六人のお願いが、私を離さない
先程突然赤ちゃん返りした監督生と別れて、所属している寮へ戻る。中庭に逃げる前小言を言ってきたアズールの機嫌は直ってるかな、直ってたらいいなとオクタヴィネル寮へ入ると、目の前には大きな壁があった。否、鏡をくぐってすぐに壁はないから壁ではない、じゃあなんだろうと首を傾げると「ばあ」と屈んで驚かして来たのはフロイドだった。
「フロイド、どうしたの」
「あはっ、ヒトデちゃん。アズールのこと無視して中庭行ったでしょ。それでアズールが寮戻ったらVIPルーム来いってさ」
「えぇ……あの話はもう終わったとして見逃してくれないのかな」
「だ~め。じゃ、一緒行こうねぇ」
「ぅぁわぁ」
行こうねぇ、言われたと同時にお腹に腕を回されて抱えられる。まるでコーギーが散歩途中歩けなくなって飼い主に抱えられるような恰好のまま、モストロ・ラウンジのVIPルームへ向かう。最中オクタヴィネル寮生が不思議な顔でこちらを見てくるが、フロイドに連れられてるのを見て目を逸らして関わらないようにしてる。VIPルームへ着いてドアを足で開くフロイドに、アズールは「足で開くな!」と不機嫌そうに声を出して怒ってる。これはまぁ、まだ不機嫌だ。お願いを実行したのに怒ってるのはどうして……。
「連れて来たよ」
「えぇ、ご苦労様です。フロイドはそのままモストロ・ラウンジの業務に戻ってください」
「え~……オレ、レイを捕まえるのに疲れてにぃ」
「どうせ、寮に帰って来たところを捕まえただけでしょう。仕事してください」
「は~い」
フロイドとアズールのやり取りを見て、部屋を出て行くフロイドにバイバイと手を振った。私はアズールと会話するため、VIPルームの椅子に座る。アズールも目の前の椅子に座って、ステッキを前に足を組んで私に問いかける。
「レイ、僕は言いましたよね?"お願い"は絶対ですが、貴方の命や体を第一に考えてください、と」
「うん、そうです」
「では……取り立ての"お願い"で身体を使うような発言をして誘い込み、襲われる一歩手前でジェイドに助けられた。ということの重大さを理解してますか?」
そういうアズールのこめかみに青筋のような怒りが現れている。でも私はこう返す。
「終わった案件に文句言われても、困ります」
「終わった案件ではなく!過程について怒ってるんです!!」
「別に……結果的に使われてないし使われる一歩手前って言っても、あの時転移魔法を発動しようとしたらジェイドが生徒にドロップキックをしてきたんですよ。私はある意味被害者です」
「被害者でも加害者でもありません。当事者です!それに”お願い”の中には貴方の身体を第一に考えるという条約があったでしょうが!」
はぁ、はぁと叫びながら伝えるアズールとは真逆に私は淡々と伝える。私は事の重大さを理解できてない。だって、"お願い"は完遂しているから。それに文句言われても……と私の中で少し不貞腐れているのかもしれない。
アズールは私との言い合いに、無駄かもしれないと感じたのか……溜息一つして眼鏡を上げながら、真っ直ぐ私を見つめて言う。
「いいですかレイ。新入生が入って、一層貴方の事を知らず手を出そうとする輩……及び狼共がいます。それは理解してますよね」
「はい、なのでアズールの”お願い”一条。もし一緒に薬草ある場所を教えてほしいや空き教室へ誘い込まれそうになったら「オクタヴィネル寮長及びリーチ兄弟が一緒じゃないと行きません」と伝えるのは覚えてます」
「そうです、偉いですねレイ。それと同じで一年生はオクタヴィネル寮長やジェイドとフロイドについて、まったく知らないのです。だから一条の”お願い”を伝えても聞く耳を持たない人だっているでしょう」
「そうなんだ」
「そうです。だから、貴方はもう少しだけ”お願い”で動くより自分で考えて行動するという癖をつけてください。今後、僕やジェイドとフロイドの三名の”お願い”以外でも自分一人で行動できないと苦労しますよ」
「確かに……わかったアズール」
「いい返事です。今回の”お願い”の問題点は……もういいでしょう。それでは貴方の”お願い”を叶える時間ですね。今回は何をお求めで?」
