雪解けにはならずとも
夢主の名前
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「……よく、泣く人でした」
よく泣く人。
それだけならば、エレノアも少し親近感が湧いて、話を弾ませることが出来たかもしれない。
「体があまり丈夫でなくて、そのせいか心の方もあまり強くはなくて……。
でも、母が泣くのはいつも私の為だったり、私が心配をかけたからで、だからいつも母を泣かせてしまう自分が不出来な子に思えて、申し訳なくて、辛かったです」
「そんなことは……!」
けれど、あまりにも息苦しそうな顔でキキョウが語るから、エレノアは止めなければ、と強く思った。
「だからそんな母が、私をシグレ義兄様から庇ってくれるとは思わなくて……弱い人だから、私が守らなければならかったのに……。
今でもふと思うんです、あの時、一緒に」
「駄目!!」
まるで、底の見えない奈落に落ちていってしまいそうにみえて、咄嗟に引き上げるような気持ちで、エレノアは思わずキキョウを抱き締めてしまった。
「駄目です……!そんなこと言わないで……!
シグレ様からあなたを庇ったとき、あなたのお母さんはなんて言ったんですか……!?」
「……あなたがどんなに醜くても、怪物になってしまっても、生きててくれればそれでいい。
だから、こんなことで死ぬなんて許さない。生きなさい。
……でした」
「ほら……!なら、そんな風に言っては、お母さんが悲しみますよ」
「……そうですね。ありがとうエレノア。
そろそろ行きますね。随分お爺様を待たせてしまっていますから」
「え、ええ……(なんだろう、何か……)」
いつも通りの穏やかで凪いだ笑みを浮かべて、キキョウはクロガネの所へ向かい、それをエレノアは見送った。