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星屑の騎士団の居城「アステル城」のある街「ステラの街」に着いたレンは、おしゃれな街に感激する。夕焼けが白壁の建物をあたたかな色合いに変えて、大通りの向こうにあるアステル城はまるでレンの好きな海外児童書のお城学校のようだ。
植え込みの草花の香りと、カフェから漂ってくるクッキーやお茶の香りが、鼻をくすぐる。


「素敵な街だね!」
「シェリユ、レン!この街良い匂いでいっぱいだな!」
「ふふ、そうね。…わたしも、ステラの街は特に好きよ」


シェリユは、レン達に笑顔で返す。
所属する騎士団が守っている街を褒められたのだから、嬉しいのだろう。暫く歩くと、クッキーのワゴンの女将がシェリユに気づき、手招きして声を掛ける。すると、親子連れや他店の店主も気づき、「シェリユ様だ!」と挨拶をしてきた。


「おお!シェリユちゃん、すごい人気…!」
「星屑の騎士団にいるエルフが私以外いないのもある、かな」
「それだけじゃないわよ!シェリユ様は可愛らしくて、お優しい、そのうえ強いんだからねぇ!ステラの女の子たちの憧れなんだよ!」


ワゴンの女将はクッキーを手早く詰めると「持ってきな!」とレンとうーちゃん、に1袋ずつ、シェリユには3袋を渡す。そして、お礼を言うレンを見てからシェリユを見た。


「ところで、このボウヤは今年の入団希望者かい?」
「いえ、彼は騎士団の客人よ、女将さん」
「あらま!てっきり、受験者かと思っちゃったわ。そう、お客さんなのね」
「それに、今年の入団試験はまだかなり先よ?」


「早すぎるでしょ」と微笑むシェリユに、女将は「それがねぇ」と、得意のお話しを始めた。
なんでも、入団希望者が1人、街に到着したらしい。随分気合いの入った希望者と思いきや、初めての旅で感覚が掴めず、予定より大幅に早く着いただけらしい。そして、有り金も底を尽きかけているようで、宿に困っているとか。


「シェリユ様…何とか、ならないかしら?」
「入団希望者なら、騎士団が責任持たないとね。…その方の特徴は?」
「それがねぇ、ロラン様に良く似た竜人の男の子なのよ、髪の色も目の色も!ただ、ちょっと細っこくて、ちょっと無愛想な子」
「なるほど、友人にとても良く似た特徴だわ」


女将はその竜人の少年が大通りの中間にある公園の広場にいた、と教えてくれた。シェリユはクッキーをカバンに詰めると、レンの方を向く。


「レンくん、うーちゃん。話しは聞いていたと思うけど、その入団希望者も保護しないといけないの」
「うん!旅をしてきたなら、疲れてるだろうし…早く公園の広場に行こう!」
「ああ、行き倒れたら、大変!!」
「ありがとう!じゃあ、行きましょう」


シェリユはレン達に礼をいうと、公園に案内する。
噴水を中央に置き、所々にオブジェが設置されている円形の広場に着いた2人と1匹は、それぞれ分かれて竜人の少年を探す事に。広場を探す中、レンはある不思議な少年を見つけた。

青みを帯びたシルバーの髪はサラサラと風になびいて、暗く俯き気味の姿勢で、噴水の縁に座っている。不思議なのは、彼の耳だ。綺麗な魚のヒレみたいなものが、耳の位置にある。
しかし、それも元気のパラメーターが下がっているのか、タレ気味だ。


「…竜人を見るのは、初めてなのか?」
「え?あ、ご、ごめん!不躾、だったよね…」


ふいと顔を上げた少年が、レンを見る。じーっとレンを見た後で、少年はフッと笑った。


「構わないさ、旅に出てからこういうのは多々あったし…集落を出る際に注意されたからな」
「へぇ…旅をしてるんだ、いいなぁ!」
「ああ、何だかんだで良い旅だったよ。色んな景色も見れたし、好きな本や集落に時々来ていた吟遊詩人の語りじゃなく、実際に見るのは良いもんだ」


思い出しているのか、少年の表情はさっきまでの表情から少しだけ明るいものに変わった。「どんなもの見たの?」とレンが聞くと、少年は少し驚いた様に目を丸くしてから微笑し、話し始める。
満天の星空が鏡のように輝く湖、獣人の村に泊まった時はベッドが少し小さかった、とか…他にも色々。少年は本が好きというだけあって、表現が上手い。
レンも聞いていて、とても楽しい気分だ。


「そういえば、自己紹介がまだだったね、オレはレン!よろしく」

「よろしく、レン。俺は…あ、」


自己紹介を今更ながら始めたところ、少年はレンの後方を見る。そして、誰かに挨拶するように片手を上げた。
レンはつられて後ろを振り向くと、小走りでこっちにくるシェリユの姿。


「セレンくん!よかった、此処にいたのね…!」
「よー、シェリ姉さん。久しぶり」


シェリユはレンと少年のところで立ち止まり、ふぅと息をついた。そして、二人を見て「よかった」と一言。
そこで、レンは当初の目的を思い出す。


「ご、ごめん!シェリユちゃん、人探しするのすっかり忘れてた!えーっと、確か竜人の男の子を…あれ?」
「おーい、レン、それボケか?」
「もしかして、シェリユちゃんの知り合いの竜人って…きみ?」
「ああ、おそらくな…改めて、竜人族のセレンだ。よろしく」
「あ、うん!よろしく、セレン!」


セレンとシェリユを交互に見て問うレンに、セレンは答える。そして挨拶として手を差し出した。レンは差し出された手を握って、笑う。シェリユはというと「まあいっか」と微笑み。
そして、うーちゃんは。


「レン、シェリユ!ボク、竜人の特徴、知らなかった!!」


竜人の特徴を2人から聞くために、2人を探し回っていたようで。
息を切らしながら飛んできたのを、みんなで出迎えたのだった。


―竜人の少年―
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