いつもにこやかに笑ったアズールが手を差し伸べ聞いてきた。これは私達の約束及び契約である。アズールが私にお願いをしたら、私はお願いを遂行したり守ったりしたら今度は私がアズールにお願いができる。いつもはアズールに「勉強見てほしい」とか「助けるポイント一点追加してほしい」とかをお願いするのだが、今日はどうしようと考えた。ふと、先程監督生さんにした膝枕が気になった。赤ちゃん返りをし、気持ちよさそうに眠った監督生さんが感じた膝枕は、それほどまでに良いのか……と。思ったが吉日、”お願い”は決まった。
「膝枕してみたい」
「いいで……待ってください、膝枕?」
「うん、アズールの膝を貸してほしい」
「…………なるほど、いいでしょう!少々お待ちください」
ふむ、と顎に手を当てて少し考えた後立ち上がって、いつも使う机へ向かったアズール。すぐに書類を手にソファーに戻ったアズールは、「どうぞ来ていただいていいですよ」と手招きして来た。私はお構いなく彼に近づき、ソファーに横へなりながらアズールの膝に頭を乗せた。目の前の光景は、アズールが下から私を見つめる姿。いつも通り着ている寮服は同じ17歳とは思えない大人っぽい、じっと見つめてると「そんなに見つめて、楽しいですか」とアズールは聞いてきた。
「楽しいか楽しくないかって言われたら、別に楽しくはない」
「そうですか……書類整理しながらでもよいですか?少しばかり早く終わらせたい」
「いいですよ」
了承をしたら、私から目を離して書類の方へ目を通し始めた。アズールを見飽きた私は膝枕の感触をじっくり味わう。すごく柔らかくないしかし凄く硬いってわけでもない。表現し難い感触、これのどこが良くて彼は赤ちゃん返りしちゃったのかな……私には分からない。知ろうと思ってしたことだけど、分からなくなった時はアズールに聞いてみたいな……と彼を見たが書類に大変そうだった。うーん、そういえば彼は腰に腕を回してお腹に顔を埋めてたな、そうすればもっとわかるのかな……と私はアズールの腰に腕を回した。ビクッ、とアズールの身体が驚いたのを感じたが、無視して彼のお腹に顔を埋めてぐりぐりと顔を動かしてみた。更にビクッ、と動いた同時にアズールが声を掛けてきた。
「レイ!い、いきなりどうしたんですか?!」
「え、ぁ、ごめん。膝枕だけって話なのに」
「いや……別に問題はありませんが、急な事で驚いたんです」
”お願い”違反だったのかな、怒らせちゃったと思ったが驚いただけだから大丈夫という意味も込めてお腹に埋めた頭を撫でられた。嬉しい。アズールは時折私を褒めるとき頭を撫でたりハグをしてくる時が、一番幸福を感じる。こちらに来るまでは人の温かみも幸福も味わったことが少なかったから、それをアズールやみんなが与えてくれるのが嬉しいや幸福と今は感じるようになってよかったと思ってる。まだまだ私には理解しがたいことはアズールに聞かなきゃわかんないことも多いけど。
それはそうと、アズールが声を掛けてきたのなら聞かなきゃと口を開いた。
「さっき中庭出会った人に、膝枕したら赤ちゃん返りしたんだよね。だから、膝枕って赤ちゃん返りする魔法の一部なのかなって」
「待ってください、情報量が多いのでいっぱい説明してください」
今日はいっぱい説明しないといけない日なのか、と膝枕をされながら説明をしたのだった。
――
「つまり、中庭で編み物をしている途中出会った一年生がこけそうになったのを阻止して膝に頭を乗せたら、そのまま赤ちゃん返りして挙句の果てに寝てしまったから帰りが遅くなったということですか」
「簡潔にまとめるならそれで間違いないですよ」
「おやおやおやおや、レイ。その方の特徴は覚えていますか?お礼をしないといけません」
「そうそう、お礼をしなきゃいけねぇよなぁ」
「二人ともお礼の裏には、絞めつけるって意味がついてるよ」
「は?レイの膝の上で寝ていいのはオレだけだよな。だからそいつ絞めるんだよ」
「いいえ、私も寝ていいはずです」
「うるさいです!ジェイド、フロイド!」
説明をする前にジェイドとフロイドがVIPルームへ入って、本日のモストロ・ラウンジの営業が無事終了したことを告げに来た。そのため説明をジェイドとフロイドにも聞かれて、このように相手を絞めようとしてるのが見え見えにイラついてる。こういった理不尽な取り立てが行われないよう、あえて監督生のユウさんではなく出会った一年生と伝えた。少しは私も考えるようになってる!と褒める心はないので、まずは彼らを落ち着かせるのに専念する。
「名前も顔も特徴も覚えてないから、わかんない」
