戦国BASARA
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静まり返る摺上張。辺りには多くの兵達が倒れておる。
その中で一人、立ち尽くす政宗がいた。
「―――wake up…wake up guy's!」
そう叫ぶと伊達の兵士が次々と立ち上がり政宗の元へと寄って来た。
「筆頭…」
「筆頭…」
「筆頭!」
「All right。オメーらよくぞ生き延びた。一先ず奥州は取り戻したぜ」
『はい』
笑みを浮かべ政宗はそう言う。だが振り向いた政宗の切り裂かれた背中を見て兵達の心が痛んだ。
「筆頭…っ」
「ちくしょう…っ」
「筆頭の背中は…片倉様にしか護れねぇんだ…!」
悔しそうに文七朗達は呟くが、政宗はその事に触れなかった。
「戻って出陣の用意をする。目指すは大阪だ、豊臣を潰す。小十郎を連れ戻す序でにな」
『はい!』
振り返り言った政宗の言葉に全員で返事をし、数歩進んだところで背後からの気配に気付き、政宗は振り返った。
沈む夕日を背に見覚えのある影がこちらへと迫ってきていた。それに気付いた兵たちも騒ぎ始めた。
「な!」
「ありゃ…!」
「と、とと…!」
「豊臣秀吉」
現れた人物、豊臣秀吉を見て政宗は眉間に皺を寄せ、険しい表情で睨んだ。一歩ずつ政宗は秀吉へと近付いて行った。
「直接挨拶に来るとは、いい心掛けだ。大阪まで行く手間が省けるってもんだぜ」
「ふっ。蛇とは存外しぶといものよ。器の小さきに関わらずな」
「ふっ。そういうあんたの器こそ知れてるぜ、その図体のわりにはな。So easy、部下に任せた蛇退治の顛末をわざわざテメェで確かめに来ちまう辺り…あんたのその目に、生憎俺はしっかり竜に見えてるって事さ」
「減らず口を」
そういい政宗は刀を握った。
「我に歯向かうと申すか。鱗を全て剥がされ、右目をも奪われたその身で」
「ふっ。そうかい、あんたを買い被り過ぎてたみてぇだ。ようは見分けがついてねぇ、そういうこった」
政宗は刀をいつでも攻撃できるように構え、それに秀吉は目を細める。
「教えてやる。竜の鱗ってのはくたばるまで剥がねぇんだ!一枚たりともな」
刀を掲げて構えると、秀吉も拳を構えた。それに全員息を呑む。
「衰えて分を知るがよい」
政宗は青い光を纏い、秀吉は赤い光を纏って互いに力をぶつけた。
だが力に押し負けた政宗は吹き飛ばされ、秀吉は倒れた政宗の頭を力強く掴み、投げ飛ばした。
『筆頭!!』
それに兵達は駆け出し、政宗を護るように覆い被さり、その間に文七朗と孫兵衛は政宗の六爪を拾い、手の空いてるものは武器を構えた。
近付く秀吉に皆が震えていたが、それでも逃げ出す事はしなかった。
秀吉が攻撃しようとする衝撃に兵達は覚悟を決めて目を瞑った。だが一向に攻撃を仕掛けようしない事に疑問を感じた。
グアアアッ!
「むっ!」
突如横殴りの水が秀吉を襲い、その方向に視線を向けると、そこには息を切らした紫苑と少数の兵達がいた。
「ね、姐さん!」
「今の内に政宗様達を!」
「はっ!」
指示を受けた兵達が伊達軍に手を貸し、気絶した政宗を馬に乗せて運んだ。
「紫苑様!お早く!」
「先に行きなさい、直ぐに後を追います!」
「しかし…っ」
紫苑が放った水撃を凪ぎ払い、こちらを睨む秀吉に、紫苑は刀を握り締めた。
再度声を掛けようとしたが秀吉の威圧に押され、兵達は伊達軍を安全な所に誘導した。
「小娘、一人で我に歯向かうつもりか」
「貴方を倒せるなんて思っていないわ。ただ、時間を稼げればいいの」
「自らを犠牲にするとは、愚かな」
「犠牲…それもいいわね」
威圧感に耐えながら、紫苑は笑った。
「政宗様の助けになるなら、私は犠牲にも何でもしてやるわ」
刀に力を込め、紫苑は地を蹴った。
「はあああっ!!」
「ぬうあああっ!」
ドガアアンッ
紫苑の刀と秀吉の拳がぶつかり、大爆発が起こった。
爆風が止み、秀吉の向ける拳の先には首を捕まれた紫苑がいた。
「何故そこまで伊達の肩を持つ、貴様の力を我の為に使わぬ」
「…」
「答えよ」
僅かに力を入れると僅かに苦しんだ後、紫苑は小さく笑った。
「力が…全てではない…」
「何?」
「貴方と似たような人を、私は知っている…その人は、ただ力だけを求め、力だけに頼り…そして散った」
秀吉の掴んでいる腕を弱々しく握り、嘲笑った。
「そんな人に仕えるくらいなら、ここで散った方が増しだ…っ」
ブンッ、ドシャッ!
