戦国BASARA
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破壊された竜王の堤。
激しく流れる濁流を挟み、政宗と小十郎は目先に見える明智光秀を睨んでいた。
「政宗様、小十郎様!」
残っていた伊達軍を引き連れて現れた紫苑達に、小十郎は流されている者達に目を走らせた。
「残った奴らと川下へ回れ!ここは俺達で十分だ」
「は、はい!」
急いで指示を出し、岸に上がる者、未だ流されている者の救助に向かった。
流された者達は体力は消耗しているも大事ない者達ばかりでホッとした。
「手当てが出来る者は早急に、容態が悪い者は私に知らせなさい!」
軽い怪我や水を大量に飲んで咳き込む者達に簡単な処置をしていると、慌てた声が聞こえた。
「軍医殿!伊達の軍医殿!」
呼ばれた方に駆け寄った先には、流されていた幸村と信玄が川辺で倒れていた。
「真田様、武田様!」
辺りの騒ぎに幸村は目を覚ましたが、信玄は未だ意識を失っていた。
「親方様…親方様!」
意識のない信玄を揺さぶる幸村に、紫苑は止めに入った。
「真田様、下がって下さい!」
「親方様、目をお開け下され!親方様!!」
「真田様。…誰か手を貸して!真田様を押さえて下さい!」
「は、はい!」
武田の兵が何人か駆け寄って幸村を押さえ、その間に紫苑は信玄の応急措置を開始。
焦り続ける幸村を、政宗は少し放れた所から見下ろしていた。
.
武田領に戻り、直ぐ様信玄の手当てをする紫苑。その間幸村は片時も放れず、信玄の側に付いていた。
そして処置を終えた事を伝えると、政宗と小十郎だけが中に入り、他の兵達は外で待機していた。
「大事には至りませんが、この先の戦、魔王との戦いには恐らく…」
「そうか」
語る言葉を悟った政宗が短く切った時、報告に出向いていた佐助が室内に入って来た。
忍の配下によると信長は山城の国へと向かい、瀬戸内へ進行するべく、上江戸の本能寺へ入る様だ。
だが小十郎はそれを罠と推測した。
「確かに今、徳川も浅井の残党も主君の無念を晴らすべく、討ち死に覚悟で織田とまみえる事を望んでいる。武田も、無論上杉にもその気運も高まる筈だろう」
「報仇の念に駆られて押し寄せた軍勢を一網打尽にする、解らん策ではない。だが、これまで正攻法であれ不意討ちであれ、例外なく相手を一気に潰してきた織田が、何故大将の忙殺などという手を講じて来たのか…」
「長篠で、東の連携はやっぱ厄介だと踏んだんじゃないのか?」
「それもあるだろう。だが何よりこのやり方には戦を、人の心を弄ぼうとする邪念を感じる。天下を取るべく名乗りを上げた志を、恨みを晴らす為の殺意へと貶め、それを嘲笑い、踏みにじろうとするような…この厭らしさは魔王のそれじゃねぇ、恐らくは…」
「小十郎」
長く口を閉じていた政宗が名を呼び、小十郎はそちらを向いた。
「その罠乗ってやろうじゃねぇか」
「政宗様」
「そこに魔王がいる事に代わりはねぇ。例えそれが姑息な段取りをしやがったのが、あの明智でもな」
自分が思っている人物の名を口にした政宗に、小十郎は少しばかり驚いた。
「野郎の言ってやがった意味が解ったぜ。その一網打尽にされる軍勢の大将に、この俺が選ばれたって訳だ。I'm not!何処までも舐めてくれやがる」
「政宗様、罠だと知っていながら何故…」
「明智には一度生殺与奪を握られた。あの落とし前も付けなきゃならねぇ」
「お待ち下さい!織田が痺れを切らせ、個別攻撃に切り替わるまでの時を利用して体勢を整えるべきかと、さすれば瀬戸内へ赴いた前田慶二の動き次第で、織田を包囲する事も!」
立ち上がり、今にも飛び出しそうな政宗を、紫苑と小十郎は必死に止めた。
「武田のおっさんとあのお祭り男の目論見は、もう織田に知れちまってる。囲もうとしてる事を解ってる相手を囲んだ所で今更どうにもならねぇ」
「ですが、懐へ飛び込む相手が大き過ぎまする。慎重を期さねば」
「どうした小十郎。奥州を統べる前から俺達はずっとそうやって来た筈だぜ。お前、長篠で俺が横腹に鉄砲玉食らった事を、まるで自分の責任みてえに思ってるようだが」
「お前が護るのは俺の背中だろ、You see?」
「政宗様、まさか…」
何かに感付いた小十郎は目を見開き、政宗は幸村に声を掛けた。
「真田幸村、あんたはどうだ。俺はあんたが真っ先に飛び出していくもんだとばかり思ってたぜ」
「…親方様、申し訳ございませぬ」
眉を下げ俯いた幸村がふと呟き、それに他の三人も黙り、紫苑の表情も落ちた。
「明智光秀の奇襲に際し…某、何の役にも「真田の旦那!」
言葉を遮る様に名を呼び、佐助は立ち上がり寄っていく。
「敵はいつも、一番大事な物を狙ってくる。これまで俺たち武田も、伊達も!そうしてこの戦国をのし上がってきた。それはお互い様だ。解ってる筈だろう!」
「某…戦場以外で敵を討ったことはござらん。増してや、武器を持たぬ民を巻き込むようなやり方で…」
「だったら怒ってくれ!!そのまま、親方様の枕元で俯いて!織田に潰されるのを待つつもりなのか!!」
