癒える罰
夢主の名前
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子供の頃、ロクロウ様が私の手を取ってくれあの時から、ずっと彼を恋慕い続けた。
彼がいなければ、きっと自分は息が出来なくなって、死んでしまう。
そんな、人が聞いたら馬鹿げてる、と一笑に付されるようなことを本気で思っていた。
お爺さまが部屋を出て行ったあと、私は、昔、ロクロウ様と二人、迷子になって小屋で過ごした一夜のことを思い出していた。
埃っぽい床。聞こえるのは互いの息遣いだけの静寂。
窓から差し込む熔けた鉄のような赤い光が段々と翳って、ついにはお互いの顔すらわからなくなった。
暗闇が怖くなかったわけじゃない。
けれど、ソウマの家にいるときのじっと息を殺し続けるような冷たい閉塞感に比べたら、ずっとあたたかくて優しかった。
ロクロウ様はあの時
『大丈夫だ、朝になったら帰れるからな』
って、私の手をより強く握って言ってくれた。
私は頷いて、ロクロウ様の肩にもたれて目を閉じた。
やがて、窓から白い光が差し込んで、朝が来て、ロクロウ様が私の手を引いて、先に外に出たところで、私は足を止めてしまった。
ロクロウ様は、小屋から出ようとしない私を訝しげに見ながら、『ああ…』って何かに気付いてこう言った。
『一緒に怒られてやるから。
そもそも、俺が無理矢理お前のこと連れ回したんだし……』
違う。
違うの。
怒られるのが怖かったんじゃないんです。
ロクロウ様。
私、あの時朝なんて、来なければいいのに、って思ってたの。
このまま世界が終わってしまえばいい。
そうすれば、私はソウマ家の娘じゃなくて済む。
ロクロウ様もランゲツの六男坊じゃなくて済む。
ただの骸(むくろ)になって、二つの魂があの狭い小屋で溶け合って、誰にも見つからないまま……。
もしあの時、私がロクロウ様の手を引いて、「帰りたくない」と泣いていたら?
先に外に出たあなたの手を引っ張って、またあの朽ちかけた小屋の中に引き摺り戻していたら?
そんなもしもを、私は何度も夢想するぐらい、あなたと“一緒に終わりたかった”。
それぐらい、あなたを愛していたのに。
そんなことを考えるぐらい、あなたを恋うていたのに。
あなたのいない日々に、慣れていく自分の薄情さが、信じられなかった。
あなたがいないのに、お爺さまと暮らしている日々が楽しい、と思ってしまった自分に、私は心底ぞっとした。
『俺の中には、お前への想いはなくなってる。すまん』
だから、きっと、罰なんだと思った。
彼がいなければ、きっと自分は息が出来なくなって、死んでしまう。
そんな、人が聞いたら馬鹿げてる、と一笑に付されるようなことを本気で思っていた。
お爺さまが部屋を出て行ったあと、私は、昔、ロクロウ様と二人、迷子になって小屋で過ごした一夜のことを思い出していた。
埃っぽい床。聞こえるのは互いの息遣いだけの静寂。
窓から差し込む熔けた鉄のような赤い光が段々と翳って、ついにはお互いの顔すらわからなくなった。
暗闇が怖くなかったわけじゃない。
けれど、ソウマの家にいるときのじっと息を殺し続けるような冷たい閉塞感に比べたら、ずっとあたたかくて優しかった。
ロクロウ様はあの時
『大丈夫だ、朝になったら帰れるからな』
って、私の手をより強く握って言ってくれた。
私は頷いて、ロクロウ様の肩にもたれて目を閉じた。
やがて、窓から白い光が差し込んで、朝が来て、ロクロウ様が私の手を引いて、先に外に出たところで、私は足を止めてしまった。
ロクロウ様は、小屋から出ようとしない私を訝しげに見ながら、『ああ…』って何かに気付いてこう言った。
『一緒に怒られてやるから。
そもそも、俺が無理矢理お前のこと連れ回したんだし……』
違う。
違うの。
怒られるのが怖かったんじゃないんです。
ロクロウ様。
私、あの時朝なんて、来なければいいのに、って思ってたの。
このまま世界が終わってしまえばいい。
そうすれば、私はソウマ家の娘じゃなくて済む。
ロクロウ様もランゲツの六男坊じゃなくて済む。
ただの骸(むくろ)になって、二つの魂があの狭い小屋で溶け合って、誰にも見つからないまま……。
もしあの時、私がロクロウ様の手を引いて、「帰りたくない」と泣いていたら?
先に外に出たあなたの手を引っ張って、またあの朽ちかけた小屋の中に引き摺り戻していたら?
そんなもしもを、私は何度も夢想するぐらい、あなたと“一緒に終わりたかった”。
それぐらい、あなたを愛していたのに。
そんなことを考えるぐらい、あなたを恋うていたのに。
あなたのいない日々に、慣れていく自分の薄情さが、信じられなかった。
あなたがいないのに、お爺さまと暮らしている日々が楽しい、と思ってしまった自分に、私は心底ぞっとした。
『俺の中には、お前への想いはなくなってる。すまん』
だから、きっと、罰なんだと思った。