戦国BASARA
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人質に取られた伊達の家臣達を助けに小十郎は政宗の六爪を持って松永の元に向かった。
その途中、三好の三人衆に道を阻まれ、対峙するが、その場に漂う毒に苦戦を強いられた。
なんとか勝利し、苦しみながらも進んだ先に、荒れた境内跡地があり、そこには一人の男性が立っていた。
「…松永久秀っ」
「ご機嫌よう、兄を待っていたよ。屍として運ばれてくるかと思ったが、侮ってはならないようだ」
「この片倉小十郎、伊達に竜の右目と呼ばれてはいねぇ!」
「…ふっ」
「!」
松永の背後を月明かりが照らし、暗くて見えなかった柱には、縛られている家臣達がいた。
「片倉様!」
「すいやせん、下手打っちまって」
「片倉様、ダメっす!俺達助かりてぇけど、筆頭の刀だけは!」
「直ぐに片を付ける!もう少しそこで待ってろ」
小十郎が背負っていた物に、松永は少し驚いていた。
「これは意外…本当に竜の爪を携えて来たのか」
「欲しがりやがったのはてめぇだろうが」
「独眼竜も奇特な男だ。たかが雑兵三人ごときに容易く宝刀を差し出そうとは…」
「そこらの軍と一緒にすんじゃねぇ、伊達には雑兵なんざ一人もいねぇんだよ!」
小十郎の言葉に、家臣達は息を飲んだ。
「だからこそ覚悟は出来てる者として、時には見捨てもする」
「そうか。では何故天下の皺勢危うく今、この様な粗末に捕らわれ、のこのことやって来たのかね?今こそ末端の一兵卒など見捨てる時だと理解するが…」
「知れた事、此処はそいつらの死に場所じゃねぇ。この戦国の世に徒党を組み打って出た以上、最後まで誰一人欠けずにいられるとは思っちゃいねぇ。ただ!」
背負っていた六爪を包んでいた布を捨て、刀を持った。
「一人たりとも無駄死にはさせねぇ!それが伊達の流儀、そして政宗様のご意志!」
「片倉様…」
「筆頭…」
小十郎が六爪を投げ、それは松永の手前の階段に突き刺さった。
「そいつは一度くれてやる」
「片倉様!」
「いけねぇっす!」
「伊達の魂を、そんな野郎に!」
「その上で俺と勝負しろ!俺が買ったら人質と刀、改めて両方返して貰う!てめぇも武士なら…」
「…ふっ」
笑い出した松永に、小十郎の表情が険しくなった。
「ふふふふ、座興にはなろう。しかし足りんな」
「くっ…」
「残念だが二つの宝が揃わぬ限り、いかなる交渉にも応じかねん。それに私は、差出人を竜の牙と要求したのだが…」
「伊達が差し出せるのはそれだけだ!武田の鎧が欲しけりゃ、甲斐の虎に掛け合うこった!それに、今伊達に竜の牙なんざいねぇ!!」
「は、やはり武田も兄等を一時的に受け入れた所で、家宝を差し出すまでの事はしないという事だ」
人質を返す気がない松永に、小十郎が刀に手を掛けた時だった。
「待った待った待ったーーッ!!」
大声と共に走り寄って来た真田幸村に、小十郎は目を見開いた。
「武田が家宝ならばここに有りもうす!」
「真田…!」
背負っていた箱を下ろし、幸村は松永を見た。
「某は真田源次郎幸村!親方様の名代として馳せ参じた!」
紐を取り、蓋を開けて鎧を見せた。
「これぞ、我が甲斐・武田に伝わる楯無鎧!間号事なき本物!しかと改められよ、松永久秀殿!」
「ほう…」
箱から鎧を出し幸村は自分達の前に鎧を置いた。
「よもやこれ程容易く、二つの宝が揃うとは…さあ」
松永のその声に、小十郎と幸村は身構えた。
「残りは竜の牙のみ、奴は何処にいる?」
「何度も言わせんじゃねぇ!牙なんざいねぇ!さっさと人質を返しやがれ!!」
「嘘はいかんぞ竜の右目、私の元に牙が死んだ報せなど届いておらん。奴が来ぬ限り、人質を返す訳にはいかないな」
「てめぇ…!」
ついに小十郎は刀に手を付け、抜き掛けた瞬間。
ガシャーーンッ!!
松永の背後の柱が壊れ、縛られていた家臣達が解放された。
そして立ち込める煙の中から、一つの人影が見えた。
「興味本意で呼び出されるのは尺だけど、こうして人質を助けられたから
許してもいいかな」
現れたのは、三日月形の刀を持ち、武装した紫苑だった。
「紫苑…っ」
「なっ…、紫苑殿!?」
「「「姐さん!?」」」
意外な人物の登場に、皆は驚愕した。
「馬鹿野郎!何で来やがった!?」
「ごめんなさい、小十郎様…。さあ、貴様の要求は揃った」
紫苑は後ろにいた家臣達の縄を切り、松永を睨んだ。
「人質は返してもらう」
「…本当に兄が、竜の牙なのかね?」
「騙す理由がどこにある」
紫苑の後ろ姿を見ていたが、良直は側の壁に隠れ、笑う佐助を見付けた。
こちらを睨む紫苑をじっと拝見し、後ろの宝を見てニヤリと笑った。
「頂いた、拝見したからには…以上で終わりだ」
パチン!