「「チッ」」
「その代わり、今諦めてくれたら”お願い”消費で私のお膝を貸してあげるけど……どっちから先がいい?」
「はいはいはいはい!!オレオレ!レイの膝で寝たい~、そのまま一緒にぎゅーして寝よ」
「フロイド、この前も同じようにしていたので今回は私に譲ってください。不公平です」
「ジェイドのお願いでもやだね~」
「フロイド」
「痴話喧嘩をするなら、このVIPルームではなくお前たちの部屋でしろ。書類整理の邪魔です」
アズールが先程よりイラついている様子が見て分かる。そのため私は二人の手を握って「お部屋行こ」と伝えるとニコニコ笑い、私が歩くと後ろからついてくる。VIPルームを出る前にアズールに「おやすみアズール。今日は膝枕ありがとう」と伝えると、返事はおやすみだけだった。顔を隠してたけど、なんかあったのか?と考える前にフロイドとジェイドが手を繋いだまま前を歩いていくので、それに着いて行くのだった。
――
「とうちゃーく、じゃレイ。俺から膝枕して」
「レイ前回フロイドからしたのもあったので、私からしてほしいです」
「うーん……どっちからでも私はいいんだけどな」
そう言いながら来たことのある寮部屋フロイドのベットに座る。私としては、どちらに膝枕してもいいし……どちらが先にと言われても……となったが、揉めるのなら足が二本あるから二人同時に膝枕したらどう?と提案した。
「たしかにぃ!」
「足は二本ありますからね、では私は左を」
「オレはみぎ」
私はベット端に座っており、左にジェイド右にフロイドが膝枕を堪能始めた。嬉しそうに太ももで眠る彼らの頭を撫でて、監督生さんにも聞かせた子守唄を聞かせてあげた。二人は心地よく聴いてそのうちフロイドはうとうとしてきて、眠りそうだった。フロイドは今日私を捕まえるというお勤めをしたのもあり、疲れたのだろう。頭から頬にかけてゆっくり撫でると目を完全に閉じて眠り始めた。次にジェイドをみると、私の子守唄に聴き入って完全に目を閉じていた。これが果たして眠ったのか、あるいは寝たふりかは分からないがフロイド同様頭から頬を撫でるのであった。
数十分後、完全に眠ってしまったフロイドと目を閉じたままのジェイドからどうやって離れて自室に戻ろうか……考えたが、めんどくさくなったので考えるのをやめた。
「フロイド、どうしたの」
「あはっ、ヒトデちゃん。アズールのこと無視して中庭行ったでしょ。それでアズールが寮戻ったらVIPルーム来いってさ」
「えぇ……あの話はもう終わったとして見逃してくれないのかな」
「だ~め。じゃ、一緒行こうねぇ」
「ぅぁわぁ」
行こうねぇ、言われたと同時にお腹に腕を回されて抱えられる。まるでコーギーが散歩途中歩けなくなって飼い主に抱えられるような恰好のまま、モストロ・ラウンジのVIPルームへ向かう。最中オクタヴィネル寮生が不思議な顔でこちらを見てくるが、フロイドに連れられてるのを見て目を逸らして関わらないようにしてる。VIPルームへ着いてドアを足で開くフロイドに、アズールは「足で開くな!」と不機嫌そうに声を出して怒ってる。これはまぁ、まだ不機嫌だ。お願いを実行したのに怒ってるのはどうして……。
「連れて来たよ」
「えぇ、ご苦労様です。フロイドはそのままモストロ・ラウンジの業務に戻ってください」
「え~……オレ、レイを捕まえるのに疲れてにぃ」
「どうせ、寮に帰って来たところを捕まえただけでしょう。仕事してください」
「は~い」
フロイドとアズールのやり取りを見て、部屋を出て行くフロイドにバイバイと手を振った。私はアズールと会話するため、VIPルームの椅子に座る。アズールも目の前の椅子に座って、ステッキを前に足を組んで私に問いかける。
「レイ、僕は言いましたよね?"お願い"は絶対ですが、貴方の命や体を第一に考えてください、と」
「うん、そうです」
「では……取り立ての"お願い"で身体を使うような発言をして誘い込み、襲われる一歩手前でジェイドに助けられた。ということの重大さを理解してますか?」
そういうアズールのこめかみに青筋のような怒りが現れている。でも私はこう返す。
「終わった案件に文句言われても、困ります」
「終わった案件ではなく!過程について怒ってるんです!!」
