夕暮れの匣
夢主の名前
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まずい。
ロクロウの頭の中は、そればかりか浮かんでいる。
日毎、キキョウの縮地、気配の消し方、何より剣の腕が上がっていくことに焦りを感じていたロクロウは、事あるごとにキキョウを稽古に付き合わせていた。
キキョウを誘って森に入り、縮地や隠密の鍛錬を兼ねた鬼事をしていたが、夢中になって奥へと入り過ぎてしまい、帰り道がわからなくなってしまった。
「(くそっ!あんなムキになるんじゃゃなかった……)」
あまりにもキキョウが逃げるのが上手いから。
時々振り返って、ロクロウが自分を追ってきているのを確認する度に嬉しそうに目を細める顔が、妙に大人びたように見えて、絶対に捕まえてやる、と熱が入り過ぎてしまった結果が今だ。
「キキョウ、あ」
頭が少し冷えた時、ずっと繋いでいたキキョウの手を、無意識に強く握り込んでいたことに気づいたロクロウは、慌てて手を放そうと手の力を抜く。
しかし、今度はキキョウがロクロウの手を強く握り返した。
「はなさないで……」
「あ、ごめん……」
今にも泣き出しそうなか細い声。
不安なのはキキョウもだ。
特にそうさせてしまったのは自分なのに、と自己嫌悪しながらも、ロクロウはまたキキョウの手を握り直しす。
せめて、一夜を明かせそうな休める場所を探そうと、二人で森の中を進んでいると朽ちかけた小屋があった。
ギィ、と耳障りな音と同時に埃が立ち、思わず袖で口と鼻を覆ったが、中は子供二人なら十分過ぎるほどのスペースがある。
「今日はここで一晩過ごすぞ」
「はい」
手を繋いだまま、二人で床に腰を下ろす。
耳が痛くなるほど静かで、聞こえるのは互いの息遣いだけの中、キキョウの頭がロクロウの肩に乗ってくる。
窓から差し込む熔けた鉄のような赤い光が段々と翳って、ついにお互いの顔すらわからなくなるほど、完全な暗闇に世界は包まれた。
キキョウは何も言わない。
ロクロウの汗ばんだ手を放すことなく、じっと息を顰めてロクロウにもたれたままだ。
「大丈夫だ、朝になったら帰れるからな」
ロクロウがそう言うと、ロクロウの手を握るキキョウの手の力が、少し強くなるのを感じた。
窓から差し込む白い光に顔を照らされ、目を覚ましたロクロウ。
家に帰ろうとまだ少し眠たげなキキョウを立たせて、小屋を出たところで、くん、と後ろに引っ張られた。
何事か、と後ろを見れば、小屋の入り口を隔ててすぐのところで、俯いたままキキョウが動かないでいる。
「ああ……」
何故出ようとしないのか、とロクロウは問い糺そうとしたが、すぐにある可能性を思い付いて、気まずい思いを抱く。
「一緒に怒られてやるから。そもそも、俺が無理矢理お前のこと連れ回したんだし……」
今回のことでキキョウを叱責を受けるなら、自分も一緒に、むしろ自分がキキョウの分までそれを受ける。
だから帰ろう、とロクロウがキキョウを促すと、キキョウはゆっくり顔を挙げる。
「はい」
影のある笑みを浮かべて、キキョウはやっとロクロウに手を引かれて小屋を出た。
ロクロウの頭の中は、そればかりか浮かんでいる。
日毎、キキョウの縮地、気配の消し方、何より剣の腕が上がっていくことに焦りを感じていたロクロウは、事あるごとにキキョウを稽古に付き合わせていた。
キキョウを誘って森に入り、縮地や隠密の鍛錬を兼ねた鬼事をしていたが、夢中になって奥へと入り過ぎてしまい、帰り道がわからなくなってしまった。
「(くそっ!あんなムキになるんじゃゃなかった……)」
あまりにもキキョウが逃げるのが上手いから。
時々振り返って、ロクロウが自分を追ってきているのを確認する度に嬉しそうに目を細める顔が、妙に大人びたように見えて、絶対に捕まえてやる、と熱が入り過ぎてしまった結果が今だ。
「キキョウ、あ」
頭が少し冷えた時、ずっと繋いでいたキキョウの手を、無意識に強く握り込んでいたことに気づいたロクロウは、慌てて手を放そうと手の力を抜く。
しかし、今度はキキョウがロクロウの手を強く握り返した。
「はなさないで……」
「あ、ごめん……」
今にも泣き出しそうなか細い声。
不安なのはキキョウもだ。
特にそうさせてしまったのは自分なのに、と自己嫌悪しながらも、ロクロウはまたキキョウの手を握り直しす。
せめて、一夜を明かせそうな休める場所を探そうと、二人で森の中を進んでいると朽ちかけた小屋があった。
ギィ、と耳障りな音と同時に埃が立ち、思わず袖で口と鼻を覆ったが、中は子供二人なら十分過ぎるほどのスペースがある。
「今日はここで一晩過ごすぞ」
「はい」
手を繋いだまま、二人で床に腰を下ろす。
耳が痛くなるほど静かで、聞こえるのは互いの息遣いだけの中、キキョウの頭がロクロウの肩に乗ってくる。
窓から差し込む熔けた鉄のような赤い光が段々と翳って、ついにお互いの顔すらわからなくなるほど、完全な暗闇に世界は包まれた。
キキョウは何も言わない。
ロクロウの汗ばんだ手を放すことなく、じっと息を顰めてロクロウにもたれたままだ。
「大丈夫だ、朝になったら帰れるからな」
ロクロウがそう言うと、ロクロウの手を握るキキョウの手の力が、少し強くなるのを感じた。
窓から差し込む白い光に顔を照らされ、目を覚ましたロクロウ。
家に帰ろうとまだ少し眠たげなキキョウを立たせて、小屋を出たところで、くん、と後ろに引っ張られた。
何事か、と後ろを見れば、小屋の入り口を隔ててすぐのところで、俯いたままキキョウが動かないでいる。
「ああ……」
何故出ようとしないのか、とロクロウは問い糺そうとしたが、すぐにある可能性を思い付いて、気まずい思いを抱く。
「一緒に怒られてやるから。そもそも、俺が無理矢理お前のこと連れ回したんだし……」
今回のことでキキョウを叱責を受けるなら、自分も一緒に、むしろ自分がキキョウの分までそれを受ける。
だから帰ろう、とロクロウがキキョウを促すと、キキョウはゆっくり顔を挙げる。
「はい」
影のある笑みを浮かべて、キキョウはやっとロクロウに手を引かれて小屋を出た。