戦国BASARA
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「ふっ!」
ザンッ
傷も癒え、政宗が庭で一人刀を振り下げた所に小十郎が寄っていた。
「長篠での傷も癒えつつあるようで」
「あぁ、いつでも魔王の首を取りに行けるぜ」
「大事に至らず安堵いたしました」
「ふっ、お前が言うか」
鼻で笑い、政宗は振り下ろしたままの剣先を見た。
「もう一度手合わせといくか、小十郎」
「はっ。稽古のお相手ならばいつなりと」
また刀を振りながら小十郎が言う。だがすぐに少し浮かない顔をし呟くように告げた。
「政宗様…」
「何だ」
「魔王を討ち果たし、しかる後天下を取られた暁には、この小十郎…覚悟は出来ております」
ザンッ
「あぁ?」
小十郎の発言に刀を振るのを一度止め、怪訝な表情で政宗は向いた。
「理由はどうあれ、貴方様に刃を向けました事を、いかなる罰をも受ける…」
ビュッ
「!」
申し訳なさそうに俯き言った小十郎の喉下に、政宗は刀の切先を向けた。
「野暮な事を言いやがると、今ここでたたッ斬るぜ」
「政宗様…」
「お話の腰を折るようで悪いのですが…」
別の声に縁側の方を向くと、紫苑が立っていた。
「紫苑」
「政宗様、傷は塞がったばかりなのですから、あまり無理はなさらないで下さいね」
「Ha、相変わらず心配性な奴だな」
「忠告はしましたからね、もしそれで傷口が開いたら…」
ゾクッ
政宗と小十郎は、紫苑の背後に黒い影が見えた事に寒気を感じた。
「解って頂けましたか?」
「お、OK。肝に銘じておくぜ…」
僅かに動揺しながらも返事を返すと、紫苑は「それと…」と付け足した。
「武田様がお呼びです」
その言葉に政宗は顔付きを変え、小十郎と共に信玄の元に向かった。
政宗達が話し合いをしている中、紫苑は次の出陣に向けて準備をしている途中、小十郎がやって来た。
「小十郎様、お話は?」
「終わった。それと…」
「?」
「お前に話がある、来い」
「え…え?私ですか?」
「ああ」
先を歩く小十郎の後を進みながら、紫苑は呼ばれる理由を考えていた。
「政宗様、連れて参りました」
「Oh、入れ」
中には政宗や幸村、信玄がいた。
「紫苑、入れ」
「失礼します。あの、お話というのは…」
「儂が呼んだのだ」
そう言った信玄に、紫苑はそちらを向いた。
「紫苑とやら、こちらに」
「あ、はい」
信玄の前に座った紫苑は、目の前の信玄を見上げた。
視線をそらさず真っ直ぐに信玄を見る紫苑に、信玄は立ち上がった。
ダンッ
「ぬあーっ!」
気合いを入れて紫苑向けて拳を振り、爆風が起こった。
「お、親方様、何を!?」
「黙ってろ、真田幸村」
「しかし、政宗殿!」
「よく見てみろ」
幸村が視線を戻すと、拳を放ったままの信玄と、その先には微動だせず座っている紫苑の姿があった。
「…何故避けようとせんかった?」
「殺気を感じませんでしたので」
拳を目の前にしても怯えた表情を見せない紫苑に、信玄は拳を引いて笑った。
「はははは!肝の据わった女子よのう!」
「恐れ入ります」
信玄は笑いながら元の椅子に座り、紫苑を見た。
「竜の牙、噂には聞いていたが、まさかお主のような女子とは…」
「親方様、その噂というのはどのような話なのでございますか?」
「うむ」
その者
長剣を片手に戦場を駆け、その者が通る道には爪痕が残り、一太刀振るえば大地が裂ける
その者を見て、無傷で帰れた者はいない
それはまさしく竜の如き強さ
「…そう、儂は聞いておる」
「な、なんと…。紫苑殿がそれ程までの凄腕とは、某、驚き「真田幸村」
幸村の言葉を遮るように政宗が口を挟み、信玄を見た。
「武田のおっさん、もういいだろ。紫苑、下がれ」
政宗の言葉に紫苑は皆に頭を下げ、部屋を退出した。
「政宗殿、如何致した?」
「真田幸村、その噂とやら、全部紫苑がやったと思うのか?」
「ち、違うのでござるか?」
「あいつが噂のように動くと思うのか?」
「あ…」
そう言われて、幸村は考え出した。
確かに紫苑は強い。だが敵とはいえ相対した者全てを傷付けるような事を、彼女がするだろうか?
「武田のおっさん、アンタも野暮な事聞くな」
「フ、お見通しか」
「当たり前だ」
政宗は立ち上がり、信玄を見た。
「いくら今は手を組んでいるとはいえ、うちの根先まで教える義理はねえよ」
笑いながら政宗は部屋を出て、小十郎も頭を下げて後を追った。
「お、親方様。今のはどういう…」
「儂がこの噂を聞いたのは、十年以上前じゃ」
「そ、それでは紫苑殿は」
「あの者は、名を受け継いだようじゃな」
.
割り当てられた部屋に戻り、静かに考え事をしていた。
だが膝に置かれている手は強く握られ、瞳も揺れていた。
「血が出るぞ」
「ッ!」
声に気付いて横を向くと、政宗が立っていた。
「政宗様」
「ほら、力抜け」
掌を開かせ、その上に政宗は手を置いた。
「…すみません」
「忘れろ、なんて言わねえ」
政宗は紫苑の掌に付いた跡を優しく触った。
「だが、あんまり考えるんじゃねえ」
「…無理を仰いますね」
小さく笑う紫苑だが何処となく元気がない。政宗は紫苑を引き寄せて肩に顔を埋めさせ、優しく頭を撫でた。
.
甲斐に降り注ぐ雨、その雨空を紫苑はじっと眺めていた。
まるで、誰かが泣いているような空に見えたから。
バタバタッ
「ん?」
何やら騒がしい音が聞こえて音のする方を見ると、良直達が慌ただしく走っていた。
「何かあったの?」
「あ、姐さん!」
紫苑の声に足を止め、良直、佐馬助、孫兵衛、文七郎が駆け寄って来た。
「実は、この雨で川の水かさが増して堤防が崩れかけているって…」
「筆頭からも助太刀するよう言われて、今から出向く所です」
「堤…。噂に聞く竜王の堤ね」
「は、はい」
考える仕草をした後、良直達に言い放った。
「私も後から駆け付けます。貴方達は先に政宗様と」
「「「「はい!」」」」
走り出す四人の背を見ながら、紫苑は再び考え出した。
(武田様が長き月日を掛けて作った堤防、それが簡単に崩れる事はない。まさか…)
考えを止め、紫苑は他の伊達軍に準備をさせに向かった。
ザァァァッ
土砂降りの中、紫苑は残った伊達軍を率いて政宗達の元に到着すると、堤は破壊され、その場に立つ政宗と小十郎。
二人の前には、明智光秀が立っていた。
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