秀吉は紫苑を投げ飛ばし、踵を返した。
「豊臣秀吉…!」
痛みを堪えながら、紫苑は声を張り上げた。
「貴方に天下は成し遂げれない!貴方は、間違っている!」
そう叫ぶが秀吉は振り返らずに去り、限界を迎えた紫苑は意識を手放した。
.
「っ!」
目が覚めた政宗の視界に映ったのは暗い天井。状況を把握する為視線を動かすと、うたた寝をする文七郎を見付けた。
すると目が覚めた文七郎の目に政宗が映った。
「ん…筆頭?筆頭!!」
それに気付いた文七郎は嬉しそうに叫び、他の兵達を呼びに立ち上がった。
そして間もないうちに伊達軍全員が集まり政宗の周りを囲む。だが政宗は天井を向いたまま何も言わない。
その脳裏には記憶が途切れる前のことを思い出していた。
「夢でも、見てやがったのか…?」
「いえ…」
「筆頭はとっくにボロボロの状態で豊臣秀吉とやりあって…」
「負けたのか…」
右手を顔の前に上げ、見つめながら続けた。
「何で、生きてる…?」
「それが…」
「かなり、分は悪かったんすけど…」
そこで起こった出来事をすべて話した。
「何故か、攻撃の手を緩んだんです」
「その時、姐さんが駆け付けて来て、豊臣秀吉の注意を反らしてる間に俺達、必死で…」
「死んでも、筆頭を護らなきゃって…」
「でなきゃ、俺ら意味ねェし…片倉様にも顔向け出来やせん!」
「誰か…殿(シンガリ)でやられたのか?」
「いえ、生き残った連中は皆、何とか…」
「でも、姐さんが…」
「失礼します」
一言言って襖を開けた人物は、紫苑の軍の兵だった。
「あんた、姐さんと一緒にいた…」
「紫苑様はご無事です。深傷を負ってはいますが」
「そうか…」
兵と紫苑の安否を聞き、安堵したかのように言い目を閉じた。
「Thanks」
「!」
その政宗の一言に全員がはっと顔を挙げ目を見開いた。すると傷の痛みに耐えながら上半身を起こす。
「筆頭!」
「まだ起き上がっちゃ…」
起き上がる政宗に、後ろにいた兵二人が手を差し伸べた。
「文七、孫…食い物はあるか?」
「「あ…はい!」」
二人は食事を持ってくる為この場を離れ、他の者達は黙って政宗を見ていた。
「Insufficient blood…仮面の腰巾着も、山猿の大将も…揃って詰めの甘いこったぜ…」
どう言葉を掛けて良いか解らず押し黙る兵達に、政宗は紫苑の部下に声を掛けた。
「おいお前!紫苑は深傷を負ったと言ったな」
「は、はい」
「どこをやられた?」
鋭い視線に、兵は誤魔化さずに答えた。
「右腕の…骨が折れています」
その返答に、伊達兵達はざわめいた。
「意識はまだ、戻ってはいませんが…」
「そうか」
そう言って自分の掌を見下ろし、その手を強く握った。
.
―――お祖父様、母上
どうして眠っているの?
どうして血を流しているの?
父上、そこで何をしているの?
父上の持っている刀に血が…
どうして私に向けるの?
父上…
「―――ッ!」
ハッと目を見開き、目の前にある天井を見上げ、紫苑は息を乱した。
そしてゆっくりと落ち着きを取り戻し、辺りを見回した。
近くには誰もいなく、気配すらない。
体を起こした時、右腕に走った激痛に前屈みしながらそっと右腕に触れた。
すると廊下から「紫苑」と声が聞こえ、どうぞと返した。
ガラッ
入って来たのは政宗。彼は何も言わず紫苑の隣に移動し、置かれていた羽織を掛けた。
「あ、ありがとうございます」
「気分はどうだ?」
「大事ありません」
隣に座り何も言わない政宗に、紫苑は口を開いた。
「申し訳ございません」
「何の謝罪だ、それは」
「全てです。政宗様の行く道を開くと大口を叩いておきながら、大切な兵を失わせてしまい、政宗様にも深手を…」
「だが、お前のお陰でうちの被害は最小で済んだ」
「それだけではありません!…その背」
豊臣秀吉の前から政宗を逃がす時に見てしまった、政宗の切り裂かれた背。それを見て驚愕した。
「私は…小十郎様の言葉を、何一つ…っ」
ギュッと左手を握り、悔しさに震えていると、その手をそっと握られた。
ハッとして顔を上げると、政宗が手を握り、紫苑を真っ直ぐに見つめていた。
「お前のせいじゃねえ」
「政宗様…」
「これは俺のmissだ、小十郎がいないのに背中をがら空きにしちまった」
「しかしそれは!っ、」
思わず身を乗り出して痛みが走る右腕、体勢を崩したがそれを政宗は支えた。
「おまけにお前やあいつらまで危険に晒した。俺はあいつ等を…
豊臣秀吉と竹中半兵衛を許さねえ 」
「政宗様…」
政宗は紫苑から手を放し、立ち上がった。
「動けるか?」
「は、はい」
「なら直ぐに奥州に戻るぞ」
戸を開け、振りかえらずに続けた。
「戻って準備が出来次第、大阪へ向かう」
戸を閉めて去る影、その影に向かって紫苑は静かに頭を下げた。
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