松永が手を上げ、指を鳴らした途端、大仏殿跡周囲が爆発した。
「ッ!?」
「「「片倉様ッ!!」」」
その爆発に逃げる間もなく、紫苑と家臣達は炎に飲み込まれた。
「紫苑!おめぇら!!」
「佐助!紫苑殿!!」
突然の出来事に名を叫んだ時、小十郎と幸村の側からも爆発し、火柱が上がった。
「うわああッ!!」
「どわああッ!!」
爆発に二人は吹き飛ばされ、燃え盛る炎の中、松永は六爪の一振りを取り、鞘から抜き、刃を見て笑った。
.
『紫苑。お前は俺の牙だ』
『はい』
『だから、俺や小十郎が本当にヤバくなった時、お前が牙に戻る事を許す』
『梵天丸様…』
『これは【政宗】としての命令だ、いいな』
『…承知致しました』
元服したあの日、初めて紫苑に下した命令。
だから俺は強くなった、俺の手で皆を護れるように。
紫苑を戦場に出さない為に
「…ッ!」
昔の夢から覚めてゆっくりと起き上がり、激痛に傷口を押さえた。
「ッ、…あいつ」
気絶させた小十郎の事を呟いた時、扉の間から見えた廊下に、武田信玄が立っていた。
「手酷くやられたのぉ。竜の右目に右を取られたとあっては独眼竜にとってこれ以上、手強い相手もおるまいと」
「…笑い事じゃねぇぜ」
「じゃが、銃創への直撃は僅かに避けておった。稀なる腹心を得たものよ」
それに僅かに俯いた後、再び信玄を見た。
「それより、真田幸村を行かせたのか。此処にあった鎧は武田の…」
「今のあれには必要な事。元より、小事を疎かとする者に、大事など成せぬでの」
鎧が置いてあった場所を見ていると、信玄がこちらを向いた。
「やがてこの戦国に終わりを告げ、次の世を担うは貴様達若い者じゃ」
「…ふっ」
「ん?」
ふと笑った政宗に、信玄は疑問を思った。
「そう言いながら、いつまでも世に憚りそうなタイプだよな。あんた」
「はっ、解っておるの。はははは!」
豪快に笑い、信玄は夜空に浮かぶ三日月を見た。
「松永久秀は、織田がこれまで相対した中でただ一人命を取らなんだ武将。奴を魔王が支配下に置き、我等への陽動を仕掛けさせたと見る事も出来ようが、恐らくそれはなかろう」
廊下に座りながら、話を続けた。
「何故解る?」
「従うとは思わぬ故じゃ」
「だったら魔王は何故生かした?」
「解らぬが、そうよのう…珍しきホトトギスを、籠に飼うて見とうなったのやもしれぬ」
そう言って、信玄は立ち上がった。
「今は休め独眼竜、我等には貴様が必要じゃ」
「武田のおっさん」
去っていく信玄を、政宗は呼び止めた。
「この礼は、戦場で返す」
「魔王を倒した後上洛を掛けて相戦おうぞ。あやつもそれを望んでおる」
顔だけ振り向いた信玄に、政宗は笑い返した。
「All right」
今度こそ去った信玄に、政宗は横になろうとした時、ある物を見付けた。
お盆には薬と水が置かれており、その横には青く小さな刺繍がある髪結いが置かれていた。
「紫苑…」
名を呟き、髪結いを強く握った。
.
「一つ二つ、人も物も生まれて壊れる事の繰り返しだ」
爆発で起こった炎が止み、松永は倒れた小十郎や幸村を見ながら楯無鎧まで足を進めた。
「いつか壊れるものならば、欲しがる心に抗う事なく奪い、愛で、そして…」
「く…ッ」
「好きなように壊せばいい」
痛みを堪えながら立ち上がろうとする小十郎の前で、松永は倒れた楯無鎧に手を触れた。
「松永…っ」
「さあ帰りたまえ、取り戻すべき人質はもういない。私と戦っても無駄だ」
立ち上がった小十郎は前髪が崩れ、雷を纏っていた。
「随分と機嫌が悪いようだが、何をそんなに怒っているのかね?私は欲しい物を手に入れた。ただそれだけなのだが」
「てめぇには…」
刀を抜き、肩に担ぎながら松永へ近付いた。
「地獄の扉の開き方を教えてやる」
「片倉殿…!」
「兄は私の命を欲するか、結構…。欲望のまま奪うといい。それが世の、真理!」
松永が刀を振ると、四方から爆弾を背負った忍達が現れ、小十郎に迫った。
「はああッ!!」
幸村は槍を振って爆弾兵達を吹き飛ばすが、煙の中から新たな兵達が現れた。
「この兵達からは覇気を感じられぬ、斯様な敵とは見えた事が無おござる…!」
「金で飼い慣らされた連中だ。忠義の家臣なんざいる筈もねぇ」
そう言い、向かってくる爆弾兵を凪ぎ払い、小十郎は爆風の中、松永の元に走った。
「松永!てめぇは駄々を捏ねる餓鬼と同じ、いやゴミ以下だ!!」
「まさかとは思うが、その体で私に勝てると思っているのかね?」
「何?…ぐッ!」
突然首元を押さえ、その場に漂う赤い霧に苦しみながら膝を付いた。
「悶死の香炉。兄が既に吸っている毒と、身の内で致命的な相乗効果を生む秘薬だ。兄等は勝てぬ!」
弱った小十郎に松永は斬り掛かり、幸村は加勢しようと駆けた。
「片倉殿!」
ドォン!
