に誰も声を掛けれず、紫苑は静かに皆を見渡した。
「直ぐに出陣の用意を。政宗様の陣ぶれあるまで各自少しでも休むように」
『はい』
自分の傷や他の者を気遣いながら屋敷に入る兵達を見た後、紫苑も痛む右腕にそっと触れ、準備に取り掛かった。
一方政宗は自室に戻る事なく、真っ直ぐに小十郎の部屋に向かった。
あれは奥州平定の戦、人取橋での戦後。
.
「政宗様!まだ動かれてはなりません!」
「うるせぇ!」
手当てを受けたばかりで出歩く政宗を紫苑は止めるが聞かず、目的の部屋に辿り着き戸を開け、中にいる小十郎を睨んだ。
小十郎の前には短刀、それに息を飲んだ。
「小十郎様?」
「片倉様!」
「何のつもりだ、小十郎」
騒ぎを聞き付けた兵達も駆け付け、政宗は少し機嫌の悪そうな声をして小十郎を見下した。
「この小十郎、腹を切らねばなりませぬ」
「Ah?」
「此度の人取橋での戦い…勝ちを収めはしたものの、その背をお守りするとお誓い申し上げたにも関わらず、政宗様の御身に深手を…」
「掠り傷だ」
「いいえ。一つ間違えば、刀をふるえなくなるどころか、お命にも関わる太刀傷にございます」
真っ直ぐと政宗を見据えて言った小十郎は目の前に置いていた短刀に手を伸ばし掴んだ。
「甚だ、無作法ではございまするが、ここに死んでお詫びを」
その言葉に周りの兵達が慌てる中、政宗だけは落ち着いていた。
「All right。介錯は引き受けたぜ」
『えぇ!?』
「政宗様!何を」
止めようとしない政宗に問い詰めるが、小十郎が意を決し腹に短刀を刺そうとした。
ガキンッ
政宗がそれを刀で弾き天井へと突き刺した。そして一度切先を小十郎へと向けたと思えば、右腕を曲げた上体で固定するのに使用されていた布を切り、地面へと刀ごと突き刺す。
そして左手で小十郎の胸倉を掴み、怪我している右手で殴り飛ばした。
「う、ぐっ、ああ!」
「政宗様!」
『筆頭!』
握った拳から包帯に血が滲み出す。それは拳だけに留まらず包帯が巻かれている腕のあちこちにも滲み出していた。
「け、怪我している利き腕で」
「骨まで抉られているのに」
「む、無茶っすよ!」
「いつまでも…ガキ扱いするんじゃねェ…お前は俺の右目だ…!俺が右手を失くしたときには腹なんざ掻っ捌いてねぇで、俺の右手にもなりやがれ!」
「政宗様…」
痛みに耐えながら立ち上がり、小十郎に背を向ける。そして背にある伊達の紋章を見せた。
「この通り背中には一太刀も浴びてねェ。おまけに…」
六爪を一気に抜き、そのまま手にした。
「明日からも変わらず俺はこの六爪を振るえる。何の問題もねェってことだ。そうだろ?」
「政宗様…」
六爪を向けられ、小十郎は目を見開く。
「Coolに行こうぜ」
「申し訳、ございませぬ…」
小十郎ははだけた着物を治し、姿勢を整えた。
「この小十郎、直一層の覚悟を持ってお使えいたす所存。改めて、奥州平定おめでとうございまする」
小十郎に続くように兵達や紫苑も同様に膝を付き、頭を下げた。
『おめでとうございます!』
.