「別に……結果的に使われてないし使われる一歩手前って言っても、あの時転移魔法を発動しようとしたらジェイドが生徒にドロップキックをしてきたんですよ。私はある意味被害者です」
「被害者でも加害者でもありません。当事者です!それに”お願い”の中には貴方の身体を第一に考えるという条約があったでしょうが!」
はぁ、はぁと叫びながら伝えるアズールとは真逆に私は淡々と伝える。私は事の重大さを理解できてない。だって、"お願い"は完遂しているから。それに文句言われても……と私の中で少し不貞腐れているのかもしれない。
アズールは私との言い合いに、無駄かもしれないと感じたのか……溜息一つして眼鏡を上げながら、真っ直ぐ私を見つめて言う。
「いいですかレイ。新入生が入って、一層貴方の事を知らず手を出そうとする輩……及び狼共がいます。それは理解してますよね」
「はい、なのでアズールの”お願い”一条。もし一緒に薬草ある場所を教えてほしいや空き教室へ誘い込まれそうになったら「オクタヴィネル寮長及びリーチ兄弟が一緒じゃないと行きません」と伝えるのは覚えてます」
「そうです、偉いですねレイ。それと同じで一年生はオクタヴィネル寮長やジェイドとフロイドについて、まったく知らないのです。だから一条の”お願い”を伝えても聞く耳を持たない人だっているでしょう」
「そうなんだ」
「そうです。だから、貴方はもう少しだけ”お願い”で動くより自分で考えて行動するという癖をつけてください。今後、僕やジェイドとフロイドの三名の”お願い”以外でも自分一人で行動できないと苦労しますよ」
「確かに……わかったアズール」
「いい返事です。今回の”お願い”の問題点は……もういいでしょう。それでは貴方の”お願い”を叶える時間ですね。今回は何をお求めで?」
いつもにこやかに笑ったアズールが手を差し伸べ聞いてきた。これは私達の約束及び契約である。アズールが私にお願いをしたら、私はお願いを遂行したり守ったりしたら今度は私がアズールにお願いができる。いつもはアズールに「勉強見てほしい」とか「助けるポイント一点追加してほしい」とかをお願いするのだが、今日はどうしようと考えた。ふと、先程監督生さんにした膝枕が気になった。赤ちゃん返りをし、気持ちよさそうに眠った監督生さんが感じた膝枕は、それほどまでに良いのか……と。思ったが吉日、”お願い”は決まった。
「膝枕してみたい」
「いいで……待ってください、膝枕?」
「うん、アズールの膝を貸してほしい」
「…………なるほど、いいでしょう!少々お待ちください」
ふむ、と顎に手を当てて少し考えた後立ち上がって、いつも使う机へ向かったアズール。すぐに書類を手にソファーに戻ったアズールは、「どうぞ来ていただいていいですよ」と手招きして来た。私はお構いなく彼に近づき、ソファーに横へなりながらアズールの膝に頭を乗せた。目の前の光景は、アズールが下から私を見つめる姿。いつも通り着ている寮服は同じ17歳とは思えない大人っぽい、じっと見つめてると「そんなに見つめて、楽しいですか」とアズールは聞いてきた。
「楽しいか楽しくないかって言われたら、別に楽しくはない」
「そうですか……書類整理しながらでもよいですか?少しばかり早く終わらせたい」
「いいですよ」
了承をしたら、私から目を離して書類の方へ目を通し始めた。アズールを見飽きた私は膝枕の感触をじっくり味わう。すごく柔らかくないしかし凄く硬いってわけでもない。表現し難い感触、これのどこが良くて彼は赤ちゃん返りしちゃったのかな……私には分からない。知ろうと思ってしたことだけど、分からなくなった時はアズールに聞いてみたいな……と彼を見たが書類に大変そうだった。うーん、そういえば彼は腰に腕を回してお腹に顔を埋めてたな、そうすればもっとわかるのかな……と私はアズールの腰に腕を回した。ビクッ、とアズールの身体が驚いたのを感じたが、無視して彼のお腹に顔を埋めてぐりぐりと顔を動かしてみた。更にビクッ、と動いた同時にアズールが声を掛けてきた。
「レイ!い、いきなりどうしたんですか?!」
「え、ぁ、ごめん。膝枕だけって話なのに」
「いや……別に問題はありませんが、急な事で驚いたんです」
