視線の先に
夢主の名前
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穏やかな潮騒の音と、肌を焦がすような太陽の光が降り注ぐ南国イズルトに降り立ったベルベット達。
グリモワールの手がかりを求めて、情報収集へと手分けして向かった。
その最中、ふとロクロウは、地元の人間に聞き込みをしているキキョウを横目で捉えた。
穏やかな振る舞い、人当たりの良い柔らかな口調。
何より、完璧な人間の姿の擬態は、現地の人間が大らかな気質であることを踏まえても、聞き込みや情報収集という仕事におあつらえ向きだった。
ただ、キキョウの首元には、いつもと変わらず、あの厚手の襟巻きがしっかりと巻かれたままだ。
そんな彼女の様子を、ロクロウは少し離れた場所で伺い、何度も声をかけるべきか迷っていたが、意を決して足を進め、キキョウに声をかけた。
「なぁ、キキョウ」
「はい、何か?」
振り返るキキョウの、いつも通りの、凪いだ立ち振る舞い。
ロクロウは、一瞬だけ気まずそうに視線を泳がせたが、キキョウの首元を指差す。
その指先の行方をキキョウの目が追う。
「いや……その、それ暑くないのか?」
普段ならともかく、南国ではあまり似つかわしくない、襟巻を差して問う。
想いはないが、旅の連れ合いとしての情までないわけではない。
けれど、ひどく傷つけた自覚があるからこそ、その言葉は何処かぎごちなくなってしまう。
ライフィセットがいた時は、その時、二人が話していたのがソウマ家の宝刀のことだった時は、気軽に、自然に話せたのに。
二人になった途端、剣以外の話になると、必要以上に言葉を選び、探してしまう。
そんなロクロウの様子を見て、キキョウはほんの一瞬だけ目を見開いたが、すぐにおかしそうに、穏やかに微笑んだ。
「私、業魔ですよ?」
「あ……」
「擬態をして、人の真似事をしてはいますが、肉体はもう、人間ではありません。ですから、この日差しも、首元の襟巻きも、それほど苦にはならないんです」
「そう、だよな……悪い、変なこと聞いた」
頭を掻きながら、自分の迂闊さに小さくため息をつくロクロウ。
業魔になったのだから感覚が変わっていることなど、同じ業魔である自分が一番よく分かっているはずなのに、無意識に「人間の頃のキキョウ」として心配してしまった自分への、気まずさと苦々しさがその横顔に滲む。
そんなロクロウを見つめるキキョウの瞳は、決して冷たくはない。むしろ、かつてと変わらない柔らかさを含んでいる。
「いえ、おかげで不自然な振る舞いをしなくて済みそうです。
イズルトにいる間は、首から外しておこうと思います」
「ああ」
「では、もう一度聞き込みに行ってきますね」
ロクロウはそれ以上言葉を続けることができず、キキョウの背中を見送った。
グリモワールの手がかりを求めて、情報収集へと手分けして向かった。
その最中、ふとロクロウは、地元の人間に聞き込みをしているキキョウを横目で捉えた。
穏やかな振る舞い、人当たりの良い柔らかな口調。
何より、完璧な人間の姿の擬態は、現地の人間が大らかな気質であることを踏まえても、聞き込みや情報収集という仕事におあつらえ向きだった。
ただ、キキョウの首元には、いつもと変わらず、あの厚手の襟巻きがしっかりと巻かれたままだ。
そんな彼女の様子を、ロクロウは少し離れた場所で伺い、何度も声をかけるべきか迷っていたが、意を決して足を進め、キキョウに声をかけた。
「なぁ、キキョウ」
「はい、何か?」
振り返るキキョウの、いつも通りの、凪いだ立ち振る舞い。
ロクロウは、一瞬だけ気まずそうに視線を泳がせたが、キキョウの首元を指差す。
その指先の行方をキキョウの目が追う。
「いや……その、それ暑くないのか?」
普段ならともかく、南国ではあまり似つかわしくない、襟巻を差して問う。
想いはないが、旅の連れ合いとしての情までないわけではない。
けれど、ひどく傷つけた自覚があるからこそ、その言葉は何処かぎごちなくなってしまう。
ライフィセットがいた時は、その時、二人が話していたのがソウマ家の宝刀のことだった時は、気軽に、自然に話せたのに。
二人になった途端、剣以外の話になると、必要以上に言葉を選び、探してしまう。
そんなロクロウの様子を見て、キキョウはほんの一瞬だけ目を見開いたが、すぐにおかしそうに、穏やかに微笑んだ。
「私、業魔ですよ?」
「あ……」
「擬態をして、人の真似事をしてはいますが、肉体はもう、人間ではありません。ですから、この日差しも、首元の襟巻きも、それほど苦にはならないんです」
「そう、だよな……悪い、変なこと聞いた」
頭を掻きながら、自分の迂闊さに小さくため息をつくロクロウ。
業魔になったのだから感覚が変わっていることなど、同じ業魔である自分が一番よく分かっているはずなのに、無意識に「人間の頃のキキョウ」として心配してしまった自分への、気まずさと苦々しさがその横顔に滲む。
そんなロクロウを見つめるキキョウの瞳は、決して冷たくはない。むしろ、かつてと変わらない柔らかさを含んでいる。
「いえ、おかげで不自然な振る舞いをしなくて済みそうです。
イズルトにいる間は、首から外しておこうと思います」
「ああ」
「では、もう一度聞き込みに行ってきますね」
ロクロウはそれ以上言葉を続けることができず、キキョウの背中を見送った。