だが幸村に爆弾が放たれ、吹き飛ばされた彼を佐助が助けた。
「迂闊だぜ、旦那」
「佐助!?」
爆発に飲まれた筈の佐助がいる事に、幸村は驚きながらも地に下ろしてもらった。
「無事であったか」
「俺様を誰だと思ってんの?まあ、ちょいと危なかったけど」
ガキンッ!!
刀のぶつかり合う音に視線を向けると、小十郎が松永に押され、膝を付いていた。
「竜も、そして虎も、尻尾の先を惜しんでいては全てを食らわさんとする獲物を相手に生き残る事は難しい。増して天下など言わずもなら、そして厭世と物欲に生きる私にすら、決して勝てないだろう」
「…っ、てめぇの御託は聞き飽きた!」
松永の刀に押し負ける小十郎。その時佐助が二人向けて爆弾のような物を放ち、幸村が槍を振るって毒霧を吹き飛ばした。
「片倉の旦那!」
毒を吸わない様手で口を塞いでいた小十郎に呼び叫んだ。
「毒消しの炸裂弾だ、深く息を吸え!」
漂う緑の霧を深く吸い、向かって来た松永の刀を凪ぎ払った。
「っ、…もらうぜ松永久秀。見場魂の闇に光一つ!!」
稲妻を纏った一撃に松永は背後の大仏殿に激突した。
「気の毒だが、兄等もいつかは朽ち行くのだ…所詮は全て無に帰すもの…」
「俺達はタダじゃ朽ちねぇ、己が生きた証を必ず残す。例え形など無くてもな」
目前まで歩いて来た小十郎に、松永は嘲笑うように告げた。
「ははは…涅槃まで抱いていける宝など有りはしない…」
「心配ねぇ、てめぇが行くのは地獄だ。先に行って待ってな」
「心得た、暫しの別れだ… 竜の右目! 」
ドガンッ!!
大仏殿が大爆発し、業火が巻き起こった。
刀を横に突き刺し、燃え盛る炎を見ながら、背後に立った幸村と佐助に言葉を掛けた。
「…恩に切るぜ」
「いや、さぞ、無念であったかと…」
「面目ない。俺様も、自分の身を護るだけで…」
ゴゴゴゴゴゴッ
「!?」
突然鳴り響いた地響きに咄嗟に、構えた時。
ドバッ!
炎の中から水の竜が現れ、身を弾いてその場の炎を消した。
「こ、これは一体…」
「ッ、片倉の旦那!」
水の竜に驚いた幸村と佐助だが、目前に瓦礫の中から現れた三つの影に身構えた。
「「「ま~つ~な~が~!!」」」
現れたのは、松永に捕らわれていた良直。左馬助。孫兵衛だった。
「野郎、これしきでくたばると思うなよ…!」
「爆弾上等いつでも来いや!」
「筆頭の刀は…渡さねぇぞ!!」
僅かに髪や鎧を焦がしながら現れた三人に、小十郎は脱力し、座り込んだ三人の前に立った。
「おめえ等…」
「片倉様!」
「あの野郎は…」
辺りを見渡すが、姿が見えない松永に悟った。
「あの、もしかして…」
「もう終わったんすか?」
「ああ」
「「「はあぁ~…」」」
「腹減った…」
予想外の展開に、幸村と佐助も拍子抜けした。
「なんと…」
「嘘っそだろ…」
ガラガラッ
「これが伊達軍なんですよ」
二人に言葉を返したのは、同じく瓦礫の中から現れた紫苑だった。
「な、紫苑殿!?」
「丁度良い時に出てこれてよかったです」
三人とは違い、元気な紫苑に幸村は驚き、彼女も小十郎の側に立った。
「すいやせんでした、片倉様、姐さん…」
「面目ない…」
「おめえ等、よくぞ」
「片倉様、言ったじゃないっすか!」
「此処は俺達の死に場所じゃねぇって!」
「死ねる訳ねぇっすよ、筆頭が天下取るまで」
「…ああ、そうだな」
笑い会う四人に、紫苑も微笑みながらその場を見ていた。
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