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星海光来薬

距離が遠い。普通、人が多いし、小さいから俺にくっついていないとはぐれてしまうから、もっと近いはずだが、藍の気遣いが伺える。だが、胸がデカいせいで、俺の腕に当たっている。視線も、俺に向いてるせいで、顔が熱くなる。

そんな事を考えていると、藍が言う。

「星海さん。」

「なんだ。」

「星海さんって、なんであんな気持ちよく飛べるんですか?」

「………なんで、そう思うんだ?」

俺はただただ疑問に思った。俺は打ちたい。もっと注目してもらいたい。そして、1番に、小さな巨人と言ってもらえるように…。だから飛ぶだけ。それなのに…

「それは…なんて言ったら良いんですかね。飛ぶ時に、涼しい顔をしていて、打つ時は真剣な表情をしていて。カッコいいなって、私もあんな風に気持ちよく飛たらなって。」

えへへと照れながら目を逸らした藍。俺が何も言わなかったからか。迷惑ですか?と聞いてきた藍。迷惑な…訳ないだろ。

「フン。ありがとな。」

「ふふっ。」

俺は自分の事で笑われるのが嫌だった。馬鹿にされてる気がするから。だが、こいつは馬鹿にしてない。舐めてる訳でもない。だからコイツといると、居心地が良い。

俺は迷子センターに行く為に前を向き直した。

俺は、カッコいいとか、凄いとか。言って欲しい訳じゃない。そして、その言葉を言われたとしても、いい気分には、あまりなれなかった。それは今も変わらない。だが、藍が言うと、すんなり受け止められた。

「人。凄いですね。」

「ほんとだな。急がねぇと。」

手が熱い。顔もほんのり熱いのが分かる。身体全体が熱くなるのがわかった。ウォーミングアップは勿論していない。ただ。藍と話していると、熱くなる。何故だろう。

「まだ、ですか?」

「すまないな。もうちょっとで着くから。」

早く。こいつを送らねばならない。
俺は藍の手を強く握り、恥ずかしさで早歩きになってるのにも気付かず人混みを分けながら進んでいった。

「あの?」

「………」

「星海さん?ここは?」

「………」

「星海さんっ!!」

「!!すまない。どうした。」

「あの、ここは?」

「え?」

見渡すと、鴎台の控え室だった。

「鴎台?あ、星海さんの控室ですか?」

俺は頭が真っ白になった。
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