託される怒り
夢主の名前
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金剛鉄で打たれた最硬の刀は、カノヌシによって呆気なく折られてしまったことを、クロガネに告げるロクロウ。
それでもまだ、クロガネに刀を打ってくれ、と激励を飛ばした。
「金剛鉄を刀に出来る刀鍛冶がどこにいる。
そんな名工が、何百年も迷って悩んであがいた末に生まれる刀を、俺は振るってみたい
それとももう諦めるか?
「諦めた顔に見えるか?」
「全く見えないな」
「……」
そんな風に軽口を叩き合って笑う二人が、少し遠く感じてしまった。
「まだ続けるんですか?」
「当たり前だ」
「刀の素材のあては?」
「……」
黙り込むクロガネだが、ロクロウも、クロガネも諦める気なんて毛頭ない。
シグレを倒す為に。
號嵐を超える為に。
キキョウだって、二人の悲願が叶わないで欲しいわけではない。
キキョウは辺りを見回し、今は自分達の周囲に誰もいないのを確認する。
そして、両手を上に向けて、その手の中に、久方ぶりにソウマの宝刀である雲薙を顕した。
「これ使ってください。
どうせ私には無用の長物ですし、號嵐に並ぶといわれる雲薙なら……あいたぁっ!?」
ごちん、とキキョウの脳天に響いた衝撃。
本気ではないだろうが、硬い鎧の手でやられれば、それなりどころか、かなり痛い。
何より、クロガネに手を上げられた、という事実がキキョウにはとてもショックだった。
「何するんですか……!?」
「それほどの大業物を熔かすなんざもったいねぇことできるか。このばかたれ」
「だって……!」
痛む頭を押さえながら、クロガネを見上げるキキョウ。
クロガネは何処から聞こえるのか、甚だ不思議でたまらない溜息をついた。
「元々號嵐に並ぶ剣で打ったところで、俺が號嵐を超えたことにはならねぇ」
「それは……」
「何よりお前が後悔する」
「え……」
クロガネが雲薙を鋳熔かすことを拒む理由の一つは、自分が後悔するからだ、と言われてキキョウは思わぬ答えに目を見開いた。
剣はキキョウに望まぬものばかり与えて、欲しかった、手放したくなかったものを奪っていくばかりだったのに、後悔するだなんて。
「そんなことは……」
「ならなんで剣を握ることをやめたのに、その剣をいつまでも捨てられねぇ。
お前自身も剣に未練があるからじゃねぇのか」
「……」
そう言われて、初めてキキョウは、雲薙をわざわざ業魔の力で自らの内に納めていたのだろう、と疑問に思った。
捨てようと思えば、いつだって捨てられた。
大嫌いだった生家の象徴、そのものであるのに。
「わかりません……」
「とにかくいらねぇ気を回すんじゃねぇ。素材も当てはなくもねぇんだ」
「はい……ごめんなさい……」
「……俺はな、できるならお前がその剣を振るうところを見てぇと思ってる。
さらに言うなら、その剣すら俺の打った剣が超えるところを見てぇもんだ」
「それ、私に負けて欲しいって言ってるのと同じじゃないですか……」
「負けたくねぇのか?」
「……それも、わかりません……」
「どうするかはお前次第だがな、わからねぇなら今はやめとけ。
捨てるも捨てねぇも、わかった時にやれ」
「はい……」