彷徨の果てに
夢主の名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
業魔病を発症し、生家から出奔したキキョウは、アイルガンド領カドニクス港へと向かう定期貨物船の薄暗い船底で、幾日も息を潜めていた。
王国兵や対魔士の武具を生産するカドニクスは、鍛冶職人たちのための食料や物資が定期的に運び込まれる。
この頃の聖寮は、まだ本格的に動きだしたばかりで、特に辺境への検閲網がまだ完全に敷き詰められていない時期だったことが幸いした。
隠密として鍛え上げられたキキョウにとって、物資の陰に潜伏し続けることは造作もないこと。
だが、港に直接降り立つのは危険すぎる。
波の音と潮の香り、そして時折聞こえる船員の会話で、アイルガンドが近づいたことを察知したキキョウは、夜の闇に紛れて甲板へ出ると、躊躇うことなく海へとその身を投じた。
『生きなさい!』
そうだ。自分は生きなければならない。
“母の命を盾にして”生き延びてしまったのだから。
その凄まじい執念だけで、キキョウは波を掻き分けた。
港から離れた場所から陸に上がり、人目を避けて暗い岩肌を這い進む。
やがて、ぽっかりと口を開けた洞窟、ヴェスター坑道へと迷い込んだ。
しかし、そこは決して安息の地ではない。
「……グルゥゥッ」
暗闇の奥から、這い寄るような複数の気配。坑道に巣食う業魔たちだった。
極限の疲労と寒さで指先の感覚すら消え失せている。それでもキキョウの体は、暗殺者としての本能のまま、手元に顕した太刀を抜いていた。
ソウマ本家から持ち出してきたソウマの家宝、名刀『雲薙』。
迫り来る業魔達の魔の手から、流れるような太刀筋で斬り伏せる。だが、数体目を切り捨てたところで、限界を超えていた足がもつれた。
冷たい石の床に倒れ込み、薄れゆく意識の中、キキョウのそばで、がしゃ、という甲冑を着込んだ武者が歩くような音がする。
それが追手の足音なのか、それとも幻聴なのかを判断する間もなく、キキョウは深い闇へと落ちていった。
王国兵や対魔士の武具を生産するカドニクスは、鍛冶職人たちのための食料や物資が定期的に運び込まれる。
この頃の聖寮は、まだ本格的に動きだしたばかりで、特に辺境への検閲網がまだ完全に敷き詰められていない時期だったことが幸いした。
隠密として鍛え上げられたキキョウにとって、物資の陰に潜伏し続けることは造作もないこと。
だが、港に直接降り立つのは危険すぎる。
波の音と潮の香り、そして時折聞こえる船員の会話で、アイルガンドが近づいたことを察知したキキョウは、夜の闇に紛れて甲板へ出ると、躊躇うことなく海へとその身を投じた。
『生きなさい!』
そうだ。自分は生きなければならない。
“母の命を盾にして”生き延びてしまったのだから。
その凄まじい執念だけで、キキョウは波を掻き分けた。
港から離れた場所から陸に上がり、人目を避けて暗い岩肌を這い進む。
やがて、ぽっかりと口を開けた洞窟、ヴェスター坑道へと迷い込んだ。
しかし、そこは決して安息の地ではない。
「……グルゥゥッ」
暗闇の奥から、這い寄るような複数の気配。坑道に巣食う業魔たちだった。
極限の疲労と寒さで指先の感覚すら消え失せている。それでもキキョウの体は、暗殺者としての本能のまま、手元に顕した太刀を抜いていた。
ソウマ本家から持ち出してきたソウマの家宝、名刀『雲薙』。
迫り来る業魔達の魔の手から、流れるような太刀筋で斬り伏せる。だが、数体目を切り捨てたところで、限界を超えていた足がもつれた。
冷たい石の床に倒れ込み、薄れゆく意識の中、キキョウのそばで、がしゃ、という甲冑を着込んだ武者が歩くような音がする。
それが追手の足音なのか、それとも幻聴なのかを判断する間もなく、キキョウは深い闇へと落ちていった。