託される怒り
夢主の名前
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あの時、もっと問い詰めておけばよかった。
何を素材にする気なのかと。
四聖主を起こし、カノヌシの領域を封じる為、地脈湧点であるキララウス火山、その手前にある町メイルシオで暫しの休息を取っていた。
そこで、後からモアナ達と一緒に追ってきたクロガネに話があると言われた。
その様子があまりにも神妙で、嫌な予感がした。
そして嫌な予感程、当たってしまうものだ。
「俺は俺を刀にする」
「っ……!だ、だめっ!だめですお爺様!」
そんなの受け入れられるはずもなく、やめて、と、泣き縋った。
なのに、もう決めたことだと取り付く島もなくて、あまつさえロクロウとはとっくに別れの盃を交わしたと、言われてキキョウは愕然とする。
先にクロガネと会って、共に暮らして長くいたのは自分の方なのに、先にロクロウの方に話しを通したのだから。
いや、違う。
何百年も前から、號嵐を超える刀を打つ為にクロガネは業魔になったのだから、後から来たのはキキョウの方だ。
何も言えるはずも、言える筋合いもないのはわかっている。
でも、ソウマの家から逃げ出して、やっとの思いで辿り着いた場所で、受け入れてくれた恩人。
ロクロウ達がやってくるまで、ひたすら真摯に鉄を打つ背中、子供のように目を輝かせて、雲薙を眺める姿を見るのが好きだった。
ロクロウとのことを察していただろうに、何も言わずにいてくれて、クロガネにしか言えない弱音だって黙って聞いてくれた。
それがなくなると知って、素直に受け入れられるほど、薄情にはなれるわけもない。
嫌だと泣きじゃくるキキョウの頭を、極寒のメイルシオの寒気に晒されていつもより冷たくて硬い手が、ゆっくりと優しく撫でた。
「それなりに長く生きたが、お前とと暮らしてた時ほど上等な時間はなかった」
「そう言うくせにやめてくれないのでしょう……」
「ああ、悪いな」
困らせたいわけではないのに、拗ねた子供のように、当てつけるような言葉しか出てこない。
剣には嫌な思い出しかない。
なのにどうして、自分は剣に対して直向きで、その為に全てを捨ててしまうようなひとにばかり、惹かれてしまうのだろう。
「この世の殆どの男にお前は勿体ねぇいい女だ。好きなもん選べ」
「……」
その上、この期に及んでなんて残酷なことを、とても優しい声で言うのか。
涙で濡れた目でクロガネを睨め付けたあと、キキョウは壁際に寄って、背筋を伸ばして正座する。
「見てて気持ちのいいもんじゃねぇ。出てろ」
「いいえ。見届けます」
「……終わったらロクロウに渡してくれ」
陽炎が揺らめく熱気を放ち、溶け始めたクロガネの体。
そこに自ら容赦なく槌を振り下ろし、叩かれる音を、光景を、じっとキキョウは見つめていた。
何を素材にする気なのかと。
四聖主を起こし、カノヌシの領域を封じる為、地脈湧点であるキララウス火山、その手前にある町メイルシオで暫しの休息を取っていた。
そこで、後からモアナ達と一緒に追ってきたクロガネに話があると言われた。
その様子があまりにも神妙で、嫌な予感がした。
そして嫌な予感程、当たってしまうものだ。
「俺は俺を刀にする」
「っ……!だ、だめっ!だめですお爺様!」
そんなの受け入れられるはずもなく、やめて、と、泣き縋った。
なのに、もう決めたことだと取り付く島もなくて、あまつさえロクロウとはとっくに別れの盃を交わしたと、言われてキキョウは愕然とする。
先にクロガネと会って、共に暮らして長くいたのは自分の方なのに、先にロクロウの方に話しを通したのだから。
いや、違う。
何百年も前から、號嵐を超える刀を打つ為にクロガネは業魔になったのだから、後から来たのはキキョウの方だ。
何も言えるはずも、言える筋合いもないのはわかっている。
でも、ソウマの家から逃げ出して、やっとの思いで辿り着いた場所で、受け入れてくれた恩人。
ロクロウ達がやってくるまで、ひたすら真摯に鉄を打つ背中、子供のように目を輝かせて、雲薙を眺める姿を見るのが好きだった。
ロクロウとのことを察していただろうに、何も言わずにいてくれて、クロガネにしか言えない弱音だって黙って聞いてくれた。
それがなくなると知って、素直に受け入れられるほど、薄情にはなれるわけもない。
嫌だと泣きじゃくるキキョウの頭を、極寒のメイルシオの寒気に晒されていつもより冷たくて硬い手が、ゆっくりと優しく撫でた。
「それなりに長く生きたが、お前とと暮らしてた時ほど上等な時間はなかった」
「そう言うくせにやめてくれないのでしょう……」
「ああ、悪いな」
困らせたいわけではないのに、拗ねた子供のように、当てつけるような言葉しか出てこない。
剣には嫌な思い出しかない。
なのにどうして、自分は剣に対して直向きで、その為に全てを捨ててしまうようなひとにばかり、惹かれてしまうのだろう。
「この世の殆どの男にお前は勿体ねぇいい女だ。好きなもん選べ」
「……」
その上、この期に及んでなんて残酷なことを、とても優しい声で言うのか。
涙で濡れた目でクロガネを睨め付けたあと、キキョウは壁際に寄って、背筋を伸ばして正座する。
「見てて気持ちのいいもんじゃねぇ。出てろ」
「いいえ。見届けます」
「……終わったらロクロウに渡してくれ」
陽炎が揺らめく熱気を放ち、溶け始めたクロガネの体。
そこに自ら容赦なく槌を振り下ろし、叩かれる音を、光景を、じっとキキョウは見つめていた。