”お願い”違反だったのかな、怒らせちゃったと思ったが驚いただけだから大丈夫という意味も込めてお腹に埋めた頭を撫でられた。嬉しい。アズールは時折私を褒めるとき頭を撫でたりハグをしてくる時が、一番幸福を感じる。こちらに来るまでは人の温かみも幸福も味わったことが少なかったから、それをアズールやみんなが与えてくれるのが嬉しいや幸福と今は感じるようになってよかったと思ってる。まだまだ私には理解しがたいことはアズールに聞かなきゃわかんないことも多いけど。
それはそうと、アズールが声を掛けてきたのなら聞かなきゃと口を開いた。
「さっき中庭出会った人に、膝枕したら赤ちゃん返りしたんだよね。だから、膝枕って赤ちゃん返りする魔法の一部なのかなって」
「待ってください、情報量が多いのでいっぱい説明してください」
今日はいっぱい説明しないといけない日なのか、と膝枕をされながら説明をしたのだった。
――
「つまり、中庭で編み物をしている途中出会った一年生がこけそうになったのを阻止して膝に頭を乗せたら、そのまま赤ちゃん返りして挙句の果てに寝てしまったから帰りが遅くなったということですか」
「簡潔にまとめるならそれで間違いないですよ」
「おやおやおやおや、レイ。その方の特徴は覚えていますか?お礼をしないといけません」
「そうそう、お礼をしなきゃいけねぇよなぁ」
「二人ともお礼の裏には、絞めつけるって意味がついてるよ」
「は?レイの膝の上で寝ていいのはオレだけだよな。だからそいつ絞めるんだよ」
「いいえ、私も寝ていいはずです」
「うるさいです!ジェイド、フロイド!」
説明をする前にジェイドとフロイドがVIPルームへ入って、本日のモストロ・ラウンジの営業が無事終了したことを告げに来た。そのため説明をジェイドとフロイドにも聞かれて、このように相手を絞めようとしてるのが見え見えにイラついてる。こういった理不尽な取り立てが行われないよう、あえて監督生のユウさんではなく出会った一年生と伝えた。少しは私も考えるようになってる!と褒める心はないので、まずは彼らを落ち着かせるのに専念する。
「名前も顔も特徴も覚えてないから、わかんない」
「「チッ」」
「その代わり、今諦めてくれたら”お願い”消費で私のお膝を貸してあげるけど……どっちから先がいい?」
「はいはいはいはい!!オレオレ!レイの膝で寝たい~、そのまま一緒にぎゅーして寝よ」
「フロイド、この前も同じようにしていたので今回は私に譲ってください。不公平です」
「ジェイドのお願いでもやだね~」
「フロイド」
「痴話喧嘩をするなら、このVIPルームではなくお前たちの部屋でしろ。書類整理の邪魔です」
アズールが先程よりイラついている様子が見て分かる。そのため私は二人の手を握って「お部屋行こ」と伝えるとニコニコ笑い、私が歩くと後ろからついてくる。VIPルームを出る前にアズールに「おやすみアズール。今日は膝枕ありがとう」と伝えると、返事はおやすみだけだった。顔を隠してたけど、なんかあったのか?と考える前にフロイドとジェイドが手を繋いだまま前を歩いていくので、それに着いて行くのだった。
――
「とうちゃーく、じゃレイ。俺から膝枕して」
「レイ前回フロイドからしたのもあったので、私からしてほしいです」
「うーん……どっちからでも私はいいんだけどな」
そう言いながら来たことのある寮部屋フロイドのベットに座る。私としては、どちらに膝枕してもいいし……どちらが先にと言われても……となったが、揉めるのなら足が二本あるから二人同時に膝枕したらどう?と提案した。
「たしかにぃ!」
「足は二本ありますからね、では私は左を」
「オレはみぎ」
私はベット端に座っており、左にジェイド右にフロイドが膝枕を堪能始めた。嬉しそうに太ももで眠る彼らの頭を撫でて、監督生さんにも聞かせた子守唄を聞かせてあげた。二人は心地よく聴いてそのうちフロイドはうとうとしてきて、眠りそうだった。フロイドは今日私を捕まえるというお勤めをしたのもあり、疲れたのだろう。頭から頬にかけてゆっくり撫でると目を完全に閉じて眠り始めた。次にジェイドをみると、私の子守唄に聴き入って完全に目を閉じていた。これが果たして眠ったのか、あるいは寝たふりかは分からないがフロイド同様頭から頬を撫でるのであった。
数十分後、完全に眠ってしまったフロイドと目を閉じたままのジェイドからどうやって離れて自室に戻ろうか……考えたが、めんどくさくなったので考えるのをやめた。
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