政宗が襖を開け、誰もいない部屋を見渡す。そのまま部屋へと入り、政宗は置かれていた刀に手を伸ばした。
その鍔から刃にかけて彫ってある文字、「梵天成天翔独眼竜」を親指でそっとなぞり、素振りをした後空いている六爪の鞘に納めた。
「小十郎…」
「…政宗様」
襖の向こうから聞こえた声に意識をそちらに向けた。
「出陣の用意、整いました」
「…OK」
襖を大きく開け、控えていた紫苑の前を通り過ぎる政宗。
紫苑は開け放たれた小十郎の部屋に視線を向け、静かに襖を閉めた。
「Are you ready guys!?」
『YEAH!!』
「Hurry up!」
『YEAH!!』
「Burning up!」
『YEAH!!』
「We go there!」
『YEAH!!』
包帯などで怪我をしている者が多くいるが、それを忘れさせる様な勇ましさで彼らは叫んだ。すると先頭を走る政宗の元に斥候として出していた部下が戻ってくる。
「筆頭!瀬戸川の向こうの上杉の軍勢が!」
「何?」
「簡単に突破できそうな数じゃありやせんぜ!」
予想外の出現に、政宗の表情が険しくなった。
「筆頭!」
上杉軍の斥候に向かっていった良直達が戻り、その様子に紫苑は大方の予想が付いた。
「ダメっす!」
「上杉の奴等、何を言っても完全シカトっす!」
「迂回路も全て塞がれていやす」
「それに、どこにも上杉謙信らしき姿が見あたりません!」
政宗は黙ったまま話を聞き、そんな時、良直がふと最悪な状況を口にする。
「もしかして、上杉も豊臣に乗っ取られちまったんじゃ…」
「じゃあ他にも!?また囲み討ちにしようってのか!」
「Be quiet」
頭を抱えて叫んだ左馬助に政宗が釘を刺す。それに4人は政宗へと向いた。
「ジタバタしても始まらねェ」
そういって何をその心中に思うのか、政宗は真っ直ぐと丘の上から上杉の軍を見た。
「人取橋か…」
.
攻めてくる様子のない上杉軍に政宗は兵達に待機を言い渡し、各々は食事の用意や怪我の具合を伺っていた。
政宗も椅子に腰掛け様子を伺っていると、置いてある兜に鳥が舞い降り、それを見て呆れていた。
「武田との川中島といい、のんびりやるのが好きなこった」
離れた場所にいた紫苑も高く空を飛ぶ鷹を見上げながら物思いに耽っていた。
「姐さん!」
呼ばれて意識をそちらに向けると、何人かの兵が駆け寄って来た。
「怪我の具合はどうっすか?」
「腹空いてませんか?」
「何かあれば遠慮なく言って下さいね!」
次々に言い渡され、今は困ってないと返し、再び空を見上げようとした時、上杉謙信が姿を現した。
「ッ、越後の軍神…」
政宗も木陰から現れた越後の軍神の姿が目に留まり、それに気付いた者達も立ち上がった。
軍神の姿に良直と左馬助が政宗に駆けて来た。
「やりあうんすか、筆頭」
そう聞かれ相変わらず頬杖を付いたまま政宗は黙り込み、意外な言葉を放った。
「オメーらはもう暫くピクニックを楽しみな」
「「「「え?」」」
「政宗様…」
「豊臣は逃げやしねぇ」
軍神を見ても動かない政宗に兵達ものんびりと過ごし、紫苑は静かに立ち上がり人気のない場所に移動した。
シュルシュル
腕に巻いている包帯を解き、新しい添え木を固定して包帯を巻いていると、背後に誰かが立った。
「怪我はどうだ?」
「かすが…」
現れたのは軍神の忍、かすがだった。
「大丈夫」
「…」
「?」
「豊臣と戦った事は聞いていたが、正直驚いてる。お前が武士だったとは」
「…」
紫苑は何も言えず、ただ笑った。
「後僅かしたら、兵は引く」
「軍神にお礼を言っといてくれない?お陰で休めましたと」
「解った、やはり気付いていたのか。この陣の意味を」
もう一度笑い返し、紫苑は陣に戻り、同時に声が上がった。
「おい!上杉が退くぞォ!」
それに全員が立ち上がり川の向こうを見る。すると言ったとおり上杉の軍が撤退をしていた。理由がいまいち判らない兵たちが各々に悪態を吐くが、その意味が分かった政宗は何も言わなかった。
この人取り橋では伊達軍の歴史上最もと言える程多くの犠牲の出た戦いが繰り広げられた地だ。
今の政宗は右目を奪われたことにより血気盛んになってしまっている為、そのまま豊臣に攻め込めば結果が分かっている。
一度冷静になり、その身の怪我を回復させ力を蓄える。それを見越して、上杉はこの地で伊達の足止めを計ったのだろうと二人は踏んでいた。
それを知った政宗はふと笑い、包帯を解く。
「紫苑、馬を用意しろ」
「政宗様?」
「ちょいと礼をしてくるぜ」
単身乗り込んだ政宗は一閃刀を交えた後戻り、皆に出陣を言い渡した。
「Okay!Be enthusiastic!」
『YEAH!!』
「Prepare the trigger!!」
『YEAH!!』
「Got it!お待ちかねのpartyだッ!!」
『YEAH!!』
伊達軍は再び進撃を開始した。
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