普段は穏便な佐助が幸村へと叫ぶ。だが彼は相も変わらず俯いたまま動こうとはしなかった。
「そうしていたいのは、旦那だけじゃないんだぜ!?」
「どうしたらよいのか、解らぬ。心細い…」
そう言い震える左手を自らの右手で押さえる幸村。そして搾り出すような声で呟いた。
「怖いのだ」
そう言った瞬間、雷鳴が響く。それを見た政宗がふと呟いた。
「羨ましい野郎だぜ…」
ガタンッ
政宗は襖を開けて雨が降る外へと出た。そんな政宗に信玄を心配し集まっていた兵達の視線が向けられる。
それを気にする事無く入り口向かい歩き出した。
「筆頭!」
「出陣っすか!」
「待ってました!」
同じように待機していた良直達が後を追うように政宗へと近付く。だがふと政宗は足を止めた。その様子を佐助も襖を開け、幸村も意識をそちらに向けた。
「Break it up。 奥州伊達軍は、本日只今を持って解散するッ!! 」
そう政宗が叫んだ瞬間、家臣達は言葉を無くし、小十郎は黙って聞き、紫苑は目を伏せた。
そしてそれを聞いた幸村が驚き初めて俯かせていた顔を上げた。
「政宗、殿…」
「どこへ行く!独眼竜」
重要な言葉を残して歩き出す政宗に佐助は投げ掛けた。
「本能寺に決まってんだろ。今度こそこの俺が直々に魔王の首取らせてもらう!」
「どういうことっすか!」
「ちょ、筆頭!」
「俺たちも一緒に!」
良直が一人政宗の後を追い掛けたが、政宗はすぐさま刀を抜き、そのリーゼントの先を切り落とした。
「こいつはテメェらと楽しむpartyじゃねェ」
「筆頭…っ」
「ま、政宗殿!」
それを見て幸村が中から飛び出し、政宗と良直達の間に割って入った。
「何をするのでござる!この者達は貴殿の為に、貴殿と天下を取るまでは死ねぬと、大仏殿の下敷きになっても気力で生き延びた、得難き家臣達でござるぞ!」
「へ!てんで説得力がねェな。あっさり死んじまった野郎が何を吠えようがよ」
「な…!」
「こいつもただの、お飾りってわけだ!」
「っ!」
幸村の首から下げていた装飾品を握り引っ張った。
「地獄の川の渡り銭、始めてあんたに会った時、俺はそう踏んだ。残念ながら見込み違いだったみてぇだな!」
幸村を突き放し、再び歩き出す政宗。それを良直達は再び追おうとした。
「筆頭!」
「追うんじゃねェ」
追い掛けようとした家臣達を止めたのは、小十郎だった。
「片倉様…」
「政宗様の決められたことだ。織田は、武士の戦とは程遠い。ゲスな命の取り合いを仕掛けてきやがった。武将達の誇りと尊厳を、ことごとく踏みにじりやがったあいつらを、織田信長とその手先どもを最早一人の武将として許せねえんだ」
「た、だからって一人で!」
「オメーはどうなんだ真田幸村」
一人その場に立ち尽くしまたもや俯いている幸村に小十郎が問う。
「無論、某とて思いは同じ…されど某には、親方様が全てなのでござる!親方様がおられぬ明日など、某にとっては無意味!もし今お側を離れ、その間に…万一のことあらば!」
「甲斐の虎を」
「!」
「見くびるんじゃねェ」
そう言い小十郎は信玄が寝ている室へと入り、目の前にいる紫苑に視線を向けると彼女は頷いた。
「ご無礼致す」
断りを入れて信玄の上に被さっていた羽織を捲り、そこにあった光景を見て誰もが目を見開く。
意識を失いながらも尚、拳を強く握っていたのだ。
「何年、甲斐の虎の側にいる」
「!」
「明智ごときの不意打ちでくたばるわけねェ事ぐらい、オメーが一番わかってるはずじゃねェのか、真田」
「親方、様…」
「武田様は強い武将です」
ずっと黙っていた紫苑の呟きに、幸村は耳を傾けた。
「今この状態でも、私には武田様の覇気を感じます。真田様、貴方はこれを見てもまだ武田様が危ういと思われますか?」
「紫苑殿…」
「貴方のお仕えしていた甲斐の虎は、そこまで弱く、信用出来ない者なのですか?」
そう言われ、脳内を駆け巡るように武田との記憶が次々と溢れてくる。
それを見て一度両手の拳を握り締め目を閉じ、胸の前で更に強く握り締めた。
「親方様ァ!!」
「待たれよ!!独眼竜!!」
槍を持って出陣する政宗の前へと立ちはだかる幸村。
その目は先程の揺らいでいた目ではなく、力強い意志が現れていた。
「拙者、同道致す!」
「…へ、All right」
ガキンッ!
二つの刃が交じり合い、金属音が響く。
「真田幸村!その鋼の牙を、甲斐の虎と研いできた牙を!今こそ立てて見せな!!」
「某の牙!それすなわち、親方様の教え!全てこの胸にッ!!」
「上出来だッ!!」
政宗の青い稲妻と幸村の赤い炎が天まで上り、雨雲を一時消し払った。
「俺とあんたで、このlastpartyを存分に楽しもうぜ!」
「望む所!魔王の首、必ずや!我らが取って見せましょうぞ!!てや!」
二人で並びながら馬で駆け抜ける。
目指す場所は
「「敵は本能寺にあり!!」」
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